勝手にカテゴライズしないで。気ままなラブサマちゃんの進路相談

インターネットの登場は、思春期の少年少女に何をもたらしたのか? 上手くいかない現実から逃れて、好きなことに打ちこめる場というポジティブな側面もあれば、ネットにはネットの社会が存在し、幼くして現実の社会と板挟みになってしまうというネガティブな側面もあるだろう。何にしろ、少年少女は何度も挫折や失敗を経験し、少しずつ大人になっていく。それはネットのあるなしに関係なく、いつの時代でも変わらないことだ。

「ネット発の宅録女子」として昨年CDデビューを果たしたラブリーサマーちゃんが、3か月連続シングルをリリース。オマージュのかおりも色濃い『LOVE♡でしょ?(Pro.by 無敵DEAD SNAKE)』や『PART-TIME ROBOT』もいいが、特筆すべきは「大人になること」に正面から向き合った『青い瞬きの途中で』だろう。デビューによってネットの内外で注目を集める一方、実生活では転学を経験するなど、この1年は大きな変化の年となった。そんななかで彼女は徐々にラブリーサマーちゃんとしてフラットに音楽を楽しめるようになってきたという。少女から大人の女性へ。その泣き笑いの日々を追った。

頑張れば頑張るほど、ちょっとずつスキルアップしていくのがわかるんですよね。私、その過程が好きなんです。

―Twitterを見ると、大学の履修登録をし忘れてたみたいですけど、無事登録できたそうですね(笑)。

ラブサマ:そうなんです、ありがとうございます(笑)。なんでこんなこともできないんだって感じなんですけど……前の大学をやめて、受験し直して、今年の春からまた新1年生なんです。本当に勉強したいことは何だろうと考えたら、行きたい大学が出てきて。

―前回の取材では、日本文学を専攻してるって言ってましたよね。

ラブサマ:いまは文芸学科で勉強しています。パッと聞き違いがわからないと思うんですけど、日本文学はこれまでの文学を研究する学問で、文芸は自分で創作する学問なんです。もちろん、研究の上に創作があるんですけど、日本文学のときは古事記とか日本書紀をずっと研究してて……心が折れちゃって(笑)。

―歌詞も書いているし、やっぱり創作する方が好きなんですね。

ラブサマ:はい。そっちの方が好きなので、いまはのびのび元気でいられて、授業もすごく楽しいです。

―前回の取材で「友達がいないことに危機感を感じてる」とも言ってましたけど、履修登録ができたのは友達のおかげのようですね。

ラブサマ:そうなんです、びっくりです。私、中学からエスカレーターだったので、中高大と8年間周りに同じ人がいたから息苦しくて。それが一度リセットできたから、いまは素直にしゃべれるようになりました。

―環境的にも精神的にも、心機一転して春を迎えたわけですね。それは、ラブリーサマーちゃんとしての創作にも影響を与えていますか?

ラブサマ:初めてCDを出したのが去年の夏なんですけど、聴いてくれる人がいきなり増えたんです。それまでは曲をネットにアップすることしかしていなかったから、ネットの音楽に興味がある人にしかリーチできてなかったけど、お店にCDが並ぶことによって、不特定多数の人が聴いてくれるようになったことを実感していて。CDを出すということにすごく可能性を感じました。

―それが、3か月連続でシングルをリリースするモチベーションに繋がったと。

ラブサマ:作品にする作業ってしんどいことではあるんですけど、頑張れば頑張るほど、自分がちょっとずつスキルアップしていくのがわかるんですよね。私、その過程が好きなんです。CDを出したいというのは常に思っているので、今回みたいに短い期間で出せるのはすごく嬉しいですね。

一度聴いただけで、「あの曲じゃん!」ってなりますよね(笑)。

―まずは4月に『LOVE♡でしょ?(Pro.by 無敵DEAD SNAKE)』が出ているわけですが、いきなりの問題作ですね(笑)。曲自体もジャケットも、相対性理論のオマージュのようですが……?

ラブリーサマーちゃん『LOVE♡でしょ?(Pro.by 無敵DEAD SNAKE)』ジャケット
ラブリーサマーちゃん『LOVE♡でしょ?(Pro.by 無敵DEAD SNAKE)』ジャケット

ラブサマ:前の大学にいたときに出入りしていたサークルで、無敵DEAD SNAKEさん(“LOVE♡でしょ?”のプロデューサー)に出会って、「歌ってほしい曲がある」って2曲持ってきてくれて。1曲はすでにSoundCloudにアップされてる“乙女の秘密”という曲で、もう1曲は私のために書き下ろしてくれたという“LOVE♡でしょ?”でした。

―初対面でいきなり書き下ろしてくれたんだ(笑)。

ラブサマ:そうなんです(笑)。“乙女の秘密”はすぐにアップされたんですけど、“LOVE♡でしょ?”は1年半くらいお蔵入り状態になってて。でも、いい曲だからこのまま人に聴かせないのは嫌だと思ってたところに、今回の連続リリースの話がきたので、「ここだ!」って。ジャケットのことはそのときに考えました。

―どうせやるなら、思いっきりオマージュにしちゃおうと。

ラブサマ:もともと無敵さんが、私の声を聴いて、相対性理論をオマージュして作った曲なんです。まあ、普通に一度聴いただけで、「あの曲じゃん!」ってなりますよね(笑)。

「やってるやってる、ププッ(笑)」みたいに、クスッとなってくれればそれが一番ですね。

―それにしても、結構思いきりましたよね。おそらくこれまでも相対性理論と比較されることは多かったと思うんですけど、そのことについてはどう思ってたんですか?

ラブサマ:もともと高校生のときに相対性理論のコピーバンドをやっていて、そのときにボーカルのやくしまるえつこさんの歌い方を研究していたんですよね。そのコピーバンドが解散して、高3から宅録を始めたので、初期はそのコピーバンドの余波みたいな感じが残っていて、やくしまるさんの声に似るように頑張ってしまっていたんです。でも、私の地声はやくしまるさんみたいな感じではないというのが、今回の3枚を聴いてもらうとわかってもらえるんじゃないかな。

―確かに、やくしまるさんっぽい歌声なのは“LOVE♡でしょ?”だけですね。

ラブサマ:もともと自分のちょっと低めの声があんまり好きじゃなくて、なるべくかわいく歌おうって思ってたんです。だから、やくしまるさんみたいな可愛い声にわざと寄せて歌っていたし、そうすると相対性理論に似てるってすごく言われました。私は相対性理論が大好きなので、似てるって言われたとき、「あの相対性理論に似てるって言われた! 嬉しい!」と思っていたんですが、似てる似てると言われすぎるうちにそれが嫌になってきたりもしました。でも、2年間くらいラブリーサマーちゃんとして歌ってきたなかで、だんだん自分の声に慣れてきて、なかには「気だるくていいね」って言ってくれる人もいて、自分の声に対する拒否感が薄くなったんですよね。だから、だんだん素の自分の声で歌えるようになってきたし、そうなると誰かに似てると言われてもさほど気にならなくなりました。今回のジャケにすることで、相対性理論のファンの人にも聴いてもらいたいし、いままで「相対性理論の二番煎じ」とか「劣化版やくしまるえつこ」とか言ってきた人たちに、カウンターを入れる意味合いもあります。まあ、「やってるやってる、ププッ(笑)」みたいに、クスッとなってくれればそれが一番ですね。

普通に聴いて楽しければいいのかなって、やっとフラットに思えるようになってきたんです。

―続いて、5月にリリースされる『PART-TIME ROBOT』は初のバンド録音です。もともと宅録を始めたのもバンドのデモ用だったとのことなので、念願叶ってのことですね。

ラブサマ:そうですね。バンドはずっとやりたかったんですけど、バンドって人間関係が難しいので、宅録を始めて1年くらいは一人で作業するのが好きだったんです。でも、今年の1月に初めてバンドセットでワンマンをやったら、バンドの人たちが本当にいい人でやりやすかったし、音楽的にも自分にはないエッセンスをくれたんですよね。「人とやるのがいいっていうのはこういうことか!」と思って、今回バンドで作りました。

―箱庭の室内楽のハシダカズマさんをはじめ、ライブと同じメンバーがレコーディングにも参加しているそうですね。そして、相対性理論に続き、今度はWEEZERのオマージュのようですが……?

ラブリーサマーちゃん『PART-TIME ROBOT』ジャケット
ラブリーサマーちゃん『PART-TIME ROBOT』ジャケット

ラブサマ:私、WEEZERの“Beverly Hills”って曲が大好きで……聴いてわかりますか?

―もちろん。まあ、好きな人ならわかりますよ(笑)。

ラブサマ:私、あの曲聴くと「何でもできるぜ!」って気持ちになれるから、そういう元気が出る曲を作りたいと思って。しかも“LOVE♡でしょ?”の次にこれを出したら、「ププッ(笑)」ってなってくれるんじゃないかなと思ったんです。

―ラブサマちゃんの曲って結構エモいですよね。「ネット発宅録女子」っていうかわいいイメージもあるけど、むしろそうじゃない曲の方が多い気がする。WEEZERのリヴァース・クオモのちょっとダメ人間なところとかも好きなんですか?

ラブサマ:すごく好きです。リヴァースみたいな人が身近にいてくれたら最高だなって思います。私、Theピーズとかも好きなんで。

―最初に履修の話もしたけど、そういう自分のダメな部分を重ねてグッと来るんですかね。

ラブサマ:たぶんそうだと思うんですけど、浸りたいだけなのかなって気もするんですよね。高校生の頃は鬱っぽい感じだったので(笑)、ちょっとダメな人が作る音楽を聴いて浸るのが気持ちよかったし、もしくは寄り添ってくれてるような気分になれて、救われた気持ちになっていたのかなって。

―そういうダメな部分とか暗い部分って誰でも多かれ少なかれ持ってるから、そこに寄り添えるのは音楽の大事な役目のひとつで。自分が歌うことによって、聴いてくれる人にどう思ってもらいたいとかは考えますか?

ラブサマ:それはあんまり考えてなくて……でも、syrup16gとかReeferとかBURGER NUDSとかを聴いて、おセンチになるのが好きだったので、私も音楽をやるにあたって、彼らと同じようなことを表現できたらいいなって少し前は考えてたかもしれません。でも、最近はそこから脱しました。私、音楽にセンチメンタルを求めすぎていたなと思って。英語の歌詞ですごくポップな曲調でも大好きになるし、そんなにたいそうな歌詞じゃなくても、普通に聴いて楽しめるだけの音楽も良い音楽だなって、やっとフラットに思えるようになってきたんです。

将来のことを考えたときに、「いまが走り出すときだ」と思ったので、(「青い瞬き」という言葉を)ここで使っちゃいました。

―“PART-TIME ROBOT”の歌詞が英語なのは、さっき言ってくれたように、歌詞はひとまず置いておいて、ポップな曲にしようという意図があったわけですか?

ラブサマ:いや、これはちょっと変な理由で。私、曲を作るごとに、小さいことでいいので、今までやったことがないことにチャレンジするという課題を課してて、それで今回は英語詞にチャレンジしてみようと思ったんです。この曲、すごく子供っぽい歌詞なので、日本語で歌うのはダイレクト過ぎてちょっと恥ずかしくて。であれば、英語で歌おうって。

―どういうことが歌詞のテーマなのでしょうか?

ラブサマ:だいぶ前にスタッフさんに「電子音楽をやろう」っていう提案をしていただいたことがあったんですよ。そのとき私は反発したんですけど、「やりたいのは良いけど、でも、全然曲作れてないじゃん」って言われて、音楽たくさん聴いて勉強して良い曲を作ろうと思って、その日の帰り道、泣きながらTSUTAYAで50枚CD借りました。その日に書いたのがこの歌詞なので、「私のやりたいことをやりたいから頑張ります」みたいな内容ですね。

―だから、<わがままな赤ちゃんでごめんね>なんですね。

ラブサマ:でもそのスタッフさん、本当はすごくいい人なので、「どうしてこんな文句言う曲作っちゃったんだろう?」って、泣きそうになりながら練習しました(笑)。あと、“PART-TIME ROBOT”というタイトルは、真ん中が泣いてる人(「T-T」)になってるんです。ちょっとポップな泣き方なのが、字面的にもいいなって。

―なるほど。この曲の歌詞はまだちょっと鬱モードが入ってるけど(笑)、単純にポップで楽しい曲としても聴ける曲になってますよね。

ラブサマ:よかった。でも、最近英語で歌うバンド多いじゃないですか? 英語で歌うバンド、私は好きなんですけど、「日本人なのにどうして英語で歌ってるんだろう?」と不自然に思うこともあるから、この曲も「英語が上手いわけでもないし、日本語で歌えばいいのに」って思われないかが心配なんです。

―それは大丈夫だと思う。6月に出る3枚目の『青い瞬きの途中で』が、日本語のすごくいい曲だから。

ラブサマ:ありがとうございます。私、いまの大学に行きたいと思ったのが去年の11月なんですけど、情けない話、高3のときはいかにしんどくない道を生きるかしか考えてなかったんです。前の学部も消去法で決めましたし。でも、二十歳になって初めて「これからどうしよう」って考えたんですよね。みんなは受験という門をくぐるたびに自分のこれからについて考えてきたんだと思うんですけど、私はこれまで一度も考えたことがなくて、それを初めて真剣に考えたときに、この曲を作ったんです。

―<大人になったら何になれるんだろうな 違う 大きくなったら何になりたいだろう>っていい歌詞ですよね。

ラブサマ:正直、この箇所の歌詞はまだすごく恥ずかしいんです。でも、周りの人に「これくらい素直な方がいいから」って説得されて、これに決めました。

―シングル3枚の流れもよくて、クスッと笑えるような最初の2枚がありつつ、「ラブリーサマーちゃん」という存在と自分自身が最後にフラットになるような、そんな印象を受けました。

ラブサマ:嬉しいです、そんなによく理解してくださって。「青い瞬き」って、青信号が赤になる前の点滅のことなんですね。赤になる前に走っちゃおうっていう。私、夜散歩するのが好きなんですけど、交差点で「駆け込むな 青い瞬き もう危険」って交通安全の標語を見たときに感動して、「絶対このフレーズ使って曲にする!」と思ったんです。将来のことを考えたときに、「いまが走り出すときだ」と思ったので、ここで使っちゃいました。

コンプレックスを解消するって、素晴らしいことだと思うんですよ。私、自分の嫌なところを改善していくのめっちゃ好きなんです。

―“青い瞬きの途中で”の歌詞にも表れている通り、この1年は子供から大人への成長の年だったと言えそうですね。

ラブサマ:私、自分に自信がなくて「あー!!」って感情が乱れることが多かったんです。でも、ラブリーサマーちゃんを始めて、評価してくれる人が増えたことで、自己肯定できるようになって。それで精神的にも落ち着いたっていうのは絶対あると思います。まあ、思春期が終わったっていうのもあるとは思うんですけど。

―かつてのラブサマちゃんと同じように悩んでる高校生に何かアドバイスをするとすれば、どんな言葉を贈りますか?

ラブサマ:私が高校生のときにしんどいと思っていたのは、家族や友人との人間関係と、自分が女の子としての価値が無いということと、「自分には何も誇れるものがない」っていう、その3つが大きかったんです。それをひとつずつ潰していきましたね。前は父との関係が上手くいってなかったんですけど、離れて住んでみたことで、数年ぶりにちゃんと会話できましたし、ダイエットして男の子と付き合ったり、私にとっての音楽みたいに、自分が打ちこめるものを見つけるのも大事だし。転学したのも、自分が集団のなかの個として上手くやっていけるっていう自信をつけるためでもあったんです。

―なるほど。

ラブサマ:自分がどうしていま嫌なのかを明確にして、時間がかかってでも、それを一個ずつ潰していくことが大事なんだと思います。コンプレックスを解消するって、素晴らしいことだと思うんですよ。私、自分の嫌なところを改善していくのめっちゃ好きなんです。そのためだったら、めちゃめちゃ頑張るんで(笑)。

―スキルアップの話とも通じる気がします。先を見ちゃうと何もできないけど、まずは近くのことからひとつずつっていう。そうやって一歩ずつ進んでいくんでしょうね。まあ、やりたいことはどんどん変わっていくって言っていたから、お決まりの「今後の展望は?」って質問はしませんけど(笑)。

ラブサマ:心のなかを見られてるみたいで怖くなってきた(笑)。

リリース情報
ラブリーサマーちゃん
『LOVE♡でしょ?(Pro.by 無敵DEAD SNAKE)』(CD)

2016年4月6日(水)発売
価格:324円(税込)
Bubbly Summer / BUB-1

1. LOVE♡でしょ?(Pro.by 無敵DEAD SNAKE)
2. また明日

ラブリーサマーちゃん
『PART-TIME ROBOT』(CD)

2016年5月18日(水)発売
価格:324円(税込)
Bubbly Summer / BUB-2

1. PART-TIME ROBOT
2. 長いため息のように

ラブリーサマーちゃん
『青い瞬きの途中で』(CD)

2016年6月22日(水)発売
価格:324円(税込)
Bubbly Summer / BUB-3

1. 青い瞬きの途中で
2. Rock 'n' Roll Star

イベント情報
『ラブリーサマーソニック』

2016年8月20日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 渋谷 WWW
料金:3,300円(ドリンク別)

プロフィール
ラブリーサマーちゃん
ラブリーサマーちゃん

1995年生まれ 現役大学生20歳の女子。2013年の夏より自宅での音楽制作を開始し、インターネット上に音源を公開。SoundCloudやTwitterを中心に話題を呼んだ。2015年9月9日には自身の単独名義で初となるCD『ベッドルームの夢e.p.』、11月11日にアルバム『#ラブリーミュージック』を発売。2016年4月より3か月連続でシングルをリリース。8月には、4度目のワンマンライブとなる『ラブリーサマーソニック』を渋谷 WWWで開催する。



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