矢沢洋子の意外な素顔

幼い頃はビートルズが流れる家庭で育ち、ロサンゼルスで過ごした中高生時代はディズニーからパンクに触れ、帰国後はめんたいロックに魅了されるなど、雑食という域をはるかに超えるレベルで音楽を吸収してきた矢沢洋子。ロックを軸に据えつつも、楽曲ごとにさまざまな面を見せるニューアルバム『Give Me!!!』は、彼女のこれまでの音楽遍歴はもちろん、浮き沈みが激しいという性格や周囲の環境など、その背景を知れば知るほど深みの増す作品だ。知られざる矢沢洋子の側面を膨大なキーワードとともに語ってもらった。

たまにDJもやるんですが、いきなり流れを無視して歌謡曲からアニソンかけてロックみたいな。

―CINRAには初登場になるので、今日は洋子さんの人となりからお聞きしたいと思うんですけど、小さい頃はどんな子だったんですか?

洋子:どんな子だったんだろう…。まわりの大人たちからは、「ひょうきんな子」とよく言われてました。いきなり踊りだしたり、モノマネを始めたり、よくそういう事をしてたみたいで。

―アニメや漫画を見たりは?

洋子:今も見ますが、アニメは『セーラームーン』とか、『幽☆遊☆白書』とか、『スラムダンク』とか、王道なやつを。マンガは、少女マンガとかも見るんですけど、『島耕作』シリーズとか、『三丁目の夕日』とか。あと、手塚治虫系のマンガもけっこう読んでますね。

―ゲームもお好きなんですよね?

洋子:RPGが好きで、FFかドラクエかで訊かれると、私はドラクエ派ですね。あとは『MOTHER2』とか、『ブレス オブ ファイアII』とか、『ゼルダの伝説』とか、『桃太郎伝説』とか。弟がゲーム好きだったんですよ。『たけしの挑戦状』とか、『くにおくん』の運動会とかもやってましたね。

矢沢洋子の意外な素顔
photo:Asaki Koshikawa

―音楽的な目覚めは?

洋子:中1のときに家族でロサンゼルスに移住したんですが、最初は英語もまったくできず、友達もいなかったので、CD屋さんに行って、アーティストもよくわかんないからジャケ買いして。あとは向こうの音楽チャンネルを見たり。中1~2くらいの頃は、そんなことばっかりしてましたね。

―ジャケ買いしたCDっていうのは、どのへんのアーティストを?

洋子:そのときは、今週のTOP20みたいな棚から「なにこの人かわいい」と思ったCDを。それがクリスティーナ・アギレラのファーストアルバムだったんです。

―大当たりじゃないですか。

洋子:中学生のときは、ディズニーチャンネルをよく見てたので、ブリトニー(・スピアーズ)とかアギレラとか、ディズニーあがりのアイドルみたいなのは、すごい聴いてました。で、日本のアーティストもチェックはしてて、m-floはよく聴いてましたね。それと、アメリカで1年間寮に住んでたことがあったんですが、ルームメイトが韓国人の女の子で、お互いに韓国の音楽と日本の音楽を聴かせ合いっこして。それで韓国のラップを聴いたりとか。

―クラブミュージックっぽいものをよく聴いていたんですか?

洋子:最初はそうでしたね。ロサンゼルスはヒップホップ! ウェッサイ! みたいな場所なんで。あと、向こうではレッチリ(RED HOT CHILLI PEPPERS)、GREEN DAY、LINKIN PARK、NO DOUBTあたりは誰もが知ってて、私もよく聴いてました。

―他のインタビューでは、昔は家でThe Beatlesがよくかかってたと言ってましたよね。

洋子:そうですね。小っちゃい頃はよくかかってましたね。

―そう考えると、すごくいろんな音楽を吸収してきてますよね。

洋子:消化できてるのかはわからないですけど、いまもすごい雑食です。ミュージカル系の曲も好きなので、この前も『グリース』のDVDを買っちゃって。あと、DJもやらせてもらうんですが、いきなり流れを無視して歌謡曲からアニソンかけてロックみたいな。

―例えばどんな曲を?

洋子:歌謡曲だと、(山口)百恵ちゃんとか、ピンクレディーとか。DJをやるときは、誰が聴いてもわかるほうが盛り上がると思うので、王道の曲をかけることが多いですね。アニソンも『おぼっちゃまくん』とか、『ママレード・ボーイ』とか、私と同年代の女の子なら絶対に見てたでしょ的な曲をかけます。

2/3ページ:だんだん「私がやりたいのはこれじゃない!」っていう自我が出てきてしまって。

だんだん「私がやりたいのはこれじゃない!」っていう自我が出てきてしまって。

―自分で音楽をやろうと思うようになったのは?

洋子:お稽古みたいな感じで、ボイストレーニングは中学生から受けてました。でも、実際に歌いたいと思うようになったのは、日本に帰って来てからですね。だから18歳くらい。

―何かきっかけが?

洋子:特にきっかけがあったわけではなくて。でも、いま振り返ると、友達とか、まわりの人たちから、「どうせ音楽やるんでしょ?」って思われてた部分もあって。自分のなかでも「そうなんだろうな」って思ってたのかもしれないですね。

―普通のOLに憧れはなかったんですか?

洋子:まったくないですね。なんか、朝起きるのとか、決められた生活ができないし、すごく不摂生だし、いつも飲んでるし(笑)。

―お酒はけっこう飲まれるんですか?

洋子:すごい飲んでますね。昨日は西麻布のREDSHOESでDJだったので飲み、一昨日も知り合いのライブに行って飲み、その前もSCOOBIE DOのMOBYさん、キャプテンストライダムの永友さん、アンダーグラフの中原さん、ギターウルフのU.G君と一緒に。

―毎日飲んでますね!(笑) 話を戻しますけど、最初にデビューした頃はユニットでしたよね。日本に帰ってきてから本格的に歌い始めて、そこからすぐにユニットを結成して?

洋子:すぐではないですね。ユニットができる前からライブはやっていて。本格的に歌い始めてからデビューするまでに、3年ちょっとは経ってます。

―自分の可能性をいろいろ試しているうちにユニットでのデビューが決まって、もっとやりたいことができてソロになった?

洋子:そうですね、まさに。だんだん「私がやりたいのはこれじゃない!」っていう自我が出てきて。今考えると、自分が雑食でいろんなものを聴く反面、自分が何を歌いたいのか考えたときに、「いやぁ、わかんないな」みたいな感じになってたと思うんですよ。でも、あのユニットがあったからこそ、自分が本当にやりたい音楽だったり、どういうライブがしたいかっていう欲が出てきたので、重要な時期だったんだと思っているんですけどね。

矢沢洋子の意外な素顔
photo:Asaki Koshikawa

―その結果、いまはロック色が強い音楽をやってますけど、どういう音楽が好きなんですか?

洋子:よく「好きなバンドはなんですか?」って訊かれるじゃないですか? 選ぶのはすごく難しいですが、特に私は「ルースターズ」が好きです。「めんたいロック」が好きなんです。DJをするときも、今日はロックに決めようってときは、だいたいルースターズ、モッズ、シナロケ(SHEENA & THE ROKKETS)あたりをかけてます。

―めんたいロックのどういう部分に惹かれて?

洋子:やっぱりいちばんは音ですが、時代への憧れみたいなものもあって。あの荒々しい感じというか、不良少年的なビジュアルも含めてかっこいいなぁと。

2/3ページ:けっこう悩みがちなタイプなので、そういうのも出てるとは思いますね。

けっこう悩みがちなタイプなので、そういうのも出てるとは思いますね。

―新しいアルバム『Give Me!!!』は、ハードな曲があったり、落ち着いた曲もあったりとバラエティに富んでいますが、作品のコンセプトはあったんですか?

洋子:根本にある「ロック」っていうのは変えたくなかったんですが、以前とまったく同じものでは出す意味がないから、この1年で経験してきたものをしっかり出したいと思ってて。“Give Me!!!”とか“SOS”とかロック色の強い曲は、前作の影響そのままっていう感じはあるかもしれないですけど、より疾走感を持たせたいとか、歌い方もよりかっこいい女を意識したり、前よりも「もっと、もっと」って気持ちはすごいありましたね。

―毎月自主企画のイベント『KISS!HUG!!LOVE!!!』もやられてますけど、ライブで得た感触もすごく反映されてるんじゃないですか?

洋子:渋谷Milkywayと共同主催なんですが、やっぱりお客さんに楽しんでもらいたいとか、出てもらったバンドにも、また出たいと思ってもらえるようなイベントにしたいという責任感も出てきています。そういうことを踏まえると、今までは、例えばラブソングだったらいままでの自分の恋愛とか、自分視点の歌詞が多かったけど、今作は誰が聴いてもどこか共感できる部分があると思います。意識して書いたわけではないけど、そういうところはライブを主催してきた経験が良い意味で出てるんだなって思いましたね。

―1曲目から“SOS”という曲があったり、葛藤しているような感じも出てると思うんですけど。

洋子:“SOS”は勢いで書き上げた印象が強くて。もともと2年くらい前からライブで歌ってた曲なんです。そのときは音源化する予定もなかったので、とりあえずライブで歌えればいいやと思って、歌詞も適当に作ってたんですね。部屋にあった『カイジ』を読んで、「起死回生なんとかかんとか」とか、影響丸出しの歌詞で、タイトルも“カイジ”にしてて(笑)。でも、ちゃんと音源化することになったので、さすがに“カイジ”はダメだぞと思って。

―それで“SOS”として書き直したと。

洋子:はい。ただ、カイジの「なんかもうどっち!?」みたいな印象は自分のなかで引きずったままで。カイジって、いつもYESかNOか選ばないといけない立場にあるじゃないですか。

―そう言われると曲のイメージも膨らみますね。でも、いろんな迷いとかを消化してできたアルバムなのかなと勝手に想像してたんですよね。

洋子:けっこう悩みがちなタイプなので、そういう葛藤も出てるとは思います。

―アルバムを聴いていると、パーッと盛り上がるような面と、ちょっとセンチメンタルな面の二面性があるんじゃないかと思ったんですけど、実際の性格的にはどうですか?

洋子:それ、すごい言われるんですよね。確かに普段から浮き沈みも激しいし、日によって人が変わったようになるので(笑)。けっこう荒っぽい方かもしれません…(笑)。

―でも、こういう歌を歌うなら、そのくらいがちょうどいい気もしますけどね(笑)。逆に沈んじゃうときはどんな感じなんですか?

洋子:沈んじゃうと『ドラえもん』のDVDを見ます。『ドラえもん』の映画のDVDボックスを持ってるんですよ。いちばん最初の『のび太の恐竜』から、『鉄人兵団』とか、『雲の王国』とか、『ドラえもん』を見て元気をもらうことが多いですね。

―ほんと、すごい多面性を持ってますね(笑)。そういうのが音楽にも反映されてると思うと、また聴こえ方が変わってきます。まだまだいろんな面があると思うんですけど、今後はどういうアーティストになっていきたいですか?

洋子:こうなったらいいな、ああなったらいいな、っていうのはもちろんあるんですが、40歳とかになっても、バンド仲間みたいなのが近くにいて、仲間うちだけでライブができたら楽しそうだなと。全然大きな目標じゃないですけど(笑)。でも、本当に仲間に恵まれてるなと思うんですよ。だからいくつになっても、仲間と酒を飲んで、セッションとかしちゃったり、そういうことがずっとできたらなと思います。

―やっぱり酒になるんですね(笑)。

洋子:そうですね、ふふふ(笑)。

リリース情報
矢沢洋子
『Give Me!!!』

2011年8月3日発売
価格:2,500円(税込)
GRRC-20002

1. SOS
2. アドレナリン
3. 夏風
4. アゲハ
5. Give Me!!!
6. アマノジャク
7. JOKER
8. hane
9. too late
10. 羅針盤

イベント情報
『矢沢洋子「Give Me!!!」レコ発LIVE~頂戴×2 もっと頂戴!!! 第1夜~』

2011年8月26日(金)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:東京都 渋谷 Shibuya Milkyway
出演:
矢沢洋子
JUNIOR
ROACH
カミヒカルス
NEW STRIKE ZIPPER
and more
料金:前売2,500円 当日3,000円(共にドリンク別)

『矢沢洋子「Give Me!!!」レコ発LIVE~頂戴×2 もっと頂戴!!! 第2夜~』

2011年8月27日(土)OPEN 17:00 / START 17:30
会場:東京都 渋谷 Shibuya Milkyway
出演:
矢沢洋子
THE STARCLUB
RACHEL
THE SURF COASTERS
The Homesicks
and more
料金:前売2,500円 当日3,000円(共にドリンク別)

プロフィール
矢沢洋子

東京出身のシンガー。12歳の時にLAに移住するが、高校卒業後帰国。2008年にユニットでデビュー。2010年から本名の「矢沢洋子」名義での活動をスタートさせる。同年、ファーストアルバム『YOKO YAZAWA』を発表。ロックからパンク、ハードコア、オペラ、歌謡曲まで消化した柔軟なボーカルスタイルが魅力。2011年8月、セカンドアルバム『Give Me!!!』をリリースする。



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