束芋が吉田修一の小説『国宝』のために制作した挿絵全500点を展示。『束芋画 国宝』開催

メイン画像:ポーラ ミュージアム アネックス 「束芋画・国宝」

現代美術家の束芋による展覧会『束芋画 国宝』が7月17日から銀座・ポーラ ミュージアム アネックスで開催される。

同展では、2017年~2018年に朝日新聞で連載された吉田修一の小説『国宝』のために束芋が制作した挿絵全500点を前後期に分けて展示。

連載当時、束芋はまず墨による線画を描き、その後、小説のストーリーを読み込みながら場面ごとの感情や空気感を色彩として重ねていった。線の上に色を置いていく過程には物語世界だけでなく、その時々の自身の感覚や身体性も自然と反映されていたという。

今回の展示に際し束芋は、新聞の入稿時にはデータ上で合成していた色彩部分を、和紙に描き留めた線画の上に改めて着彩を施し完成させた。

前期:7月17日(金)〜8月9日(日)
後期:8月11日(火・祝)〜8月30日(日)※休館日8月10日(月)

【アーティストステートメント】
私は「絵を描く」ということが苦手だ。特に、自分の中にあるものを外に出す行為として「絵を描く」ということは、苦手というより不可能に近いかもしれない。なので、私が絵を描く時は、自分の手を動かすためのシステムを構築することが必要となる。そしてそれ以前に自分が絵を描く理由さえも必要となる。と言うと、もはや自分が美術家であるかどうかも疑わしく感じてくる。

「国宝」の新聞連載の挿絵の依頼をいただいたことで、私は自分が“絵を描く理由”を与えられた。次は”システムの構築”である。自分の身体と描くための何らかのツールを使って、どうやってイメージを一枚の絵にしていくか。

「国宝」の新聞連載のさらに10年ほど前に、同じく吉田修一氏著「惡人」の連載の挿絵も担当させていただいており、当時のシステムの一部を踏襲することでこの稀な縁の繋がりを描き留めたかった。横長の和紙の右から左に時間軸を設定し、いくつかのイメージでは日を跨いで繋がっていくように描いていく。前日のストーリーが次の日のストーリーに影響を与えていくことを直接的な繋がりで見せるこの手法を、「惡人」に続き「国宝」でも採用した。

一方、絵にイメージを定着させるためのシステム(実際の描画方法)を変えることで、「惡人」の時とは全く違った印象を与えるものにしたいと考えた。「惡人」で強い印象を与えた抑揚のある線ではなく、「国宝」では一定の細さを保った線を採用。
そして、小説に漂う空気や登場人物の感情のような、目に見えないものを色に置き換えた。線と色、それぞれ役割を分けることで、紙面の挿絵の小さな欄でも繊細さと大胆さが共存する画面作りを目指した。

当時は新聞という制約の中でデータとして消えてしまった色彩を、10年後の今、手元に残された膨大な線画の上に、今度は物質的な絵具を使って定着させた。
このように、必要性を感じられるルールやシステムを構築することで私はやっと「絵を描く」ことができる。

時を経て和紙の上で定着されたイメージは、頭で想像していたよりも遥かに力強く、今再び私を物語の奥深くまで引きずり込む。

束芋

ポーラ ミュージアム アネックス


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