特集 PR

いつまでも最先端な矢野顕子、TIN PANとこれまでの活動を総括

『矢野顕子 40th Anniversary「さとがえるコンサート2016 矢野顕子+TIN PAN」』
土佐有明
編集:矢島由佳子、飯嶋藍子
2017/01/11
  • 29
いつまでも最先端な矢野顕子、TIN PANとこれまでの活動を総括

日本のポピュラーミュージックを凝縮した、TIN PANとの震えるステージ

はっぴいえんど以降の日本のポピュラーミュージック史が凝縮された2時間強。あまりの密度の濃さに、比喩ではなく本当に全身の震えが止まらなかった。存在そのものが音楽であるような矢野の才能を改めて実感させられた12月18日、NHKホールでの夜。1990年にアメリカへ移住した矢野顕子が、毎年末日本へ里帰りして行なう『さとがえるコンサート』のことである。

『矢野顕子 40th Anniversary「さとがえるコンサート2016 矢野顕子+TIN PAN」』12月18日公演の様子。 撮影:Susie / スージー
『矢野顕子 40th Anniversary「さとがえるコンサート2016 矢野顕子+TIN PAN」』12月18日公演の様子。 撮影:Susie / スージー

この日重要な役割を果たしたのは、矢野がデビュー前から幾度となくライブやレコーディングを共にしてきたTIN PAN(鈴木茂、細野晴臣、林立夫)である。彼らは21曲中18曲に参加し、数々の見せ場を作っていた。まず特筆すべきは、鈴木と細野がメンバーだったはっぴいえんどの“暗闇坂むささび変化”“12月の雨の日”“抱きしめたい”が披露されたこと。

2013年に逝去したはっぴいえんどのメンバー、大瀧詠一の不在を埋めるかのように、大瀧がボーカルを取っていたパートを細野や鈴木、そして矢野が代わって歌っていたのが感動的だった。TIN PANの演奏も心地よくスウィングしており、特に鈴木茂の老獪なギターの鋭利なカッティングや、渋いスライドギターは文句なしに素晴らしかった。

「はっぴいえんど」から「くるり」まで披露。岸田繁も登場した濃密な時間

矢野はMCで「私は世界で一番はっぴいえんどや細野晴臣の曲を歌ってきた」という趣旨のことを述べていたが、“香港Blues”“Roochoo Gumbo”“ろっかばいまいべいびい”という細野の曲、さらには“100ワットの恋人”という鈴木の曲も演奏。細野や鈴木のボーカルはそれらの曲が発表された当時よりも滋味に富んでおり、明らかに深みを増していた。他にも、矢野が参加した小坂忠のアルバム『ほうろう』(1975年)から、その表題曲も披露。

つまりは、矢野が『JAPANESE GIRL』(1976年)でソロデビューする以前からのキャリアを、まるごと総括するかのような選曲で楽しませてくれたのだ。その一方で、“丘を越えて”“ごはんができたよ”のような代表曲や、新曲も演奏するというサービスっぷり。

『矢野顕子 40th Anniversary「さとがえるコンサート2016 矢野顕子+TIN PAN」』12月18日公演の様子。 撮影:Susie / スージー
撮影:Susie / スージー

さらには、矢野が共演を重ねているくるりの岸田繁が中盤で登場し、二人が共作した“PRESTO”を矢野のピアノと岸田のアコースティックギターで演奏。その後TIN PANを加えて、くるりの“Remember me”“東京”を聴かせてくれたのにも驚いた。“東京”では細野晴臣がベースを弾き、矢野顕子がピアノを弾く。矢野は、はっぴいえんどとくるりという日本のポピュラーミュージック史に名を残す両者のミッシングリンクになっていたと言えるだろう。

懐古に浸る余地なし。キャリアを重ねても瑞々しく響く矢野とTIN PANの親密な音楽

矢野顕子の音楽史は対決の歴史である、というのはよく指摘されることだ。セッションミュージシャンとしても数々の腕比べを経験し、多くの才能と互角に渡り合ってきた彼女。ムーンライダーズ、吉田美奈子、YMO、佐野元春、忌野清志郎、レイ・ハラカミ、マーク・リーボウ、パット・メセニー、上原ひろみ等々、共演してきたミュージシャンは数知れない。だが、この日共演したTIN PANはデビュー前から矢野を知る旧知の仲。なんせ、矢野が1974年にザリバというバンドでデビューした際にレコーディングに参加したのが、TIN PANの前身であるキャラメル・ママなのだ。

彼らは矢野にとってあうんの呼吸でやりとりできる「盟友」なのである。だからなのだろう、矢野は終始リラックスした面持ちで、愛嬌たっぷりのMCで楽しませてくれた。セットリストを勘違いして1曲飛ばしてしまうというハプニングもあったが、それを笑い飛ばしていたのも印象的だ。

『矢野顕子 40th Anniversary「さとがえるコンサート2016 矢野顕子+TIN PAN」』12月18日公演の様子。 撮影:Susie / スージー
撮影:Susie / スージー

『さとがえるコンサート』も今年で21回目。NHKホールというホームグラウンドで気心知れた盟友を迎えての演奏が悪いはずがない。がっぷり四つに組んで火花を散らすような対決もいいが、この日のように音と音とで会話するような親密なアンサンブルは、この四人でしか出せないもの。はっぴいえんどの曲も細野の曲も、発表された当時よりも瑞々しい響きを湛えており、観客が懐古に浸っている余地などなかっただろう。

そう、矢野顕子もTIN PANも、常に自らを更新し続けている。だから、過去の名曲も懐メロになることがないのだ。常に現在が最高、というと大げさに聞こえるかもしれないが、この日の矢野とTIN PANの演奏を聴いていたら、そう思わずにはいられないのだった。

『矢野顕子 40th Anniversary「さとがえるコンサート2016 矢野顕子+TIN PAN」』12月18日公演の様子。 撮影:Susie / スージー
撮影:Susie / スージー

イベント情報

『矢野顕子 40th Anniversary「さとがえるコンサート2016 矢野顕子+TIN PAN」』

2016年12月18日(日)
会場:東京都 渋谷 NHKホール

『矢野顕子×上原ひろみ TOUR 2017 ラーメンな女たち』

2017年4月15日(土)
会場:静岡県 静岡市民文化会館 中ホール

2017年4月16日(日)
会場:大阪府 フェスティバルホール

2017年4月18日(火)
会場:東京都 東京文化会館 大ホール

2017年4月19日(水)
会場:東京都 東京文化会館 大ホール

2017年4月21日(金)
会場:福岡県 ももちパレス

2017年4月23日(日)
会場:愛知県 愛知県芸術劇場

2017年4月30日(日)
会場:北海道 札幌市教育文化会館

リリース情報

矢野顕子『矢野山脈』完全生産限定盤
矢野顕子
『矢野山脈』完全生産限定盤(4CD+DVD)

2016年11月30日(水)発売
価格:15,120円(税込)
VIZL-1035

[CD1]
BEST SONGS 1976-1984
1. 気球にのって
2. 電話線
3. 丘を越えて
4. 行け柳田
5. 昨日はもう
6. ト・キ・メ・キ
7. ひとつだけ
8. ごはんができたよ
9. 在広東少年
10. ただいま
11. 春咲小紅
12. ROSE GARDEN
13. 愛がなくちゃね
14. どんなときも どんなときも どんなときも
15. ラーメンたべたい
16. GREENFIELDS
[CD2]
BEST SONGS 1985-1997
17. David
18. Home Sweet Home
19. そこのアイロンに告ぐ
20. はこ
21. ふりむけばカエル
22. 自転車でおいで
23. Watching You
24. BAKABON
25. "湖のふもとでねこと暮らしている [DOWN BY THE LAKE, LIVING WITH MY CAT]"
26. SUPER FOLK SONG
27. PRAYER
28. SHENANDOAH
29. にぎりめしとえりまき [THE RICEBALL AND THE MUFFLER]
30. 夢のヒヨコ
31. 愛について
32. クリームシチュー[The Stew]
33. All The Bones Are White
[CD3]
BEST SONGS 1998-2016
34. ひとりぼっちはやめた [QUIT BEING ALONE]
35. Dreaming Girl
36. あたしンち
37. N.Y.C
38. PRESTO(feat. 岸田繁)
39. 中央線(feat. 小田和正)
40. ひとつだけ(feat.忌野清志郎)
41. When I Die
42. 変わるし
43. きよしちゃん
44. いい日旅立ち
45. 多摩蘭坂
46. セラピー
47. 飛ばしていくよ
48. ISETAN-TAN-TAN
49. Tong Poo
50. Welcome to Jupiter
51. 春咲小紅(矢野山脈 ver.)
[CD4]
BEST ANOTHER SONGS
1. 女、キラキラ。男、そわそわ。
2. 虹をかけたい
3. White Morning
4. 不思議、大好き。
5. 不思議、大好き。Part2
6. おいしい生活
7. おいしい生活 Part2
8. さいこうのおかぁさん
9. 冬の夜空
10. 風になる
11. ゆうぐれ
12. さっぽろ地下街ポイントクラブの歌
13. 本をひらくと
14. 夕べのうた
15. 雪
16. コニャラの歌
17. すこしだけやさしく
18. おなかすいたねの歌
19. すばらしい日々
20. Akiko's Song
21. Sake In The Jar
22. くまんばちがとんできた
23. 誰がために
24. しあわせなバカタレ
25. 窓
26. 1,2,3
27. ジャズベとともに
[DVD]
1. そこのアイロンに告ぐ
2. Home Sweet Home
3. ほんとだね。
4. かぜのひきかた
5. Watching You
6. SUPER FOLK SONG
7. すばらしい日々
8. 春咲小紅
9. ひとつだけ
10. クリームシチュー
11. Dreaming Girl
12. PRESTO
13. おいてくよラーメン編
14. おいてくよ川下り編
15. 変わるし
16. リラックマのわたし
17. 飛ばしていくよ
18. ISETAN-TAN-TAN
19. Tong Poo
※写真集付き

矢野顕子
『矢野山脈』通常盤
矢野顕子
『矢野山脈』通常盤(3CD)

2016年11月30日(水)発売
価格:4,320円(税込)
VICL-64624

[CD1]
BEST SONGS 1976-1984
1. 気球にのって
2. 電話線
3. 丘を越えて
4. 行け柳田
5. 昨日はもう
6. ト・キ・メ・キ
7. ひとつだけ
8. ごはんができたよ
9. 在広東少年
10. ただいま
11. 春咲小紅
12. ROSE GARDEN
13. 愛がなくちゃね
14. どんなときも どんなときも どんなときも
15. ラーメンたべたい
16. GREENFIELDS
[CD2]
BEST SONGS 1985-1997
17. David
18. Home Sweet Home
19. そこのアイロンに告ぐ
20. はこ
21. ふりむけばカエル
22. 自転車でおいで
23. Watching You
24. BAKABON
25. "湖のふもとでねこと暮らしている [DOWN BY THE LAKE, LIVING WITH MY CAT]"
26. SUPER FOLK SONG
27. PRAYER
28. SHENANDOAH
29. にぎりめしとえりまき [THE RICEBALL AND THE MUFFLER]
30. 夢のヒヨコ
31. 愛について
32. クリームシチュー[The Stew]
33. All The Bones Are White
[CD3]
BEST SONGS 1998-2016
34. ひとりぼっちはやめた [QUIT BEING ALONE]
35. Dreaming Girl
36. あたしンち
37. N.Y.C
38. PRESTO(feat. 岸田繁)
39. 中央線(feat. 小田和正)
40. ひとつだけ(feat.忌野清志郎)
41. When I Die
42. 変わるし
43. きよしちゃん
44. いい日旅立ち
45. 多摩蘭坂
46. セラピー
47. 飛ばしていくよ
48. ISETAN-TAN-TAN
49. Tong Poo
50. Welcome to Jupiter
51. 春咲小紅(矢野山脈 ver.)

プロフィール

矢野顕子
矢野顕子(やの あきこ)

1972年頃よりティンパン・アレイ系のセッションメンバーとして活動を始め、ニューミュージック黎明期の欠かせない顔となる。1976年にアルバム『JAPANESE GIRL』でソロデビュー。YMOの2度のワールドツアーにサポートメンバーとして参加。出前コンサート、さとがえるコンサートなど長年にわたるライブ活動を続けながら、レイ・ハラカミとのユニット「yanokami」、森山良子とのユニット「やもり」をはじめ、さまざまなジャンルのアーティストとのコラボレーションも多い。2016年はソロデビュー40周年をむかえ、SPEEDSTAR RECORDSよりオールタイムベスト『矢野山脈』をリリース。

関連チケット情報

2017年4月15日(土)
矢野顕子×上原ひろみ
会場:静岡市民文化会館 中ホール(静岡県)
2017年4月16日(日)
矢野顕子×上原ひろみ
会場:フェスティバルホール(大阪府)
2017年4月18日(火)〜4月19日(水)
矢野顕子×上原ひろみ
会場:東京文化会館 大ホール(東京都)
2017年4月21日(金)
矢野顕子×上原ひろみ
会場:ももちパレス 大ホール(福岡県)
2017年4月23日(日)
矢野顕子×上原ひろみ
会場:愛知県芸術劇場 大ホール(愛知県)

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

Got a minute ? 動画これだけは

U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS“七曜日”

U-zhaanが叩くタブラの七拍子のリズムに環ROYと鎮座DOPENESSが放つ奔放で日常的なリリック、さらにerror403が手がけたアニメーションの組み合わせは中毒性が高い。映像はバグったゲームボーイの起動画面、アプリアイコン、北斗七星、Google Street Viewの遷移感、太鼓の達人など、ギミックたっぷりでついついリピートしてしまう。(宮原)