SPICY CHOCOLATEが市場戦略を明かす。どうヒットを狙う?

2014年から始まった『渋谷恋愛物語』シリーズの集大成となるベスト盤『スパイシーチョコレート BEST OF LOVE SONGS』を発表するSPICY CHOCOLATE。2013年末にCMに起用された“ずっと feat. HAN-KUN & TEE”は、レコチョクランキングで8週連続1位を獲得する大ヒットとなり、その後は積極的にデジタルシングルをリリース。多彩なゲストボーカルの起用や、作品ごとに旬なタレントを起用したアートワークなどによって、常に話題を呼んできた。

その結果として、ベスト盤の収録楽曲のダウンロード総数は200万超え。デジタル時代にヒットを生み出す方法論について、メンバーのKATSUYUKIに話を訊いた。

目標は、“ずっと”でレコチョクさんのクラブチャートで1位を獲ることだった。

—CINRA.NETとしては2013年の春以来、4年半ぶりの取材になります(「SPICY CHOCOLATEに訊く、ジャパニーズレゲエの歩み」)。当時のインタビューを読み返してみると、「まだチャートで結果を残せてないから、ちゃんと結果を出したい」とおっしゃっていたんですけど、その年の冬に“ずっと feat. HAN-KUN & TEE”が大ヒットをしたわけで、早速の有言実行だったなって(笑)。

KATSUYUKI:あの曲は僕の音楽人生の中で節目の一曲になりました。もちろん、それまでもいろんな曲をリリースしてきましたけど、SPICY CHOCOLATEの存在をたくさんの人に知ってもらうきっかけになったのが“ずっと”。あの曲を多くの人の耳に届けられたことで、もっと違う挑戦もできるようになりました。

—その後の『渋谷純愛物語』シリーズにつながったわけですよね。

KATSUYUKI:そうですね。それまではどちらかというとダンスチューン、レゲエでいうダンスホールと、ラバーズソングをミックスさせたようなコンセプトのアルバムを作ってたんですけど、“ずっと”がヒットしたことで、ラバーズソングのイメージに向かい、それが『渋谷純愛物語』になっていったんです。

KATSUYUKI(SPICY CHOCOLATE)
KATSUYUKI(SPICY CHOCOLATE)

—資料には“ずっと”について「スマホ時代のNo.1ラブソング」とありますが、実際に音楽の聴き方がCDからデジタルへと移行する過渡期でのヒットでした。当時はどんなことを意識されていたのでしょうか?

KATSUYUKI:もちろん、CDのセールスも狙ってはいたんですけど、現実的に「オリコンの1位を獲るぞ」ってなると、やっぱりハードルは高い。そこで僕らがまず目標にしたのが、レコチョクさんのクラブチャートで1位を獲ることだったんです。そこで1位を獲れたら、今度は総合チャートの1位を狙う。そのためにはどうすればいいかを考えて、楽曲作りやプロモーションをやってきました。

—結果的に、“ずっと”はドコモのLTEのCMに起用されてヒットしたわけで、時代性を感じますよね。

KATSUYUKI:正直ああなるとは思ってなかったので、「まさか」って感じでしたけどね。曲ができたときから、「すげえいいのができた!」と思って、HAN-KUNがフレーズを出した瞬間に、ガッツポーズしたんですよ。

2012年に配信を開始したら、レゲエチャートでは1位になったんですけど、総合ではトップ10くらいで、「もっと頑張んねえとな」って思ってたんです。でも、曲を聴いてくれた人がドコモのCMに採用してくれて、そこから信じられないくらいのことが起きた。ホントにびっくりしましたね。

『スパイシーチョコレート BEST OF LOVE SONGS』(オフィシャルサイトを見る

アルバムまでのシングルって、ボクシングの「ワン、ツー、スリー!」みたいなイメージ。

—2014年からは『渋谷純愛物語』シリーズのデジタルシングルを積極的にリリースするようになりました。楽曲を制作するにあたって、どんなことを大事にしましたか?

KATSUYUKI:SPICY CHOCOLATEは僕が歌わない分、ボーカルを他のアーティストさんにお願いするので、そのコンビネーションで相乗効果を起こすことですね。普段の活動ではやらないようなアプローチを提案したり、そういう工夫はいつも意識しています。

—フィーチャリングの組み合わせは毎回新鮮で面白いですよね。

KATSUYUKI:ただ、誰でもいいってわけじゃなくて。やはりSPICY CHOCOLATEの根っこにはレゲエがあるので、あくまでレゲエアーティストを軸にしながら、ラッパーやR&Bシンガーも迎えるという形にしていて、そこはぶれてないと思います。「レゲエという土台プラス誰か」っていう軸ではいつも考えています。

KATSUYUKI(SPICY CHOCOLATE)

—HAN-KUNが定期的に起用されているのは、いまおっしゃったことを裏付けていますよね。さらに言えば、各曲ごとのフィーチャリングアーティストの面白さがポイントになっているというのは、デジタルの時代になって、アーティスト単位よりも、曲単位でのリスニングが主流になったことの表れでもあるように思います。

KATSUYUKI:そうですね。最終的にはアルバムを作ってリリースするんですけど、そのアルバムに辿り着くまでのシングルって、ボクシングで言う「ワン、ツー、スリー!」みたいなイメージ(笑)。ジャブを打って、ジャブを打って、最後のストレートまでどう持っていくか、どうやったらたくさんの人をKOできるか。「この1曲は左ジャブ」「この1曲はカウンター」とか、そういうイメージを持ちながら一曲一曲作るようになりましたね。

「日本をよくしていきたい」っていう野望が出てきたんです。

—これまで数多くのゲストボーカルを起用されてきましたが、その中でも特に「これはハマった」と、手応えがあった曲を挙げていただけますか?

KATSUYUKI:もちろんどの曲も手応えがあったんですけど、あえて1曲挙げるとすれば、“あなたと明日も feat. ハジ→ & 宇野美彩子(AAA)”(2015年)。「SPICY CHOCOLATEと言えばこういう感じ」っていうイメージが付けられた一曲になったかなって。

“しあわせ feat. Ms.OOJA & SALU”(2014年)もそうなんですけど、男性と女性のありふれた日常をどれだけ幸せなゴールインまで持って行けるか……そのストーリーを歌で上手く表現できたなって。

—それは『渋谷純愛物語』のコンセプトに紐づいたものですよね?

KATSUYUKI:そうですね。「純愛」と謳ってるからには、「日常にそんなのないじゃん」と思いつつ、でもホントはみんなの理想を歌にした方がいいよねって。やっぱり、ドロドロした不倫とか、グチャグチャな恋愛よりも、ピュアできれいな純愛の方がいいじゃないですか? お互いの好きと好きが一緒になって、2人がゴールインする。それを歌で描きたかったんで。

KATSUYUKI(SPICY CHOCOLATE)

—そのコンセプト自体、“ずっと”からの影響が大きいと言えますか?

KATSUYUKI:それもありますし、僕自身がSPICY CHOCOLATEとして経験を積む中で、そういうことを表現したくなってきたんです。SPICY CHOCOLATEは今年で23年目で、初期はいまとは全然違う表現でした。でも、少しずつ年を重ねると、出会いがある分、身近な人との別れもあって、「愛情の尊さ」をより感じるようになった。

もともとはクラブでの活動がメインだったので、お酒を飲んで、「もっと騒げ!」っていう方が得意と言えば得意なんですけど、徐々に愛の重要性を訴えたくなっていきました。もっと言えば、「日本をよくしていきたい」っていう野望が出てきたんです。

—「純愛」の先に、もっと大きなテーマが見えてきたと。

KATSUYUKI:いい恋愛をして、幸せになってもらいたいなって。日常の中に当たり前にある幸せって、だんだん感じられなくなってくる。でも、歌詞に「おかえり」とか「ただいま」と入れることによって、そこに幸せがあるんだってことを気づいてもらいたいんです。

KATSUYUKI(SPICY CHOCOLATE)

「ジャケ買い」の世代なので、ジャケットの重要性って大きいんですよ。

—作品ごとにタレント、女優、モデルといった様々な女性が起用されたジャケットも、SPICY CHOCOLATEのブランドを築く要素になっていますね。

KATSUYUKI:やっぱり僕らは「ジャケ買い」の世代なので、ジャケットの重要性って大きいんですよね。そして、どうせなら素敵な女性に飾ってもらいたいと思って、『渋谷RAGGA SWEET COLLECTION』(2011年)の時代からそうなってるんです。

—特に印象に残ってるジャケットを挙げていただくと、どなたの名前が出てきますか?

KATSUYUKI:さっきも出てきた“あなたと明日も”の木下優樹菜さん。ちょうど彼女が妊娠していたときだったので、撮影中に胎動してたりしたんです。それが歌詞にも反映されて、子どもが生まれてくるまでのラブストーリーになりました。だからジャケットと歌がすごくマッチしたし、妊娠から出産までの間に曲ができたっていうのは、すごく思い出深いですね。

木下優樹菜の写真が使用された“あなたと明日も”のアートワーク
木下優樹菜の写真が使用された“あなたと明日も”のアートワーク

—『スパイシーチョコレート BEST OF LOVE SONGS』のジャケットは、みちょぱ(池田美優)さんが飾っていますね。

KATSUYUKI:若い人たちに人気があるっていうのが強いですね。実際に会ってみても、すごくざっくばらんで、面白い子でした。SPICY CHOCOLATEの音源も聴いてくれてたみたいで、すごくマッチしたかなって。

みちょぱ(池田美優)の写真が使用された、『スパイシーチョコレート BEST OF LOVE SONGS』アートワーク
みちょぱ(池田美優)の写真が使用された、『スパイシーチョコレート BEST OF LOVE SONGS』アートワーク

『スパイシーチョコレート BEST OF LOVE SONGS』に収録される新曲"君のことが好きだったんだ feat. BENI, Shuta Sueyoshi (AAA) & HAN-KUN”

—やはり、若い世代にどうアプローチするかを意識してるわけですか?

KATSUYUKI:聴いてくれてるのは10代とか20代が多いですからね。もちろん、大人の人たちにも聴いてもらいたいんですけど、やっぱり中高生の方が純情で、恋愛に対するもどかしさとかを感じてるだろうから、『渋谷純愛物語』を支持してくれてるんだと思います。

メジャーなことばかり考えると、頭でっかちになっちゃうと思うんですよ。

—こういったジャケットのアイデアとかも、KATSUYUKIさん中心で考えるんですか? それとも、スタッフを含めたチームで考えているのでしょうか?

KATSUYUKI:チームで考えていますね。僕はどちらかというとストリートとのつながりが強いので、そっちに対するプロモーションを考えることが多いです。メジャーでできること、ストリートでできること、両挟みでサンドしたときに、どういう結果が生まれるかを常に考えています。

やっぱり、メジャーなことばかり考えると、頭でっかちになっちゃうと思うんですよ。なので、そこはレコード会社の方を中心に考えてもらって、僕は足元をどう固めるかを考えるようにしていますね。

KATSUYUKI(SPICY CHOCOLATE)

—“ずっと”以降はここまで話してきたフィーチャリングアーティストやジャケットなど、メジャー感の強い活動だった印象もありますが、その裏ではやはりストリートレベルでの活動を大事にされていたと。

KATSUYUKI:そこをやっていかないと、「SPICY CHOCOLATE、どこ行っちゃったんだ?」となってしまうので。歩んできた道を大事にしながら、その上でメジャーならではのやり方も取り入れたいんですね。

もともと応援してくれてた人たちに受け入れてもらえないと、外に行ってもそんなに膨れ上がらないと思うんです。ずっとSPICY CHOCOLATEを応援してくれてる人たちをちゃんと満足させながら、新しい人たちにどれだけアプローチできるかを常に考えていますね。

今後のテーマは「ファンと一緒に時代を歩んでいくにはどうすればいいのか」です。

—9月23日に今年の『渋谷レゲエ祭』が開催されましたが、いまの客層はどうなっているのでしょうか?

KATSUYUKI:一番多いのは20代かな? 次が30代、10代、40代ですかね。

—つまり、新しく入ってきた若い世代と、ずっと聴いてるファンが融合しつつあると。

KATSUYUKI:そうですね。僕らのこれからのテーマは、幅広い世代、10代から60代までをどうやったら楽しませることができるかなんです。例えば、フォーク世代の方ってみなさん60代とかですけど、ライブを観に行かせていただくと、ものすごく楽しんでるわけです。ああいう光景を見ると、すごくいいなって思う。

いま僕らを聴いてくれてる人たちが、もっと上の世代になったときに、ちゃんと楽しませることができるか。ファンと一緒に時代を歩んでいくにはどうすればいいのか。それがこれからのテーマなんです。

KATSUYUKI(SPICY CHOCOLATE)

—去年から『渋谷レゲエ祭』に「レゲエ歌謡祭」というサブタイトルがついていますよね。あれも、より広い世代を意識してのことなのでしょうか?

KATSUYUKI:まさにその通りで、レゲエを軸としながら、いままでとは違ったアプローチの仕方で、より多くの人を楽しませるにはどうすればいいかを考えています。『紅白歌合戦』とか、歌謡祭みたいに、レゲエも進化できるんじゃないかと思うんです。

以前は1組のアーティストが20分とかパフォーマンスするのが普通だったけど、『渋谷レゲエ祭』は一曲一曲変わっていくスタイルで、そこからさらに進化して、1曲をみんなで歌ったりとか、もっとショーとして楽しませることができないかなって。

—最近の『FNS歌謡祭』みたいな。

KATSUYUKI:まさに。「この人とこの人が一緒に歌うのか!」って、僕も見てて感動するし、そういう夢のコラボが目の前で起きるようなライブを見せられればなって。

—では最後に、『渋谷純愛物語』のシリーズは今回のベストで一区切りになると思うのですが、今後の方向性に関しては現在どのようにお考えでしょうか?

KATSUYUKI:まだ模索中ではあるんですけど、ひとつ思ってるのは、いまって世界中に大きなフェスがあるじゃないですか? そういうフェスでも取り上げられるような曲を目指して作ること。何万人、何十万人と集まるフェスで、桁外れの集客力があるDJがいるわけですよね。僕もDJからキャリアをスタートさせているけど、日本でそういうことができてるのはごくわずかだと思うので、そこは意識していきたいです。

KATSUYUKI(SPICY CHOCOLATE)

リリース情報
SPICY CHOCOLATE
『スパイシーチョコレート BEST OF LOVE SONGS』初回限定盤A(CD+DVD)

2017年10月11日(水)発売
価格:3,780円(税込)
UICV-9251

[CD]
1. 君のことが好きだったんだ feat. BENI、Shuta Sueyoshi(AAA)& HAN-KUN」
2. ずっと feat. HAN-KUN & TEE
3. I miss you feat. 清水翔太
4. あなたと明日も feat. ハジ→ & 宇野実彩子(AAA)
5. うれし涙 feat. シェネル & MACO
6. しあわせ feat. Ms.OOJA & SALU
7. 信ジルモノ feat. YU-A,AK-69 & HAN-KUN from湘南乃風
8. 愛スルモノ feat. SHOCK EYE,lecca & SIMON
9. Last Forever feat. 加藤ミリヤ & SKY-HI
10. 同じ空 feat. ナオト・インティライミ & 安田レイ
11. ミスキャスト feat. 大橋卓弥(スキマスイッチ)& 奇妙礼太郎
12. 二人で feat. 西内まりや & YU-A
13. ずっとマイラブ feat. HAN-KUN & TEE
14. キミと未来 feat. Ms.OOJA & 寿君
[DVD]
1. 「君のことが好きだったんだ feat. BENI,Shuta Sueyoshi(AAA)&HAN-KUN」
2. 「ずっと feat. HAN-KUN & TEE」(黒島結菜出演)
3. 「I miss you feat. 清水翔太」(小島藤子出演)
4. 「あなたと明日も feat. ハジ→ & 宇野実彩子(AAA)」(木下優樹菜出演)
5. 「うれし涙 feat. シェネル & MACO」(今井華出演)
6. 「しあわせ feat. Ms.OOJA & SALU」(田中美保出演)
7. 「信ジルモノ feat. YU-A、AK-69 & HAN-KUN from湘南乃風」
8. 「愛スルモノ feat. SHOCK EYE,lecca & SIMON」
9. 「Last Forever feat. 加藤ミリヤ & SKY-HI」
10. 「同じ空 feat. ナオト・インティライミ&安田レイ」
11. 「ミスキャスト feat. 大橋卓弥(スキマスイッチ)&奇妙礼太郎」(市川紗椰出演)
12. 「二人で feat. 西内まりや & YU-A」
13. 「ずっとマイラブ feat. HAN-KUN & TEE」(浅田舞出演) 14. 「キミと未来 feat. Ms.OOJA & 寿君」(鈴木奈々出演)

プロフィール
SPICY CHOCOLATE (すぱいしーちょこれーと)

ジャパニーズレゲエ界に名を馳せるKATSUYUKI a.k.a. DJ CONTROLER率いるREGGAE SOUND CREW=SPICY CHOCOLATE(スパイシー・チョコレート)。東京のルードボーイたちによって結成された品川世田谷バッドボーイ・クルー(SBC)が前身となり、1994年に活動をスタート。2003年にはSPICY CHOCOLATE所属のBIGGA RAIJIらをフィーチャーした初のオリジナル・ミニ・アルバム『RUN DE WORLD』をリリース。それまでの活動で培われてきたリンクを活かし、彼らオリジナルの〈東京ダンスホール・スタイル〉を打ち出した。制作活動の一方で〈BOMBOCLAT NIGHT, Kachi Kachi Friday〉などのレギュラー・ダンスやダンサー・コンテスト〈DANCEHALL QUEEN JAPAN〉も主催。ジャンルの枠を超えてレゲエの魅力を発信し続けるその姿勢は、シーンに於ける絶対的な存在として、常にリスペクトの対象となっている。



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