「業界の生の声を国会に届けていただきたい」。音楽業界4団体が生稲氏、今井氏応援の意図を説明

7月10日に投開票が行なわれた第26回参議院選挙で、日本音楽事業者協会など音楽業界に関わる4団体が、自民党公認で出馬し当選した元「おニャン子クラブ」の生稲晃子氏、比例代表で再選した元「SPEED」今井絵理子氏への支援を表明していた件。7月12日、4団体がCINRAの質問に回答し、その意図について説明した。

<メイン画像:国会議事堂 / Shutterstock>

何が起きていた?

参院選の投開票日を前にした6月30日、音楽業界4団体(日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、コンサートプロモーターズ協会、日本音楽出版社協会)は自民党本部で決起大会を開き、生稲氏と今井氏への支持を表明。業界団体が一丸となって特定の政党の候補者を支援を公にしたのは初めてで、SNSではさまざまな意見が噴出した。

7月2日、コロナ禍で休業を余儀なくされたライブハウスなどへの公的支援を求める運動を始動した「SaveOurSpace」は抗議声明を発表し、音楽業界全体が特定の候補者を支持するメッセージとして社会に受け取られかねないという点や、支援表明に至るまでの意思決定のプロセスの問題などを指摘。多くの音楽業界関係者から賛同が集まるなどの反響を呼んだ。(賛同人の数は5,000人を超えたと報告されているが、一部に偽名やなりすましがあったとして、7月7日時点で賛同人名簿は取り下げられている)

「業界の生の声を国会に届けていただきたいとの思いによるもの」。業界団体の説明は

CINRAでは、両候補への支援を表明した音楽業界4団体に対し、1)特定の政党(自民党)候補者への支援を表明した背景と団体内での意思決定のプロセス、2)「支援」の具体的な内容、3)特定の政党への支持表明に賛否両論が上がっていることについての見解――の3点を尋ねた。

1)業界団体が一丸となって特定の政党の候補者を表明することは初めてとのことですが、なぜ自民党候補者への支援を決めたのでしょうか? また支援表明にあたり、会員には事前に説明や、合意を得るなどのプロセスは経たのでしょうか。

2)両候補者への支援のため、具体的にどんな活動を行なうのでしょうか?会員に両候補者や自民党への比例代表の投票を呼びかける、などの選挙運動も展開しましたか?

3)貴法人の会員には数多くの個人・法人・団体が所属しており、その個人や、法人・団体に所属しているアーティスト、従業員などは、それぞれ様々な政治的信条を持っていると推察されます。4団体で特定の政党を支持することは、そうした個人の政治的信条や、思想・信条の自由を脅かすことにつながるのではないかという指摘がネット上であがっています。このことに関する見解を教えてください。

質問に対し、日本音楽事業者協会(以下、音事協)は7月12日、4団体を代表し回答。要約を紹介する。(なお4団体は、7月7日までに音楽ナタリーの取材にも回答している。)

まず、支援表明の背景について、「協会ではこれまで様々な課題に対し、会員や各会員に所属する皆様の努力と業界団体としての当協会の活動により解決を図ってまいりました」と説明。これまでも4団体で活動を行なってきたものの、近年は団体だけでは解決できない問題が急速に増えたという。その一例としてチケット不正転売問題を挙げ、「法整備なしに解決することは困難との思いから、問題解決の一つの手立てとしてロビイングを始めました」と、国会議員や政府へのロビー活動を始めた経緯を明かした。

チケット転売問題をめぐっては、2016年8月、日本音楽制作者連盟、音事協、コンサートプロモーターズ協会、コンピュータ・チケッティング協議会の4団体が、チケット高額転売に反対する共同声明を発表。

その後、石破茂氏を会長とする自民党のライブ・エンタテインメント議員連盟はプロジェクトチームを発足、業界団体やサカナクションの山口一郎氏などアーティストらと法規制に向けて議論を重ねていった。2018年4月には超党派の会合が開催、議連も立ち上がり、同年12月にはダフ屋行為も含めたチケットの不正転売を禁じる「チケット高額転売規制法案」が成立。異例の早さで法制化を実現させた。

さらに音事協は回答で、「直近では新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けたライブ・エンタテインメント産業に対する補助金制度『J-LODlive』の創設等、なかなか着手していただけない政府を動かすために、自民党のみならず、立憲民主党、共産党にもご協力をお願いし、国会質問にてサポートをしていただきました」とも説明。

4団体はコロナ禍の2021年5月、政府に対してイベントの『無観客開催』要請の撤廃を訴える「緊急事態宣言の延長に際しての声明文」を発表している。

そして、「いま現在も、法整備による解決が必要とされる課題は山積しておりますが、ロビー活動をする中で、音楽・芸能産業の実情をご理解いただけていないことによる壁を感じることがありました」と、ロビー活動をするうえで業界の実情が伝わらないというハードルがあったと主張。

今井氏、生稲氏への応援を表明した背景として、「業界団体として広く業界全体がコロナ禍の影響から回復し、将来にわたり発展していくことを目的としたもの」と述べ、「10代から音楽・芸能業界の一線で活躍され、その活動の裏にどれほどの関係者やスタッフが関わっているかをご実感されている両氏に、この業界の生の声を国会に届けていただきたいとの思いによるものです」と説明した。

また、​​支援は表明したものの、会員に対し特定の政党や候補者への投票呼びかけや、その他の活動は一切行なっていないと強調。「個人の自由な意思による投票を妨げるものではない旨もお知らせしております」とした。

質問への回答全文は以下の通り。

―業界団体が一丸となって特定の政党の候補者を表明することは初めてとのことですが、なぜ自民党候補者への支援を決めたのでしょうか? また支援表明にあたり、会員には事前に説明や、合意を得るなどのプロセスは経たのでしょうか。

当協会ではこれまで様々な課題に対し、会員や各会員に所属する皆様の努力と業界団体としての当協会の活動により解決を図ってまいりました。これは他の団体も同様のことと思います。また、音楽産業全体に係る横断的な課題も多いことから、日本音楽制作者連盟、コンサートプロモーターズ協会、日本音楽出版社協会、当協会の音楽4団体では、日頃から共通のテーマに関し連携して活動を行っております。

しかしながら、近年は私どもの努力だけでは解決できない問題や課題が急速に増え、特にチケット不正転売の問題は法整備なしに解決することは困難との思いから、問題解決の一つの手立てとしてロビイングを始めました。

その結果、ライブ・エンタテインメント議員連盟主導のもと、チケット高額転売問題対策議員連盟を超党派で立ち上げていただき、「チケット不正転売禁止法」の成立や、直近では新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けたライブ・エンタテインメント産業に対する補助金制度「J-LODlive」の創設等、なかなか着手していただけない政府を動かすために、自民党のみならず、立憲民主党、共産党にもご協力をお願いし、国会質問にてサポートをしていただきました。

今現在も、法整備による解決が必要とされる課題は山積しておりますが、ロビー活動をする中で、音楽・芸能産業の実情をご理解いただけていないことによる壁を感じることがありました。

今回の決起大会で今井絵理子、生稲晃子両氏を応援したのは、業界団体として広く業界全体がコロナ禍の影響から回復し、将来にわたり発展していくことを目的としたもので、10代から音楽・芸能業界の一線で活躍され、その活動の裏にどれほどの関係者やスタッフが関わっているかをご実感されている両氏に、この業界の生の声を国会に届けていただきたいとの思いによるものです。

―両候補者への支援のため、具体的にどんな活動を行なうのでしょうか?会員に両候補者や自民党への比例代表の投票を呼びかける、などの選挙運動も展開しましたか?

両候補者への応援として決起大会に参加しましたが、特定の政党や候補者への投票呼びかけやその他の活動は一切行っておりません。個人の自由な意思による投票を妨げるものではない旨もお知らせしております。

―貴法人の会員には数多くの個人・法人・団体が所属しており、その個人や、法人・団体に所属しているアーティスト、従業員などは、それぞれ様々な政治的信条を持っていると推察されます。4団体で特定の政党を支持することは、そうした個人の政治的信条や、思想・信条の自由を脅かすことにつながるのではないかという指摘がネット上であがっています。このことに関する見解を教えてください。

上記と重複しますが、特定の政党を支持するものではありませんし、加盟社に対し個々の意思によって投票していただくよう呼び掛けています。

「SaveOurSpace」、音制連との面談について報告

「SaveOurSpace」は7月8日、音制連から申し入れがあり、約2時間にわたり面談をしたことを報告。面談では、両氏の支援表明に至った経緯と理由について説明があり、また「SaveOurSpace」と可能な限り協力関係を築いていきたいという旨の発言もあったという。

「SaveOurSpace」は、音制連の承認を経たと前置きした上で、同連盟が会員に向けて送付したメールの文面も公開している。

メールでは、決起大会の参加に至るプロセスについても記述があり、「当連盟の意思決定を行う理事会によって、決起大会への参加について合意を得た上で行っております。したがって、全ての会員社に対して本件に関する個別同意は得ておりませんが、 団体としての意思決定プロセスとしてはルールに沿ったものであると認識しております」などと記述。一方で、「今回の決起大会参加について内部での批判が多数となれば、当然団体としての方向性も変化せざるを得ないものと考えております」ともしている。

さらに、「SaveOurSpace」との面会で、「情報発信や決定プロセスにおいて、当連盟にも配慮が不足していたことについて、反省・改善すべき点は適切に対応する旨をお伝えいたしました」とも説明。音楽業界関係者のために、「可能な限り協力体制を 構築したいという働きかけを行った」と報告した。



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