決定的瞬間の概念が覆る。いくしゅんに学ぶスマホカメラ講座

昨年、初の写真集『ですよねー。』が話題を呼んだ、写真家・いくしゅん。日常で暮らす無名の人々や、身近な動物たちの一瞬の表情や面白い風景を切り取ったいくしゅんの作品は、クスッと笑いやニヤリ笑いを伴いながら、じわじわと心に染みこんでくる不思議な魅力にあふれている。そんないくしゅんが、Androidスマートフォンの最新機種「Galaxy S7 edge」での写真撮影に挑戦。日常スナップを撮るには最適なスマートフォンカメラと、便利&オモシロ機能を使って「日常スナップのプロ」は何をどう撮り、どう見せてくれるのか?

筋肉ムキムキの犬に、ハクビシン。「夜の不思議なシーン」をクッキリ激写

―ふだんはデジタルカメラをお使いだと思いますが、スマートフォンで写真を撮られることはあるんですか?

いくしゅん:まだ作品として世に出したことはないですけど、最近は撮るようになってきました。今まではデジカメを家に置き忘れたらわざわざ取りに戻っていたんですけど、最近はスマホで撮っちゃうので、引き返さなくなりました。

―今回は、「Galaxy S7 edge」のスマホ内蔵カメラの機能を試してもらいながら、スナップ写真のプロとしてスマホで面白い写真を撮るコツや、ご自身の写真家としてのお話をお聞きしたいなと思いまして……。

いくしゅん:……恥ずかしいなぁ。

―え?

いくしゅん:いや、最近、写真の話を誰ともしてなかったので、インタビューってどんな感じやったっけなぁと思って……(笑)。

いくしゅん
いくしゅん

―えーと、ちょっとずつ思い出していっていただければ(笑)。今回「Galaxy S7 edge」のカメラを使っていろいろなシチュエーションで撮影をしていただいたんですが、まず最初にいいなと思ったのが夜景の写真でした。このスマホは夜の写真がずいぶんキレイで。

いくしゅん:最新鋭のスマホだからってオーバーリアクションで絶賛すると、テレビショッピングみたいな胡散臭い感じになるので控えますが(笑)、暗い場所でもかなり明るく撮れますよね。

―いわゆる「F値1.7」。

いくしゅん:夜の写真といえば昨日の夜、近所でへんな置物見つけたんですよ。筋肉モリモリの2匹の犬がテニスラケットを構えてるっていう謎の状況なんですけど、ポーズもツボで、見た瞬間に心奪われて撮影しました。

いくしゅんによる作品解説:ホームセンターの置物コーナーでずっと売れ残ってそう。(F値1.7レンズ搭載でうす暗い場所でも明るく撮れる)
いくしゅんによる作品解説:ホームセンターの置物コーナーでずっと売れ残ってそう。(F値1.7レンズ搭載でうす暗い場所でも明るく撮れる)

―夕景~夜景だと、ハクビシンが電線を歩いている様子を捉えた写真も、すごくインパクトがありますね。

いくしゅんによる作品解説:尻尾でうまくバランスとってた。
いくしゅんによる作品解説:尻尾でうまくバランスとってた。

いくしゅん:これは、僕が住んでるアパートの目の前の電線です。今まで何回もここでハクビシンがウロウロするのを見ていたのですが、なんとなく撮ってなかったんですよ。でも、今回はたまたまこのスマホを持っていたので、まず離れたところから1枚撮って、ちょっと先回りして木の枝の間からフラッシュを使って2枚目を撮りました。

―この……カップルの後ろで男の人たちがはしゃいでいる写真も、タバコの火がすごくキレイに写っていますね。

いくしゅんによる作品解説:ちょっと真面目な話と、だいぶエッチな話をしてた気がする。
いくしゅんによる作品解説:ちょっと真面目な話と、だいぶエッチな話をしてた気がする。

いくしゅん:手前にいる男二人は友達です。向こう側のカップルの世界とこっちの世界とが、くっきりわかれていていいなと思って撮影したと思います。ここ、けっこう薄暗い場所なんですが、だいぶ明るく撮れていますね。

いくしゅんによる作品解説:近所の顔見知りの猫。なで肩と猫背がたまらん。
いくしゅんによる作品解説:近所の顔見知りの猫。なで肩と猫背がたまらん。

いくしゅんによる作品解説:枝にピント合わせて猫のボケ感はなりゆきで。
いくしゅんによる作品解説:枝にピント合わせて猫のボケ感はなりゆきで。

いくしゅんによる作品解説:そこにいるのはわかっている。
いくしゅんによる作品解説:そこにいるのはわかっている。

見慣れた景色を別世界に変える、「パノラマ」のポテンシャル

―びっくりしたといえば、「パノラマ写真」です。普通、パノラマ写真というと360度に広がる雄大な大自然! などを撮るのが王道かなと思ったんですけど……道ですね(笑)。

いくしゅんによる作品解説:正面の道の奥もいい感じのY字路になってる。 (パノラマモードで撮影)
いくしゅんによる作品解説:正面の道の奥もいい感じのY字路になってる。 (パノラマモードで撮影)

いくしゅんによる作品解説:『ちびまる子ちゃん』とか『ドラえもん』みたいな町並み。
いくしゅんによる作品解説:『ちびまる子ちゃん』とか『ドラえもん』みたいな町並み。

いくしゅん:そう。もともとパノラマに興味がなくて、撮るとしたらベタに「大自然」かな? と思ったのですが……遠いし(笑)。近所に前々から気になっていた交差点、というかY字路みたいなのがあったので、試しにパノラマで撮ってみたらいい感じになりました。

いくしゅんによる作品解説:細い道が入り組んでいて迷路みたいになってる。(パノラマモードで撮影)
いくしゅんによる作品解説:細い道が入り組んでいて迷路みたいになってる。(パノラマモードで撮影)

いくしゅんによる作品解説:公園の森の中で若者2人が言い争い。よく聞いたら漫才の練習でした。(パノラマモードで撮影)
いくしゅんによる作品解説:公園の森の中で若者2人が言い争い。よく聞いたら漫才の練習でした。(パノラマモードで撮影)

―ふだん見慣れた交差点が、360度繋がると別の世界のように見えてすごく面白いです。パノラマに興味がなかったのは、なぜなんですか?

いくしゅん:なんでだろう……? 特殊なこと、変わったことはやらないようにしてるんですよね。普通のものをただ普通に撮りたいというか。

―変わったことをやると、手法だけに目がいくのが嫌、みたいな?

いくしゅん:いや、一番シンプルな機材と手法がまず基本だなと、写真を始めた頃に思って、そのまま現在に至ってしまっただけです。書道でいうと、ずっと「氷」の練習をしている感じです。中華料理でいうと、ずっとチャーハンを作っています。

「どついたるねん」が終電前に披露した、肉眼では見えないアクロバティックな瞬間

―ふだん使わないカメラ機能で今回試していただいたものというと、他に何がありましたか?

いくしゅん:「連写」ですかね。これ、シャッターボタンを長押しすると、100枚まで連写できるんですよ。で、友達に協力してもらって撮ってみました。

いくしゅんによる作品解説:去り際のサービス精神に涙。(連写機能で撮影)

―アクロバティックですね。 調べてみたら、「ハンドスプリング」という技のようです。

いくしゅん:やってくれているのは、「どついたるねん」というバンドの山ちゃん。彼は学生時代にレスリングで全国3位になったほどの男で、去年、前田日明の格闘技イベントで格闘家デビューもしていました。

集まって飲んだ後に、駅前で「この中に派手な動きできる人いる?」って聞いたら「俺、できまーす!」ってやってくれた。終電ギリギリで、あと1分で電車が出ちゃうというときに撮ったのがコレ。帽子を飛ばした後、それを拾いながら「じゃあ!」ってそのまま改札に駆け込んで行きました(笑)。

―かっこいい!(笑) この「Galaxy S7 edge」には、シャッターボタンを押す3秒前から動画を撮影して、後からいいタイミングの写真を切り出せる「モーションフォト」という機能もまた別に付いているんですが、この100枚連写機能もモーションフォトも、素人が決定的瞬間を押さえるのには便利そうですね。

いくしゅん:僕はこういう、人体が妙な感じでねじれている写真って気持ち悪くて好きなんですが(笑)、これもちょっとホラーが入っていていいですね。頭ないし。

いくしゅんによる作品解説:大喜利で使われそうな1枚。スベりたくないのでボケません。(連写した写真から抜き出した、いくしゅん選抜の一枚)
いくしゅんによる作品解説:大喜利で使われそうな1枚。スベりたくないのでボケません。(連写した写真から抜き出した、いくしゅん選抜の一枚)

―でも、決定的瞬間を切り取るプロの写真家からすると……邪道?

いくしゅん:ふだんは連写は使わないですね。短い間隔でコマ撮りっぽく一枚一枚撮ることはありますけど、連写機能を使って撮りたい状況がまずないんです。でもスポーツ写真を撮るときは連写が便利じゃないですかね。たとえば運動会でわが子がゴールテープを切る瞬間とか……? 1位でゴールしてもらわないと意味ないですが(笑)。

4本の動画をいっぺんに再生。工夫次第でいろいろ遊べる「動画コラージュ」

―そういうときこそ、いつでも取り出せるスマートフォンのカメラはずいぶん多機能だし便利だなと。「Galaxy S7 edge」は「動画コラージュ」も面白い機能だなと思いました。

いくしゅん:6秒ずつ撮った動画を4分割画面に合成できるんですけど、あえて動きのない地味なシーンで面白くならないかと実験してみました。飲み屋で撮ったヤツは、相手が動画だと思ってなくて、写真用のポーズを決めた後の気を抜いた顔が撮れたのが気に入っています(笑)。

いくしゅん

いくしゅんによる作品解説:うーちゃんごめん、これ動画やねん。(動画コラージュを使用)

―たしかに右下にいる方が気を抜いていますね(笑)。

いくしゅん:これ、「はいチーズ!」と言っておきながら全員動画で撮ればよかった(笑)。それと、1ショット失敗してしまっても、そこだけやり直しができないので、ある程度決め打ちが必要かなと思いました。ただ、友達の赤ちゃんを撮ったときは、はじめの3枚だけだときれいにまとまり過ぎかなと思ったのですが、4枚目がハズしになっていて、結果的にいい感じになりました。ちなみにこれ、撮影時に秒数が設定できたみたいです。3秒とか15秒とかでも。さっき気付いたんですけど……(笑)。

いくしゅんによる作品解説:近づきすぎて暴力をふるわれている。(動画コラージュを使用)

―動画コラージュは、フレームの形も選べるみたいですね。他にどんな使い方ができそうですかね?

いくしゅん:すべての機能に言えることですけど、結局は使う人の工夫次第だと思います。岡崎体育にネタにされそうなバンドのPVも簡単に作れそうですよ!

いくしゅんによる作品解説:バンド練習後のどついたるねん・ワトソン。爽やかさしかない。(動画コラージュを使用)

子どもに動物。ありふれた題材をユニークに切り取るちょっとした工夫

―さらに、いくしゅんさんお得意のスタンダードなスナップ写真も撮っていただきました。

いくしゅん:この猫、近所のコンビニによくいるのですが、レジの上にいるところは初めて見たので撮影しました。お客さんの買い物にちょっかい出そうとしているのに、店員がまったく気にかけてないのがいいですね。

いくしゅんによる作品解説:ペットボトルの水滴を舐めたいけど我慢。
いくしゅんによる作品解説:ペットボトルの水滴を舐めたいけど我慢。

―動物シリーズだと、ベビーカーに犬が乗っているのも、いくしゅんさんらしい写真ですね。

いくしゅんによる作品解説:「あ?」
いくしゅんによる作品解説:「あ?」

いくしゅん:台車に乗せられた犬とか大好きで、見つけたら撮っちゃうんですよ。作品として使える使えないは別にして、かなり撮ってしまいます。カメラ向けるとけっこう、犬ってこっち見るんですよ。「こいつ何やってるんだろう?」って。

―歩行者の足がブレているのも、動きが感じられて。

いくしゅん:「流し撮り」しています。動いている被写体に対して、カメラを同じくらいの速度で動かしながら追うんです。流し撮りっていうと難しそうですけど、少し練習すれば誰でもできますよ。

あと気に入っているのは、おんぶから下ろされたときの赤ちゃん。これも友達の子どもで、おんぶされているうちに寝ちゃったのでベッドに寝かせたら、羽根が生えて飛んでいきそうな形になりました。

いくしゅんによる作品解説:はじめさん。
いくしゅんによる作品解説:はじめさん。

―写ってはいないですけど、おぶった人の痕跡がショルダーのカタチに残っているところも、ドラマが感じられて面白いですね。赤ちゃんといえば、この浴室の写真も、表情豊かで微笑ましいです。

いくしゅんによる作品解説:100均のおもちゃでも満足してくれる年頃。
いくしゅんによる作品解説:100均のおもちゃでも満足してくれる年頃。

いくしゅんによる作品解説:至福の時……。
いくしゅんによる作品解説:至福の時……。

いくしゅん:写真の色はイジってなくてオートで撮ったんですが、これ肌色がめっちゃ綺麗ですよね。カメラや光源によっては、ホワイトバランスが狂って肌が青白く写ることがあるのですが、これは健康的で自然ですね。……あ、今の褒め方テレビショッピングみたいだった……。

―(笑)。発色でいえば、この公園の写真も緑がとてもビビッドですね。そこに靴を撮影している女性と、奥でストレッチしている男性がいて……これ、すごく面白い構図ですね。

いくしゅんによる作品解説:この公園、いつ来てもだいたいへんな写真撮れる。
いくしゅんによる作品解説:この公園、いつ来てもだいたいへんな写真撮れる。

いくしゅん:もともと、奥の男の人はいなくて、手前の女の人だけ撮っていたら、いつのまにかスーッと入ってきて(笑)。セル画のアニメっぽい発色が好きなんですが、これも色が好みですね。色とカタチの組み合わせが面白いものを見つけると、つい撮ってしまいます。

いくしゅんによる作品解説:はさんだのか、はさまったのか。
いくしゅんによる作品解説:はさんだのか、はさまったのか。

「こんなの誰でも撮れるって言いたくなる気持ちはわかるんです。僕も昔そう思って写真始めたから」

―こうして、今回スマホのカメラで撮影していただいた写真を見ていると、やはり何気ない日常の中で撮られた作品が多いですが、目の付け所が個性的で。最初からそういうものを?

いくしゅん:10年前くらいに写真を撮り始めたんですけど、そもそも何か趣味を見つけようと思ったのがきっかけなんですよ。撮りたいものがあったわけじゃなかったのですが、写真って気軽で簡単そうなイメージしかなかったので。だから、一緒に住んでたおばあちゃんとか、遊びに来た甥っ子や姪っ子とかを撮っていました。当時サラリーマンだったので営業の移動中とか、「いいな」と思ったら撮るって感じで。

いくしゅんによる作品解説:馬跳びしたくなる。
いくしゅんによる作品解説:馬跳びしたくなる。

いくしゅんによる作品解説:人物の配置が面白いかなと思ったけどそうでもなかった。
いくしゅんによる作品解説:人物の配置が面白いかなと思ったけどそうでもなかった。

―失礼な言い方になってしまいますが、そのあたりの感覚は私たちと一緒かなと。

いくしゅん:全く一緒ですよ。最初の頃は……まぁ、写真家ごっこみたいな……っていうとあれですけど……。

―ちょっと皮肉が込もっている気がします(笑)。

いくしゅん:でも僕も、写真集を出したり、こういうところで紹介されたりすると、「こんなの俺でも撮れそう」とか「これの何がすごいんだ?」って言われることがあるんですよ。「カメラ持って、近所を散歩してたら誰でも撮れるじゃん」みたいな。でも10年前は僕も同じことを思っていた側だったので、そう言いたくなる気持ちはわかるんです。だって僕の写真とか、どう見ても簡単に撮れそうじゃないですか(笑)。

いくしゅんによる作品解説:肖像権に配慮。
いくしゅんによる作品解説:肖像権に配慮。

―ははは(笑)。

いくしゅん:でも、僕はそこからちゃんと写真を撮ろうと始めて、本を出せるところまでは来られたので、「自分にもできそう」って思ったことは挑戦してみたほうがいいと思います。案外本当にすぐできちゃうかもしれないし、うまくいかなかったとしても、「俺でも撮れるって言ったよね!? 撮ってねーじゃん! 撮れるって言ったじゃん!」とか詰め寄らないんで(笑)。

とにかくたくさん撮る。「並べ方」と「セレクト命」な編集術

―いくしゅんさんのブログで、過去のエントリーを拝見したのですが、写真を複数枚並べて、ストーリー性が感じられるような見せ方を10年前からやっていたんですね。いまや当たり前になっていますけど。

いくしゅん:本当に当たり前のことなんですけど、たとえばライブの写真とか、並べ方次第ですごく盛り上がっているように見せられるんですよ。実際はぜんぜん盛り上がってないライブでも……(笑)。写真集の構成のときも、パズルとか知恵の輪をやっているみたいな感覚で面白かったです。

―なるほど。写真は並べ方が大事。

いくしゅん:あとはセレクトですね、セレクト命です。たくさんの写真の中から何を選んで何を選ばないか……。でもまず肝心の撮影をおろそかにしてはいけないので、撮影も命です。そして忘れてはならないのが編集。ここで下手こくとぜんぶ台無し。だから編集も命です。……あ、すいません、ぜんぶ命でした。命は平等ということですね!

いくしゅんが考える、「決定的瞬間」をとらえた写真とは

―写真を選ぶときのポイントとなる「面白さ」って、いくしゅんさんにとってはどういうものなのでしょう? 「面白い写真を狙って撮っているわけじゃない」とおっしゃっているインタビューを読んだことがあります。

いくしゅん:そうですね。「結果的に面白く写っちゃった」というほうが感覚的に近いです。その「面白く」っていうのも、「笑わせてやろう」という面白さじゃなくて、「なんかいいな、この感じ」と思った写真を人に見せたら、「面白い」「笑える」と言われて。感想だから何を言われてもいいんですが、たとえばあまりにも「笑える」って連呼されると、「そこまでは面白くないでしょ! よく見たらたいしたことないぞ!」って言いたくなる。天邪鬼なのか、ただの面倒くさいやつなのか……。

いくしゅん

―「なんかいいな、この感じ」と思える写真を撮る方法はあるのでしょうか?

いくしゅん:ちょっと話が変わるんですが、たまに動画も撮っていて、例えば、道に何か落ちていたら、人混みの中でそれがいったいどうなるか? をずっと定点カメラで追ってみたり。落ちているものを誰かが蹴飛ばしちゃうところまでは想像できますけど、僕が撮影したときは、酔っぱらいのおっさんがわざと蹴とばしたゴミを、すぐ後ろから来た小学生が拾って去って行くという、予想外の展開がありました。子どもがふざけて蹴飛ばすパターンは想像していたんですけど、その逆が起こって、新鮮でした。

―決定的瞬間ですね。

いくしゅん:僕はよく、街中で「決定的瞬間」を見つけて瞬時にシャッターを切ることのできる、瞬発力がある人みたいに思われることが多いんですが、瞬発力って全く必要ないと思っています。その動画と同じで、何か起きそうな場所を見つけたら、予測して、カメラをずっと構えて待つんです。

―あ、なるほど!

いくしゅん:というかそもそも、瞬発力を全く必要としない、静止している題材もかなり撮ってるんですけど……。

いくしゅんによる作品解説:自転車の輪っかの鍵もプーさんカラーを意識。
いくしゅんによる作品解説:自転車の輪っかの鍵もプーさんカラーを意識。

いくしゅんによる作品解説:マトンカレーたべたい。
いくしゅんによる作品解説:マトンカレーたべたい。

―言われてみると、たしかにそうですね。

いくしゅん:「決定的瞬間を捕えた写真こそが至高である」みたいな風潮が根強いのかな……。あえてそういう瞬間をはずした写真もいいし、なにがいいのかわからないけどたまに見返してしまう写真も「いい」ですよね。そういえばスマホも最近は「笑顔センサー」がついていることが多いですが、笑顔の前後の気を抜いたときの表情もすごくいいんですよね。「笑顔の前後センサー」も必要ですね。

いくしゅんによる作品解説:CINRA野村さんとカラオケ。「あの曲、タイトルなんだっけ……」のときの顔。
いくしゅんによる作品解説:CINRA野村さんとカラオケ。「あの曲、タイトルなんだっけ……」のときの顔。

―素人にも役立つスマホ写真術ですね。

いくしゅん:結局は自己流のやり方を見つけて撮るのがいちばんだと思います。僕の撮り方なんて気にしないほうがいいです!

―いくしゅんさん、天邪鬼ですからね(笑)。

製品情報
Galaxy S7 edge

発売中
価格:オープン価格

書籍情報
いくしゅん
『ですよねー』

2015年11月30日(月)発売
著者:いくしゅん
価格:1,944円(税込)
発行:青幻舎

プロフィール
いくしゅん

1980年、奈良県生まれ。オシリペンペンズと友達になりたくて写真をはじめ、現在に至る。



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