アートになった「快感のオブジェ」TENGA展レポート

「オナニーに革命を」をキャッチフレーズに、アダルトグッズ界に旋風を巻き起こし続けている「TENGA」。8月5日〜7日に、新製品「TENGA 3D」をテーマにしたアート展『TENGA展 〜TENGA 3D MUSEUM OF ART〜』が原宿で開催され、写真家の荒木経惟さんらが作品を出品して話題になった。「なぜ、TENGAがアート展を?」と思うかもしれないが、TENGA 3Dは保管する際の外観にもこだわった「快感のオブジェ」として、荒木さんも「アートそのものだろ!」と太鼓判を押すほどの造形美を誇る商品。TENGAをモチーフにしたアート展が開かれたのは、ある意味自然な成り行きだったのかもしれない。ということで、今回は開催に先立って行われたオープニングセレモニーに参加し、TENGA 3Dが持つアート性について探ってみた。

「内側は外観である」という発想の転換

まず、TENGAについての基礎知識から。詳しい使用方法は割愛するが、TENGAは男性がマスターベーションの際に用いる商品で、いわゆる「オナホール」の一種。世界40か国以上で、年間100万個以上の売り上げがあるそうだ。

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TENGA 3D ※クリックで拡大

今回発売された新作のTENGA 3Dは、使用後に洗い、裏返して乾かすという一連の流れを念頭に置いたうえで、「保管中も楽しめるように」と内側部分に美しい造形をほどこした商品。松本光一社長がオープニングセレモニーで、「『これまで内部形状だった内側はむしろ外観である』という発想の転換は、TENGA 3Dに美しい彫刻のような外観をもたらしました」と話したように、アダルトグッズをアート作品の域まで高めた意欲作だ。

ちなみにTENGA 3D には「スパイラル」、「モジュール」、「ゼン」、「ポリゴン」、「パイル」の5種類があり、形状によって「使用感」が違うそう。当然、使用感には個人差があるうえ、文章で表現することが難しいセンシティブな問題も含まれているので、こればかりは「実際に購入して試して下さい」としか言えそうにない。

オープニングセレモニーでは荒木さんのほか、出品アーティストである美術家の椿昇さん、映像ディレクターでOff-Nibroll主宰の高橋啓祐さん、フラワーデザイナーの角浩之さんがステージ上に登壇。松本社長からTENGA 3Dが贈呈され、ご満悦の表情でマスコミによる写真撮影に応えた。

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左から、高橋啓祐、角浩之、松本社長、椿昇、荒木経惟 ※クリックで拡大

「TENGAはアートそのもの」の真意

それでは、いよいよ具体的に出品作品を見ていこう。まずは、荒木さんによる写真作品から。

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※クリックで拡大

被写体になったのはコラムニストの辛酸なめ子さんやヨーガ講師の千葉麗子さん、漫画家の内田春菊さん、美術家のヴィヴィアン佐藤さん、ダンサーの伊藤キムさんの5人。

辛酸さんは撮影のためスタジオ入りした際に、置いてあったTENGAをおしぼりと間違えたエピソードを取材陣に披露。男性を虜にするアダルトグッズとしての機能だけではなく、造形美を兼ね備えたTENGA 3Dに対しては「女性にとっては手強いライバル」と警戒心をあらわにしていた。

また千葉さんは「息子が小学校6年生で、性に目覚めてくる時期なのでTENGAにとても興味があります。使わせないですけど」と笑顔。

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左から、辛酸なめ子、千葉麗子、荒木経惟 ※クリックで拡大

セレモニーの壇上でTENGA 3Dを「アートそのもの」と評価した荒木さんに、懇親会でその真意を尋ねると、以下のようなコメントが返ってきた。

「人間は『俗』から離れて生きたら駄目なんだよ。最近はコンセプトとか観念とか言い過ぎているけど、アートというものは本来、人間っぽさを引き出すものでなくてはいけないと思うんだ。そういう意味ではアートそのものだろう? テンガは」(荒木さん)

確かに、TENGAは「俗」っぽさと「美」が結びついた存在であり、そこに荒木さんはアートを見出したのだろう。アラーキーならではの視点に感銘を受けつつ、続いて美術家の椿昇さんにお話を伺った。

「原子力はオナニー」 TENGAを燃料棒に見立てた衝撃作

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椿昇 ※クリックで拡大

『RADIKAL AQUA 2011_02』と題された椿さんの作品は、アクリル板のなかに原子炉の燃料棒に見立てた無数のTENGAを配した問題作だ。

椿さんは福島第一原子力発電所の事故を引き合いに出し、「原子炉の燃料棒は男根の象徴。原子力村という男性社会のオナニーが事故を招いたと思っています」とキッパリ。

「この作品のTENGAは燃料棒でもあるし、制御棒でもあります。我々はこの事故を受け、制御する方にも動けるし、見過ごす方にも動ける。まさに今、日本人の知性が試されているといえるでしょう。しかし、私は悲観していません。日本人には良い方向に反転させる力があると信じています」と思いを語ってくれた。

原発事故はいまだ収束の目途が立っておらず、先の見えない不安が世界中を覆っている。椿さんは事故後、アーティストとして原子力の暴走を防げなかったことを悔やんだといい、「その反省を忘れてはならない」という思いで、原発に関する作品を展開していこうと決意したそう。ソウルでも原発に関する作品を発表したとのことだった。

「今の時代に、この作品を残しておきたかったという思いがありました。TENGAはアートとしてのクオリティを保つレベルに至っている商品だと感じています」(椿さん)

荒木さんは「俗」と見立てたのに対して、椿さんは「人間のエゴ」という解釈をTENGAに付加し、アート性や社会性を浮き彫りにしたと言える。原子力を「絶対に安全」と吹聴し、あたかも自分たちで制御できるかのような驕りから事故を引き起こしてしまった「原子力村」に象徴される日本社会。快楽を享受したいという「欲望」と「オナニー」を交差させた椿さんの作品は、会場内でも一際大きなインパクトを持って迎えられていた。

作家にインスピレーションを与えるTENGAのアート性

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高橋啓祐 ※クリックで拡大

高橋啓祐さんの作品は、マンションの一室を撮影した写真をベースにし、窓やテレビを通じて違う空間へと画面が展開されていく映像作品。TENGAは「オナニーに革命を」と掲げ、既成概念にとらわれない商品展開を行っているが、そこにヒントを得た高橋さんが、「閉ざされたプライベートな空間が開かれていく」様子を表現した作品となっている。

また、映像中にTENGAの上を飛び跳ねるチアリーダーが登場することについては、「TENGAの柔らかい触感とエロティックさを伝えたかった」とのこと。


アートになった「快感のオブジェ」TENGA展レポート
角浩之 ※クリックで拡大

『葉脈の熱(いき)り』と題したフラワーアートを制作した角浩之さんは、「まずは、TENGAのフォルムを忠実に再現することを心掛けました。さらに熱(いき)り立つような植物の息吹を荒々しく表現できたらと思い、わざと組み合わせが気持ち悪い色の花を採用したんです」と説明。

「植物は変な樹液が出たり、葉脈が血管みたいだったりと、もともといやらしいもの。TENGA展のお話を頂いたとき、すぐにインスピレーションが湧いてきました」(角さん)

TENGAと言えば快楽を得るだけの道具だと思われがちだが、さまざまな解釈が可能な「アート性」を兼ね備えていることに驚きを感じた方も多いのではないだろうか。願わくは、女性アーティストの目線も加えることによってTENGAの持つ「男性性」について違った視点から掘り下げてほしいと、勝手に次回への期待を妄想せずにはいられないほど刺激的な企画展だった。

今後も、何かと話題を振りまいてくれそうなTENGA。アダルトグッズとしてはもちろん、「アート作品」としてのTENGAにも、この展示レポートをきっかけに、より一層注目してみてはいかがだろうか。

information

『TENGA展 〜TENGA 3D MUSEUM OF ART〜』
※すでに終了しているイベントです

2011年8月5日(金)〜8月7日(日)
会場:東京都 原宿 b6 JINGUMAE STUDIO

出展作家:
荒木経惟
高橋啓祐
椿昇
角浩之
料金:無料

TENGA 3D MUSEUM OF ART
TENGA展|TENGA 3D MUSEUM OF ART
TENGA(テンガ) オフィシャルサイト



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