イイヅカタイタン × yutori片石貴展。ストリートシーンの変遷から考える、現代の「かっこよさ」の概念

1980年代後半から2000年代にかけて、世界的にも注目されていた日本独自のストリートカルチャー。原宿や渋谷から個性的なファッションブランドが続々と誕生し、トレンドを彩っていた。しかし現在は、デジタルの発展やコロナ禍の影響もあり、かつてのように都市から新たなファッショントレンドを生み出すのは難しくなった印象がある。

そんななか、デジタル領域でストリートファッションを打ち出し、急成長を遂げているのが2018年4月に創業した株式会社yutoriだ。同社は日本最大級の古着コミュニティー「古着女子」の立ち上げに始まり、「9090」「genzai」「PAMM」など合計11のアパレルD2Cブランドを展開し、Z世代を中心に高い支持を得ている。2020年にはZOZOの傘下に入ったことでも話題になった。

今回は、そんなyutori社の代表を務める片石貴展と、同社のコーポレートサイトのリニューアルを手がけるなどクリエイティブディレクターとして多方面で活躍し、Dos Monosのラッパーとしても活動するイイヅカタイタンにインタビュー。

まさにストリートカルチャーに携わる二人は、ストリートシーンの現在と未来をどのように捉えているのだろうか? コロナ禍がファッションや音楽に与えた影響や、現在と昔の「かっこよさ」の定義の変化などについて語ってもらった。

「ストリートファッション」で上場を目指す。yutoriの新ミッションに込めた思い

―お二人は以前から交友があったのでしょうか?

タイタン:片石くんと初めて会ったのは4、5年前で、クリエイティブ業界の人たちが集まるパーティーでした。

いわゆる「業界人の交流会」に来てみたものの、あまり馴染めなくて(笑)。そんななか、パーティーの主催者の方が、ぼくらを引き合わせてくれたんです。

片石:ぼくも当時はyutoriを起業したての頃でした。その場にあまり馴染めない者同士で、パーティーの様子を見ながらいろいろ話したよね。

タイタン:そうそう。「俺たち、こういう世界のなかで本当にやっていけるのかな?」って(笑)。

片石:その後も偶然会うことが重なり、同い年ということもあって、話していくうちに仲良くなったんです。ただ、一緒にがっつりと仕事をしたのは、今回のyutoriのコーポレートデザインをリニューアルしたのが初ですね。

タイタン:そうだね。じつはぼく自身、2022年1月にDos Monosでの活動とか音楽領域以外での企画やディレクションをする機会が増えてきたこともあり、volvoxという会社を仲間と立ち上げたんですが、今回のyutoriのリニューアルが自社の初仕事にもなりました。

―独立して最初の仕事にyutori社のコーポレートリニューアルを選んだのには、なにか理由があったのでしょうか?

タイタン:それは正直、たまたまです(笑)。ただ、volvox創業の際に考えていたのは、仕事をするブランドの「資産」になるようなことだけをしたいということでした。ここでいう「資産」とは、単発で終わる話題化プロモーションなどではなく、時間が経つほどにブランドの価値を上げ続けるようなものと定義していて。

yutoriの場合は「ストリートファッションの領域で上場する」という目標に向けて、クリエイティブのクオリティーを担保しながら、しっかりビジネスとして合理的に邁進していく姿勢が素晴らしいなと。

そのうえで、今後を見据えてyutoriの思想を端的に表現できる新たなコーポレートミッションなどをつくり、社内外に発信し続けてもらえたら会社の輪郭がよりはっきりする、と思ったんです。それで結果的に生まれた言葉が、 「TURN STRANGER TO STRONGER」でした。

片石:ぼくとしても、この言葉はとてもしっくりきています。「STRANGER」と「STRONGER」は、一文字変えただけなのに、意味が大きく異なりますよね。

これまでミッションとして掲げていた 「臆病な秀才の最初のきっかけを、創り続ける。」をより端的に表している気がして。ポエムみたいだった以前のミッションを、歌詞のような鋭い言葉にしてくれてとても気に入っています。また、yutoriのスタンスとして 「FOOL > COOL」 という言葉も新たに掲げています。

現在と過去でストリートシーンはどう変化した? 舞台は街からSNSへ

―yutori社が成長を遂げているストリートファッションの領域は、昔と現在ではかなり様相が変わっていると思います。お二人はこの変化をどのように捉えていますか?

片石:端的にいうと、「街」から「SNS」に移行したのかなと思っています。ぼくらの世代だと、高校生くらいのときは原宿のストリートスナップやサロンに勢いがありましたね。なかでも、ストリートスナップ雑誌『TUNE』『FRUiTS』やヘア&ファッション誌『CHOKiCHOKi』などが周りでも読まれていて。

それまでの「雑誌」といえば、ファッションヒエラルキーの高い人たちをキュレーションする媒体が主流だったと思うんですが、次第に街中にいる奇抜で個性的な人たちもピックアップされていく傾向が強まった。一部の人にしか理解されないような服装でも、「個性的でかっこいい」と認められやすくなっていったのかなと。

『TUNE』の表紙(Instagramで見る

片石:それが、いまはSNSに移行して誰でも自分の個性を発信できる。そのなかでも、「いいね」数などが評価軸になっているから、ニーズが可視化されるようになったのも大きな特徴ですよね。

個人の感性や価値観が尊重されて趣味趣向が分散しやすい時代だからこそ、日本中を席巻するようなトレンドは生まれにくいかもしれない。だけど、それぞれのジャンルでしっかりニーズを掴んでいるブランドは、一定の人気を得られると思うんです。これはファッションに限らず、さまざまな領域で起きている気がします。

2017年12月に休刊となった雑誌『FRUiTS』と、yutoriが運営するブランド「9090」のコラボレーション記念号。2022年1月に限定販売された(Instagramで見る

タイタン:ファッションは専門外なので音楽についてしか語れませんが、やはり人の趣味嗜好が細分化されるようになった実感はあります。だからこそ、個々のアーティストの居場所は昔に比べると確保されやすい気もして。

よく「日本の音楽業界は先細りしている」といわれてしまうこともありますが、昔のような一曲でメガヒットを狙うというかたちではなく、別の手法でコアなファンを着実につけることはできるのかなと。そういった意味では、Dos Monosで活動しているなかで、いまの状況をポジティブに捉えている部分もあります。

片石:タイタンの言っていることは、yutoriの経営戦略にも共通点を感じますね。ぼくも主軸の1ブランドで年商何百億円を目指すのではなく、年商数億円の濃くて熱狂度の高いブランドを複数運営していくほうがいまの時代に合っているのかなと考えています。

舞台は街からSNSへ。現代のストリートシーンに求められる「スタンス」とは?

―そうした時代の流れのなかで、コロナ禍はファッションや音楽といったカルチャーにどんな影響を与えたと思いますか?

片石:自宅にいる時間が長くなったことで、よりSNSに触れる機会も増えたのは大きかったですね。実際にコロナ禍で、SNSを主戦場にしているぼくらの会社の売上も伸びましたから。音楽業界の影響も、かなり大きかったんじゃない?

タイタン:そうだね。ライブ事業や、それを拠り所にしていたアーティストはとくに大きな影響を受けたと思うので。

ただ一方で、Dos Monosはコロナ禍で活動の幅が広がった感覚があります。なぜなら、ほかのメンバーはいざしらず少なくともぼくが価値の源泉として重視していたのは「スタンス」だったから。

世の中でさまざまな変化が起こるなかでも、自分たちのスタンスはぶらさずに活動できている実感があります。状況に応じて自分たちが面白がれる表現を、雑多な回路を通して実践してゆくことがなにより大事だと感じていて、そこから熱も生まれると思うんですよね。

片石:なるほど。

タイタン:たとえば、コロナ初期にさまざまな活動の見通しが立たなくなった状況下で、ぼくらは台湾のIT担当大臣であるオードリー・タンと公式にコラボ曲を出したんですね。

タイミング的にも『うちで踊ろう』の例の非公式コラボで、政治と音楽について議論がたくさんでていたときで。ここで重要なのは、曲自体が何回再生されたかとか以上に、状況に対する批評性を持ち続ける姿勢だと思っていて。

そのスタンスを表明することが、結果的にアーティストの強度を高めてゆくのかなと考えています。もちろん楽曲に魅力があるというのは大前提ですが。

Dos Monos“Civil Rap Song ft. Audrey Tang 唐鳳”(YouTubeで観る

「スタイル」ではなく「スタンス」が大事。かっこよさの概念の変化

―ファッションやカルチャーにおける「かっこよさ」の概念も変化してきていると感じますか?

タイタン:そうですね。それこそぼくはyutoriのやっていることはかっこいいと思っていて。

片石:なんか、褒めてくれてありがとう(笑)。

タイタン:片石くんたちは、どういう見せ方をするかといった「スタイル」よりも、経済的にも成長してシーンに還元しようとする「スタンス」のもと行動しているのが、かっこいいですよね。

そのうえで、スタッフや関わってくれる人たちに具体的な敬意を表し、雇用を発生させて立場を守ろうとしているのがかっこいいなと。そういう姿勢に共感する人が増えるはずだし、結果的にブランドやシーンを盛り上げることにもつながっていく気がして。

「かっこよさ」の概念も、上っ面の「スタイル」ではなく、自分たちの信念や価値がどこにあって、どう行動しているのかという「スタンス」が大事になってきているのかなと感じます。

片石:たしかにそうかもね。ぼくとしても「楽しいからOK」といった価値観は、平成後期で終わっていると思っていて。「仲間と仕事して、みんなで儲かりたい」という思いが強いし、「みんなで楽しく、お金も稼ぐには?」っていう難しいお題をクリアするのが、いちばんかっこいいと思うんです。

だからぼくらは、自分たちがやりたいことをやるためにも、ちゃんと稼ぐ。その証明のためにも、海外展開を加速させて、上場も実現させたいという思いが強いですね。

ファッションビジネスを盛り上げる。業界の転換点をつくるための策略

―具体的な海外展開のビジョンは、もうイメージできているのでしょうか?

片石:はい。直近では2022年2月にyutoriグループへ新たに参画した「F-LAGSTUF-F(以下、フラグスタフ)」のデザイナー・村山靖行さんと一緒に海外へ進出することを考えています。

彼はもともと古着屋の「BerBerJin(ベルベルジン)」のバイヤーとして活躍していたので、海外のネットワークを持っていて。まずはそういったコネクションを活かしながら、現地でブランドを立ち上げる、といったかたちなどで進出していきたいですね。

「フラグスタフ」の公式アカウント(Instagramで見る

―ストリートブランドとして国内外で注目を集める「フラグスタフ」のグループジョインは、ファッション業界で話題になりましたね。これまで自社で立ち上げたブランドの運営をメインに行なってきたyutori社にとって、「フラグスタフ」は初の外部ブランドですが、この戦略に踏み切った理由はなにかあったのでしょうか?

片石:アートディレクターの永戸鉄也さんと一緒に立ち上げたブランド「genzai」がかなり順調に成長して、その成功体験が今回のディールを後押ししました。

「genzai」の永戸さんのような専門性の高い職人気質のクリエイターと、「売る」ことが得意なぼくらの協業は相性が良いな、と思って。ものづくりに妥協しない村山さん率いる「フラグスタフ」なら、きっとうまくいくと感じたんです。

タイタン:たしか今後もブランドの買収などは考えているって言ってたよね。

片石:そうだね。上場という目標に向け、いまも水面下で交渉をしていて、年内にあと1、2社がyutoriグループへ参画する予定です。

―yutori社は早い段階から「上場」を目標に掲げていますが、それはなぜなのでしょうか?

片石:正直、スマートに生きていくのであれば、上場以外にもいろいろとやりようはあると思っています。それでも上場にこだわるのは、ファッション業界に明るいニュースをつくりたいという気持ちもありますね。

直近、ファッション業界で上場したのは、TOKYO BASE社の2015年なので、少し前ですよね。とくにここ最近のアパレル業界はコロナなどの情勢もあり、店舗閉鎖などの暗いニュースが多い。

でも、ぼくはファッションの持っている力って、もっと強いはずだと信じています。ぼくらの上場を通じて、業界の転換点として「こうやってやれば、ファッションビジネスは盛り上がる」ということを示したいし、それが使命だと思っています。

タイタン:今回のリニューアルをお手伝いした際、どんなサイトにしたいのかyutoriのメンバーを含めて片石くんと話し合うなかで、いちばん印象的だったのが、そういうシーン全体への目配せと戦略のユニークさでした。

2年前くらいにもみんなで会話をしていたときは「言葉」で会社の強みを語っていたけれど、いまは「各ブランドの強さ」だけで戦える状態にある。その説得力があるからyutoriは面白いですね。

片石:自社の目標や、ファッション業界を盛り上げるためにも頑張っていきたいですね。

プロフィール
片石貴展 (かたいし たかのり)

1993年生まれ。2018年、Instagramアカウント「古着女子」を立ち上げ、初期投資0円の「インスタ起業」としてyutoriを創業。「9090」や「genzai」「PAMM」など複数のファッションブランドを運営。2020年7月、ZOZOグループへハーフジョインし、IPOを目指す。Forbes 30 UNDER 30 JAPAN 2020受賞。

イイヅカタイタン

Creative Director / volvox inc Co-Founder。過去に、クリエイティブディレクターとして¥0の雑誌『magazineⅱ』やテレ東停波帯ジャック番組『蓋』などを手がけた。2022年、volvox inc共同創業。Dos Monosのラッパー「TaiTan」としても活動中。



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