言語やカルチャーをミックスした表現活動 DUSTZインタビュー

日本語、英語、フランス語が入り混じったオリジナリティの高いミクスチャーロックと、世界で活躍する日本人デザイナーとのコラボレーションによる鮮烈なビジュアルで、華々しく新章の幕開けを飾ったDUSTZが、半年振りとなるニューシングル“spiral”を発表する。アニメ『BLOOD-C』(原作:Production I.G / CLAMP)のオープニングテーマに抜擢されたこの曲は、マイナスをプラスに転化するDUSTZの表現と、アニメの世界観が見事にマッチした仕上がりとなっている。 “spiral”の話はもちろん、震災を挟んだこの半年間の出来事など、バンドの今を探った。

感情を入れて必死で歌うことはこれまでもできたんですけど、逆に感情を入れて必死で歌わないことはできなかったんですよ。

―前回の取材が2月末で、ちょうど震災の前でしたよね。

Ray:いろいろ変わりましたよね、あれから。

―震災の話は追々出てくるかと思うので、ひとまずおいて置くと、この半年は基本的には制作期間だったんですか?

Ray:そうですね。ライブも何度かあって、新しいスタイルになったDUSTZを見せれたんですけど、すごく反応もよくて安心しました。みんな言葉の意味はわからなくても(前シングルの“Criez”の歌詞は、英語、フランス語、日本語がミックスされていた)ノってくれてて、DUSTZのやりたいことをちゃんと提示できたかなって。そうやってライブで得たものは、当然制作にも反映されてると思うし。

―じゃあ、今はアルバムに向けて進んでいる感じですか?

Ray:はい。今のDUSTZのフィルターを通して昔の曲を蘇らせたりとか、楽しい制作期間になってます。歌詞に関しても、“Criez”で土台を作れたから、3人でバランスよく作れるようになったかなって。

―今回の“spiral”もその延長線上にありますよね。あとは3人それぞれの活動もあったと思いますが、Rayくんは役者として『レ・ミゼラブル』に出ていたんですよね。

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Ray

Ray:自分のフランス人としてのルーツに触れられたという点で、すごく意味深い経験でしたね。僕ら学校(DUSTZの3人はフランス語のインターナショナルスクールに通っていた)でヴィクトル・ユーゴーを暗記させられたりしたんですけど、やっぱり子供じゃわかんないんで(笑)。今回『レミゼ』をやって、初めてヴィクトル・ユーゴーの言いたかったことがわかった気がします。あとはミュージカルだったから歌がすごく多くて、それはDUSTZにも技術的に関係してきたかなって。歌い方がちょっと変わったと思うんです。

―どう変わったんですか?

Ray:感情を入れて必死で歌うことはこれまでもできたんですけど、逆に感情を入れて必死で歌わないことはできなかったんですよ。それが上手くできるようになったかなって。

―KenTくんはどうでした? この半年間。

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KenT

KenT:やっぱり震災が起きて、音楽に対して考える機会が増えましたね。こういうときだからこそ自分ができることはなんだろうとか、改めて考えました。それを自分はギターリストとして、ギターを媒介にしてアンプからどう音を出せばいいのかなって。昔ギターの先生に、自分の心がギターを通じてアンプから音が出るんだって言われて、その頃はよくわからなかったんですけど、今になってその意味がやっと伝わってきましたね。


―Gusくんにとってはどんな半年だった?

Gus:ひたすら音楽に向かってた感じですね。週に2~3回は個人でもスタジオに入ったし、友達と入って基礎練したり、セッションしたり。歌詞の面でも3人でよく話し合ったし、(Rayが)『レミゼ』で忙しかったときは、(KenTと)2人で集まって、「こういうのどう?」ってやりとりして。だから…より親密になれたなって。

―幼馴染ではあるけど、ここにきてより親密になった?

Ray:友達としては、もう会わなくてもいいぐらい知ってるんですけど(笑)、バンドとしてより親密になれた気がしますね。やっぱり震災があって、僕らが音楽をやる意味を考えたんですよね。それで、今の日本には元気になるような何かがあったらいいなって思ったし、それをちゃんと伝えていかなきゃいけない。その流れもあって、3人でひとつの方向に向けたのは大きかったですね。それは、もちろん“spiral”にも影響してますし。

2/4ページ:普通に聴いてる分にはすごく明るい曲に聴こえるんだけど、歌詞を読むと「ひとつも明るくねえじゃん」っていう、二面性を持たせたいと思って。

普通に聴いてる分にはすごく明るい曲に聴こえるんだけど、歌詞を読むと「ひとつも明るくねえじゃん」っていう、二面性を持たせたいと思って。

―“spiral”はアニメ『BLOOD-C』(2011年7月よりMBS・TBSほかにて放送開始)のオープニングテーマになっていますが、基本オタクのRayくんとしては(笑)、やっぱりアニメも好きなんですか?

Ray:大好きです(笑)。休みの日は下手すると1日アニメを見て終わる日もあるぐらいなんで、今回『BLOOD』シリーズということで、もうテンション上がっちゃって(笑)。こういう作品に関われることは、本当に光栄に思ってます。

―実際の曲作りはどう進んだんですか?

Ray:最初は“spiral”じゃなくて、“glory”っていうすごく明るい曲だったんです。ただ『BLOOD-C』の内容を考えて、歌詞は救いのない感じにしたいねって。普通に聴いてる分にはすごく明るい曲に聴こえるんだけど、歌詞を読むと「ひとつも明るくねえじゃん」っていう、二面性を持たせたいと思って。それで“glory”の曲はそのままで、歌詞だけマイナス方向にして、“spiral”になったんです。

―曲ありきだけど、アニメの世界観にもすごく影響されているんですね。

Ray:そうですね。前にも話したと思うんですけど、ロックってマイナスをプラスに変える力があると思うから、そういう意味でも歌詞をマイナスにすることでそれをわかりやすく表現できるんじゃないかって。

―DUSTZの根本にある表現とも、ちゃんとリンクしてるってことですよね。でも、曲は一緒なのに、歌詞だけ反対って面白いですね。

Ray:疾走感のあるプラスの曲が、逃げてるような疾走感に変わるっていうのが面白かったですね。

―3人の作詞のバランスっていう部分ではどうだったんでしょうか。さっきGusくんとKenTくんが2人で話し合う機会もあったって言ってたけど、そこで気づいたことはありますか?

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Gus

Gus:突拍子もないアイデアが出てきたりして、「これ音的にはかっこいいけど、いいのかな?」みたいなことはありました。サビの「∞ 忙しない」とか…

Ray:サビは日本語っぽく聴こえない方がいいけど、でも日本語がいいねって言ってて、KenTとGusが何パターンか考えてくれて、結果的にこれになって。


―字面で見るとわかるけど、音だけだとどこが日本語で英語でフランス語かってわからないですもんね。 “Criez”で初めて言語が混ざった曲を世に出して、それに対するリアクションって実際どうでしたか?

Ray:「こういうことがしたかったんだね」っていう熱意は伝わったと思います。英語とかフランス語に関してはスルッと、洋楽みたいな感じで聴いてくれてるみたいですね。

―最初にも言ってましたよね、「意味はわかんなくても盛り上がってくれた」って。

Ray:それが音楽ですからね。歌も音であり声だから、どんな言葉をしゃべっても結局は喉の鳴りじゃないですか? もちろん、読んでもらえれば意味がわかってもっと入りやすくなると思うんですけど、基本は意味がわかんなくてもノれるようにっていうスタンスなんですよね。

3/4ページ:「ロックかっけえ」ってなったまんま、たぶん僕らはどこかで知能が止まってしまったんでしょうね(笑)。

「ロックかっけえ」ってなったまんま、たぶん僕らはどこかで知能が止まってしまったんでしょうね(笑)。

―そもそも、マイナスを起点とした表現に惹かれる理由っていうのは何なんでしょうね?

Ray:それは…憧れっていうのもあると思うんですよね。ロックっていうものが…ストリートだったり、下級階層の人たちから出てきた音楽じゃないですか?

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―いわゆる、カウンターカルチャーだっていう。

Ray:そういうのって、悪い人たちがかっこよく見える、タバコを吸い始めるのと一緒ですよね。「ロックかっけえ」ってなったまんま、たぶん僕らはどこかで知能が止まってしまったんでしょうね(笑)。

―そういう人、いっぱいいるよね(笑)。

Ray:いやあ、ホント止められましたね(笑)。でも、惹かれるのってそういうことだと思うんですよね。

―具体的に、この人の表現とか考え方に強く影響を受けてるっていうミュージシャンっているんですか?

Ray:BLURとGORILLAZ、日本だとDRAGON ASHですね。ホント世代なんですよ、DRAGON ASHは。

―DRAGON ASHは音楽的にも通じるものがあるからわかるけど、デーモン・アルバーン(BLURやGORILLAZの主要人物)は結構意外かも。僕も大好きですけど。

Ray:デーモンはホント天才! あの人も皮肉とか、マイナスなものを音楽でプラスに見せたりするじゃないですか? “Feel Good inc”なんて、ただトンでるような曲なのに、それをミリオンにしちゃうぐらいですから、あれはすごいですね。あとGORILLAZを聴いて、初めて音が分かれて聴こえたんですよね。結構音数少ないじゃないですか? ベース、ドラム、シンセ、ボーカル、コーラスって音がちゃんと分けて聴こえて、「あ、曲ってこうやってできてるんだ」って、初めて知ったんです。

―KenTくんは影響受けた人誰かいる?

KenT:基本的に歌詞はあんまり見なくて、雰囲気だったり、ノリとかグルーヴが感じられればよくて。聴いてるのもジャック・ジョンソンとかボブ・マーリーとか、雰囲気ものが多いですね。陽気なっていうか、平和な感じの。

―でもボブ・マーリーは歴史的なメッセンジャーでもありますよね。

KenT:そうですね。でも歌詞とかっていうよりは、普通に聴いて感じるもので十分かなって。

Ray:って言うわりには、みんなで飲んでたときにボブ・マーリーの話になって、もう、やばいっすよ。「ボブ・マーリーってのはよう!」って語り出して(笑)。歌詞関係ないって言うわりには、KenTも思想家ですからね(笑)。

言語やカルチャーをミックスした表現活動 DUSTZインタビュー

―それこそ、DUSTZで歌詞を書くようになってからは、気にするようになったんじゃないですか?

KenT:歌詞を見るようにはなりましたね…面白いです、歌詞も(笑)。同じ曲でも聴こえ方とか感じ方が変わったりするので、“spiral”もそうなれば嬉しいですね。

―Gusくんはどう?

Gus:影響を受けたのはミクスチャー系で…学生のときはLIMP BIZKIT、KORN、山嵐とか。

―基本的に、重い感じだ。

Gus:でもリンプとかHIP HOPのノリがあるんで、ブラックミュージックの要素とか、そっちですね。前からファンクとかも親の趣味で聴いてたんで。

―じゃあ、歌詞に関してはどう?

Gus:僕もノリとかグルーヴで聴いてるんですけど、歌詞の世界観で好きなのは…パッと出たのは清志郎さんですね。シンプルで、ストレートで。

―へえ、3人から結構意外なとこも出てきて面白いなあ。

Ray:3人で共通して言えるのはミクスチャーを通ったとこじゃないですかね。あと一時期、曲のテンポが速ければかっこいいみたいなのもありましたけど。「(BPMが)180以上じゃないと」みたいな(笑)。

Gus:目指すところじゃないよね…ただ疲れるだけ(笑)。

―ミクスチャーとかラウド系の歌詞も、怒りとかフラストレーションの発露だったりしますよね? そういうところからも影響を受けているんですかね?

Ray:そうですね…ロックとかの前に、あんまりいい子じゃなかったんで(笑)。優等生ではなかったんで、自然とそうなったというか…

―お行儀のいい表現よりは…

Ray:日本語だと行儀よくなるんですよね。日本ってすごく行儀のいい国じゃないですか? だから日本語を使ってるだけで行儀よくなるんです。フランス語を使ってるときとか、キャラ違いますからね。だから、感情の乗せ方も言葉によって違ってくるんですよね。

4/4ページ:昔からの僕らの最終形態というか、「ここがひとつの形です」って見せられるものにはなると思います。

昔からの僕らの最終形態というか、「ここがひとつの形です」って見せられるものになると思います。

―アートワークは前回同様に小島穣二さんが担当してるんですよね?

言語やカルチャーをミックスした表現活動 DUSTZインタビュー
DUSTZ『spiral』初回限定盤ジャケット

Ray:“spiral”のイメージでオブジェを作っていただきました。今回も三位一体っていうのを表現できて、なおかつ、穣二さんの作品のシリーズとしてもかっこよく見せられればなって。赤が血を表現してるし、DNAっぽいことも螺旋で表されてますね。ミュージックビデオも、前回は顔だけでしたけど、今回はライブスタイルで演奏してます。Gusのベースがミラーボール仕様になってるんですけど、あれガラスじゃないですか?

Gus:演奏してると手が切れるんですよ(笑)。「血が出たんですけど…」って、アロンアルファでくっつけて(笑)。

Ray:他にもいろいろな仕掛けが入ってて、Gusが首から千羽鶴を提げてたりするんですけど、それぞれ意味を考えてもらえればなって。

―そして、これからはまた制作に戻ると。

Ray:あとライブが9月24日に、『CLAMP FESTIVAL』に出演させていただくので、味の素スタジアムでライブをやれるっていうのが超楽しみです。お客さんも“spiral”は知ってると思うので、それだけは絶対盛り上がってくださいねっていう(笑)。

―もちろん、“spiral”だけ知ってる人を“Criez”とかでも盛り上げないとですよね。

Ray:ぜひ、意味はわからなくても盛り上がってもらいたいですね。あとはアルバムも楽しみにしていてもらえた嬉しいです。昔からの僕らの最終形態というか、「ここがひとつの形です」って見せられるものになると思います。昔の曲も、新たにチャレンジした曲も、ホントにごちゃ混ぜになってるようなものになるんじゃないかって思いますね。

リリース情報
DUSTZ
『spiral』初回限定盤(CD+DVD)

2011年8月31日発売
価格:1,529円(税込)
Epic ESCL-3760~ESCL-3761

1. spiral
2. warning
3. Brilliant Day(DJ BASS Low-Life-Dogs Mix)
4. spiral(アニメVer.)
[DVD収録内容]
・DUSTZライブ映像&SPOT
※アニメステッカーA封入

DUSTZ
『spiral』通常盤

2011年8月31日発売
価格:1,200円(税込)
Epic ESCL-3764

1. spiral
2. warning
3. Brilliant Day(DJ BASS Low-Life-Dogs Mix)
4. spiral(アニメVer.)

DUSTZ
『spiral』期間限定盤(CD+DVD)

2011年8月31日発売
価格:1,529円(税込)
Epic ESCL-3762~ESCL-3763

1. spiral
2. warning
3. Brilliant Day(DJ BASS Low-Life-Dogs Mix)
4. spiral(アニメVer.)
[DVD収録内容]
・DUSTZライブ映像&SPOT
※アニメ描下しJKデジ仕様+アニメ描下しコンテブックレット付

プロフィール
DUSTZ

2009年『Break & Peace』でメジャーデビュー。同年、フランスの音楽祭に招聘され、数千人を動員する。2010年ドラムが脱退、メンバー全員が日仏ハーフに。世界的なクリエイティブチームによる新キービジュアルを発表し、音楽業界のみならずファッション業界でも大反響を呼ぶ。2011年4月『Criez』をリリース。フランス語×英語×日本語で展開される新世代ハイブリッドロックの誕生。



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