映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

「映像を○る」の「○」部分に何か入れるなら、どんな一語を選びますか? 一番多そうなのは「見る」? でも現在、私たちは膨大な映像を「浴びる」なか、YouTubeで映像を「掘る」「上げる」ことをしてみたり、PCやスマフォ上のAR(拡張現実)で仮想の物体を「まさぐる」など、より多面的な映像体験を生きてもいます。いっぽう、映像が放つ非日常性も、いまなお健在。空間いっぱいに広がる映像や予測不能なインタラクティブアートの体験は、サーカスのテントに足を踏み入れる感覚にも似ています。そして、道化師に促され舞台に上がった観衆は、主役へと変身…? そんな楽しさを映像作品で与えてくれるのが、SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアムで2012年4月8日まで開催中の『ビジュアル・サーカス』。今回は、ガーリーロックのニューフェース、bómiさんと会場を訪問。映像をカラダで感じてきました!

テキスト:内田伸一 撮影:菱沼勇夫

bómi
ハロー まいどー アニョハセヨ〜。1987年、アメリカ生まれ、大阪育ちのK系ガール。早大中退。デモ音源をMySpaceにて公開したところわずか1年間で10万アクセスを突破し話題に。2011年、新鋭プロデューサー"wtf"と出会い、bómi始動。両者の起こす超キケンな化学反応は、ただの「はなうた」をブッ飛びのロックンロールに昇華させる。2011年7月6日にはTOWER RECORDS限定ミニアルバム『Gyao!Gyappy!!Gyapping!!!』をリリース。2012年2月8日にはTOWER RECORDS限定ミニアルバム『OH MY POOKY!!!』をリリースし、2月10日(金)にリリースパーティーを渋谷CHELSEA HOTELで開催。ガーリーロックのニューフェイスに要注目!

bómi公式サイト

AR三兄弟:猛獣から忍法まで登場させつつ、現代社会を考える

会場に入ると、そのすぐ近くでスポットライトを浴びているのは、キャンバスに描かれた一羽の鳥。某短文投稿サービスのシンボルマークを連想させるかわいい出で立ちですが、bómiさんが近づくと…。「うわっ、飛んでった!? …そんで戻ってきたッ!!」。キャンバスから鳥が飛び出し上空へ。しばらく「クルック〜、クルック〜…」と鳴きながら壁面を飛び回り、bómiさんが離れるとまた、キャンバスの中へと舞い戻りました。

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

この作品はAR三兄弟の『キャンバスから、鳩』。そのまんまと言えばそのまんま(!)なタイトルですが、添えられたメッセージは意味深です。「人は何かしらの根拠があって、はじめて想像をはたらかせることができます。何を根拠に何を想像するのか? それを考えることと僕らの創作過程は少し似ています」。

「根拠」に忠実に基づいた表現と、それを逆手にとった表現、いずれにもまず私たちの側に「こうなのだろう」という認識がある。当たり前だけど忘れがちなそのことを、シンプルかつ楽しい形で再考させる作品です。ちなみに、とぼけた「クルック〜」の鳴き声は、作者・AR三兄弟の「長男」こと川田十夢さん自ら担当とのこと。作品も活動もユーモラスな彼ららしいですね。実は会場のどこかで、マイクに向かって終日スタンバイしてるのかも? といった妄想も湧いてくるほど。

対照的に、続くAR三兄弟の『音響のサーカス』は何もない真っ白な空間。bómiさんが説明に従って部屋の真ん中で耳に手を当てると…。「パオ〜ン」「ガォ〜ッ」という雄叫びとともに、左右の壁に巨象とライオンのシルエットが出現しました。さらに、耳を右に、左に向けるとそれぞれ象とライオンが出たり消えたり。観賞者の動きに対応しているようです。それに気づいたbómiさん、左右に身体を振って2頭を呼び出し、操ります。さながら美しき猛獣使い?

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

さらにAR三兄弟の『幻と影』を体験しましょう。ここでは、正面の壁が大鏡のように会場を映し出します。指定位置に立つbómiさん。彼女の姿が鏡の映像にも登場しますが、両手を上げた一瞬ののち、その身体は無数の木の葉と化して吹き散り、消えてしまいます! 猛獣使いから、くノ一に転身したbómiさん、さまざまな面白ポーズでこの「葉隠れの術」的な体験を楽しみました。

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

この作品は、影、幻といったものから、メールの言葉、ダウンロードした音楽などデジタル社会ならではの要素まで、簡単に消したり呼び戻したりできるものが本来どこに宿っており、何によって生まれるのかといったことを考えさせてもくれます。

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

内田伸一

1971年生まれ。ライター、編集者。『キャプテン翼』命なのに卓球部の中学生、The Clashに心酔するも事なかれ主義の高校生、心理学専攻のモラトリアム大学生として成長し、初対面が苦手な編集者として『A』、『Dazed & Confused Japan』、『REALTOKYO』、『ART iT』などに参加。矛盾こそが人生哉。



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