シンガポールの歴史を感じるリノベーションホテル5選

シンガポールのホテルの代表格といえば『マリーナベイ・サンズ』。確かにあの屋上プールは一度は味わってみたいものです。でもシンガポールのホテルは『マリーナベイ・サンズ』だけではありません。東京23区とほぼ同じ大きさしかない国土に年間1,000万人以上の海外旅行者が訪れるシンガポールは、実はホテル大国とも言われています。今回は数あるホテルから「シンガポールの歴史を味わう旧建築リノベーションホテル」という観点から5つのホテルを紹介します。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

Amoy by Far East Hospitality

19世紀初頭、中国大陸からシンガポールに移住した人々が使用していた方言である「福建語(AMOY))に由来する名を持つホテルが『Amoy by Far East Hospitality』。

その名の通りホテルの近隣は中国からシンガポールを目指した移民の上陸拠点だったそう。そんな当時の歴史を現在に伝えるのが、ホテルの敷地内にある旧Fuk Tai Chi寺院。中国大陸から移民した人々によって、1820年から建立されたシンガポール最古の中国寺院で、遥かな海上の旅を終えた人々が航海の無事の感謝を捧げる目的で建立したといわれています。

現在は既に寺院機能はなくなっていますが、建物はそのまま残っており、改修を経てホテルの入口として利用されています。ミュージアムとしても無料で一般公開されているので、ホテルの宿泊客でなくても観覧することが可能です。もちろんホテル自体も当時のショップハウス(シンガポールやマレーシアに特徴的な建築様式。1階が店舗、2階以上が居住空間として利用されている)を改装した趣のある建物で、小規模ホテルならではのパーソナライズされたサービスに定評があります。

ホテル周辺はショップハウスの保存地域となっており、ローカルなカフェからモダンなバーまで多くの飲食店で賑わうエリア。ショップハウスで南国独特の甘いコーヒーを飲みながらシンガポール勃興の時代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

Amoy by Far East Hospitality
住所:76 Telok Ayer Street, Singapore 048464
電話番号:+65 6580 2888

Lai Chun Yuen

『Amoy by Far East Hospitality』から西に少し歩くとそこはもうチャイナタウン。このエリアも古くからの建築物が数多く残されています。その中でもひと際目を引くのが『Lai Chun Yuen』。1887年築の中国の伝統的な古典演劇である京劇の劇場をリノベーションしたホテルです。

ホテル所在地であるSmith Streetも当時は劇場通り(Theatre Street)の名称で親しまれていたそう。その後、京劇の人気に陰りが見えてきた1927年に新たな娯楽として人気を博していた映画館に転用されました。

その後、第二次世界大戦では建物の一部が爆撃の被害に遭うなどしながらも、地域のアイコンとして大切に保存されてきて、2011年に大改装を経て現在のホテルに生まれ変われました。賑やかなチャイナタウンから一歩ホテルに足を踏み入れるとそこは別世界。時空を超えて19世紀の京劇舞台に迷い込んだかのような劇場建築です。

黒、白、赤を基調としたホテルの内装デザインは京劇の色彩からインスパイアを得たそう。部屋の名称も、漢学者(scholar)の部屋、戦士(warrior)の部屋、君主(Majesty)の部屋など、京劇の主要キャラクターから採用しています。ただし古い建物なので窓が無い部屋もありますので、せっかく泊まるならチャイナタウンを見下ろす木製バルコニー付きの部屋がオススメです。

Lai Chun Yuen
住所:25 Trengganu Street, Singapore 058476

Hotel Fort Canning

『Hotel Fort Canning』は「Fort Canning Park(旧Fort Canning Hill)」に建つ、眺めの良いオシャレなホテル。

シンガポールの中心市街地を一望するこの丘は、14世紀以来マレーシア系王朝の領地として管理され「Bukit Larangan(マレー語で禁断の丘)」と呼ばれ神聖視されてきました。その後、1819年にシンガポールに上陸してイギリスの植民地としたスタンフォード・ラッフルズ卿がこの丘に居を構えるようになってからは「Government Hill(政府の丘)」と呼ばれるようになります。さらに1859年以降、現在の名称に繋がる「Fort Canning Hill(要塞の丘)」が定着し、1981年に「Fort Canning Park」に改称されてからは、緑が生い茂る市民憩いの公園として親しまれています。そんな歴史ある丘に2010年に開業したのが『Hotel Fort Canning』です。

1926年築のイギリス軍司令部をリノベーションしたネオ・クラシカル様式の建築物は今見ても荘厳な佇まい。現在ホテルのメイン玄関として使われている旧馬車門(porte-cochere)や外壁を囲むヴェランダに施された細やかなモチーフが当時の威容を現在に継承しています。

ホテルの目の前の公園にはたくさんの史跡が点在しています。第2次世界大戦中、日本軍の侵攻を受けてイギリス軍がシンガポール撤退を決議した地下シェルター、現在は博物館として利用しされているBattle Boxもその1つです。そのまま少し足を延ばせばシンガポール国立博物館やシンガポール美術館も徒歩圏内です。

Hotel Fort Canning
住所:11 Canning Walk Singapore 178881
電話番号:+65 6559 6795
URL:http://www.hfcsingapore.com/

New Majestic Hotel

『Lai Chun Yuen』からもほど近いチャイナタウンの外れ、Bukit Pasoh Road沿いに、1928年建設のショップハウスを改装して2006年にオープンしたのが『New Majestic Hotel』。歴史ある建築物に現代的なデザインを掛け合わせたユニークなホテルを複数展開するシンガポールの不動産企業Unlisted Collectionが手掛けるホテルです。

1900年代初頭、中華系社交界の華やかなサロンが立ち並んでいたこの通りには、同時に有力者たちの愛人達(Mistress)も多く暮らしており、ここはMistress Streetという愛称で親しまれていたそう。こうした歴史的背景を踏まえて「社交界デビューを目指す野心的な若い女性」という架空の物語がホテルのデザイン・コンセプトとして取り入れられています。例えば1階ロビーから2階のプール、さらに上層階の豪華なゲスト・ルームへと続く彫刻のように優雅な階段は、華やかな社交界への憧れを象徴してように言われています。

約100年前のストーリーと、デザインの力で新たな息吹をもたらす、斬新なリノベーションホテルです。

New Majestic Hotel
住所:31–37 Bukit Pasoh Road Singapore 089845
電話番号:+65 6511 4700
URL:http://www.newmajestichotel.com/undefined

WANDERLUST

続いてリトル・インディアの建築保存地区にあるホテルが『WANDERLUST』。こちらもUnlisted Collectionが手掛けるホテルです。

1920年築の4F建てアールデコ建築物は、かつて小学校でした。ファサードを飾るカラフルな色付きタイルやステンドグラスの飾り窓が小学校時代の面影を伝えています。1Fのカラフルなセラミック・タイルや階段の木製手すりや大理石の床など、建物内にも当時の名残がうまく活かされています。

ローカル・クリエイターとのコラボレーションを積極的に打ち出すUnlisted Collectionのホテルはどこを切り取ってもデザインの遊びに満ちています。先ほど紹介した『New Majestic Hotel』とこの『WANDERLUST』には、同じ部屋が一つもありません。シンガポール人の新進アーティストの書き下ろし作品を楽しめる部屋や、ファッション・デザイナーが監修した部屋、有名楽曲にオマージュを捧げている部屋など、どの部屋を選んでもユニークな空間を楽しめます。

WANDERLUST
住所:2 Dickson Road Singapore 209494
電話番号:+65 6396 3322
URL:http://wanderlusthotel.com/


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