映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

テキスト:内田伸一 撮影:菱沼勇夫

観衆それぞれが生身のカラダで楽しむ「映像のサーカス」

作品体験の後、映像ミュージアムの澤柳英行ディレクターにお話をうかがいました。同展が生まれたきっかけは?

「映像と身体の関係について改めて考え、感じる展覧会をつくりたい想いがまずありました。というのは、近年映像をとりまく環境が急速に進化・普及するなか、ともすれば映像が映像だけで完結しがちな状況も感じるからです。例えばネット上でやりとりされるメッセージなども、便利だけどそういった側面がありますよね。そうした中で、映像と身体性の関係を考えるきっかけになる表現を、3組のアーティストに出展してもらいました」

このコンセプトは、それをまさに身体で実感したbómiさんにもダイレクトに伝わっていたようです。

「アートが持つメッセージや問題提起って、けっこう難しくて分かりにくいものも多いと思うんです。でも今日の作品はどれも身体から入っていくからすごく感じやすかったし、何より楽しい! 今日も私がライオン呼び出してる隣で(笑)、小さい男の子が明和電機さんのステージに立って喜んでましたよね。あと、添えてあるメッセージやキャプションも易しい言葉で書いてあるけど、深い。私は特にoff-Nibrollさんの『a world』にグッときました。人が生きてく中では、つい目の前しか見なくなっちゃうけれど、実際はひとり1人が動いていて、中にはぶつかったり、蹴飛ばしてるような人もいて(笑)。そういう全体が世界になっているのを感じます」

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

時間という概念の中にある「大きな流れ」を想起させる点で、この作品は本展の象徴的な存在と言えるかもしれません。いっぽうで、観衆が自らパフォーマンスする体験型の作品も特徴的でした。bómiさんも鳩を追いかけたり、石を持ち上げたりと大活躍。そんなユニークな展覧会のスタイルにも、澤柳さんの意図があります。

「指先のクリックだけじゃなく、みなさんがパフォーマーとして関わっていく。そのことで、平面主体の映像世界に身体的にリンクしていくことも狙いでした。さらにタイトルにもありますが、映像による『サーカス』のような非日常性を体験してほしい。『音響のサーカス』のような作品では、あたかも魔法を使うかのような感覚もあります」

『音響のサーカス』/2011 『音響のサーカス』/2011

日常と非日常、そして身体と映像。互いを映し出す鏡のような存在にもなる両者がかかわり、リンクし合う中にこそ、2010年代ならではの現実世界が見えてきそうです。そしてそれは、『a world』の世界地図が実はひとり1人の歩みを映してもいるように、個々の営みの連続でもあります。映像の歴史を紹介する同ミュージアムの常設展のすぐ上でこの展覧会が開かれているのも、そう考えると象徴的です。サーカスのテントから外に出たとき、そこにはまた新しい景色が広がっているかもしれません。

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

なお、同展の実現をきっかけに、映像ミュージアムにAR三兄弟の『AR BOX』が常設作品として収蔵されました。カメラに向かってメッセージを録画し、どこからでもPCで再生できるAR(拡張現実)メッセージカードがつくれる「おれおれAR」などを楽しめます。しっかり者のbómiさんは、最新ミニアルバムの告知メッセージをつくってお持ち帰り。みなさんも、来場時のお土産としてつくってみると、きっと楽しいですよ。

映像表現の「奥行き」をカラダで感じる『ビジュアル・サーカス』

『ビジュアル・サーカス』

2011年12月17日(土)〜2012年4月8日(日)
会場:埼玉県 川口市 SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム
時間:9:30〜17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌平日)、3月21日?23日
出展作家:
明和電機
AR三兄弟
off-Nibroll
料金:大人500円 小中学生250円(常設展示、関連イベントも観覧可)

『スペシャルパフォーマンス Vol.2』

2012年2月12日(日)15:00〜
会場:埼玉県 川口市 SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム
出演:off-Nibroll(小山衣美、絹川明奈)
定員:90名(当日先着順)

『スペシャルパフォーマンス Vol.3』
2012年3月25日(日)15:00〜
会場:埼玉県 川口市 SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム
出演:明和電機
定員:90名(当日先着順)

『ミニパフォーマンス』
会期中の毎週水、土、日曜、祝日 13:30〜、15:30〜
休演:2月12日、3月25日
※アーティスト本人の出演はなし

『特別ワークショップ』
2012年3月11日(日)13:00〜16:00
出演:AR三兄弟
定員:10〜15名(いずれも事前申込必須)

『アーティストトーク』
2012年3月4日(日)14:00〜16:00
会場:埼玉県 川口市 SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ1F HDスタジオ
出演:
AR三兄弟
off-Nibroll
明和電機
定員:100名(当日先着順)

映像ミュージアム企画展「ビジュアル・サーカス」|映像ミュージアム|イベント|SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ
http://www.skipcity.jp/event/vm/1111081.html

内田伸一

1971年生まれ。ライター、編集者。『キャプテン翼』命なのに卓球部の中学生、The Clashに心酔するも事なかれ主義の高校生、心理学専攻のモラトリアム大学生として成長し、初対面が苦手な編集者として『A』、『Dazed & Confused Japan』、『REALTOKYO』、『ART iT』などに参加。矛盾こそが人生哉。



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