NYと福岡に住むライターがおすすめする、福岡のコーヒー屋さん5選(ドリップ編)

私・的野裕子は、6年前から福岡とニューヨークの2拠点生活をしています。年の半分を過ごすニューヨークでは、ほぼ毎日コーヒーショップに通い、その備忘録としてブログ「New York Hobo Coffee Life」を始めました。ニューヨークでは、エスプレッソベースのカフェラテやカプチーノを飲むことが多いのですが、日本の喫茶店やコーヒー屋さんでは、丁寧にドリップしてもらったコーヒーを飲むのが日本らしくて好きです。 今回は、一杯ずつドリップでコーヒーを淹れてくれる福岡のコーヒー屋さんを5店選びました。日本ならではのスタイルのコーヒー屋さんで、NYにも負けない日本のコーヒーの美味しさを再発見してみてください。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

>福岡のコーヒーショップ5選(エスプレッソ編)

珈琲美美

日本の喫茶店文化と言えばネルドリップ。ネルシャツと同じ、柔らかく起毛している織物「ネル」でつくられたフィルタでコーヒーを抽出する方法で、今では日本以外の国ではあまり見かけない。そして、ネルドリップの喫茶店と言えば福岡では『珈琲美美(こーひーびみ)』だ。

『珈琲美美』の店主・森光宗男(もりみつむねお)さんは、25歳から5年間東京の喫茶店『もか』で働き、その後福岡に戻って1977年に『珈琲美美』をオープンした。はじめは福岡の中心地にほど近い今泉に店舗を構え、その後2009年に現在の赤坂に移転した。けやき通りに面した今のお店は、大濠公園や護国神社などに隣接しており、両側の窓から常に緑が目に入り、開放感があってとても気持ちが良い。

『珈琲美美』は、オリジナルのネルドリッパーも販売している、日本でも有数のネルドリップの名店。40年以上もの間、毎日ネルドリップでコーヒーを淹れ続ける森光さんの手つきは、その道を極めた達人の所作のよう。無駄がなく洗練されていて、常に今できる最高のものを目指し、その一瞬に集中している。それでもご本人は「まだ上があるんじゃないかと思っている」のだそう。

「繰り返し、繰り返し、やることが大切。そうやっているうちに、違うものを感じる瞬間があり、ハッとする。コーヒーが、美味しいコーヒーとは何かを教えてくれている」と森光さんは言う。何かひとつのものを長い間追求している人には、共通するものがある。毎日高みを目指していると、どんな道でも最終的に同じところに辿り着くのだろうか。

アメリカのコーヒーショップはエスプレッソ主体のところが多く、今は日本の喫茶店文化の影響でドリップで淹れるお店も増えたけれど、ネルドリップのお店はまだ見たことがない。森光さんは、日本でネルドリップが根付いた理由を「日本人は凝り性だからじゃないですかね」と言う。ネルドリップはネルの煮沸(しゃふつ)や管理に手間がかかるので、確かに職人気質のような性質がなければ難しいのかもしれない。

森光さんは「それぞれの国の文化がコーヒーの味をつくる」とも言っていた。日本の文化や日本人気質が、ネルドリップコーヒーの味をつくり、今ではネルドリップ自体が日本の文化の一部になっている。日本の成熟したネルドリップコーヒーの世界を垣間見たいなら、『珈琲美美』にぜひ。

珈琲美美
住所:福岡市中央区赤坂2-6-27
電話:092-713-6024
営業時間:11:00〜19:30(L.O. 19:00)
定休日:豆の販売 11:00-19:00/喫茶 12:00-(LO)18:00、第1以外の火曜日は豆の販売のみ
URL: http://cafebimi.com/
Instagram:https://www.instagram.com/bimi_coffee/

手音

福岡の市街地から少し離れた、西鉄大牟田線大橋駅そばの裏通り、九州大学芸術工学部キャンパスの隣に『手音(てのん)』はある。店主の村上崇(むらかみたかし)さんは、前述の『珈琲美美』で4年10ヶ月修行した後、2003年5月にこのお店をオープンした。

大学が近いので、学生がたくさん来るのだろうと思いきや、「一番多い客層は50代男性」と聞いて驚いた。学生よりもむしろ、大学の先生が多いのだとか。言われてみれば、若者には入りにくい佇まいなのかもしれない。入口横の扉に「COFFEE」の文字はあるものの、看板にはコーヒーと書いていないし、外にメニューが貼ってあるわけでもない。村上さんは「学生2人だけで店に行ってもいいのかと、事前に電話で確認してきた人もいました」と笑う。

そんな学生も一歩店に入れば安心するだろう。内装は「アトリエ・村上レシピ」の村上孝仁さんが手がけており、木のぬくもりのある落ち着いた雰囲気。ずっと座っていられそうなほどお尻になじむ椅子は、図書館用につくられた天童木工のものだそう。そして店内は、壁に染み付いたコーヒーの色と香りが、静かに年輪を刻んでいるようで味わい深い。

手音の自家焙煎のブレンドコーヒーは2種類(通常のコーヒーの約半分の量で濃く抽出したデミタスの「玄(げん)」も含めると3種類)。すっきりとした飲み口が驚くほど軽い「爽(そう)」と、コーヒーのエッセンスをギュッと詰め込んだような苦味と、その奥にほのかに甘味を感じる「薫(くん)」。ブレンドが何種類かあるお店はあっても、ここまで味が極端に違うのは珍しい。

奥のテーブル席で友だちとお茶をしたり、木漏れ日の中でのんびりと本を読んだり、カウンターで村上さんとおしゃべりするのもいい。家の近所にあってほしいお店。

手音
住所:福岡市南区塩原4-12-10
電話:092-512-6117
営業時間:11:00〜20:00
定休日:不定休
URL: http://tenon-coffee.com/

abeki

『abeki』は不思議なお店だ。カフェでもない、喫茶店とも違う、コーヒー屋でありながら、そこはかとなく漂う教会のような雰囲気もある。そして店主のあべ木真理(あべきまこと)さんは、坊主頭に全身真っ白な装いで、架空の宗教家のような風情。コーヒーを一杯ずつ丁寧に淹れる後ろ姿は、何かの儀式のようにも見える。それでいて、食器やカトラリーはシンプルで今っぽいお洒落さもある。

あべ木さんによると、制服は中東で買ってきたシャツをアレンジして、オーダーメイドでつくっているのだそう。そしてカップやお皿もabekiのオリジナル。テーブルや椅子は、既存のテーブルなどの脚に天板を乗せて自作したもの。この独特な雰囲気は一体どこから来るのだろうと思っていたけれど、店のあらゆるものがオリジナルやオーダー品だとわかって腑に落ちた。すべてはあべ木さんのセンスとさじ加減の産物なのだ。

『abeki』がオープンしたのは2005年11月。それまでは移動販売のコーヒー屋だった。移動販売をしていた場所が使えなくなったのを機に、お店を開くことにした。こじんまりとしたスペースながら、交差点の角に面した窓が大きく開いていて狭苦しさはない。

あべ木さんは、インテリアや音楽だけでなく、メニューの内容や価格も含め、自分がお客さんの立場になって考えてみた時のバランスを大事にしているという。独特な雰囲気にも関わらず、気軽にお店に入れるし、リピートしたくもなるのは、あべ木さんの考え抜かれたバランスの良さにあるのかもしれない。

abeki
住所:福岡市中央区薬院3-7-13
電話:092-531-0005
営業時間:12:00〜18:00(L.O.17:30)
定休日:毎週日曜日、第1.3.5月曜日
URL: http://abeki-f.blogspot.jp/

そふ珈琲

『そふ珈琲』に入った瞬間、「あ、マスターがいる」と思った。口ひげに蝶ネクタイで、飄々とネルドリップのコーヒーを淹れている。マスターの吉田大祐(よしだだいすけ)さんは、岡山の老舗『エスプリ珈琲店』で6年ほど修行した後、福岡に移り住み、2012年4月に城南区別府の小さな商店街の一角に店を構えた。

薄いグレーと白を基調とした、シンプルですっきりとした店内は、すべてインテリアデザイナー・永井敬二さんの手によるもの。椅子コレクターとしても知られる永井さんが選んだ籐の椅子(サンタルチアチェア)は、モダンであり、上品でもあり、座り心地もとても良い。そしてインテリアのアクセントになっているカラフルなお面は、吉田さんが趣味で集めている郷土玩具のコレクション。季節によって変えたり、店に飾る花に合わせて選んでいるのだそう。

『そふ珈琲』は、自家焙煎のコーヒーのほかに、定番のケーキや季節限定のかき氷、コーヒーゼリーなど、デザートも評判だ。日によって変わるので、今日は何があるかなと楽しみになる。しばらくお休みしていた人気のシュークリームは「もうじき復活するかも」とのこと。

市街地からは少し離れた住宅街にありながら、夫婦2人でできる範囲で地道に続けているうちに、お客さんも自然とついてきた。夜10時まで開いていることもあって、スイーツ目当ての女性から、近くの団地に住む80歳過ぎのおばあちゃん、会社帰りのビジネスマンまで客層も幅広い。ご近所さんでなくともわざわざ通いたくなるお店が『そふ珈琲』だ。

そふ珈琲
住所:福岡市城南区別府1-3-11
電話:092-407-6474
営業時間:13:00~22:00 (LO 21:00)
定休日:水曜
URL: http://sofucoffee.blogspot.jp/
Instagram: https://www.instagram.com/sofucoffee/

珈琲花坂

『珈琲花坂(こーひーはなさか)』がオープンしたのは2015年6月。福岡・大名にある人気のバー『ペトロールブルー』の店舗で昼間の時間帯を借りて営業を始めてから、もうすぐ1年になる。

店主の花坂和英(はなさかかずひで)さんがコーヒーの世界にのめり込んだ最初のきっかけは、NYスタイルのこだわりのエスプレッソのお店として知られる東京の『ベアポンド・エスプレッソ』のコーヒーに衝撃を受けたから。コーヒーにもっと近づきたい、何とかコーヒーに関わる仕事がしたいと思った花坂さんは、少しでもコーヒーの経験を積もうと、一人でできる焙煎から始めた。

自宅のフライパンで焙煎を続けながらコーヒーの仕事を探していた時に、東京・三軒茶屋の『ムーンファクトリーコーヒー』に出会った。少しでも早くコーヒーに関わる仕事がしたくて働いてみたところ、思っていた以上にしっくりきた。そこで2年半ほど働いた後、福岡に移り住んで自分のお店をオープンした。

豆を焙煎し、抽出し、それを飲んでいるお客さんを見る。一連の流れをすべてやることが、自分にとっては意味があるのだと花坂さんは言う。頑なな意思のようなものを感じるけれど、出されたコーヒーは決して主張が強いものではない。それはお客さんの生活の一部として飲んでもらえるような、邪魔をしないコーヒーを出したいと思っているからだ。

そんな花坂さんの気持ちがコーヒーからにじみ出ているのか、初めて『珈琲花坂』に来た時から、妙に落ち着くお店だと思った。何度も通いたくなるお店というのは、コーヒーの味もさることながら人柄や居心地の良さが大きいのかもしれない。

珈琲花坂
住所:福岡市中央区大名1-10-21大名エイトビルⅡ 5F
営業時間:10:00〜18:00
定休日:不定休
URL:http://singscoffe.exblog.jp/
URL:https://www.instagram.com/coffeehanasaka/
プロフィール
的野 裕子
的野 裕子 (まとの ゆうこ)

フリーランスライター、翻訳家。「ライフハッカー[日本版]」「greenz.jp」「フォーブス ジャパン」などオンラインメディアを中心に活動。2010年よりNYと福岡の2拠点生活を続けている。NYのコーヒーショップをめぐるブログ「New York Hobo Coffee Life」も運営中。2015年にはブログをまとめたzine「NEW YORK COFFEE SHOP JOURNAL」も発行した。



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