細美武士が語るthe HIATUSの10年。バンドという絆を育てた道のり

the HIATUSの6枚目のアルバム『Our Secret Spot』は、サウンド・歌ともに大胆な刷新が果たされた作品だ。アンサンブルの構築美は相変わらずだが、しかしその音数が吟味され、より一層5人の息遣いが聴こえる立体的なものに。どこまでも色を塗り足して爆発していく壮大な楽曲は、細やかな音の起伏でじっくりとエモーションを昂らせるものへと変化。かつてなく低いキーが新鮮なメロディに祈りと現行のR&Bまでを宿した細美の歌を中心にして、鳴りも音色も展開もかつてない大脱皮を感じさせるのが今作の素晴らしさである。

細美のソロプロジェクトとしてスタートしたthe HIATUSは今年で10周年を迎え、「ロックバンドのサウンドデザインを更新したいと思い続けて、the HIATUSとして鳴らしたい音が一旦完成した」と細美は語った。つまり、バンドとして自然体のグルーヴを過不足ない形で鳴らせたのが今作の意義と変化の肝になっている。MONOEYESとELLEGARDENもアグレッシブに活動を展開する中、the HIATUSでこそ鳴らせるサウンド、グルーヴを改めて追求した道のり。さらには細美の心の秘部と深奥がじっくりと染み渡っていく歌の核心、彼にとってのバンド論すべてを洗いざらい語り合ったインタビューだ。

『Keeper Of The Flame』辺りから目指していた、ロックバンドとしての新しいサウンドデザインにたどり着けた。

―いろんなポイントがある作品だと思うんですが、まず、音数が絞られてthe HIATUSとして新しいグルーヴを掴まれている点が耳に飛び込んできて。細美さんの歌唱がR&Bシンガーのような表情を持って刷新を果たしている部分も含めて、じっくりとした高揚とスケール感をもって響いてくる作品だと感じました。

細美:今作を話すに当たって、ふたつの方向があって。ひとつは、アンサンブルと各パートのプレイの内容。それからもうひとつの軸が、4枚目のアルバム(『Keeper Of The Flame』 / 2014年)辺りから目指していたサウンドデザインにようやくたどり着けた実感があること。the HIATUSのサウンドデザインが一旦完成したのかなって思えている作品ですね。

―『Keeper Of The Flame』の時期から目指していたサウンドデザインとは、言葉にするとどういうものだと思います?

細美:今は世界的にロックバンドの数が減っているし、ヒップホップが主流じゃない? その状況に対して、ロックバンドのサウンドデザインを更新したいっていうのはずっと考えていて。今が2019年でしょう? もちろん俺は1990年代のサウンドも好きだし、これからもそういうサウンドのアルバムを作る場面もあるだろうけど、だけどそれだけではない形も追求したかったんだよね。

細美武士
the HIATUS(ざ はいえいたす)
細美武士(Vo,Gt / MONOEYES、ELLEGARDEN、the LOW-ATUS)、ウエノコウジ(Ba / ex-thee michelle gun elephant、Radio Caroline、武藤昭平 with ウエノコウジ)、masasucks(Gt / FULLSCRATCH、RADIOTS、J BAND)、柏倉隆史(Dr / toe)、伊澤一葉(Key)によるロックバンド。2009年に細美武士を中心に活動をスタート。これまでに5枚のアルバムをリリースし、2014年には日本武道館公演を開催した。7月24日に6thアルバム『Our Secret Spot』をリリース。

―実際、1990年代のオーセンティックなロックサウンドの中でどうやって新たなカタルシスを生むのかはMONOEYESでトライされているし、そこにELLEGARDENの再始動もありましたよね。その中で、the HIATUSとしてはより同時代性のあるサウンドに振り切れたところもあるんですか。

細美:もちろん、時代の流れは認識していたと思う。リスニング環境で言えば、ストリーミングサービスを使って、携帯電話で音楽を聴く人が増えたよね。それに、音楽の制作環境としても今はDAWを誰でも使えるようになってきた。しかもそのDAWも、プリセットの音がすごく多彩でさ。そうやって誰でもいろんな音を使える中で、「ロックバンドのサウンド」ってなんだろう、っていうのを目指したのが今回のアルバムだと思う。

―ストリーミングサービスや、ひとりでの制作が限りなく無限になった音楽の外的な環境において、実際の音やソングライティングに反映されたのはどういう部分だと思いますか。

細美:たとえばミッドレンジより上が歪んでる曲って、ストリーミングサービスの中では音量を下げられちゃうじゃん。で、曲がプレイリストに入った時を考えると、自分達のリスナーに音量を上げる手間をかけさせることになるじゃない? そう考えると、マスターで突っ込むためにはミッドレンジからトレブルで歪んでる音っていうのは削らざるを得なくなったよね。

―世界的に見ても、中域を削って歌やラップ、あるいはローを際立たせる傾向は強いですよね。

細美:まあ元々は、リスニング環境が変わったんだから、それに対してサウンドのデザインを更新する必要があるなっていう発想だったんだよね。その試みにまた、新しいメロディや歌唱が引き出されていったところはあったと思う。

the HIATUS『Our Secret Spot』を聴く(Apple Musicはこちら

―実際、同期のビートが顔を覗かせたり、浮遊感のあるシンセの音色を使っていたり。バンドの音数を絞って立体的な音像になっていることも、じっくりとした聴き心地に直結していて。ただ、「ロックバンドのサウンド」と言われたように、時代との同期以上にあくまで5人の生のグルーヴをどうアップデートするかに重心のあるアレンジとテクスチャーだと思ったんですね。

細美:それがバンドアンサンブルをどうするかっていう部分の変化だよね。より同時代的なサウンドを確立するために一番の骨格になったのが、なるべく音数を減らすっていうことでした。まあ5人のメンバーがいるから、それでもそれなりにテクスチャーは多いんだけど、the HIATUSなりのミニマムっていうのかな――5個の楽器があるバンドとして、音数を絞ることでそれぞれの玉を大きくしようっていう気持ちはあって。まあ、やっぱりオルタナティブな志向が強いバンドではあるから、今まではどうしても足し算が多かったと思うのね。不協和音とかさ。

2ndアルバム『ANOMALY』収録

―壮大に昇っていく展開が多かったし、どんどん音を重ねて、混ぜて、新しい色を生もうとする楽曲が多かったですね。

細美:いろんな色を足すことで他にない色を出してたんだよね。でも今回は引き算に近いし、それはチャレンジだった。ただ、ロックバンドとしてっていう部分は変わってないと思うんだよね。実際今回のアルバムは、今までで一番喧嘩が強そうなアルバムだと思ってるし。

―はははは。はい。

細美:大人の男として、ただのいい人ではない部分も含めて表現していこうっていうのは、バンドをやる上でずっと変わってないところですね。

本当の意味でのバンドになるために10年間やってきたと思う。

―喧嘩が強そうーー武装するか素っ裸で立ち向かうか。その両方があるとは思いますけど。それが脱ぐ方向にリアリティを感じられるようになったのは、どうしてですか。

細美:これは言葉でもなんでもそうだけど、言い訳や説明なく言い切ったものは潔いしカッコいいじゃないですか。やっぱり格言になるようなものって、何ページにも亘るものじゃなく、1行くらいで言い切れているもので。前フリも、誤解されないように補足することも必要もない……そういう意味で、ストレートですよね。

―丸腰で堂々と立てるのが一番強い。

細美:ドバーッとやるカタルシスも大好きなんだけどね。ただ、口数は少ないけど野太い、みたいなカッコよさ……。その発想自体は、『A World Of Pandemonium』(3rdアルバム / 2011年)でアコースティックに振り切って、『Keeper Of The Flame』(4 tアルバム / 2014年)で俺がほとんどエレキギターを弾かなくなった辺りからずっとあってね。その上で今回は、迷った時にとにかく「安易に音を足すのはやめようぜ」っていう発想で作ってました。それは、時代性云々とはまた別の意味で、バンドにとっての新しいチャレンジだった気がしますね。

―サウンドデザインの面で時代性・音楽を取り巻く環境の変化を反映したのは、あくまでthe HIATUSというバンドの音楽として過不足ないグルーヴを追求するためだ、という話ですか。

細美:最終的にそのふたつの試みは、同じところに着地したっていう感じですかね。たとえばボーカルの面で言うと、今回はキーの低い楽曲が多いんですよ。

―そうですよね。細やかな抑揚を大事にしたソウルフルな歌唱を獲得されている。そうなっていったのはなぜだと思います?

細美:これまでも、ボーカルとして新しい表現――大きい声で高いキーを出す以外の歌・メロディにもトライしたかったんですけど、なかなか上手くいかなくて。エレキギターが2本、3本でっかく鳴ってるトラックの中でキーの低い歌を歌っても、聴こえないんだよね(笑)。だけど、the HIATUSを10年やってようやく、キーが低い歌でも前に出るようなアンサンブルを作る余裕が生まれたのが大きいんだと思う。

the HIATUSアーティスト写真
左から:ウエノコウジ、masasucks、細美武士、柏倉隆史、伊澤一葉

最初は、「バンドだぜ」って言う白々しさや胡散臭さみたいなものが俺の中にもあったんだよね。

―これまでもthe HIATUSは音楽として実験的な側面も強かったと思うし、特に初期は、バンドというよりも細美さん個人のプロジェクトとして、ELLEGARDENで鳴らしていたメロディックパンクの外へ行こうとする向きも強かったと思うんです。でも『Keeper Of The Flame』や『Hands Of Gravity』(5thアルバム / 2016年)、そして今作にかけての変遷で5人がフラットなバンドになって、バンドアンサンブルの原始的な気持ちよさをそのまま鳴らそうとする様が伝わってきたんですね。そういう意味で言うと、the HIATUSが10年をかけてバンドとしての肉体を得た作品とも言えますか。

細美:ああ。実際、最初は「ソロプロジェクト」って言ってたもんね。そこから本当の意味でバンドになりたくてやってきたと思う。振り返ってみると、ELLEGARDENが活動を休止して、そこで俺が「新しくバンド組もうぜ」って言っても、事実として俺にはそれまでのキャリアがあったわけじゃないですか。しかもそれぞれに素晴らしいキャリアのあるメンバーを集めてさ。

それを「バンドだぜ」って言う白々しさや胡散臭さみたいなものが俺の中にもあったんだよね。やっぱりバンドって、ガキの頃から始まって、ケンカして、お互いの環境の変化をともに経験しながら、自分の中になかったアイデンティティを持ったミュージシャンになっていく――基本的にはそういう過程を踏むものだと思ってるから。

―そうですよね。

細美:そういうバンドの根本を考えると、ひとつの部屋にみんなを入れてドアを閉め切っちゃうやり方はあまりに商業的すぎるんだよね。そうじゃなくて、出入り自由なのに自然とみんながそこにいるようにならないと――それがバンドだから。だから最初は「ソロプロジェクト」って言ってたんだろうし。

だけど、5人で一緒に日本を何周もして10年やってるうちに、誰もthe HIATUSが俺のソロプロジェクトなんて思わなくなったと思うんだよ。ちゃんとケンカして、辛い想いも多幸感のある光景も共有したから、今の幸せな状況やこの作品があるんだと思う。今は5人の距離がむちゃくちゃ近いし、家族だと思ってるからね。

―そうして築いてきた関係性と絆をそのまま音楽にした結果、5音それぞれが映える生身の楽曲、体温を感じさせる歌に直結していったとも言えますか。

細美:ああ、バンドとしてもシンガーとしても、より一層生身に近づいてきたのかもね。俺個人で言っても、「いい歌ってなんだろう」っていうのはより一層考えるようになって、1テイクに対する集中力も変わったと思う。やっぱり本来の「歌」って、当たり前だけど地の部分じゃん。でも機械で綺麗に整頓されることが普通になってきているでしょ。ただ、そうやって整頓された歌って、2、3回聴く分にはいいけど、長くは聴けないんだよね。

2016年から開催されているジャズクラブツアー『Jive Turkey』の模様

「the HIATUSが一番カッコいいと思うのに周りの人にわかってもらえない」って言う子に、「お前みたいなヤツのためにやってんだよ!」って言ったんだよ。それはずっと変わらない気持ちなんだよね。

―綺麗に整えられただけの歌は心の奥には残らないっていうことですよね。今、心に残り続けるようないい歌とは何かを改めて考えるようになったのは、どうしてだと思います?

細美:これは昔から言われることだけど、デモテープが一番カッコいいっていうのが永遠の課題でさ。だって、初めてメロディが生まれた幸福感や初期衝動が全部そこに入ってるわけだから。繰り返しやればやるほど、そこと闘っていかなくちゃいけない。そういう意味で、いい歌を歌うとはどういうことなんだろう? って改めて考えるようにはなった。

それに元々、1980年代からロックやメロディックパンクばっかり聴いてるわけじゃないし、今も、トップチャートからインディチャートまで聴いてるつもりなんだよね。研究とかじゃなくて、ただ単に音楽が好きなの。そうやって聴いてると、若い世代がレタッチされたものだけ好きかって言ったら、そんなことはないんだよね。いつもそうだけど、今のメインストリームに対してのカウンターが出てきて、音楽ってそれで転がってきたところがあるじゃん。ただ整えられたものに対する「ふざけんな」っていう音楽もたくさんあるし。その中で俺は、なるべく思い切りのいいところにいたいなと思ったんだよね。

―ロックバンドの定義の話にもなりますけど、そもそも音楽に対してより純粋でありたいし、悔いのない形でやり切りたいということですか。

細美:いわゆる「ロックだね」っていう言葉があんまり好きじゃなくて、俺。テンポが速くてギターが歪んでればロックってわけじゃないし、単にルールを破ることを「ロックだね」って言う人とかもいるけど、なんかね、それと一緒にすんなよっていう気持ちがあるんだよ。

結局ロックっていうのは、どこを向いているかの話だと思ってて。1枚でも多くレコードを売ろう、みたいなところじゃなくて、もっと奥のほう――こいつにだけ届けばいいと本気で思う純粋さ・強度のあるものだと思うんだよ。

かなり前のエピソードだけど、秋田に『OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL』っていう大好きなフェスがあって。そこに出店してた「東北ライブハウス大作戦」のブースに顔を出したの。そしたら地元の高校生の男の子が来て。「僕はthe HIATUSが大好きです。でもクラスのみんなに聴かせても、こんなのロックじゃないとか言われる。周りの人に聴かせてもピンときてくれないけど、でも僕はこれが一番カッコいいと思う」ってわざわざ言ってくれてさ。嬉しくて「俺らは、お前みたいなヤツのためにやってんだよ」って言ったの。その気持ちはずっと変わらないんだよね。

―「お前みたいなヤツのためにやってるんだ」というエピソードもありましたが、歌の内容を見ても、細美さんが細美さん自身の内省に対しての救いを歌うものが増えた印象があるんですね。“Hunger”も、ラストに鍵盤と歌だけが広い空間に鳴って深い祈りを感じさせるし、ご自身の人生そのものや失ったものを振り返るようにして歌う歌が多い。そういう意味でも、『Our Secret Spot』の名の通りだと思ったんです。ご自身では、今の歌の種になっているのはどういうものだと思います?

細美:やっぱりガキの頃は、何にせよ白と黒をハッキリさせたかったのね。白と思ったら真っ白だし、黒と思ったら真っ黒。だけど長く生きてると、当然、20代とは違う自分なわけで。そうしてくると、白と黒の間にたくさんの色があって、その間は灰色だけじゃないってこともわかってくるんだよ。

若い頃はビッグテーマだけで歌詞を仕上げることが多かったし、特にELLEGARDENの歌には「この1曲だけで考えてることを書き切れてるじゃん」っていうものが多かったの。それはそれで素晴らしいことなんだけど、逆に言えば、生きれば生きるほど新しいテーマは見つからなくなるのかなと思うこともあったんだよ。だけど実は、もっと深く描けることが白と黒の間にたくさんあって。今俺は46だけど、それなりに長く生きてきた自分のことを振り返ったら、当然、白か黒かではない過去や経験がたくさんあったんだよね。

―20代と違うというのは、ガーッとやるだけではない、もっと心に訴えかけたり染み入ったりする歌をご自身が求めていたということでもありますか。

細美:うーん、答えになってるかわからないけど、昔、アラニス・モリセットが「作詞は自己セラピーだ」って言ってたんだけど、俺もそういう面はあるよ。メロディを生んで自分の歌いたい歌を作るのは、あくまで自分自身がポジティブな視点を持つため。俺は誰かに向けて救いの言葉を書いたことなんてなくてさ、全部自分に対してなんだよね。

だから昔は、たまに「あの曲に救われました」って言う人に会うと驚いたの。「誰かにこう言ってもらえたら俺は乗り越えられる」って思うことを自分で書いた歌が、俺と同じ心の形をした人に同じように受け取られたってことでしょ。それが言ってくれたような「祈り」に聴こえるんだったら、すごく嬉しいね。

5thアルバム『Hands Of Gravity』収録

本当の秘密の場所は人に教えるものじゃない。俺がここで歌ってるのも、そういう意味での秘密の場所なんだよね。

―音にメロディと歌が呼ばれるという点で言うと、ELLEGARDENやMONOEYESの青春性・熱さとも違う、the HIATUSでしか表れてこない自分がいるということですよね。なおかつ、20代の時とは違う成熟した自分を歌う場所としてthe HIATUSがあるというお話にも聞こえたんですが。そういう意味でいうと、the HIATUSでないと歌えない自分とはどんな自分だと思います?

細美:そうだな………あんまり思いやりのない自分かもしれないね(笑)。結局は仲間だけ大事にできればいいって思ってるし、博愛ではない自分が歌に出てきてる。まあもともと博愛ではないんだけどさ。

―“Chemicals”では、アルバムタイトルの<Our Secret Spot>という言葉が歌われていて。歌詞も、今はもう戻ってこない<彼ら>(和訳)や、今も残る<傷跡>が綴られている。その最後に<みんなは大して気にしてないこと>と結ばれるじゃないですか。こうして、心の秘境や過去を振り返っていく歌は今の自分にとってどういうものなんですか。

細美:これは質問に答えられてるかわからないけど……俺さ、ドラマとか映画ですごくチープだなと思うシーンがあるんだよ。悲しいことがあった時に主人公がいなくなって、仲間が「きっと、あの秘密の場所にいるよ!」って言って探しにいくでしょ。で、行ったら本当にいるの。でも、探しに行って見つかる場所なんて、秘密の場所でもなんでもないじゃん。

―結局多摩川の土手かよ、みたいなね。

細美:ははははは。そう、それはただの好きな場所でしょ。でも本当の秘密の場所は人に教えるものじゃない。俺がここで歌ってるのは、そういう意味での秘密の場所なんだよ。自分しか知らないことっていうか……たとえば俺らのライブで言っても、Zeppの2daysで5000人。武道館もたくさんの人が見に来てくれた。だけど、茶の間の人は誰もthe HIATUSのことを知らないじゃん。俺達の10年はそこにいるヤツらしか知らないっていうのが最高のことだし、まあ後付けだけど、それも俺の思う『Our Secret Spot』なんだよね。

―10年をかけて、自分と仲間だけの大事な場所・音楽を作ってこられたという話とも通ずる話ですよね。今近くにあるものを大事に包んで生きていこうとする歌。

細美:結局、俺はすごくエゴイストなんだよね。どんな人の人生にも終わりがくるし、俺も自分の人生が終わる時に必ず自分が作ってきた作品を思い出すと思うんだけど。その時に、「一度も納得いかないものは作らなかった」って思えないと嫌なんだよね。俺にはダメな一面もあるけど、だからこそ音楽や作品でくらいは自分を真っ直ぐ貫けたらいいなって思うから。

―たとえば“Back On the Ground”では<もう一度ぶちかませ>という切迫したラインがあったり、“Time Is Running Out”でも、過去の景色を起点に、まだまだ生きていくという意志が歌われている。生きていくこと、そしていつか人生が終わるということは、より一層深く意識するようになっていくんですか。

細美:ああ……単純に人生の残り時間が減っていくからね。……そうかもしれないね(笑)。

―そういう気持ちは、ご自身にどういう変化をもたらしますか。

細美:まあ、こういうインタビューだと真面目に話してるけど、実際の俺は超めんどくさがりだし、「一生酒飲んで笑ってたい」っていう人間なの(笑)。なんなら、ひとりでも別に生きていけるし、勝手にやるよって思ってる。だからこそ、人生の中で出会った人や、一緒に音を出してくれるメンバーとか、レコードを出してくれるレーベルの人とか、友達も含めて、一緒にいられる時間を大事にしたいってより一層思うようになった。

細美:せめてその人達くらいはね、俺がいることで何かしらのプラスになってくれないかなって思うよね。それにミュージシャンは本当にラッキーな職業で、誰も聴かなくなったとしても、俺がいなくなったとしても、音楽はずっと残り続ける。それは、遺伝子を残すのと一緒のことだから。

―そこで伺いたいのは、ラストの“Moonlight”のことで。賛美歌を思わせる素晴らしい曲なんですが、<僕の地上での時が尽きたら / 君にまた会えるかな>(和訳)という、まさに人生の終わりを思わせる歌がありつつ、<僕の魂が 今夜再び歌い出すといいな>と結ばれる。こういう言葉が出てきたのは、どういうところからですか。

細美:アルバムのクロージングのヴァースだから大きなコーラスを入れようと思って。そうなると曲の場面が変わるじゃん。そしたらその<I want my soul to sing again tonight>っていう言葉が出てきたんだけど。今こうして考えてみると……たとえばさ、俺は輪廻転生を本気で信じているわけじゃないし、信じるも何も、死んだ後のことは今は誰もわからないから、誰しもが物心ついた時から死が怖いわけだよね。

これはエジプトにひとり旅に行った時のことなんだけどーー砂漠に行ったの。砂漠に寝袋で寝て、毛布にくるまって朝を待っててさ。砂漠って、サソリとかキツネはいるにせよ、でも基本的には植物も音も明かりもなくて、言ってみればニアイコール死の世界な感じなんだよね。で、行く前は「死の世界に虚無を感じるのかな」と思ってたら、そこにあったのは、すごくピースな世界だったんだよ。静寂と安定と平穏があった。

生きていたら、いつも平穏を感じていられるわけじゃないよね。だからそこに平穏を感じた時に、ああ、こういう世界に行けるんだったらそんなに悪くねえかもな、って思えたんだよ。だから、そういうフレーズになったんじゃないかと思います。

―年齢のことも話していただきましたが、人生を音楽にしていくという意味でも、肉体的・直情的である以上にじっくりと伝わる歌と音楽を掴んだという意味でも、これから先を歩んでいくためにとても大事な作品を作られたんだなと感じます。the HIATUSという場所への信頼と愛が音になっているし、だからこそご自身の内面もより深く歌になった作品な気がしました。

細美:俺は、音楽をやってない時は人に好かれる要素があんまりない人間なので。だから、周りに人がいてくれることが嬉しくて音楽をやってるところは間違いなくあるし、そもそもバンドとライブハウスは、俺の中ではいつまでも「落ちこぼれのセーフティネット」なんだよ。ガキが悩み狂うのはいつの時代だって普遍的なものだし、時代が変わってSNSの時代になろうが、俺達を救ってくれた場所は変わらずそこにあってほしい。そこを守り続けるというより、俺もずっとそこにいたいんだよね。

リリース情報
the HIATUS
『Our Secret Spot』(CD)

2019年7月24日(水)発売
価格:2,592円(税込)
UPCH-20519

1. Hunger
2. Servant
3. Regrets
4. Time Is Running Out
5. Chemicals
6. Silence
7. Back On the Ground
8. Firefly / Life in Technicolor
9. Get Into Action
10. Moonlight

イベント情報
『Our Secret Spot Tour 2019』

2019年7月31日(水)
会場:東京都 Zepp Tokyo

2019年8月1日(木)
会場:東京都 Zepp Tokyo

2019年8月6日(火)
会場:福岡県 Zepp Fukuoka

2019年8月8日(木)
会場:広島県 BLUE LIVE 広島

2019年8月21日(水)
会場:宮城県 仙台GIGS

2019年9月3日(火)
会場:愛知県 Zepp Nagoya

2019年9月4日(水)
会場:愛知県 Zepp Nagoya

2019年9月11日(水)
会場:新潟県 新潟LOTS

2019年9月13日(金)
会場:北海道 Zepp Sapporo

2019年9月18日(水)
会場:大阪府 Zepp Osaka Bayside

2019年9月19日(木)
会場:大阪府 Zepp Osaka Bayside

2019年9月24日(火)
会場:香川県 高松festhalle

『the HIATUS 10th Anniversary Show at Tokyo International Forum』

2019年10月1日(火)
会場:東京都 東京国際フォーラム ホールA

プロフィール
the HIATUS
the HIATUS (ざ はいえいたす)

細美武士(Vo,Gt / MONOEYES、ELLEGARDEN、the LOW-ATUS)、ウエノコウジ(Ba / ex-thee michelle gun elephant、Radio Caroline、武藤昭平 with ウエノコウジ)、masasucks(Gt / FULLSCRATCH、RADIOTS、J BAND)、柏倉隆史(Dr / toe)、伊澤一葉(Key)によるロックバンド。2009年に細美武士を中心に活動をスタート。これまでに5枚のアルバムをリリースし、2014年には日本武道館公演を開催した。7月24日に6thアルバム『Our Secret Spot』をリリース。



フィードバック 14

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • 細美武士が語るthe HIATUSの10年。バンドという絆を育てた道のり

Special Feature

coe──未来世代のちいさな声から兆しをつくる

ダイバーシティーやインクルージョンという言葉が浸透し、SDGsなど社会課題の解決を目指す取り組みが進む。しかし、個人のちいさな声はどうしても取りこぼされてしまいがちだ。いまこの瞬間も、たくさんの子どもや若者たちが真剣な悩みやコンプレックス、生きづらさを抱えながら、毎日を生きている。

記事一覧へ

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて