広告業界最前線をTOWから学ぶ。SNSが起した業界の変化が面白い

「インタラクティブプロモーション」や「体験デザイン」。SNSの登場やスマホの普及で、現在、広告業界は、ドラスティックな変化を遂げつつある。そんな中、1976年の設立以来、プロモーションの企画制作を行い、業界と共に、WEB、PR、映像と領域を拡大してきた株式会社TOWが『第4期TOWインタラクティブプロモーションスクール(IPスクール)』を開講する。後進の育成にも努めるTOWは、どんなプロモーション戦略のもと、施策を行ってきたのだろう。

TOWのプランナー海老根俊一と、プロデューサー木部喬の二人に、近年の広告業界の動向から、SNSの特徴を捉えたプロモーション事例、「体験」をデザインする手法について語ってもらった。

いまの広告は、内容は勿論、それをどう波及させていくかという拡散の視点も求められている(木部)

—まず、広告業界のここ10年の変化を教えてください。

海老根:やはり、スマートフォンの普及とSNSの浸透でしょうね。それにともなう変化が、最も大きいと思います。

木部:10年前って、ウェブコンテンツが盛んな頃で、中村勇吾さんの「エコトノハ」とかがトレンドになっていた時代だったと思うんです。でもいまは、そういったリッチなウェブコンテンツは、あまり求められなくなっています。スマホとSNSの普及で、コンテンツ自体がライトになっていく一方、それをどう波及させるかに重きが置かれているというか。そういったPRの視点が重要になってきている感覚があります。

海老根:かつての広告は、「プッシュ型」でしかなかったと思うんです。単純に良いものを作って、それを発表すればいいっていう。だけどSNSの登場で、それをユーザーが評価できるようになった。だから、ユーザーの興味や能動的なアクションを引き起こす「プル型」じゃないと、ちょっと通用しないところがあるんですよね。

左から:木部喬、海老根俊一(TOW)
左から:木部喬、海老根俊一(TOW)

—そういう中でキーワードとして、「インタラクティブプロモーション(IP)」という言葉があると思うのですが、それは具体的に、何を意味するのでしょう?

海老根:インタラクティブプロモーションと言うと、たとえばライゾマティクスさんやチームラボさんがやっているデジタル体験にイメージが寄りがちなのですが、我々の場合、それをもう少し広義に捉えています。

デジタルを絡めたカッコいい施策をやればいいというのではなく、施策を実施して、そこから返ってくる反応をどう計算しながら全体を設計していくのか、そういうところまで含めて「インタラクティブプロモーション」を考えていますね。

海老根俊一

新しい感性も大切だけど、感性をうまく利用できるかも大切。(海老根)

—そういう状況の変化にともない、以前よりも大変になった部分というと、どんなことがありますか?

木部:単純に大変なのは、そもそも価値観も手法も多様化しているということですね。一口に「デジタル」と言っても、さまざまな施策があるわけで。そういう意味で、いまはデジタルについて詳しい若い人のほうが、圧倒的に向いているなという感覚があります。デジタルのフィールドに対する理解が深くないと、施策の設計や落としどころがわからないので。

木部喬

海老根:それは本当にそうだと思います。いまは若い人のほうが、いろいろな意味で、すごく有利ですよね。

—具体的には、どういうことを指すのでしょう?

木部:僕らの知らないところで盛り上がっていることが、デジタル上には本当にたくさんあるんですよ。フリマアプリが流行ってるとか、ハンドメイドマーケットのどれにどんな特色があるとか……僕自身、最近後輩に教えてもらったんですけど(笑)、そういうものを自分自身はネイティブで知らない。

でも、そういうものをあらかじめ知っておかないと、プロモーションを設計する側の立場としては、なかなか難しいところがある。情報が細分化している分、それをキャッチアップし続けるのは、以前よりもずっと大変です。

左から:木部喬、海老根俊一

—そういった情報の部分に加えて、感性の部分においても何か新しいものが求められたりはしないのですか?

海老根:新しい感性ということも大切だけども、感性をうまく利用できるかどうかがもっと大事だと思うんです。感性というのは、きっとみんな持っているものだと思うんですけど、それをちゃんと分析したり、そこから何かを抽出してコンセプト化できるかっていう。そういう力がすごく必要とされていると思います。

—感性を感性のままで終わらせるのではなく、そこからどうロジックを導き出していくかという。

海老根:昔から広告業界というのは、ある種、感覚の業界ではあると思うのですが、もう感覚だけではダメなんですよね。自戒の念も込めて、いまは広告業界全体として、データをうまく使いながら、それを最終的な効果に結びつけないといけない流れになっていて。クリエイティブにデータを掛け算しながら効果を出すということが最近求められてますね。

TOWが開催する『第4回 TOWインタラクティブプロモーションスクール』メインビジュアル
TOWが開催する『第4回 TOWインタラクティブプロモーションスクール』メインビジュアル(詳細、Web受付はこちら

昔はテレビだったけど、いまは子どもたちの話題がネットのコンテンツになっている。(海老根)

—そういった中で、新しいやりがいや醍醐味も生まれているのでは?

海老根:さっきも言ったように、ユーザーの反応がダイレクトに返ってくるのは、励みになります。その反面、失敗した場合の怖さやプレッシャーはあるのですが(笑)。

木部:個人的には、以前よりもいろいろな手法に挑戦できたり、関わったことのない人たちと一緒に何かをやれるのが面白いですね。同じことをずっと続けるのって、大変じゃないですか。

たとえばリアルなプロモーションという分野なら、代表的なのはサンプリングや発表会だと思うんですが、いまは、そういった手法が必ずしも決まっているわけではなく、何でもありになってきてるんですよね。

アウトプットがウェブやイベントじゃなくてもいい。動画だっていいし、最近はプロダクトに落とし込んで、それをファクトとして世の中に広めていくっていう案件もあったりするので。

木部喬

—なるほど。

木部:たとえば最近、母娘をターゲットとした洗濯用洗剤の案件があったのですが。それは、「お母さんと娘のコミュニケーションが増えるようなものを作ろう」という企画で、新しい体験になるように『香りの出る絵本』を実際に作って、それをイベントでPRしていく事例でした。その場合、最終的なアウトプットは本ですよね。そうやって、アウトプットするものが多様化しているというのが大変でもあり、醍醐味でもあるんです。

—その他に、何か最近の事例で面白いものってありましたか?

木部:日清食品のシーフードヌードルの案件で、この夏に『山の海の家』というのをやりました。代理店さんの「群馬に海の家を作りたい」というアイデアが出発点になっているんですけど、面白いのは、うちの会社として初めての「人の来ないイベント」を設計しないといけなかったんです。

—というと?

木部: PRの狙いとして、山の中に海を届けようと日清食品が頑張って海の家を作ったはいいものの、そこは最寄り駅から徒歩5時間掛かるような山奥で、誰もこないぞと。で、スタッフ一同、冷や汗をかいている日清食品をあえてネタにしようとしたんです。殺風景な山奥で海の家がひっそりと建っている画が、SNSで広まっていけばいいなっていう。

日清食品「カップヌードル シーフードヌードル」の『山の海の家』
日清食品「カップヌードル シーフードヌードル」の『山の海の家』

—なるほど。SNSで拡散されることによって注目を浴びるという。

木部:そうです(笑)。「成功体験よりも失敗の方が拡散される」という、SNSの特徴を活かしたプロモーションだったと思います。

だから、このイベントの仕立てとしては、海の家のさびれた感じをいかに出すかが大事になるわけです。なので美術さんも、イベントの美術ではなく、映像美術の方に入ってもらいました。通常イベントでは真新しくてきれいなものを設営しますが、この場合はペンキで汚したりオイルを塗って古く見せたり、あえてダメージを施しているんです(笑)。

そうやって、通常のイベント設計とは違う視点で、別の新しい人たちと一緒に仕事をするのは、個人的には面白いし、やりがいを感じました。

—海老根さんは何かありますか?

海老根:僕はこの夏、『モンスターストライク』の『リアル版 超・獣神祭「十二支再競争」』というイベントのお手伝いをさせていただきました。これは『超・獣神祭』というゲーム内イベントを、デジタルで完結させず、現実にやってみるという企画だったんです。

「十二支の順番って誰が決めたの?」というところから、動物を集めて、もう一回レースしてみようっていう(笑)。幕張メッセで、十二支+猫で、リアルレースをやって、それをライブ中継したんです。ユーザーの1位と2位の予想が的中したら、ゲーム内でインセンティブがもらえるような形にして。

海老根俊一

モンスターストライク リアル版 超・獣神祭「十二支再競争」イベントの様子
モンスターストライク リアル版 超・獣神祭「十二支再競争」イベントの様子

—ネットとリアルを実際に繋ぐイベントというか。

海老根:そうですね。で、これをやって面白かったのが……うちの10歳になる子どもが、「今日、学校に行ったら、『リアル版 超・獣神祭』が話題になってたよ」と言っていて。つまり僕らの頃で言ったら、学校に行って「昨日の『ドリフ』見た?」みたいな感じで、子どもたちの間で話題になっているんですよね。

昔はテレビだったけど、いまはそれがネットのコンテンツになっているんだと思って。デジタルの中で完結していたものを、リアルに持ち出すと、もっとたくさんの人を巻き込めるんだと実感できたのは、非常に面白かったですね。

手法が多様化していく広告業界。そんないまの時代のコミュニケーションに興味がある人とIPスクールで出逢いたい。(海老根)

—『TOWインタラクティブプロモーションスクール』は、今回で4回目になりますが、そうした時代の変化に対応して、スクールでも変化はあるのでしょうか?

木部:いまの時代は本当に多様性がすごいと思うんです。それを受けて、今回の講師で来てくれる人たちも、みんなそれぞれの分野で、答えをちゃんと持っている人が集まっていて。

あと広告業界は、企画だったり制作だったり、いろんなレイヤーがあると思うんですけど、今回のカリキュラムは、企画から始まって、だんだんと多様化するアウトプットみたいなところに流れていくような順番になっているんですよね。なので、頭から聞いてもらえば、現在のコミュニケーションの潮流がひと通りわかると思うし、そのアウトプットの多様性も、きっとわかってもらえると思うんです。

木部喬

海老根:僕は『IPスクール』の前進にあたる『プランナーズスクール』の4期生の生徒だったんですね。26歳のときにそのスクールに行って、それがきっかけで広告業界に転職するに至って。

その頃から続いているスクールの良さは、少人数で講師と生徒の距離が近いところなのですが、最近はそれに輪を掛けて、講師陣の年齢が若くなっているので、より身近でフラットな関係の授業になっていると思います。

—お二方とも今回の『IPスクール』に登壇されるとのことですが、そこでどんな講義をする予定なのでしょう。

木部:僕は電通のプランナー 尾上永晃さんと一緒に「コピー×インタラクティブプロモーション」をテーマにした講義を担当させてもらいます。基本的には尾上さんにメインの講師として登壇いただき、現在の広告がデジタルになって変化したことを、分析していく形になっていますね。

たとえば、「新聞の広告だったらこういうコピーだったものが、デジタル上ではこういうコピーに変換される」みたいな話を、実例と共に解説していただこうかと。要は、バイラルとかバズとか、デジタル上で広告を作るときの手法を、歴史から紐解いていく話になっていくと思います。

海老根:僕は、「体験デザイン」をテーマとしてやろうと思っています。いままでって、体験は点に過ぎなかったんですよね。要するに、「イベントやりました・行きました」で終わりだった。

もちろんイベントの作り込み自体はちゃんとやっていくんですけど、それをやっておしまいではなく、そこにデザインっていう視点を加えて、点では終わらない効果を生み出す。点としての体験ではなく、そのリアクションも含めて、点と点を線として設計していくのが「体験デザイン」の考え方なんですよね。

海老根俊一

TOWが開催する『第4回 TOWインタラクティブプロモーションスクール』メインビジュアル
TOWが開催する『第4回 TOWインタラクティブプロモーションスクール』メインビジュアル(詳細、Web受付はこちら

—そこにはSNSやネットの話も絡んでくるわけですね。

海老根:そうですね。体験してそれで終わりでは、いまはみんな振り向いてくれないんです。自分が体験したことをベースに、それをネットに取り込んでいかないと埋没してしまう。そういうみんなの共有認識みたいなものを、戦略としてコミュニケーション化するためには、どうすればいいのかみたいなことを話せればいいなって思っています。

—いま、リアルな体験とネットの距離感は変わってきたという実感はありますか?

海老根:ネットはもう、世相を反映したひとつのプラットフォームになっていると思います。だから、そこでの論議が、世論を形成していく上でもすごい大事になっていて。そういう大きいうねりの中に、リアル体験が存在していると思っているんですよね。

ネットにはフィクションが乱立している。でも、たとえネットの中のことでも、それがリアルに立脚した話なら、みんな信じてくれる。たとえば、SNSに「ここに行ったよ」って言葉だけ書いても、あまり信じてもらえないですよね。だけど、それが写真や映像と一緒だったら信じられる。それがいまの時代、結構大事なことなんじゃないかなって思います。ノンフィクションは人の心を動かしますから。そうした現在のコミュニケーションの考え方に興味のある人こそ、スクールへ来てみてほしいですね。

左から:木部喬、海老根俊一

イベント情報
第4期 TOWインタラクティブプロモーションスクール
「第4期 TOWインタラクティブプロモーションスクール」

日時:2018年1月31日(水)~3月29日(木)
会場:東京都 株式会社テー・オー・ダブリュー 会議室他
対象:広告/プロモーション業界に興味がある・目指している学生の方
(2019年 / 2020年大学・大学院卒業予定者)
料金:21,600円

プロフィール
海老根俊一 (えびね しゅんいち)

1977年生まれ。芝浦工業大卒。2005年にTOWに入社後、リアル体験領域を起点にしながらPR・デジタル・映像など様々な手法を駆使して、多数のアクティベーション企画・開発に携わる。

木部喬 (きべ たかし)

2011年TOW入社。デザイナー、Webディレクター、PARTYへの1年間の出向を経て、現在はプロデューサーとしてデジタル・リアルを問わずプロモーション施策を手掛ける。主な実績として、資生堂「マジョリ画」、日清食品「山の海の家 in Gunma」など。



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