人はなぜ踊るのか? !!!(CHK CHK CHK)インタビュー

マイケル・ジャクソンの(ほぼ)同タイトルのアルバムのようなビッグな作品を目指したという最新作『THR!!!ER』を今年の4月に発表した最強&最狂のダンスパンクバンド、!!!(CHK CHK CHK)が先日代官山UNITで来日公演を行った。すでに日本の音楽フェスティバルの常連であり、前作『Strange Weather,Isn’t It?』発表時は、『フジロック』のホワイトステージでヘッドライナーを務めたほどの人気バンドだけに、クラブ規模でのライブはまさにプレミアム。運良くチケットを手に入れたオーディエンスは、彼らの叩き出すサイケデリックかつハードコアなグルーヴに酔いしれ、ニック・オファーの衰えを知らない切れ味十分のダンスを堪能したことだろう。同世代のDAFT PUNKが最新作でルーツに回帰し、実際にマイケル・ジャクソンのアルバムにも関わっていたような往年の名プレイヤーを集め、生演奏の魅力を封じ込めた2013年。!!!の存在意義も、これから改めてクローズアップされていくに違いない。

!!!が注目を浴びるきっかけとなったのは2003年、前ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニが打ち出した「キャバレー営業許可法」を辛辣な言葉で批判した、9分に及ぶサイケデリックジャム“Me and Giuliani Down By the School Yard(A True Story)”だった。「キャバレー営業許可法」とは、ライセンスのないバーやクラブでのダンスを禁止し、多額の年間許可料を課すというものであり、現在風営法が問題となっている日本の現状とリンクするものだと言えるだろう。では、そもそも人はなぜダンスを踊り、権力はそれを規制しようとするのだろうか? そんな大きな命題を掲げて臨んだのが、以下の30分弱に及ぶニック・オファーとの対話である。ライブの翌日、しかもお昼からの取材でありながら、疲れた様子を見せることなく、ときおりユーモアを交えながら、真摯に対応してくれたニックに感謝を。

踊ることによって、自分をもう1段階上のレベルのハイな状態まで持って行くことができるんだ。

―まずは、ストレートにお伺いします。「人はなぜ踊るのか?」という大きな質問に、あなたなら何と答えますか?

ニック:うーん、そうだな……女の子をベッドに連れてくためじゃない?

―あ、なるほど(笑)。

ニック:女の子は踊るのが好きでクラブやライブに行くけど、男の子は踊るのがそんなに好きじゃなくても、女の子をゲットするのが目的で行ったりするだろ? 歴史を振り返ってみても、そもそも踊りは繁殖や繁栄のための儀式に使われるものでもあったわけだしね。ちょっと前に「音楽は脳の中でどう作用するのか?」っていうテーマの本を読んだんだけど、最後の章には「音楽っていうのは、要は繁殖のための叫びだ」って書いてあったよ。

ニック・オファー(!!!)
ニック・オファー(!!!)

―あなた自身、踊りのセクシャルな部分というのを意識していますか?

ニック:よく「セクシーな踊りだね」って言われるけど、僕としてはロックンロールなつもりで踊っているのであって、踊りながらセックスのことを考えてるわけじゃないよ(笑)。まあ、ロックンロールも語源を辿ればセクシーさと関連してるし、踊ることを通じてそういう欲求みたいなものを自然と表現してるのかもしれないけどね。でも、踊るっていうのは、音楽を体で感じて、それを昇華するっていう行為だよね。ただじっとしながら音楽を聴くよりも、もっと純粋な形で音楽を楽しめるんじゃないかな。僕は、踊ることによって、自分をもう1段階上のレベルのハイな状態まで持って行くことができるんだ。

―ダンスをすることの喜びを覚えた原体験はいつでしたか?

ニック:最初は、小さい頃に母親と一緒にダイアナ・ロスの“Upside Down”を聴きながら踊ったこと。もう1つ覚えてるのは、アメリカでは学校でダンスパーティーがあるんだけど、そこに友達のケリーって子とパートナーを組んで行ったんだ。でも、踊り方がよくわからなかったから、「どうしていいのかわかんないよ」って言ったら、ケリーに「エアギターみたいな感じで、見よう見まねでやってみればいいのよ」って言われてさ。それで自然に体を動かしてたらだんだん楽しくなってきて、その夜は一晩中踊ったね(笑)。そのときにかかってたのは、マドンナの“Lucky Star”だったな。

―確かに、最初はどうやって踊ったらいいかわからないですよね。特に、日本人は基本的にシャイだから、踊るのがあんまり得意じゃなかったりします。楽しく踊るためのコツってありますか?

ニック:最初はビデオを見て、鏡の前でロックスターを真似してみたりしてたかな。でも、僕の周りには子どもがいる人が多いんだけど、赤ちゃんが興奮したときに手足をバタバタさせるみたいな、すごく単純で自由な動きでいいと思うんだ。逆に、かっこよく見せようと思うとあんまり上手くいかなかったりするから、とにかく音楽に身を任せて、その音楽から感じられるように体を動かせばいいんだよ。僕の踊りだって、左・右・上・下みたいなホントに単純な感じだしね(笑)。


デモ行進や座り込みを見ると、僕らがやってる「踊る」ことも、ある種の反対運動だと思う。

―さきほど「そもそも踊りは儀式のために使われていた」という話がありましたが、日本の伝統的な踊りである「盆踊り」も、精霊を迎える、死者を供養するための行事です。ちなみに、その盆踊りの中でも特に有名な「阿波踊り」には「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々」という素敵なフレーズがあるんですよ(笑)。

ニック:へえ、初めて聞いたけど、とっても面白いね。でも、僕は阿呆じゃないよ(笑)。短パンでステージに出て行って、真面目な顔をして踊り始めると、みんな結構笑うんだけど、「何がそんなにおかしいの?」って思う。まあ、バカをやるっていうのはすごくいいことで、僕らは何でも論理を詰め込み過ぎちゃって、理屈で考えてしまいがちだから、そういうのから解放されることはすごく大事だよね。

ニック・オファー(!!!)

―間違いなく、それも人が踊る理由の1つでしょうね。

ニック:そういえば、そのフレーズで思い出したんだけど、猫に向かってレーザーポインターをちらつかせると、猫が夢中になって動き回るでしょ? 僕の友達がそれで一晩中遊んでて、「見ろよ、猫ってホントバカみたいだよな!」って言うんだけど、「そうやって楽しんでる、お前こそバカみたいだよ」って思って(笑)。それってつまり「踊る阿呆に見る阿呆」なんじゃない?

―うーん、合ってるような、ちょっと違うような……(笑)。まあ、阿波踊りは動き回る猫以上にエネルギッシュだから(笑)、ぜひ一度体験してほしいです。

ニック:オッケー、次に日本に来るときはその動きを研究して、取り入れてみるよ(笑)。

―楽しみにしてます(笑)。ただ、今日本では風営法の取り締まりが強化されている状況です。!!!はかつてニューヨークの「キャバレー営業許可法」を批判した“Me and Giuliani Down By the School Yard(A True Story)”という曲を発表していますが、権力がダンスを規制しようとすることについて、どんな見解を持っていますか?

ニック:僕らがその曲を書いたのは、ちょうどロサンゼルスからニューヨークに移住した頃。ニューヨークはディスコが生まれたところなのに、踊りに対する規制ができるなんて、頭がおかしいんじゃないかと思ったよ。踊るのはすごく自然なことなのに、規制してダメにしてしまうなんてさ。それに対して、「仕方のないことだ」って思っちゃう人がいるのも、残念に思う。そういう法律を作る人って、きっと踊ったことがないんじゃないかな? ホントにバカな話だよ……だって、踊らなかったら女の子をベッドに連れて行けないじゃん(笑)。

ニック・オファー(!!!)

―つまり、ダンスを規制しようとする人っていうのは、恋愛経験が浅いってことでしょうか(笑)。

ニック:うん、それが問題なんじゃないかな(笑)。

―そういう人に対して、ダンスの持つ喜びやロマンスを伝えるには、どうすればいいと思いますか?

ニック:難しいなあ……僕にできることは“Me and Giuliani Down By the School Yard(A True Story)”っていう曲を書くことだったと思ってるから、あとはみんながそれを大音量で聴いて、僕のメッセージを理解してくれたらいいなって思うよ。

―昨日のUNITのライブでも“Me and Giuliani Down By the School Yard(A True Story)”は披露されましたが、めちゃめちゃ盛り上がりましたよね。きっとあの場に集まっていたオーディエンスは、踊ることの理由を頭ではなく感覚でわかっている人たちなんだろうなって思います。

ニック:デモ行進や座り込みを見ると、僕らがやってる「踊る」ことも、ある種の反対運動だと思うんだ。デモの美しい表現の仕方って言うのかな、ビューティフルなプロテストなんじゃないかって思うんだよね。

取材時間はあっという間に過ぎてしまい、「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々」の意味がちゃんとニックに伝わったかどうかはやや怪しいが、僕はこのフレーズに人が踊る理由がよく表れているように思う。つまり、人は誰もが愚かで、どこかが欠けているからこそ、そんな自分を肯定して、解放するためにダンスをするのであり、それでも埋まらない何かを埋めるために、誰かを求めて、またダンスを続けるのではないかと。“Me and Giuliani Down By the School Yard(A True Story)”で、ニックはこんな風に歌っている。<心を解放すれば学べることもある 音楽にその身を任せてみなよ この場所とこの瞬間 感じようぜ 思いっきり>。

リリース情報
!!!
『THR!!!ER』国内盤(CD)

2013年4月24日発売
価格:2,111円(税込)
BRC-370

1. Even When The Water's Cold
2. Get That Rhythm Right
3. One Girl / One Boy
4. Fine Fine Fine
5. Slyd
6. Californiyeah
7. Except Death
8. Careful
9. Station (Meet Me At The)
10. Midnight At The Blur [Bonus Track for Japan]

プロフィール
!!!(ちっくちっくちっく)

1996年カリフォルニア州サクラメントで結成。2001年に1stアルバム『!!!』、2004年に2ndアルバム『LOUDEN UP NOW』をリリース。2006年にはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのツアーに帯同し、全世界が注目するバンドへと成長した。2007年には大ヒット・アルバム『MYTH TAKES』を、2010年には4thアルバム『Strange Weather, Isn't It?』をリリースし、日本でもフジロックフェスティバルやエレクトラグライドを含め、すべてのライヴで集まったオーディエンスを熱狂させてきた。最新アルバム『THR!!!ER』を引っさげての来日公演を即完売させるなど、快進撃を続けている。



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