ネクライトーキーが歌う、大人と子供の間。大人って何だろう?

私たちは、いつから無邪気な子どもらしさを心の内に隠し、分別のある大人を演じるようになってしまったのだろう。眼に映るものすべてが新しく、世の中が謎と不思議に満ち溢れていたあのころ、私たちはいくつもの質問を大人に浴びせては、半ば彼らを呆れさせてきた。それが、「知らないこと」を恥ずかしく感じ「大人を困らせたくない」という気遣いから、いつしか空気を読むようになっていくのだ。

今から600年以上も前に編纂された、吉田兼好の『徒然草』。その最終段となる「第243段」には、無邪気な質問を子どもに浴びせかけられ、大人が手を焼いている様子がユーモアたっぷりに描かれている。そこからインスピレーションを受け、「子どもの無邪気さ」と「大人の分別」の間で揺れ動く心を描いたのが、大阪発の5人組バンド、ネクライトーキーである。

大人になること。それが悪いこととは思わない。いつまでも子どものままではいられない。ただ、「無邪気さ」と「分別」のバランスをとりながら生きていくことは、この世知辛く窮屈な世の中で「自分らしく、ありのまま」生きていくのと同じくらい、難しいことなのかもしれない。

「サントリー 天然水GREEN TEA」のプロモーション企画として、5組のアーティストが『徒然草』を再解釈し、楽曲を制作する『徒然なるトリビュート』。最後を飾る5人にとって、「ありのまま、自分らしくいること」とは?

大人になって、わからんことを聞きにくくなりました。(もっさ)

―みなさんは、これまで『徒然草』を読んだことありました?

朝日(Gt):現代語訳を買って、ちゃんと読んだのは初めてでした。感想は、ほんと徒然なるままに書いてるなあ、みたいな(笑)。

当時の人々の息遣いや、書き手の生活感が文章の隅々から垣間見えるのは、読んでいてすごく楽しかったですね。『徒然草』が当時のエンタメだったのかはわからないですけど、時代を超えて評価され続けてきたからこそ今も残っている。それってすごいことだなあと思います。

ネクライトーキー
上段左から:もっさ、カズマ・タケイ、朝日 下段左から:藤田、中村郁香。大阪発のロックバンド。2017年Gtの朝日が中心となり、もっさ(Vo/Gt)、カズマ・タケイ(Dr)、藤田(Ba)により結成されたバンド。2019年3月にキーボードの中村郁香が正式加入し、5ピースバンドとなる。

―600年以上も前の随筆なのに、これほどまでに共感できるのかと驚きますよね。

朝日:おもしろかったのは、お酒に関する記述です。「お酒は飲みすぎるとよくない、程よく飲むのはそれはそれでいい」みたいな話があって(笑)。なんか、昔から変わらず人は酒で失敗したり、冗談を言って笑ったりしていたのかと思うと感慨深いですよね。

―歴史は決して分断されておらず、ずっと連続したものなのだということを改めて感じました。そんな『徒然草』のなかから今回、ネクライトーキーが「第243段」を選んだ理由は?

『徒然草』第243段 原文と現代語訳

朝日:第243は『徒然草』の最終段なんですけど、小さい子どもにあれこれ尋ねられて、最初のうちはちゃんと答えているんだけど、だんだん面倒くさくなっておざなりな対応になっていくっていう、よくある話(笑)。人の考えって、どこまでも変わらないんだなあって、「生活」みたいなものを感じて選びました。

歌詞に落とし込む際は、もう少し解釈を広げていって。子どものころの「疑問」って、いつから口に出さなくなったんだろう。当たり前のことを「なぜ?」「どうして?」って聞くのが、どうしていけないことみたいになっていくんだろう。でも、それも仕方のないことなのかな? ということがテーマになっています。

藤田(Ba):私、こういう風に小さい子にあれこれ聞かれたら、めちゃめちゃ丁寧に答えると思うんですけど、相手が子どもでも難しいことを容赦なく言っちゃうだろうな、って思いました。だから、質問のループが延々に終わらないかも(笑)。あとはやっぱり、Google先生は必須ですね。

左から:藤田、中村郁香

タケイ(Dr):「Yahoo!知恵袋」とか活用しそうだよね(笑)。

中村(Key):小さいころ、自分がした質問で親を困らせたことを今でも覚えてるんです。2人はどこで出会って、なぜ結婚したのか、そもそもなんでその場所にいたのか? って問い詰めたんですよね(笑)。最終的に「なんでって言われても……」って、絶句されて終わってしまった。

朝日:まさに「第243段」と同じ状況(笑)。

―もっささんは何か、そういう経験あります?

もっさ(Vo):たしかに、大人になって、わからんことを聞きにくくなりました。音楽のことでも、わかんないことはたくさんあって。「これ聞くの、恥ずいな」と思って、そのままにしちゃうこともあります。

もっさ

朝日:音楽業界の人、わけわかんないこと言い過ぎですよね。「モトイで」って言われて、最初なんのことかわからなかった。

―それは初めて聞きました(笑)。どういう意味なんですか?

朝日:たとえばレコーディングで2テイク録って、最初の方を使うときとかに言うんですよね、「元の方を活かしでお願いします」という意味で「モトイで」って。

しかも専門用語って、検索かけても出てこないんですよ。僕はそういうとき、場の空気が読めないと思われてもいいから聞くようにしてるんですけどね。もっさに聞かせるっていう手を使うときもあるけど(笑)。

朝日

「大人」って何だろう? と考えたんです。この歳になると、同い年の友人はすごくしっかりしてくるじゃないですか。(朝日)

―今回の楽曲“波のある生活”は、具体的にはどうやって作っていったのですか?

朝日:僕のデモが上がったのがレコーディングの前日だったので、他のレコーディングやライブの合間をぬって、短期集中で作っていきました。

―冒頭、Aメロを2回繰り返すところのブリッジがめちゃめちゃトリッキーですよね。

朝日:あのギターフレーズは、最後まで入れるかどうしようか揉めました。「やめた方がいいんじゃないか」ってめっちゃ言われたんですけど、「ああ、そうですねえ~」って、のらりくらりとかわしながら最後まで残しました(笑)。

左から:カズマ・タケイ、朝日

もっさ:「あのフレーズがあるから、ラスサビ以降の開放感がより際立つんだ」って朝日さんが言ってて、たしかにそうだなと思いました。

―タイトルにはどんな意味を込めたのですか?

朝日:最初はシンプルに“生活”だけにしようかなと思ったんですけど、「~のある生活」という響きがいいなと思いはじめて。「音のある生活」とか「水のある生活」とかいろいろ考えていたんです。

ちょうどそのときに沙村広明さんの『波よ聞いてくれ』っていう漫画を読んでいて「これだ!」と(笑)。「波」だったら「音」でもあるし、「水」でもあるし、バッチリだなと。沙村さんの作品が大好きで、その世界観には以前からかなりインスパイアされていますね。

―歌詞のなかの、<今はなんにもできない大人になりそうだ>というラインが印象的です。

朝日:「大人」って何だろう? と考えたんです。この歳になってくると、同い年の友人はすごくしっかりしてくるじゃないですか。この前、幼馴染みに会ったら「転職して今、広告代理店で働いてるんだけど~」みたいに言ってて、「すげえ……」ってなったんですよね(笑)。

それに比べて自分は、何事につけても真っ当にできてないということを、すごく強く感じた。それって音楽を生業にしている人なら、誰もが一度は思うことなのかもしれないですけど。

―いわゆる「組織」に所属して働いている人以外は、きっと思い当たるフシあるでしょうね。

朝日:そうなんですよ。何の保証もない世界で生きているわけで、ときどき怖くなる。自分の可能性はどこまであるのか? ということはつねに考えているし、ずっと不安のままです。

中村:私もそれはすごくよくわかります。女性の場合、ちょうど私の年齢的にも結婚したり子どもを産んだりしていて。バンドのなかにいるときは、みんなこの世界で真面目に一所懸命活動しているってわかるんですけど、一歩外に出ると親には「いつまで遊んでいるんだ?」みたいなことを言われるし。人によって、私たちの見え方って違うんだろうなと思いますね。

中村郁香

―中村さんは、今年正式メンバーになったんですよね。それも大きな決断だったのでは?

中村:そうですね。会社を退職して、バンドに専念すると決めたのが本当につい最近です。なので、この歌詞は共感するところも多いし自分に問いかけられているような気もします。

正式メンバーになったのはネクライトーキーの音楽が好きというのは大前提として、もともと音楽で食べていきたいという夢は持ちつつ、芽が出るまでは仕事を続けようというスタンスだったので、今が決断するタイミングだなと。他の人からの誘いだったら、まだ仕事をやりながら音楽を続けていたと思います。

朝日:よく思い切って、飛び込んできてくれたよね(笑)。最終的にはメンバーみんな、音楽一本でやっていけたらいいなと思っているので、彼女の意気に応えなきゃなと思っているところです。

分別をとっ払って自由になるべきだと思うけど、バンドを運営するときに社会性は必要。(朝日)

―<大人が困るようなこと 今日は言わないでおこう>というラインは、「子どもの無邪気さ」と「大人の分別」の間で揺れ動く心を歌っていますよね。

朝日:はい。子どもの純粋さ、無邪気さはつねに正義という考え方には、正直なところ違和感がある。そこはちゃんと、僕らも歳を重ねてきたんだと思わせる一文です。

大人になって分別がつくというのは、「社会性」が身につくということだと思うんですよ。ずっと子どものままで、傍若無人に振る舞っていたら、歌詞にあるように<うるさい、うるさい! 誰かの声がする>と。でもそれは、実のところ、自分がイメージして作り上げた「誰か」、つまりは自分の声なんだろうなと。

―だから最後の繰り返しでは、<うるさい、うるさい!>が自分の声になっているわけですね。「その声」に抗うべきなのか、従うべきなのか、どちらがいいんでしょう。

朝日:うーん、それこそ、その場でフルに考えて答えを出さなきゃいけないんじゃないかな。たとえば、作曲とか物作りをしている時には、分別をとっ払って自由になるべきだと思うけど、バンドを運営したりグッズのことを考えたりするときに社会性は必要だし。その場で臨機応変に考えて行くべきなのかなって。

―Aメロのブリッジを「要らない」って言われても、それには従わないのと同じように(笑)。

朝日:そうです。そこはめっちゃ抗うべき(笑)。

―「子どもの無邪気さ」と「大人の分別」を使い分けられるようになることが、成長するということなのかもしれないですね。もっささんは、この曲を歌ってみてどう感じましたか?

もっさ:朝日さんの曲って、現実を空想っぽくぶっ飛んだように表現していると思うんですけど、この曲は生活感が溢れるというか。<帰る少年の足>というフレーズとか、情景が目に浮かびやすいです。「近所の歌」っていう感じ。

朝日:もっさは<晩ごはんのこと>とか歌いながら、どんなことを考えてるの?

もっさ:「歩いてるとき、晩ごはんの匂いするよな~」って考えてる(笑)。「あ、この家は今日カレーなんやな」とかわかるじゃないですか。そういうのがすごく現実的に入ってくるのが、他の曲と違うところかもしれないです。

朝日:今回、「生活」がテーマの歌だったので、そこがちゃんと表現できていたみたいで良かったです。

―MVはどんなテーマで撮影しましたか?

朝日:子どもから大人になる過程で、どうして「ありのまま」でいられなくなるのだろう? ということですね。でも、それも受け入れながら進んでいこうという歌詞の内容を、いつもMVを撮ってくれている小名良平監督と話しながら映像化していきました。

引越しというのは子どもにとってすごく大きな変化だし、子どもから大人へ変化していくことの表現にもなるな、と。家のなかでバンド演奏を撮ったのは、今回の楽曲が狭い空間のイメージがあったので思いつきました。「引越し」と「家のなか」というのがメイン要素でしたね。

ありのままって、難しいですよね。(朝日)

―「ありのまま」っておっしゃいましたけど、今回の『徒然なるトリビュート』の共通のテーマが「ありのまま、自分らしくいること」なんです。

朝日:ありのままって、難しいですよね。結局はバランスだと思っていて。みんながありのままに生きていたら、社会は無秩序になってしまう。「人を切り裂きたい」という願望を持っている人がありのままに生きたらとんでもないことになるじゃないですか。それは極端な例だとしても、たとえば「ムカついたら殴りたい」「かったるいから仕事を休みたい」みたいな願望を達成されても困りますよね。

ただ、「休みたい」っていうのは決してネガティブなことではなく、体にとっては大事なこと。どこからが許されて、どこからが許されないのか、単純に常識とか善悪でも分けられないですしね。

なので“波のある生活”は、「ありのままに生きよう!」みたいな「全肯定の歌詞」にはしないでおこうと思ったんです。「今日は、ちゃんとしよう」とか「明日は休みだから、思いっきりダラダラしよう」とか、メリハリをつけることも大事なのかなと思うし。

―それこそ「子どもの無邪気さと、大人の分別を使い分け」ですよね。

朝日:そう思います。だから、「歳をとる」「大人になる」ということも否定したくはないんですよね。「ありのまま」というテーマについては、そんなふうに考えていました。

私はもっとカッコつけてみたいのに、カッコつけられないのは何でなんだろう。(もっさ)

藤田:もっさを見ていると、ありのままに生きているなって思う。もちろん彼女も大人だから、いろいろ気を使ったりしているところもあるけど、たとえばライブのMCとか、一切カッコつけず何も考えずにしゃべってるよね(笑)。

藤田

朝日:だからやっぱり表現の場においては「ありのまま」って強みだよね。

藤田:私はもっさと対極のタイプなので、ついつい飾り立てようとしてしまうんですよね。ありのまま、自分らしくいるもっさが羨ましく思うときもある。

朝日:むーさん(中村)もありのままに生きてるよね?(笑)

中村:どうだろう。ありのままでいるときと、そうじゃないときをちゃんと分けて生きようと思ってるかな。

タケイ:その振り幅が、むーさんはとんでもなく大きいんですよ。ライブのときとか「ありのまま! どーん!」って感じだし(笑)。

カズマ・タケイ

中村:そのくらいオンとオフを切り替えているから、自分を保てるというか。わりと普段も、家にいるときとかありのまま堕落した生活をしてるんですが(笑)、そう見られないのは得していますね。

―(笑)。もっささんは、自分ではありのまま生きていると思いますか?

もっさ:ありのまま……。むしろ、私はもっとカッコつけてみたいのに、カッコつけられないのは何でなんだろう。嘘つきたくないっていうのもあるかもしれないですね。カッコいいことを普段は絶対言わないし、思ってても口に出さないし。だけど、たまにはカッコいいこと言いたいです。

―ありのままでいるもっささんを、みんなで支えているというか、見守っている雰囲気がネクライトーキーにはありますよね。

朝日:たとえばMCでも、決められたことを話してもらうんじゃなくて、素のままでやった方がいいし。だいたい、「こういう風にしゃべってくれ」ってお願いしたところで、聞かないしね(笑)。

もっさ:いや、フリースタイルでしゃべっているなかから、ぽろっといい言葉が出てくるのが一番かっこいいと思うんですよ! でも全然出てこないんです……(笑)。いつか、ちゃんと出てくれたらいいなって思います。それが本当に心の底から出た言葉やと思うし。

左から:もっさ、カズマ・タケイ

藤田:自分らしくいるのも大切ですけど、ときには多少無理してでもポジティブに振る舞うことも、私は大事だと思うんですよね。たとえば、めっちゃしんどくてもステージに立たなきゃいけないときもあって。そのときに、無理にでもドヤって弾いていると、自然と気分もそっちに引っ張られるというか。

それは日常でも一緒で、辛いときこそ笑ったりニコニコしていた方が気持ちも上がっていくんです。なので、くしゃみをしたときとか今までだったら「死ね!」って暴言を吐いていたんですけど、最近は笑うようにしています。

―え、どういうことですか?

藤田:「ハックション、死ね!」だったのを、「ハックション、あははは」って。

朝日:どっちも怖いよ!

商品情報
サントリー 天然水GREEN TEA

2019年4月16日(火)発売

新しい時代にあった緑茶をつくりたい。そんな思いから生まれたのが「サントリー天然水 GREEN TEA」です。目指したのは、気持ちをクリーンに、前向きにしてくれるストレスフリーなお茶。「サントリー天然水」ブランドの持つ「清々しくて気持ちいい」というイメージを活かした、新時代にふさわしい緑茶商品です。ほっと一息つきたいときだけではなく、気分をすっきりリフレッシュしたいときまで、新しい緑茶が飲まれるシーンを提案していきます。

サービス情報
『徒然なる トリビュート』

約700年前、「ありのまま、自分らしくいること」の大切さを随所で綴った随筆文学、『徒然草』。サントリー 天然水 GREEN TEAのブランドメッセージとも重なるそのスタイルを、今を生きる人々へ届けたい。そんな想いから生まれたのが、この「徒然なるトリビュート」です。ありのまま、自分らしいスタイルを貫く5組のアーティストが『徒然草』を再解釈し、オリジナル楽曲を書き下ろし。MVを通じて、そのメッセージを届けていきます。

プロフィール
ネクライトーキー
ネクライトーキー

2017年Gtの朝日が中心となり、もっさ(Vo/Gt)、カズマ・タケイ(Dr)、藤田(Ba)により結成されたバンド。2019年3月にキーボードの中村郁香が正式加入し、5ピースバンドとなる。朝日の作る軽快なロックサウンドに乗せた鬱屈したネガティブ歌詞世界を、もっさがあどけなさの残るキャッチーで唯一無二な声で歌い上げる“ネクラポップ”サウンドに注目が集まり、2019年1月に放送された日本テレビ系「バズリズム02」の「今年コレがバズるぞ!BEST10」では第3位を獲得。7月24日にはミニアルバム『MEMORIES』をリリースし初のワンマンツアーを8月より実施する。



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