『Culture & Art Book Fair in Taipei』の来場者に聞いた、台北で盛り上がる独立系出版カルチャーのリアル

2017年4月に台北で行われた『Culture & Art Book Fair in Taipei』は、入場するのにも数時間かかるほどの大盛況だった。この時、多くの台北人が初めて台湾でこんなにもZineやアートブックカルチャー盛り上がっていることを知ったそうだ。そんな『Culture & Art Book Fair in Taipei』が再び12月9日・12月10日、華山1914文創園区で開催された。合計55ブースが出店したイベント会場で、現在の台北の来場者の声からリアルな独立系出版(インディペンデントな小規模出版)の盛り上がりの現状を探ってみた。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

“温かみや人間味があるリトルプレスが求められている” 戎捷(ジェユン):35歳・UIデザイナー

Q1. 今日、何を購入しましたか?

戎捷(ジェユン):迪化街にあるライフスタイルショップ『A Design & Life Project』が発行したポスター。何枚ものポスターが新聞紙のように綴られています。見た目がいいので、家に貼りたいです。

Q2. 今のインデペンデント出版文化の盛り上がりを見て、何を感じますか?

戎捷:台北の人は人生の中にある問題が多すぎて、みんな疲れているのかなと感じます。だから温かみや人間味があるリトルプレスが求められているのかな。

Q3. 普段、休日はどんなことをして過ごしますか?

戎捷:家でゆっくりと過ごすことが多いですね。もしくは雑貨や家具を探しに街をブラブラします。

Q4. どんな事にお金を使いますか?

戎捷:雑貨と洋服です。

Q5. あなたの夢は何ですか?

戎捷:ハワイに住むことかな。

“色んな人が自由に来て交流できる「場」を作りたい” Sherry:24歳・アパレル販売員、Jenny:24歳・サービス業

Q1. 今日、何を購入しましたか?

Sherry(写真左):台中のインデペンデント書店『佔空間Artqpie』が刊行した『森林別冊』というZineを買いました。毎ページに、AからZまでのアルファベット文字とイラストが描いてあり、可愛いなと思って。

Jenny(写真右):私は『+10 テンモア 台湾うまれ、小さな靴下の大きな世界』という本を買いました。もともと台湾で創立された靴下ブランド『+10 テンモア』のファンだったので。今日偶然、会場で日本の出版社が『+10 テンモア』の本を販売しているのを見て、日本人が台湾のブランドをどう紹介しているのか知りたくなりました。

Q2. 今のインデペンデント出版文化の盛り上がりを見て、何を感じますか?

Sherry:ここ数年、Zineを作る人も買う人も増えてきたと思います。また出版社ではない、カフェやアパレルショップ、雑貨店が作るZineが面白いとも思う。

Jenny:インデペンデント出版も、読者を意識したZineづくりを始めていると感じます。

Q3. 普段、休日はどんなことをして過ごしますか?

Sherry:ブラブラと街をあてもなく歩くのが好き。

Jenny:天気が良かったらとにかく外に出ます。

Q4. どんな事にお金を使いますか?

Sherry:書籍をよく買いますね。特に、インデペンデント出版社や個人が刊行しているZineは買うことが支援になると信じています。

Jenny:文房具や好きな雑誌を買うことが多いです。

Q5. あなたの夢は何ですか?

Sherry:私は自分が今住んでいる新北市に小さな店を開きたい。何を売るかはまだ決まっていないけど、色んな人が自由に来て交流できる「場」を作りたいんです。台湾の地方ではまだそのような「場」がないから。

Jenny:パタンナーになりたいです。

“本を買うことを我慢するのは本当に難しい” Celeste:26歳・Webデザイナー

Q1. 今日、何を購入しましたか?

Celeste:イラストユニット『ZZiFanz』のポストカードです。このポストカードはリソグラフという製法で作られているので、インクの質感を感じられるところが気に入っています。

Q2. 今のインデペンデント出版文化の盛り上がりを見て、何を感じますか?

Celeste:今の台北でのカルチャーの盛り上がりの一因には、日本人の影響があると私は思っています。ここ数年で、様々な日本人デザイナーやイラストレーターの展覧会が台湾で開催されていて、それを見た台湾人が刺激を受けて、行動を起こし始めたんじゃないかな。

Q3. 普段、休日はどんなことをして過ごしますか?

Celeste:面白そうな展示会やイベントを見つけたら、できる限り見に行くようにしています。

Q4. どんな事にお金を使いますか?

Celeste:本を買うことかな。それを我慢するのは本当に難しい。特に写真集は少し値段が高いのですが、ついつい購入してしまいます。

Q5. あなたの夢は何ですか?

Celeste:大切な人と、好きな場所で何かを始めたい。たぶんロンドン、東京、サンフランシスコのどこかで。

“中国語圏のカルチャーを世界に広める先駆者になりたい” 曾榆皓(ホエユハオ):23歳・フリーランスライター、Annie:22歳・編集者

Q1. 今日、何を購入しましたか?

曾(写真左):『Buoy』という雑誌を買いました。内容は今台湾でも再注目されているエリアである『西門』や『大稻埕』の特集で、編集者の熱意やセンスを感じました。

Annie:私も『Buoy』を購入しました。私が選んだのは「個性ある女性」という特集号です。

Q2. 今のインデペンデント出版文化の盛り上がりを見て、何を感じますか?

曾:台北に住む人達の興味が細分化してきていて、それに応える形でカルチャーの裾野が広がっていると思います。

Annie:突然人気が出たかのようにみえるかもしれないけれど、この盛り上がりは、昔から黙々とZineを作り続けた人たちがいるお陰だと思います。でもまだ層は限られていて、一般化しているとは言えないですね。

Q3. 普段、休日はどんなことをして過ごしますか?

曾:ライブを観に行ったり、映画を観て過ごします。

Annie:カフェに行くことが多いです。ゆっくりコーヒーを楽しみたいんだけど、仕事をしていることが多いです。

Q4. どんな事にお金を使いますか?

曾:好きなアーティストのライブを見に行くこと。

Annie:コーヒーやカフェ巡り。

Q5. あなたの夢は何ですか?

曾:中国語圏の音楽や文化を世界に広める先駆者になりたい。

Annie:猫と柴犬を同時に飼いたいです。

“自分が好きな生活スタイルを沢山の人と共有することが夢” 張芝伊(チャンズイ):36歳、フローリスト

Q1. 今日、何を購入しましたか?

張芝伊(チャンズイ):京都の文鳥社のブースで買った『100年後あなたもわたしもいない日に』です。本のタイトルそして装丁に惹かれて手に取りました。シンプルなイラストに短いフレーズが添えてあり、その言葉のひとつひとつに優しさを感じました。

Q2. 今のインデペンデント出版文化の盛り上がりを見て、何を感じますか?

張芝伊:このムーブメントは、台湾人の誰しもが心のなかに「独立思考」を持っていることを表していると思います。外からの圧力や環境に負けず、自分の考えを言いたいと思っている人が年々増えているのではないでしょうか。

Q3. 普段、休日はどんなことをして過ごしますか?

張芝伊:朝起きたらまず植物にお水をあげることから1日をスタートします。その後は、お花の市場『建国花市』に行きます。休日は仕事のためではなく、自分のために花を愛でてリフレッシュすることが多いです。

Q4. どんな事にお金を使いますか?

張芝伊:植物、本、あとはイヤリングをよく買います。

Q5. あなたの夢は何ですか?

張芝伊:フラワーアレンジメントのアトリエを作りたい。あとは多種多様なグリーンと一緒に過ごせるB&Bを経営してみたい。自分が好きな生活スタイルを沢山の人と共有することが夢です。

ムーブメントからカルチャーへ

本イベントは台湾で新しいライフスタイルを提案している富錦樹グループ(Fujin Tree Group)によるものである。以前、この富錦樹グループ・ジェネラルマネージャーの小路さんが言っていた「トレンドから文化へ落とし込むためにイベントを開催している」という言葉が、来場者へのインタビューを終えた私の頭によぎった。

台湾の人々は流行に敏感で熱しやすいが、冷めるのも早いと言われている。会場外で入場を待つ人々の行列を見ながらそんなことを考えてみた。このインデペンデント出版の隆盛も一過性のトレンドなのか? しかし今回のインタビューを通して、来場者の皆が同じ言葉を口にした。それは皆、「発信者になりたい」と。

ただ、ムーブメントに乗るだけではなく次のステップとして、自らが行動する者になりたいと、各々が話してくれたのが印象的であった。今、台北でインデペンデント出版の盛り上がりがれっきとした「カルチャー」であると断言するのは、少し早いかもしれない。だが、今たしかにその過程にある。次の『Culture & Art Book Fair in Taipei』どんな新しい発信者が現れるのか、今から楽しみだ。



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