どこに転んだって人生は終わらない DUSTZインタビュー

メジャーデビューから実に2年半の月日を経て、DUSTZが初のフル・アルバム『TROIS』(トロワ/フランス語で「3」を意味する)を完成させた。スピード感が重視される現代において、若手のアーティストがこれだけの時間をかけるのは異例だが、彼らの場合はセカンド・シングル発表後にメンバーの脱退があり、その後バンドとしても大きなシフトチェンジを行ったことが大きな要因となっている。しかし、待たされただけの甲斐はあった。『TROIS』には3人となった新生DUSTZの歩みはもちろん、デビュー以前も含む、これまでのDUSTZが全て詰め込まれ、まさに集大成と呼ぶに相応しい作品となっているのだ。さらに、これまでデザイナーやアニメとのコラボレーションを続けてきた彼らが今回コラボしたのは、なんとUSラップ・メタルの大物LIMP BIZKIT。ギターのウェス・ボーランドとドラムのジョン・オットーが参加したDragon Ash“Fantasist”のカバーはすでに大きな話題を呼んでいる。バンドの過去・現在・未来の詰まった濃密な作品を作り上げた彼らに、まずは「おめでとう」の言葉を贈りたい。

メッセージは全く変わってないです。やりたい音楽も別に変わってるわけじゃないし。進化はしてると思うけど。

―まずは、アルバムが完成しての率直な感想から聞かせてください。

Ray
Ray

Ray:とりあえず「あ、終わったんだ」っていう、よくわからない喪失感がありましたね。でも、この前マスタリングを終えた音源を聴いたときに、「これがDUSTZだ」ってやっと思えたんです。僕はできればアルバムを通して聴きたい人なので、これまでのシングルだと「DUSTZだな」って思う前に終わっちゃってたんですよね。それが今回は5曲目を聴いてるぐらいで、「あ、俺DUSTZ聴いてるな」って思うんです(笑)。

―Gusくんはどうですか?

Gus:最高の1枚ができたと思いますね。初のアルバムっていうのもありますし、捨て曲もまったくないし。

Ray:思いがこもり過ぎてるからね(笑)。

―デビュー以降どころか、結成からこれまでの全部が詰まったアルバムですもんね。どの曲を取ってもどこかの年代だったり、何らかの側面がはっきりと感じられるアルバムになってると思うので、せっかくだから1人1人に思い入れの強い曲を挙げてもらおうかなと思うのですが。

Gus:僕は“Border Line”ですかね。DUSTZの原点と言える曲なんで。

Ray:結成してすぐできた曲だよね。まだ16~17歳とかだから、歌詞も若いですし。

Gus:思い出の曲だから、「これをどうにかしてまた復活させられないか?」って3人で相談して、アルバムに入ることになったんです。

Ray:この曲って、Dメロで急に激しくなるじゃないですか? それが俺の最初のDUSTZのイメージというか、コンセプトだったんですよ。メロディーはポップでわかりやすいんだけど、Dメロで急に頭を振りたくなるような感じ。それを一番最初に実現できたのが、この曲だったんです。

Kent
写真左:Kent、右:Gus

―ホントにDUSTZの原型なんですね。歌詞も当時書いたものなんですか?

Ray:当時の歌詞のまんまです。ひとつだけ変えたのが、「ネットワークの絆の中溺れ」ってところで、元は「ストラップジャラジャラの携帯で」だったんですよ。でも今はスマートフォンだし(笑)。じゃあ、何が流行ってるかって考えたら、SNSだろって。

―でも、ちゃんと今とリンクした歌詞になってますよね。当時はもちろん日本語と英語とフランス語を混ぜて歌ったりはしてなかったわけだけど、テーマとして境界線っていうのをすでに挙げてるわけで。

Ray:そうですね。メッセージは全く変わってないです。やりたい音楽も別に変わってるわけじゃないし。進化はしてると思うけど。

―当時は誰かからの影響とか、スタイルとして書いてたものが、今になってよりフィットするっていう感覚かもしれないですね。「あ、俺こういうこと歌ってたんだ」って、今気付くっていうか。

Ray:そうですね、だから“Border Line”は今歌っても気持ちいいし、言ってることは若いなって思いますけど、それを今歌える幸せっていうのもすごくあるんですよね。

2/4ページ:迷路の期間とかも全部このアルバムに詰まってるんですよね。アルバムの中で成長してるとも思うし。

迷路の期間とかも全部このアルバムに詰まってるんですよね。アルバムの中で成長してるとも思うし。

―じゃあ、Kentくん1曲挙げるとしたらなんですか?

Kent:“ホシクズメイロ~Lost in star DUSTZ~”ですね。普通に自分が好きな曲ってだけなんですけど、弾いてて1番気持ちいいんです。曲自体が完成したのは1年半前ぐらいなんですけど、歌詞がさまよっていて。

Ray:歌詞自体はできてたんだけど、この曲って“Criez”の前、“Brilliant Day”と同時期に作ってた曲で、そのときホントに色んなことで悩んでて、だからタイトルも「メイロ」なんですよ。この曲をリリースするっていう話もあったんですけど、歌詞と自分の気持ちがマッチし過ぎちゃって、歌詞はどうしても変えたくなかったんです。それで、この歌詞が出せるときに出したいっていう話をして、今回やっと出せたっていう。

Gus:1年半眠らせた隠れ名曲だよね。

Ray:自分らで言っちゃう(笑)。

写真左:Ray、写真右:Gus

― “Border Line”にしろ“ホシクズメイロ~Lost in star Dustz~”にしろ、紆余曲折を経てやっと日の目を見たわけですね。ちなみに、古い曲は封印して、最近の曲だけでまとめるっていう選択肢は最初からなかったんですか?

Ray:このアルバムに入ってるのはDUSTZにとってターニングポイントになってる曲ばかりで、むしろガンガン入れたいなって思いましたね。ただ、アルバムとして統一するために、今の俺らに落とし込もうっていうぐらいです。

―だからこそ、4人時代のシングル曲も2曲とも入ってると。

Ray:“Break & Peace”に関しては、アレンジは生まれ変わってるんですけど、歌は前のテイクのままなんですよ。アレンジを変えて、歌も録り直しちゃうと、全く違う新しい曲になっちゃう気がして。歌には当時の苦しさとかも出てるから、同じ歌って絶対録れないんで、だから残しておきたかったんですよね。

―アレンジもオリジナルのままっていう選択肢はなかったんですか?

Ray:実はありました。ただ、やっぱりどこに入れても浮くんで、誰かにリミックスしてもらおうかっていう話の中で、外タレの話につながるんです。最初はエレクトロっぽくしようと思って、フランスだし、DAFT PUNKかJUSTICEとか言ってて、でもバンド系で誰かに参加してもらうのも面白いよね…リンプとかどう? って。言ってみるもんですよね(笑)。

―それが“Fantasist”につながると。

Ray:うん、そうですね。でも、この頃(“Break & Peace”のリリース時)は衣装すごかったね。アフリカの貴族みたい(笑)。

Kent:あれはすごかったね(笑)。

写真左:Kent、写真右:Ray

―当時は自分たちでコントロールできてなかった?

Ray:できてなかったですね。とにかくメジャーデビューに向けて必死だったから。

―なんとかデビューして、さらに迷路も経て、やっと今にたどり着いたわけですね。

Ray:だからホント、その迷路の期間とかも全部このアルバムに詰まってるんですよね。アルバムの中で成長してるとも思うし。

3/4ページ:プレッシャーを感じることに対して、「どっちに転んでも別にホントはいいんじゃねえ?」って話もしました。

プレッシャーを感じることに対して、「どっちに転んでも別にホントはいいんじゃねえ?」って話もしました。

―じゃあ、Rayくんも1曲挙げてください。

Ray:ここでさっきの“Fantasista”ですね。僕らバンドを組んだのが学校のチャリティライブがきっかけで、そのときにDragon Ashの“Greatful Days”とか、“Freedom Of Expression”とかのカバーをやったんですけど、“Fantasista”をやったときにお客さんがとてつもなく盛り上がったんですね。フランス人学校だったんで、日本語通じないし、そもそも日本の音楽聴いてないから、SUM41とかの方が反応がいいんですけど、“Fantasista”は自然と盛り上がって。そういう意味では、僕らのルーツの曲なんじゃないかって。

―そして、本作ではさらにLIMP BIZKITのメンバーが参加していると。

Ray:普通にカバーしても面白味がないんで、もう1個なにかないかなってなったときに、さっきの“Break & Peace”の話もあり、「無理だと思うんですけど、一応連絡取ってもらったりできませんか?」っていう無茶ぶりをレコード会社にしたところ、叶ったっていう(笑)。

―それはすごい(笑)。

Ray:あと、歌い方は結構工夫してます。原曲とは違う“Fantasista”を作りたかったので、原曲はアメリカンだから、ヨーロピアンな感じにできないかなと思って。それで最初のAメロを低く歌ったり、声の重ね方を工夫したり、だいぶ作り込みましたね。結果的に、日本とフランスとアメリカのミクスチャー、まさに「TROIS」な、面白いものになったと思います。

―Gusくんもリンプの大ファンですよね?

Gus:ホントずっと聴いてたんで、感動でしたね。「ウェスって、あのウェスですか?」みたいな(笑)。高校時代、高いベースを買おうと思ったときも、やっぱりリンプとかミクスチャー系のバンドと同じブランドのを買って、40万近くしましたからね。1年で頑張って払い切りましたけど…つらかったです(笑)。

ウェス・ボーランド(LIMP BIZKIT)
ウェス・ボーランド(LIMP BIZKIT)

―リンプって長い歴史の中でアップダウンがものすごいバンドじゃないですか? ウェスも1回やめてるけど、また戻ってきて、今もバンドが続いてるってすごいことだと思う。3人になってからのDUSTZにも、バンドの危機ってあったんですか?

Kent:1回3人で話したよね? ちょうどNaokiがやめたときに…

Ray:そのときモチベーションがすごく下がってたんですよ。やりたいこと全部やれてたわけじゃないし、リハに入っても負のものがどんどんたまっていくっていうか…俺その頃フラストレーションのせいなのか、急に音程が取れなくなったんですよ。レコーディングでも自分の音が不安で、それもあって「いい機会だからやめる?」って話はしましたね。ここからもう1度やるんだったら、すべてを捨てなきゃいけないレベルだよって。でも…他にやりたいことないし、やるかって(笑)。

Kent:うん、他になかった(笑)。

―3人で突き詰めたっていうよりは、発想の転換が大きかった?

Ray:完全にそうですね。プレッシャーを感じることに対して、「どっちに転んでも別にホントはいいんじゃねえ?」って話もしました。例えば、メジャーに固執するとそれがプレッシャーになって、いいものを生むよりも、(みんなが)欲しいであろうものを生むって発送になってくるじゃないですか? でも「最悪インディーズで好きなことやればいいじゃん」って考えれば、自分のやりたいことができるじゃないですか? Naokiが抜けたときに、吹っ切るというか、その覚悟をしようって。そうしたら「Criez」(=叫ぶ)し出したんですよ(笑)。

4/4ページ:これでやっと次へのきっかけが見えたというか、踏み出せるなって思えたんで、それはすごくよかったです。

これでやっと次へのきっかけが見えたというか、踏み出せるなって思えたんで、それはすごくよかったです。

―じゃあ、もう1曲だけ聞かせてもらうと、“Ca c'est Paris”は元々“Brilliant Day”のカップリングだったんですよね? フランス語で歌うようになってからは、この曲に対する意識も変わったと思うんですけど、どうでしょう?

Ray:はい、出したときとはイメージが全然違いますね。なぜカップリングなのにアルバムに入れたかっていうと、やっぱりこの曲もターニングポイントだったからなんです。フランス語を使った最初の曲で、ベースもガチガチに歪ませて、全く周りを気にせず作った曲だったんですけど、その反響が良かったので、「あ、やっていいんだ」って思えたんです。

―なるほど。それは大きかったですね。

Ray:あと曲自体はすごく有名なシャンソンで、「これがパリです」って、パリを紹介する曲なんですけど、それをゴリゴリでやればDUSTZを紹介する曲にもなるなって。最初はただのカップリングで、僕らがライブで気持ち良くなるためだけに作った曲だったんですけど、今ではすごく色んな意味を持った曲になりましたね。

―やっぱり、今回のアルバムっていうのはDUSTZ結成からの3人の成長のドキュメントになってますよね。これは1人1人に聞きたいんですけど、自分がここは成長した、変わったなって思う部分はどこですか?

Gus:どう説明していいのかわかんないんですけど、自分の中の心境がどこかで変わった気がします。いろんな考え方ができるようになったし、「こういう考えもある」「ああいう考えもある」って、色んな方向で捉えられるようにもなったかな。

―こだわる部分も明確になったけど、受け入れる柔軟性も身についた?

Kent

Gus:そうなったかなと思います。例えば、何か言われたときに、「よくわかんねえよ」って一方的に否定するっていうよりは、「ああ、なるほどね」って思えるようになったかな。

―Kentくんはどうですか?

Kent:変わってない気もするんですけど…ギターが好きになりましたね。前から好きなんですけど(笑)、やればやるほど魅力が出てきて、どんどん好きになってますね。


―Rayくんは?

Ray:変わったところだらけだと思うんですけど、真ん中にある「DUSTZをやりたい」っていう意識だけは変わってないのがよかったなって思いますね。それ以外はホント変わったと思う。Gusが言ったこともよくわかるし、DUSTZの音楽性も「こうじゃなきゃいけない」っていうものから、「こういうのもありなんじゃない? むしろDUSTZってこうなんじゃない?」って思えるようになったし。

―ああ、それってDUSTZがこれまでやってきたデザイナーさんとかアニメとのコラボをするときに絶対必要なことだったと思います。それが身についたっていうのは今後のことを考えてもすごく大きいんじゃないかな。

Ray:そうですね。ありがとうございます。

―でも、ここまですべてを詰め込んだ作品を作っちゃうと、これで燃え尽きちゃうんじゃないかなんて余計な心配もしちゃうんですよね(笑)。

Ray:若干疲れたなとは思うけど(笑)、いやまだまだですね。これでやっと次へのきっかけが見えたというか、踏み出せるなって思えたんで、それはすごくよかったです。

リリース情報
DUSTZ
『TROIS』初回限定盤(CD+DVD)

2011年12月14日発売
価格:3,500円(税込)
ESCL-3797/ESCL-3798 / Epic

1. Toi=Moi:▽
2. spiral
3. Fantasista
4. Re:member
5. FLY
6. Orphee
7. Ca, c'est Paris ! ( DUSTZ Version )
8. ホシクズメイロ ~ Lost in Star Dustz ~
9. Border Line
10. Criez
11. Break & Peace (Ver. 1. 3)
12. Brilliant Day DJ BASS Low-Life-Dogs Mix
[DVD]
1. Criez
2. swallow
3. spiral

DUSTZ
『TROIS』通常盤

2011年12月14日発売
価格:ESCL-3799(税込)
ESCL-3799 / Epic

1. Toi=Moi:▽
2. spiral
3. Fantasista
4. Re:member
5. FLY
6. Orphee
7. Ca, c'est Paris ! ( DUSTZ Version )
8. ホシクズメイロ ~ Lost in Star Dustz ~
9. Border Line
10. Criez
11. Break & Peace (Ver. 1. 3)
12. Brilliant Day DJ BASS Low-Life-Dogs Mix

イベント情報
『DUSTZ「TROIS」RELEASE PARTY 2011』

2011年12月18日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 代官山 UNIT
出演:DUSTZ
料金:前売3,500円(ドリンク別)

プロフィール
DUSTZ

2009年『Break & Peace』でメジャーデビュー。同年、フランスの音楽祭に招聘され、数千人を動員する。2010年ドラムが脱退、メンバー全員が日仏ハーフに。世界的なクリエイティブチームによる新キービジュアルを発表し、音楽業界のみならずファッション業界でも大反響を呼ぶ。2011年12月、初のフル・アルバム『TROIS』をリリース。フランス語×英語×日本語で展開される新世代ハイブリッドロックの誕生。



フィードバック 0

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • どこに転んだって人生は終わらない DUSTZインタビュー

Special Feature

Habitable World──これからの「文化的な生活」

気候変動や環境破壊の進行によって、人間の暮らしや生態系が脅威に晒されているなか、これからの「文化的な生活」のあり方とはどういうものなのだろうか?
すでに行動している人々に学びながら、これからの暮らしを考える。

記事一覧へ

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて