まだ修羅の国だと思ってる?『HereNow 北九州 1st Anniversary Party』レポート

去る11月23日、HereNow KITAKYUSHUの1周年を記念して、北九州市にて『HereNow Kitakyushu 1st Anniversary Party』が開催された。AAAMYYY(Tempalay)のほか、ダンサーのyurinasiaや地元のクリエイター、ショップが集結した同イベント。おおいに盛り上がった当日の様子をお届けするとともに、北九州のシーンやカルチャーのいまに注目した。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

福岡から北九州に遊びに来る人が増えている

ここ数年、SNSや口コミなどの情報を頼りに、北九州市を訪れる人が増えている。北九州空港発着の海外便により、アジアの旅行者が増えたこともあるが、どうやらそれだけではないらしい。

「福岡からのお客さんが増えています。うちだけじゃなくて、Instagramなどで行きたいお店をリストアップして、北九州を巡っている人が多いみたいですよ」と語るのは、小倉駅すぐの繁華街にあるソフトクリーム専門店『dotto milk stand』の川村さん。

九州地方では、福岡市に次ぐ人口を有する北九州市。九州への玄関口でもある門司港は観光スポットとして知られていたが、わざわざ福岡市から北九州市の中心部へ遊びに来る人は少なかった。しかし最近は前述の理由により、北九州の面白いショップや魅力あるスポットが顕在化することとなった。

マイペースで飾らない「北九州らしさ」に魅了される人々

「地元の人たちは『北九州にはなにもない』なんて自虐的に言うけど、外の人からの評価は高いと感じます」と語るのは、HereNow KITAKYUSHUのキュレーターで、『HereNow Kitakyushu 1st Anniversary Party』の運営を担当した松石大介さん(『MEGAHERTZ』代表)。

イベントスペースのオーナーという仕事柄、ミュージシャンやアーティストをアテンドすることも多いというが、北九州市のどこか下町っぽい雰囲気は、クリエイターに受けがいいという。

松石:食べ物がおいしくて安い、というのも理由のひとつですが、飾らない街の雰囲気に親近感を覚えるみたいです。

HereNow KITAKYUSHUの仕掛け人・石川裕之さん(北九州市職員)は「北九州は多様性がある街」だという。

石川:北九州市はもともと5つの市が合併してできた街。さまざまなレイヤーが重なっているため、ひと言で言い表すのは難しいんです。

そんな二人の口からは、北九州のディープなスポットの話題が次々に出てくる。たとえば高級ピュアオーディオで「BOØWY」や1980年代の歌謡曲のレコードをかけてくれる『record&bar gaku』や、見知らぬ誰かの成績表や謎のサインボールを販売するカオスな古書店『珍竹林』などなど……。

マイペースで飾らない土地柄からなのか、最新のファッションやカルチャーを追いかけるよりも、個性的な店主が営むユニークなショップが多い。多様な価値観を許容する懐の深さと混沌。この「北九州らしさ」に気づき、魅了される人々が増えているのだろう。

北九州の人々やショップの存在を、もっと多くの人に伝えたい

「そんな北九州の文化を生み出している人々やショップの存在を、もっと多くの人に伝えたい」

市の広報として働く石川さんのそんな思いからスタートしたのが、北九州市と株式会社スターフライヤーがタッグを組み、北九州空港の台北便就航に合わせて2018年10月にローンチされた「HereNow KITAKYUSHU」だ。

北九州のローカルタウン誌が廃刊して久しく、新しいセレクトショップや地元の人に人気のスポットの情報が、発信できていないことを危惧してのことだった。

石川:街の情報を発信するときに、おいしいとか安いとか、それだけでは足りないと思っていて。紹介するスポットが街のなかでどんな「機能」や「ストーリー」を持っているのかを伝えるのが大切だと思っています。

たとえば『MEGAHERTZ』なら「音楽マニアのコミュニティーハブ」、『kabui(カブイ)』なら「ひとクセあるストリートカルチャーの案内所」など、その背景までを伝えて、はじめて受け手の行動意欲が刺激される。HereNow KITAKYUSHUでは、これまで紹介されてこなかった北九州の魅力がうまく伝えられていると思います。

『MEGAHERTZ』とは、松石さんが営む音楽を中心としたオルタナティブスペースのこと。平日はカフェ営業、週末はDJパーティーやライブなど、ジャンルレスなイベントを開催し、約20年に渡り北九州のアンダーグランドミュージックシーンを牽引している。

同店のあるダイヤ会館(通称音楽ビル)には、小倉のミュージックスポットが集まっており、2018年11月に開催された『HereNow KITAKYUSHUローンチパーティー』では、ビルに入居する3店舗がそれぞれDJパーティー、ジャズセッション、地元バンドのライブと、まったく違うスタイルのイベントを同時開催。北九州の多様なインディペンデント音楽シーンを体験することができた。

いっぽうの『kabui』は、ストリートカルチャーに精通する店主・都合希視寛(とごうきみひろ)さんが自分の好きなモノやコトをギュッと詰め込んだ個性派セレクトショップ。HereNow KITAKYUSHUのキュレーターも務めている。

北九州在住のストリートアーティストで国内外から注目されるBABUの作品をはじめ、都合さんの興味の赴くままに、さまざまな職種や業種の人たちとのイベントやコラボを行っている。

北九州カルチャーを牽引する若い世代のパフォーマンス

そして2019年11月23日、『HereNow KITAKYUSHU 1st Anniversary Party』が開催。

メインアクトのAAAMYYY(Tempalay)はTENDREとShin Sakiuraをサポートに迎えたライブを披露。地元出身のダンサーyurinasiaや、北九州カルチャーを牽引する若手ショップも集結し、約300人が来場した。

神社に響き渡るAAAMYYYの美しい歌声

イベントは北九州出身のYouTuber「ぱんぽぴんず」の初々しい挨拶でスタート。

DJ SENAやDJ MAHOのプレイをはさみつつ、福岡を拠点に活動するディジュリドゥ奏者・Didjemakaの演奏、高校生ダンスユニットMOMONAGIやyurinasiaのダンスパフォーマンスが会場のボルテージを高めていく。

yurinasiaは、北九州市の隣町、遠賀郡水巻町在住。InstagramやYouTubeのダンス動画が話題となり、Instagramのフォロワーは5万人超え。MVやCM、イベントなどに多数出演しているが、北九州地域からこういったSNS発のスターが誕生するのは、ローカルの若い子たちにとっては夢のある話だ。

メインアクトのAAAMYYYも、2019年2月にリリースされた1stアルバム『BODY』の収録曲『愛のため』のMVを北九州で撮影。

AAAMYYY『愛のため』

そんなゆかりもあってか、終始アットホームな雰囲気に包まれつつも、夜空に溶けるような美しい歌声に、観客たちは吸い寄せられるように聴き入っていた。

そして、もっとも会場が湧いたのはAAAMYYYのライブにyurinasiaがゲストで参加したシーン。

2019年4月に発売されたTENDREのシングル『SIGN』のMVでもダンスを披露しているyurinasia。同年9月に福岡のライブでも共演した三者のコラボとあって、会場は熱気に包まれた。

TENDRE『SIGN』

AAAMYYYやyurinasia目当てで市外から訪れた人も多く「北九州でAAAMYYYを観られるとは思わなかった」「本物のyurinasiaに感動した」など、興奮した様子で感想を語ってくれた。

ステージイベントの最後を飾ったのは、昨年のローンチパーティーに引き続き、東京からやってきたDJユニット・AD&AD。1980〜1990年代の歌謡曲などを現代風にアレンジしたフューチャーファンクで会場を盛り上げた。

北九州カルチャーを牽引するショップが集結

会場内に設置されたマルシェにはHereNow KITAKYUSHUの掲載店を中心に注目ショップが集結。それぞれがこの日のための特別メニューを展開し、行列ができるほど賑わっていた。

前述のソフトクリーム専門店『Dot Milk Stand』は、特別メニューで焼き芋を提供。八幡西区の繁華街・黒崎駅前の酒場『うつつ』は、煮込み料理などの温かいお惣菜を、同区の『87 coffee stand』は、こだわりの天然はちみつを扱う『MIELE』とコラボしたハニーラテも提供した。

また、古着や雑貨などのエリアも充実。なかでもアクセサリーブランド「TICHECA(ティチェカ)」は、北九州在住のアクセサリーデザイナー池田真衣さんが主宰するブランド。

HereNow KITAKYUSHUのキュレーターも務める真衣さんはインフルエンサーとしても知られており、そのファッションやライフスタイルも注目されている。

通常は月1回のオンラインショップでの限定販売(毎度即完売)や不定期のポップアップショップでしか購入できないが、この日は特別価格にて販売されるとあって、開場とともにたくさんの女性が殺到した。

九州最大級の古着市『洒落者市』を主催し、北九州の古着シーンを牽引する小倉魚町の古着店『Bloomy Days Vintage』や、ファッション通から絶大な支持を得るジャンルレスなセレクトショップ『muutos.』、雑貨・アート好きが一目置く『umie+』などの人気店にも客足は途絶えなかった。

価値あるローカルコンテンツを育むために

イベント運営を担当した松石さんは、「出店者も含め、関わってくれた人が楽しんでくれたのが良かった。こんなふうに小さくはじめたことが自然と大きくなって、将来は土地に根付いた価値あるイベントに育っていくのが理想。継続的にやりたい」と意気込む。

イベントに集まった人々をみて北九州のポテンシャルを再認識したという石川さんは、「北九州で新しいことをはじめたいと行動している人がいれば応援したいし、自分や周りの人たちのリソースも提供したいと思う。北九州に価値あるローカルコンテンツを育てていけたらいいですね」と語ってくれた。

長年シーンを切り開いてきた先人のもとに、ニュートラルな感性を持つ若い世代が集い、活気づく北九州のカルチャーシーン。その一端に触れることができる一夜となった。

dotto milk stand
住所:福岡県北九州市小倉北区魚町1-1-3
営業時間:12:30~17:30
定休日:金曜
電話番号:なし
最寄駅:小倉駅
MEGAHERTZ
住所:福岡県北九州市小倉北区紺屋町7-17 ダイヤ会館2F
営業時間:19:00~1:00(平日)、週末はイベントにより異なる
定休日:不定休
電話番号:093-533-5627
最寄駅:小倉駅
WEBサイト:http://www.megahertz.jp/
kabui
住所: 福岡県北九州市小倉北区大門2-1-9岩岡ビル
営業時間: 12:00~19:00
定休日: 木曜
電話番号: 093-967-6858
最寄駅: 西小倉駅
WEBサイト: https://www.facebook.com/kabui.store/
MIELE
住所: 福岡県北九州市小倉北区田町5-23
営業時間: 10:00〜20:00
定休日: 年末年始
電話番号: 093-581-7633
最寄駅: 西小倉駅
WEBサイト: https://www.instagram.com/mieletamachi38/
Utsutsu
住所: 福岡県北九州市八幡西区黒崎2-9-2
営業時間: 17:00~last(L.O 24:00)
定休日: 月・火曜(不定休、Instagramをチェック)
電話番号: 093-883-8533
最寄駅: 黒崎駅
WEBサイト: https://www.instagram.com/utsutsu.mi/
Bloomy Days Vintage
住所: 福岡県北九州市小倉北区魚町3-3-12 1F-7
営業時間: 12:00〜21:00、土曜・日曜・祝日11:00〜20:00
定休日: 木曜
電話番号: 093-482-3606
最寄駅: 平和通駅
WEBサイト: https://www.instagram.com/bloomydays_femme/
WEBサイト: https://www.instagram.com/bloomydays_homme/
muutos.
住所: 福岡県北九州市小倉北区浅野2-8-38 森本ビル
営業時間: 12:00〜20:00
定休日: 不定休(Instagramでお知らせいたします)
電話番号: 093-482-3661
最寄駅: 小倉駅
WEBサイト: https://www.instagram.com/__muutos__/
WEBサイト: https://6103muutos.shop-pro.jp/
umie+
住所: 福岡県北九州市小倉北区中島1-14-7
営業時間: 12:00〜18:00
定休日: 火曜
電話番号: 093-511-2292
最寄駅: 旦過駅
87 coffee stand
住所: 福岡県北九州市八幡西区美原町3-2(八幡南高校グラウンド側道路前)
営業時間: 土曜11:00~24:00 日曜11:00~21:00
定休日: 月曜〜金曜
最寄駅: 永犬丸駅
WEBサイト: https://www.instagram.com/87_coffee_stand/


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