かつての工業地帯が変化する、觀塘(クントン)。香港で次に来る注目のエリア紹介

香港・九龍島の中心街から少し東に外れたエリア、観塘(クントン / Kwun Ton)は、ご存知でしょうか? 観塘(クントン)エリアは、古くから工業地帯でしたが、近年再開発が進み、香港の若者に注目されはじめた場所で、いまローカルの人たちからも、香港の「次」にくるエリアとも呼ばれています。 しかし一般的には観光地ではないので、香港旅行に行った人でも、まだまだ知らない人が多いのでは? 今回は、そんな話題のエリア、観塘(クントン)の紹介です。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

古いビルが立ち並ぶ、工業地帯・観塘(クントン)エリアの再生

観塘(クントン)は、香港では古くから工業地帯として発展した場所でしたが、時代ともに産業の製造拠点が中国本土に移ってしまってからは、建物だけが残り、長らく発展しなかったエリア。

そんな工業ビルが立ち並び、観光資源がなかった観塘(クントン)に、駅直通の大型のショッピングモール『apm』が完成してから、徐々に人の流れが変わったといわれます。

九龍の活気あふれる繁華街エリア・旺角(モンコック)駅から、観塘(クントン)駅までは約20分で、そこまで都心からも離れていない立地と、安価な物価もその流れを後押しした理由の一つ。

リノベーションされた元工場、元倉庫などの大きなスペースには、若くてインディペンデントなスタートアップやギャラリー、デザイン事務所、セレクトショップ、カフェなどが集まり、このエリアに新たな風が押し寄せています。

面白いのは、古い倉庫や工場はそのままに、その建物の中に、まるで「スピークイージー(潜り酒場スタイル)」のように、スタイリッシュなショップがたくさん存在すること。

そんな観塘(クントン)エリアから、いくつかのお店を紹介します。

雑居ビルの3階に突如現わる、ローカルデザイナー達の挑戦の場『Looms』

観塘(クントン)の一角、ある種、殺風景な商業ビルの3階に上がると、急に雰囲気の違うスペースが現れます。ここは、セレクトショップ、カフェ、イベントスペースが併設されたクリエイティブスペース『Looms』。

ここのオーナーのJack Loは、祖父の代からアパレル業に携わる一家に生まれました。本人もアパレル企業でセールスを約20年経験した後から、Tシャツを中心としたストリートアパレルブランド「Tee Locker」を設立。2018年4月にさらなる発展を目指し、この複合スペース『Looms』をオープンしました。

『Looms』には、アパレルの販売スペースのほか、香港の若手デザイナーによるポップアップショップなどが開催されるイベントスペースや楽器を揃えたライブスペース、アイス炭酸コーヒーなど斬新なメニューを提供するカフェがあります。内装は、観塘(クントン)エリアの歴史を意識して工業風のコンクリートに、暖かみの感じる木製の家具を合わせたといいます。

Jack:『Looms』という店名には、私自身と家族の歴史を表した「織機」という意味があります。その一方で、人と人とのつながりによって、この場所でなにかが生まれ、文化を発展させていくようなお店になりたいという意味を込めているんです。

香港のような狭い都市では、何かをはじめようとしても、高い物価のためスペースの確保が一番の問題。だから若者たちがスペースの問題で足を引っ張られないように、この空間でさまざまな挑戦を後押しできたらいいなと思ってます。

ちなみにJackの妹は、カフェの経営とイベントプロデュースを担当しているとのこと。香港ローカルのデザイナーと企業をつなぐなど、Jackの思いを実現させるために、家族もサポートしています。

『Looms』による最近のプロダクトは、香港の大嶼山(ランタオ島)にある天然染工場とコラボした、100%香港産のオーガニックな布に手染めのTシャツ。こちらは、オリジナルプリントによるデザインも可能となっています。

Jack:私は、世界中の人々に香港のローカルデザイナーたちの素晴らしい仕事を見てほしいです。活気のあるクリエイティブ業界をつくるには、ミスすることを恐れない作り手たちのマインドが一番大切。だから私たちはそのような人たちを応援したいと思ってます。

店内にはそのほかにも、ユニークなおもちゃやアクセサリーなど、『Looms』には、丸一日宝探しをしても飽きないほど、個性的で面白いアイテムが並んでいます。

ファストファッションが流行り、AmazonなどのECサービスが主流となったいま、アパレルブランドを一から立ち上げ、続けていくることは決して簡単ではありません。しかし、新旧の文化が混ざり合う觀塘(クントン)に佇む『Looms』には、そこで成功を生み出すヒントがあるのかもしれません。

Looms
住所: 觀塘巧明街94-96號鴻圖中心3A
電話番号: 852-3584-7886
営業時間: 11:00〜19:00
定休日: 無休
最寄駅: 牛頭角駅

香港では考えられないショップの広さ。工場ビルのワンフロアで展開する複合施設『HOW』

次に紹介するのは、觀塘(クントン)エリアの盛り上がりを説明する上で、外せない複合施設『HOW』。ここでは、日本のインテリアやアパレル製品を取り扱い、カフェ、ヘアサロン、ワークショップスペースも併設します。

オーナーFungは、子どもの頃から日本のカルチャーに憧れていたといいます。デザイナーでもある彼は、デザイン性の高い日本のカルチャー、ライフスタイルを香港に紹介し、香港人の美的センスを磨きたいと力を入れてきました。

Fung:自分の家族を持つようになってから、次世代の子どもたちにより良い価値観や生活を受け継いでいきたいと意識するようになりました。私はもともとデザイナーとして、日本のデザインやカルチャーに影響を受けてきましたが、それだけでなく、実際に日本のプロダクトを香港の人たちに紹介する仕事がしたいと考えるようになったんです。

と話すFungが見つけた理想的な空間が、觀塘(クントン)の古い工業ビルをリノベーションしたこのスペース。ビルのワンフロアをまるごと使われるこのショップは、土地の狭い香港では成し得ないほどの広いスペースとなっており、その開放的な空間とセンスの良さで注目を集めました。

800㎡を超える広さの店内には、テラスをとおして自然光がたっぷりと入り、大都会のオアシスのような、オープンでリラックスできる空間を演出。

Fung:觀塘(クントン)は、近年再開発が進んだおかげで、元工場などの広いスペースを割安で借りることができ、われわれのような若い人たちにビジネスチャンスが生まれている面白いエリアだと思います。香港の中心部からそれほど遠くないにも関わらず、高級ブランド店があふれる他のエリアと比べると、より香港の新旧が感じられる独特なエリアだともいえるでしょう。

広々とした空間には、工業ビルだった頃の名残りを感じさせるコンクリートの床の上に、天然木材を中心としたインテリアをはじめ、質にこだわったデザインアイテムや工芸品が並びます。柔らかい木材とデザインアイテムが堅いコンクリートと混ざり合って、ちょっと不思議だけど、ホッとひと息つける安心の空間を生み出しています。

オープンして2年が経ったいまでは、ローカルのアパレルブランドやインテリアブランドも展示、販売。ヘアサロン『HOW+LIM(ハウプラスリム)』では、ファッションと美容技術に詳しい現地のスタイリストを揃えています。

またカフェ『HOW Food Factory』では、手づくりコーヒーとアジアンテイストにアレンジしたパスタ、ハンバーガーなどの軽食を提供。テラス席もあるので、屋外ランチや友人たちとのディナー、家族と一緒に過ごす休日などに最適なスポットです。

HOW
住所: 觀塘巧明街99號巧明工廠大廈3樓AB座
電話番号: 852-2805-1708
営業時間: 月曜〜土曜 12:00〜22:00 日曜と祝日 12:00〜18:30
定休日: 無休
最寄駅: 觀塘駅
URL:http://www.how-dept.com/
Facebook:https://www.facebook.com/howdept/

香港からアジアのアートシーンをリードする『Osage Gallery』

2004年に巨大な倉庫をリノベーションしてオープンした『Osage Gallery』は、アジアのアート業界で名の知られたギャラリーで、シンガポール、北京、上海、フィリピンにも拠点があります。香港の若手アーティストを育てるだけでなく、絵描き教室を開催するなど、子どもへのアート教育にも力を入れています。

1,300㎡を超えるスペースには2つのテラスがあり、大規模なアートイベントを開催することも。ギャラリーのディレクターAgnes Linは、アジアのアート業界を牽引する一人として、香港や東南アジアのアーティストたちに注目し、彼らの作品を世界に伝えることを目標としています。

Agens:過去10年の間、香港やアジアのアート業界には大きな変化がありました。いまのアート市場は昔と比べて盛んで、熟成しています。だからこそ、いままでのやり方を一度見直して、このギャラリーでは、市場の新たなニーズを満たしていきたいと思います。

2015年に開催した展覧会『South by SouthEast』 は、『Osage Gallery』らしさの詰まった革新的な展示だったと言われます。アジアを中心に、セルビアやスリランカなど、総勢29名のアーティストの作品を集め、「southasianness(南アジアン)」の多文化について語り合うことをコンセプトとした展覧会でした。

その後、Agnesは『Osage Gallery』での活動に限らず、「HKACT」という、アート・カルチャー・テクノロジーによるイノベーションのプラットフォームとなる新たなプロジェクトをスタート。

2019年4月30日までは、日本のメディアアーティスト、藤幡正樹による記憶とアイデンティティをテーマにしたアートプロジェクト『BeHere』を湾仔(ワンチャイ)の街中で展開しています。

オープンしてからの約15年間、新たなアイデアで、作品をとおして香港のアーティストやアート好きな人たちを支える場所として続いてきた『Osage Gallery』。

ギャラリーは年中無休で、2019年3月24日から5月26日までは、前述の展覧会『South by SouthEast』のシリーズとなる新作展『Being Parallel』を開催。

是非、アジアの今のアートカルチャーを感じたい人は訪れてみてはいかがでしょうか。

Osage Gallery
住所: 九龍觀塘興業街20號聯合興業工業大廈4樓
電話番号: 852-2793-4817
営業時間: 月曜〜土曜 10:30〜18:30 日曜と祝日 14:30〜18:30
定休日: 無休
最寄駅: 觀塘駅
URL:http://www.osagegallery.com/
Facebook:https://www.facebook.com/osagegallery/

マニア必見!? アンティークを通じてストーリーを提供する『Parc Antique and Lifestyle』

まるでコンクリートジャングルの片隅にあるエレガントな花園。そんな『Parc Antique and Lifestyle』は、2015年にオープンしたアンティークショップ。

オーナーのCecilia Leungは大のアンティークコレクターで、店名にある「Parc」とはフランス語で「公園」という意味を持ち、開放的でリラックスできるショップ空間を目指しています。

ショップ内にはカフェもあり、ドリップコーヒーや、シュークリーム、クレープなどのフレンチスイーツを提供。カフェで使う食器や調理道具はすべてオーナーがフランス北部で手に入れたアンティークアイテムなのも嬉しいところです。

Cecilia:アンティークアイテムは、それぞれにストーリーを持っています。例えばこのティーカップの元の持ち主が、まったく違う時代にまったく違った生活を送っていたことを想像すると、何だかロマンチックじゃないですか? 私は、アンティークを使う人々に、古い時代とのつながりを感じてほしいと思っています。

アンティーク家具に囲まれた空間で、物語の詰まったアイテムを一つひとつ手に取り、タイムスリップのような気持ちに浸れるのは、この店ならでは。フランスのアンティークアイテムは万人受けするスタイルではないかもしれませんが、オープン以来着々とファンは増えているといいます。

Cecilia:香港でショッピングといえば、銅鑼湾(コーズウェイ ベイ)と尖沙咀(チムサーチョイ)が有名ですが、ほかにも買い物を楽しめる場所がたくさんあります。

どんな街でもいろんなところを探せば、きっとユニークな一品が見つかるはず。『Parc Antique and Lifestyle』もそのような体験を提供したいと思い、他とは違う世界のスタイルを見せたいと考えています。

だからこの店では、アンティーク家具や小物の販売のほか、ウェディングプランナーとして、フランス製アンティークウェディングドレスや、貴重なアンティークコレクションの食器や家具のレンタルをはじめとした結婚式のプロデュースをしています。これも時を経たアンティークアイテムに新たな役目を与えるものだと思っているのです。

地価の高い香港では、個人経営のお店を維持していくことは決して簡単なことではないですが、たくさんのコレクションを展示するためにが広い空間が必要な 『Parc Antique and Lifestyle』にとって、觀塘(クントン)エリアの古いビルは条件があった最適な場所。前職のオフィスも觀塘にあり、このエリアの変化を見てきたというCeciliaはいいます。

Cecilia:香港は変化のスピードが激しいので、起業すること自体は難しくありませんが、そのフレッシュさを保つことがとても難しい都市。ただありがたいことに、私のスタイルを理解してくれるお客さまに出会えて、今までこのお店を続けられていると思います。

古き良きものを提供し、香港のスピード感にもブレずに自身が考える「価値のあるもの」を提供するこのお店は、2019年3月にリニューアル予定。時代を超えて、ここでしか提供ができないストーリーを是非体験してみてください。

Parc Antique and Lifestyle
住所: 觀塘鴻圖道60號鴻福工廠大廈10樓B2號鋪
電話番号: 852-3956-4466
営業時間: 月曜〜金曜 11:00〜19:00 土曜日曜 12:00〜18:00
定休日: 無休
最寄駅: 觀塘駅
URL:http://par-c.com/

木工に魅せられた二人のデザイナーによるインディペンデントブランド『Twenty One From Eight』

観塘(クントン)エリアで最後に紹介するのは、インテリアブランドショップ『Twenty One From Eight』。インディペンデントな企業やショップ、そしてカフェが数多く入居するビル・鵬光大廈の11階に店を構えます。

270㎡の広い空間は、カフェ、家具制作スタジオ、展示スペース兼ショップの3つに分けられ、店内の家具はすべてアメリカ直輸入の木材を使い、香港のデザイナーと職人が仕上げているそう。

オーナーの Vera Wong と Thomas Wong (注意:兄弟ではない)は、いずれもロンドンにある名門の美術大学、セントラル・セント・マーチンズのデザイン専攻の出身。2人は学校で出会い、意気投合し、在学中にインテリア家具のデザインを一緒に手がけるようになり、卒業後に香港でハンドメイドの木製インテリアブランド『Twenty One From Eight』を起業したといいます。

最初に香港の北部の街、火炭(フォータン)でスタジオを設立した2人は、製品だけでなく、ものづくりの工程も含めてお客さんに伝えたいと思い、東九龍の元工業地区だった観塘(クントン)にこのお店を開くことを決めたそう。

防音ガラス越しに見えるスタジオには、家具制作に没頭する職人の姿が。ここでつくられた森のような木の匂いが漂う家具は、展示スペースで触ったり座ったりすることも可能です。

店内では家具の香りだけでなく、カフェスペースからコーヒーとスイーツの香りが。カフェスペースはVeraのお姉さん、Shenaが担当。大手の会社を辞めてから、フランスの料理菓子専門学校ル・コルドン・ブルーに入学した彼女が仕切るカフェでは、終日のランチメニューとフィナンシェなどのフランスのスイーツを提供しています。

ちなみに店内に入ると目に入る『Twenty One From Eight』のアイコンにもなっている狐は、彼らが大学時代に、よく夜中のロンドンで廃棄木材を探し歩いていたときにたまたま出会った狐からだそう。

Vera:私たちのセンスを信用してくれたお客さんに大変感謝しています。おかげで觀塘(クントン)に来てからの3年間がとても充実している。このビルは、写真家や映画監督など、いろいろな分野のクリエイターが訪れるので、觀塘の活気と生命力はとてもいい刺激になっていますね。

店内では家具以外にも、インテリアやキッチン用品などの取り扱いも。家具からもカフェからも、それぞれの仕事が熱意を感じさせてくれる、こだわりとセンスが溢れるショップ。是非、觀塘(クントン)の街の再生と共に、立ち寄ってみてください。

Twenty One From Eight
住所: 觀塘鴻圖道59號鵬光大廈11樓
電話番号: 852-2321-1738
営業時間: 火曜〜日曜 12:00〜18:30
定休日: 月曜日
最寄駅: 觀塘駅
URL:https://www.twentyonefromeight.com
Facebook:https://www.facebook.com/twentyonefromeight/


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