台湾に生きる気鋭写真家 第2回:鄭弘敬(テイコウケイ)

2000年代後半から火がついた台湾の若手写真家のアートシーン。この連載では、各回一人ずつ、今台湾で注目の写真家を紹介。写真作品はもちろん、今回の企画のために各々がスマートフォンで撮影してくれた一枚も掲載しているので、ともに楽しんでいただきたい。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

第2回:鄭弘敬(テイコウケイ)

初めてテイコウケイの作品を見た時、「東京晴/東京雨」という展示タイトルに強く惹かれた。おそらく筆者が東京に数年滞在していたことが関係している。東京は自分にとって海外ではなく第二の故郷のような場所なので、彼の作品を通して、僕が夢を追って一人東京で過ごしていた青春時代を思い起こすことができたのだ。彼は元々ムービーディレクターだったが、日本で写真を学び、ウィリアム・エグルストンの作品にインスパイアされ、写真の道を歩むことを決意したのだそうだ。

彼が撮るポートレートは青春の輝きに満ちた、生き生きとした表情や目つきが印象的だ。人生で最も美しい青春という一瞬を写しとったそれらには、自然な光や影が溢れている。一方で、日常の何気ない風景を切り取ったスナップには淡い憂愁が漂っているのが特徴だ。青春は過ぎ去り、出会った人々は離れて行き、存在していたはずのものがすべて過去のものとなったかのような感覚に陥る。

「写真の中に入り込みたくなる風景」とは彼が自分の作品を説明した言葉だ。人物と風景で構成される「台北のくだらない日常」シリーズはダントツに面白い。カメラは台北人が見慣れてしまった街の風景を記録し、くだらなさの中に虚しさや儚さを写しだしている。現代人の慌ただしい日常の中にもこんな一瞬があるのかと考えさせられるシリーズだ。過去を振り返ることで見えてきたのは、美しい青春か、はたまた虚しい思い出か。もちろん、そのどちらであるかは明らかだ。

Q1.携帯で撮った写真について教えてください。

鄭弘敬:スタジオの片隅。左は台湾の北西部に位置する苗栗という地で作られた猫の木彫り。その隣はフレームに入れた、数年前に撮った野球練習場の看板の写真。そのまた隣は2009年に亡くなった清野賀子の写真集。そしてペットの臉臉という名の猫。好きなモノが集まった一枚。

Q2.写真とは何か、を一言で言うと?

鄭弘敬:生活で重きを置いている順番は、1.家族や友達 2.サッカー 3.写真です。

Q3.台北でおすすめのスポットはどこですか?

鄭弘敬:電車の浮洲(フーチョー)駅のホームと、その駅近くにある「僑中二街」という街の風景です。

プロフィール
鄭弘敬
鄭弘敬 (テイコウケイ)

1983年生まれ。2012年日本写真芸術専門学校卒業。2013年台湾に戻り、台北にて展示「東京晴/東京雨」を開催。なんの変哲もない日常風景を振り返り、五年間の東京生活を“ワンシーン”と捉えて写真に表現している。それ以来、「BEAMS ZINE&COLLECTION TAIPEI」、「物色」など様々な展示に参加。台湾だけでなく、香港、日本でも活躍。「裂痕」、「有菌」など、手作りのZINEが不定期で販売される。



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