デザインで街は変われるか? 台北のトランスボックス改造計画

初めて台北を訪れた外国人観光客にとって、その街並みは強烈なインパクトを持っているはずだ。車道を埋め尽くす車やバイク、車道の両脇に連なる赤や黄色の派手な看板。そして、道に連なる四角い大きな立体物にも目がいくはず。これはトランスボックスといって、発電所から送られてきた電気を一時的に溜めるための装置。今回は、このトランスボックスに関するデザインプロジェクトを紹介したい。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

街を歩けば必ず目に入る、トランスボックス

街のあちこちに点在するトランスボックス。これは電力を市街にくまなく配電するためのもの。発電所から運ばれてきた電気をここに一時的に貯めることで、安定して電力の供給ができるのだ。

しかし、こんなに大きいボックスを街中に設置するのは景観として美しくない。そこで台湾の電力会社はアーティストに依頼し、ボックスにイラストを施した。絵はテーマもトーンもさまざまで、スイスの山岳風景から日本の桜まである。若手のアーティストにコンテンポラリアートを描いてもらったケースもあるが、一番よくみかけるのは山水画と植物の絵だ。

なぜトランスボックスを変える必要があるのか?

このトランスボックスを見なおそうと立ち上がったのが、台北のデザインカンパニー・都市酵母(ドゥシーシァウム)。彼らは長年、台湾の環境美学に関心を寄せ、多くのプロジェクトを形にしてきた。その都市酵母が今回、2016台北世界デザインキャピタル(2016WDC)の一環で立ち上げたプロジェクトが「台北市景観改造計画」。台北の街に点在するトランスボックスの新しいデザインを考えよう! というものだ。

私たちは台北のトランスボックスを一新しようと考えているわけではありません。大切なのは、このプロジェクトを通じて、見慣れてしまった街並みについて考えるきっかけをつくること」と、都市酵母のクリエイティブディレクター・aguaは話す。

プロジェクトは、台北市内の5つのメインストリートに設置された114のトランスボックスを、1年半かけて改造するというもの。ちなみに台北市内にあるトランスボックスは約9000台にもおよぶ。

Aguaはそれぞれの街を表わす色を「環境色」と呼び、それぞれのエリアに合った色を考案した。その色を用いて、まずは試作を開始した。

一筋縄ではいかない、街の景観への着手

まず始めに市民の意見を集めるために、いくつかのトランスボックスを真っ白にペイントし、その試作を市民たちに見せて市民からアドバイスを求めた。

トランスボックスを白く塗り始めたとき、予想以上の反響があったのには驚きました。トランスボックスなんて随分前から気にもとめていなかったという人がいる一方で、白く塗ることで台湾の文化を消そうとしているのか! と考える人もいる。どちらにせよ、無視されるよりもいろいろな意見が出たことに手応えを感じています」とagua。

Aguaはこのプロジェクトを実行する前に海外のトランスボックスについても視察をしている。例えば日本では、区ごとに色が異なるが、サイズは統一。トランスボックスが置いてある土台は本体とサイズが合わせられ、極力存在感が抑えられている。均一されていて視覚的にも美しい。存在感を消すために歩道のフェンスと同色の塗装がされていたり、地下鉄の出入口に設置して表面に地図を貼るなど機能を持たせているものもあった。重要なのは施工の質が高いこと。ペンキが雑に塗られていたり、土台とトランスボックスがズレて設置されていることはなかった。台湾のトランスボックス事情とは、あまりにもかけ離れていることを知ったのだ。

最初は台湾のトランスボックスについて、サイズがバラバラで、全体のフォームが整っていないだけだと認識していたのですが、実際にデータを集計してみるとその実態が分かってきました。例えば、わたしたちがセレクトした5つのストリートだけで、トランスボックスのサイズと土台の組み合わせは17種類もあることが判明。本体が土台の真ん中に置かれていなかったり、本体の上にさらに別のサイズの箱が積み上げられたり、フォーマットがどんどん崩れていたんです。それが積み重なって、見ていられないような存在になってしまった……」と、調査から感じたことをaguaは率直に話す。

生活環境に関する美意識を持つきっかけになってほしい

このプロジェクトはまだまだ進行中で途上の段階だ。「私たちは決して台湾のこれまでの文化を消そうとしているわけではないし、私たちのデザインが唯一の答えなわけでもない。表面的なデザイン以上に、サイズや施工について取り組んだ方がいいのかもしれない。いずれにせよ、このプロジェクトを通して、トランスボックスの設置に関わる施工会社や政府が、何らかの改善策を考えるきっかけになれればいい

生活環境に対する美意識は、この街に暮らす全ての人々が関心を持つべきだとaguaは考える。

台北らしい街の美しさとは何なのか? 試作のトランスボックスの展示はこれから行われる。aguaたちの改造プロジェクトは始まったばかりだ。



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