『ふたりで描く、ひとつの絵』

『ふたりで描く、ひとつの絵 〜三尾あすか・あづち姉妹がひとりの「アーティスト」になるとき〜』 第5話:「突然の、告白。そして連載終了へ」

三尾あすか・あづちの作品

新たなる「あすあづワールド」到来のために

三尾あすか・あづちの作品ここまで話を聞いていて、僕の心にきざした感情とはなにか。それは寂しさ、と呼べるものだった。ふたりによる合作という形式は、今後なくなっていってしまうのだろうか。連載が始まったときに掲げたテーマは「ふたりによる創作は可能か?」というものだった。世の中に、ペアで仕事をするような人々はゴマンといるかもしれないが、彼女たちのように、ほとんど一心同体のような形で創作をしているアーティストは稀だし、その結果生まれた作品こそが、彼女たちらしさだと考えていたからだ。個々の作品も良いのだが、彼女たちの得体のしれないポテンシャルのようなものは、やはり合作にこそ現れていると感じていたのに。

三尾あすか・あづちの作品ただ、こうも考えることができる。再びふたりでの活動を再開したいからこそ、いったん個々の制作に専念し、ふたりで描く意味を自身に問いかける時間が必要なのだと。そもそも合作じたい、彼女たちが自発的に始めたというよりは助言を受けて始めたものなので、ともするとふたりで描く意味を見失いがちなのかもしれない。いまはまだ、ふたりで描く楽しさを少しずつ知り始めている段階で、本当の充実感を味わうための模索段階のようだ。今後、個人の作品をレベルアップさせて自信をつけたうえで、ふたりで描く意味についてしっかりと考え進めてくれることを期待したい。

三尾あすか・あづちの作品

では最後に、今後のふたりの行く末について少し考えてみたいと思う。ふたりの姉妹展では、一貫してこのようなステートメントが提示されていた。「生きるコトは感じるコト。感じるコトはイキテル証。その痛みや苦しみ、楽しさや嬉しさを…私たちはそんな毎日を描きとめて生きたい」。彼女たちが日々を生き、その皮膚で直接感じた「キモチ」を絵に定着させること…それこそ、ふたりにとって変わることなく、絵を通して表現したいことだ。これからさらに力を付け、こうした誰もが感じる日常的な感情をより正確に、より強烈に封じ込めることができれば、ふたりの絵はさらに観る人の共感を呼び、背中を後押しするような肯定的な力を持ったものになるだろう。

三尾あすか・あづちの作品

現在の彼女たちの状態は、これからの可能性を考えれば、まださなぎの状態なのかもしれない。それは、本人たちが一番深く知り抜いていることだろう。この連載はここでいったん幕を閉じるが、彼女たちがさらに力のある作品を引っさげて、再び誌上に登場してきてくれることを期待したいと思っている。

11月末には、一連の双子展をしめくくる展示が、韓国はソウルにて行われる予定だ。彼女たちは今後、どんな舞台でどのような刺激を受け、さらに先へ行ったモチーフを僕たちの目の前に広げて見せてくれるのか。 これまでより一層、感性が爆発したあすあづワールドの降臨を、心から楽しみにしていたいと思う。

三尾あすか・あづち 第一章・完

doorsアートフェア2011/ IMPERIAL PALACE HOTEL
2011年11月25日(金)〜27日(日)
時間:11:00-20:00
会場:IMPERIAL PALACE HOTEL 8階(韓国 / ソウル)
韓国の次世代ギャラリーが高級ホテルに集うアートフェア。高級ホテルのワンフロアを使用して開催される「doors」は、今後の展開が期待されるフェアの一つ。
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シブヤスタイル vol.5
2011年11月29日(火)〜12月11日(日)
会場:西武渋谷店・B館8階美術画廊 西武渋谷店恒例の若手気鋭作家を集めたグループ展も今年で5回目。あすあづは二人それぞれの作品を出展し挑む。来年への予兆となるであろう、「あすか」「あづち」それぞれの確かな一歩を見届けたい。
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ASUAZU FINAL EXHIBITION 2011
2011年12月1日(木)〜31日(土)
会場:京都府 藤井大丸7階 くちばしニュートロン
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第1回 Kawaii+大賞展
2012年3月20日(火・祝) 〜25日(日)  会 場 : スパイラルガーデン
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