福岡のカフェシーンに一石。ニューオープンの福岡のコーヒーショップ3選

全国的に増え続けている新しいコーヒーショップ。福岡でも次々とコーヒーショップがオープンしているけれど、これまでとは少し趣の違う新しいタイプのお店もちらほら。今回はコーヒーを軸に別の「何か」があり、それが個性やカラーとなっているコーヒーショップを紹介します。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

テニス好きの男子の部屋に来たような気になる『Tweener Coffee Shop』

2018年5月に大濠公園駅の近くにオープンした『Tweener Coffee Shop(トゥウィナー コーヒーショップ)』は、「コーヒー × テニス」というこれまでに見たことがないスタイルのコーヒーショップだ。

予想どおりというべきか、店主の里崎貴行(さとざきたかゆき)さんは10歳のときにテニスをはじめ、20年以上テニスを続けている筋金入りのテニスプレイヤー。

そんな里崎さんがコーヒーショップをはじめたのは、お客さんの喜ぶ顔を見ながら働きたかったから。

会社員時代の里崎さんは、実業団チームに所属はしていたものの、一般社員なのでテニス漬けの生活というわけではなかった。

勤めていたのは建設系の大企業で、自分の仕事を誰が喜んでくれているのかわかりにくく、次第にやりがいを見出だせなくなっていた。

そんなとき、飲食店の人たちが、お客さんの喜ぶ姿を見ながら楽しそうに働いているのを見て、自宅で趣味程度に淹れていたコーヒーを仕事にしたいと思うようになった。

会社を辞め、テニスのコーチをしながら大手コーヒーチェーンで約2年働き、独立して『Tweener Coffee Shop』をオープン。

「女性がたくさん集まるコーヒー屋さんは多いけど、そういうお店には入りにくいと言っている男性もいたので、違う感じにしたいなと思っていました」

という言葉どおり、まるでテニス好き男子の部屋に来たかのようなインテリアで、ほかのコーヒーショップとは一味違う雰囲気を醸し出している。

内装は自分の部屋というイメージで考えたから、ソファーやテレビ、テニスグッズも置いたのだそう。

お店の雰囲気そのままに、お客さんもやはりテニス好きやスポーツ好きが多いようで、四六時中テレビから流れるテニスの試合を見ながら、カウンターに座った常連さんと里崎さんがテニス談義で盛り上がることもしばしば。

福岡屈指のランニングスポット大濠公園の近くという立地なので、ランニング帰りに立ち寄るお客さんもいる。

「お店がスポーツや健康をテーマにしているので、いまはヨガのクラスやランニングのイベントもやっています」

とのこと。

コーヒー豆は平尾の名店『MANLY COFFEE(マンリー コーヒー)』のものを使っている。『MANLY COFFEE』で飲んだ、エアロプレスで淹れたコーヒーにすごく感動して、仕入れをお願いした。

『Tweener Coffee Shop』でも、エアロプレスでコーヒーを淹れるときは、『MANLY COFFEE』のレシピに忠実に淹れるよう心がけている。

フードは、大名の人気ビストロ『Yorgo(ヨルゴ)』のガトーマロンや自家製のチーズケーキ、それに広島・尾道の『USHIO CHOCOLATL(ウシオ チョコラトル)』のチョコレートなどスイーツ系が充実。

最近は、近所の『アルティザン』のパンに、野方の『シュテファン』のソーセージを挟んだ、ボリューム満点のホットドッグもはじめた。

自分がいいと思うものは人にもすすめたいという思いから、セレクトショップ的な感覚でさまざまなお店の逸品を取り入れている。

里崎さんは、来年はエアロプレスの大会(コーヒー器具エアロプレスを使ったコーヒー競技会)に参加しようと画策中。「競技会に参加するのはアスリート魂がくすぐられるのでは?」と聞いたところ、

「やっぱりすごくワクワクしますよ。テニスも最初は一回戦負けからだったので、またそういうところからやっていくんだろうな、同じ道を辿ってるのかなとは思いますけど」

と笑う。テニスからコーヒーに変わっても、里崎さんのチャレンジはまだまだ続きそうだ。

Tweener Coffee Shop
住所:福岡市中央区大手門3-2-26-101
営業時間:月~木曜7:00~20:00 金曜7:00~23:00 土曜9:00~23:00 日曜・祝日7:00~20:00
定休日:月曜
URL:https://www.instagram.com/tweener_coffee/

リトルプレスや私家版の写真集など、希少本に出合える『珈琲 月白』

城南区田島の住宅地の中にある『珈琲 月白(coffee tsukishiro)』を言葉で説明するのはなかなか難しい。できれば実際に行って自分で感じてほしいタイプのお店だけれど、そういうわけにもいかないので、まずはお店の成り立ちとコーヒーから説明しよう。

店主の平塚国昭(ひらつかくにあき)さんは、『珈琲 月白』をオープンする前、筑紫野市のカフェに8~9年ほど勤めていた。その前も飲食業で働いてはいたが、コーヒーを淹れるのはそのカフェがはじめてで、「やるならきちんとプロにならないと」と思いコーヒーの勉強をはじめた。

いざ学びはじめると、「知る」ことで世界が広がることがわかり、コーヒーの世界にはまった。

ちょうどコーヒーの雑誌やスペシャルティコーヒーが世間に出回るようになった時期だったので、雑誌に載っているコーヒー屋さんの豆を片っ端から注文しては、「こういうのがスペシャルティコーヒーなんだ」「これがナッティといわれている味か」と実感しつつ、自分のなかの「美味しいコーヒー」の基準をつくっていった。

『珈琲 月白』のコーヒーは、エチオピア、ケニア、インドネシアの3種類。すべて筑紫野市の『自家焙煎珈琲 萌香(もか)』の豆で、ネルドリップで淹れている。

ほかにもドリンクメニューが豊富で、なかでもコーヒー以上に充実しているのが紅茶だ。日本産の和紅茶「天の紅茶」と「南薩摩」、それに九州産の茶葉をブレンドしたフレーバーティー「姫りんご」と「しょうが」がある。

「熊本の水俣が産地の『天の紅茶』は、冷めるほどにどんどん甘くなっていくんです。お客さんに『和紅茶って何ですか?』と聞かれたときに『天の紅茶』を飲んでもらうと、外国産のダージリンやアッサムとは明らかに違う特徴的な味で『これが和紅茶か』とわかってもらえます」

と、紅茶の話になると、平塚さんがコーヒーのとき以上に饒舌になるのがおもしろい。

鹿児島産の「南薩摩」は、「天の紅茶」よりも強い感じの味だそう。寒いこの時期のおすすめは「しょうが紅茶ミルクティー」で、平塚さん自身も最近はこればかり飲んでいると言っていた。

フードは、餡バターサンドやフレンチトーストなど、どれもイングリッシュマフィンを使ったメニュー。

持ち込み自由なので、近所のパン屋さんやケーキ屋さんのものを買ってきてもOK。むしろ、そうすることで近くのお店と一緒に地域を活性化したいという思いがあるようだ。

近所のパン屋さんの定休日には、パン難民を救うべく、「ニワカベーカリー」と称するイベントで、店舗を持たないベーカリーのパンを月白の店内で売っている。

『月白』には、平塚さんが選んだ本が置いてあり、この選書がとても素晴らしい。ほとんどの本がパラフィン紙で丁寧に包まれていて、店主の本に対する思い入れも感じる。

この書棚から気になった本を手に取り、コーヒーを飲みながらのんびりと本を読むというのが、個人的には一番おすすめの『月白』の楽しみ方。

市場にあまり流通していないリトルプレスの本や、ある写真家が20年に渡り一人の人生を追った300部限定の私家版の写真集など、普通の本屋には置いていないような希少な本もある。そんな本のなかに「これは」と思う出合いがあると感動もひとしお。

『月白』という店名も、ある小説の登場人物の名前から取ったそうで、その由来となった本ももちろん書棚にある。気になる人は平塚さんに教えてもらって、コーヒーのお供にその本を読むのもいいかもしれない。

こんなところにコーヒー屋さんがと思うような住宅街の片隅で、感情を揺さぶられながら本を読みふけったり、感性と知性に満ちた店主とのおしゃべりに興じたりしていると、思わず時間が経つのも忘れてしまう。

珈琲 月白
住所:福岡市城南区田島4-15-27
営業時間:月~木曜10:00~19:00 土曜8:00~21:00 日曜8:00~18:00
定休日:金曜

元警察官のバリスタが淹れるスペシャリティーコーヒー『With coffee』

最後に紹介するのは、福岡市から車で1時間ほど北に行った海沿いの街、福津市福間につい最近オープンした『With coffee』。2018年11月27日オープンなので、できたてホヤホヤのところをお邪魔してきた。

オーナーバリスタの濵田孟士(はまだたけし)さんは、元警察官というバリスタとしては異色の経歴の持ち主。

仕事自体は嫌いではなかったものの、警察という組織や、組織に所属して働くことなど、色々と思うところがあって、2016年に15年間勤めてきた警察官を辞めた。

それに、警察官はどこに行っても「警察官」として見られてしまうので、「濵田孟士」という一人の人間として人と向き合いたいというのも大きな理由だった。

警察を辞めた後は住宅関係の営業の仕事に就いたものの、その仕事もしっくりとこず、モヤモヤとしているときに芦屋町の喫茶店で美味しいコーヒーに出合った。

コーヒーに興味が湧き、本を読んで勉強をしていたら、色々な国の豆や、さまざまな抽出方法があることがわかり、奥深さにはまって、その喫茶店で働くことに。

その後も、大手コーヒーチェーンや、平尾の『エトワールコーヒー』、博多の『townsquare coffee roasters(タウンスクエア コーヒーロースターズ)』などで抽出の技術を学びながら働き、2018年5月に福津市津屋崎にあるシェア古民家『カフェ・アンド・ギャラリー 古小路(こしょうじ)』で、週1日だけ場所を借りて『With coffee』として営業をはじめた。

『With coffee』では、常時5つのロースターの豆を扱っている。それぞれの豆を試験官に入れ、お客さんに色や焙煎具合を見てもらい、匂ってもらい、自分の感覚で豆を選んでもらう。

このスタイルが受けたのか、ただコーヒーを飲みたいだけなのかはわからなかったけれど、週1日だけのお店でもコーヒーを飲みに来てくれる人がいることがわかった。

これならいけるかもと思い、自宅からも近い福間に店を移し、本格的にコーヒーショップをやろうと決めた。

警察官時代は白バイ勤務が長かった濵田さん。意外にも「バリスタの仕事は白バイの仕事に似てるんですよ」と言う。

白バイは取り締まるのが主な仕事。取り締まるには、法律の知識、切符の切り方など警察の実務的な知識、そして当然ながら白バイの運転技術も必要だ。

それに、違反者には若い人から年配の人までいるわけで、相手に合わせた話し方をしなければ納得してもらえず、結局取り締まることができない。

バリスタも同じで、コーヒーを淹れるには、豆の種類や産地の知識、コーヒー豆の量、お湯の量や温度、豆の挽き具合といった実務的な知識、それを踏まえた上での抽出技術や経験も必要になる。

お店に来るお客さんの年齢層がさまざまなのは言うまでもなく、その人に合わせた接客をした方が喜ばれる。

「そう考えると似ているなと思って。警察という組織は好きじゃなかったけど、警察官の仕事は嫌いではなかったので、バリスタという仕事に変わっても、長年やってきたことが役に立っていると感じますね」

としみじみと語ってくれた。

お店をオープンして数週間、今はまだ慣れないことや、仕事の流れが確立できていないところもあって、大変なことが多いけれど、「濵田さん」として向き合える仕事に出合い、このお店をずっと続けていくために、試行錯誤をしながら前に進んでいる。

With coffee
住所:福岡県福津市中央6-6-15 菊地ビル1階
電話番号:0940-51-4685
営業時間:火~木曜10:00~21:00 金、土曜10:00~22:00 日曜10:00~19:00
定休日:月曜
URL:https://withcoffee.jp/


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