モーニングはみだし3兄弟@CINRA出張所

木下晋也&よしもとばななのマイペース対談

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木下晋也&よしもとばななのマイペース対談

インタビュー・テキスト:内田有佳 撮影:三野新

やっぱり、人生あくせくしちゃいけないんだなぁ。(ばなな)

―木下さんは大学で何を学んでいたのですか?

木下:放送作家になりたくて放送学科に入ったのですが、やっぱり自分に向いてないなと。そのうち大学の先輩だった彼女が先に卒業して上京してしまって。それを追いかけて、仕事も決まっていないのに上京して、フリーターしていたんです。

ばなな:そうなんですね。

木下:でもお笑いは好きだから、何か関連した仕事をしたくて。小学生の頃から漫画が好きで、一時期だけ自分でも描いてたんです。クラスですごく喜んでもらった記憶を思い出して、漫画でちょっとやってみようかなって。

ばなな:納得できるような、できないような……。どうしてそれで漫画家になれるんだろう?

木下:うーん。やっぱり笑ってもらうのが好きっていうのがずっと根底にあるんでしょうね。大学の時は落語研究会にいて、最初は自分が表に出て笑わせようと思ったんですけど、やってみて自分は表舞台に出るタイプじゃないとはっきりわかりました。

―それはなぜ?

木下:いろいろ理由はあるんですが、まず声が通らないんです。

ばなな:あはは(笑)。普通は問題にならないところが問題になるんですね〜。しかし、そんな流れで漫画家になっていたとは、漫画家になりたい人に夢を与えているような、与えていないような(笑)。真似できるようで、真似できないような(笑)。

奥:よしもとばなな 前:木下晋也

―出版社には自分で持ち込みを?

木下:はい。いくつか持っていった中の1つが『モーニング』でした。そのときに見てくれたのが今の担当さんなんです。

ばなな:やっぱり、人生あくせくしちゃいけないんだなぁ。

人を笑わせる漫画って作家の不安定感とセットになっていることが多いけど、木下作品にはそれがない。(ばなな)

―ばななさんは、木下作品のどんなところに一番魅力を感じているのでしょう?

ばなな:安定感があることでしょうか。人を笑わせる漫画って作家の不安定感とセットになっていることが多い気がして。それが私にとっては安心して読めない理由でもあるんですが、木下さんの作品には不安定な要素がない。

木下:そうですね。自分の状態と作品はあまり関係ないですね。体調が悪くても、頭の中で思いつくことはいつもと変わりないというか。

ばなな:簡単に言ったらプロってことなんですけどね。あと、大抵のギャグ漫画って勢いで描いているから、ダレたときに持ち直せないんですよね。木下さんにはそれもない。持ち直すまでに2つ、3つ平均値の話を描いて、また上がってくる。そういうのを『ポテン生活』全10巻を描いた4年半の間、こまめに繰り返して、同じテンションを保っていたのがすごい。なかなかできることじゃないですよ。私、長い人生の中でこういう粘り方をする人はあまり見たことがないですね。

木下:そうですか。

ばなな:それで、何かふさわしいものをと思ってトロフィーを捧げたんです。

木下:今日持ってきているんですよ。

ばなな:じゃあ、後でそれを持って写真を撮りましょう。

左:よしもとばなな 右:木下晋也

左:よしもとばなな 右:木下晋也

怒られたくないという思いが原動力ですね。(木下)

ばなな:木下さんは普段の生活も、漫画のような感じですか? それとも実はテキパキしているとか?

木下:どうでしょう?

ばなな:重箱の隅をつつくように色々と考えちゃうとか、掃除しはじめたら止まらないとか……。

木下:基本はのんびりしていると思います。自分ではあんまりぼんやりしたくないなと思ってはいるのですが、実際は言われたことを全然覚えていなかったりとか……。

ばなな:じゃあ、キリキリした人が息抜きをしたくてこういう世界を描いているのではなくて、やっぱりこのような考え方で毎日生きているんですね。

木下:そうかもしれないですね。あと、サラリーマン体質があるというか。

ばなな:それ、どんな体質ですか!? 思わず突っ込んでしまった……(笑)。

よしもとばなな

木下:漫画家の仕事って基本自由じゃないですか。時間をどう使ってもいい職業なのに、朝から仕事をして、お昼は12時に食べて、少し休憩をして、また働いて、日曜日は休み、みたいに、きっちりした生活をしてます。そのほうが暮らしやすいんです。

ばなな:それ、荒木(飛呂彦)先生も仰っていましたよ。そうしないと長い連載はできないんですって。漫画家としては合っているんじゃないですか?

木下:そうですかぁ……。それに、怒られるのがすごく嫌なんですね。

ばなな:担当さんが怒るんですか?

木下:担当さんは怒らないんですけど(笑)。毎日ちゃんとやって、遅れを出さないようにしなくてはという思いがすごく強くて。怒られたくないという思いが原動力ですね。

木下晋也

ばなな:(笑)。奥さまは怒らないタイプですか?

木下:怒らないですね。

ばなな:じゃあ、周りの人が全員怒らない世界にいるんですね! ちなみに、実際、お勤めをしたことはあるんですか?

木下:ないですね。

ばなな:……それなのにサラリーマン体質って言ったんですね(笑)。

 

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