WANIMAが歌う「綺麗じゃなくてもいい」。傷も曝け出して前へ

前アルバム『Everybody!!』のツアーファイナルでメットライフドーム2days公演を完遂し、セールス面においても、ライブ動員においても、さらにはお茶の間の認知度においても、まさにエビバデなバンドへ駆け上がったWANIMA。デビューから5年ちょっとという短期間で、ライブハウスシーンもロックシーンも飛び越えた進撃と暇ない名曲の爆撃をぶちかましてきたバンドは他に見当たらない。

しかしだからこそ、WANIMAがそのパブリックイメージだけで語られてしまうことも増えただろう。「ただの元気な3人組」……そんなガワだけで語られることに対する戸惑いは前回のインタビュー(WANIMAの「答え」とは。国民的バンドの核心と葛藤を衝く)でも語ってくれたが、そこに対しても彼らは音楽で答えを出そうとした。それが2ndアルバム『COMINATCHA!!』(カミナッチャ!!)だ。

彼らのメロディの原風景がある地元・天草へと回帰していく様がMVにもなった“アゲイン”。幾度となく歌われてきた「痛み」や「孤独」の象徴である少年期の自分たちこそがこの歌をくれたのだと、笑顔の奥の切実さが花火みたいなメロディになっていく“夏のどこかへ”。さらには熊本県の県花「りんどう」と自分たちの歌の在り方を重ねた“りんどう”。それらの楽曲を経て、快速のメロディックパンクと勢いよりも、誰もが歌えて誰もが還れる歌の在り方を丁寧に吟味した、しなやかな楽曲が印象的だ。

これまでのWANIMAのイメージを覆すように彩り豊かな音楽が生まれ、しかしそれと同時に、WANIMAが歌い続けてきた痛みや人生の痕もかつてなく生々しく綴られた歌。今年ストリーミングサービスで全曲を解放したことが表すように、より近いところで、より間口を開いて、WANIMAが歌い続ける理由と切実な想いを届けたいーーそんな道のりの結晶として、この『COMINATCHA!!』は涙も血の跡もカラフルに鳴らす。悲しみにまみれても、雨が降り続いても、じっと耐えて、誰かと大声で空に打ち上げる。そんな太陽の歌が何度でも鳴り響くアルバムを通じて、全部語り合ってきた。

子供も大人も、生活に合わせた聴き方でWANIMAの曲に向き合ってもらえたらいいなって。どんな聴き方でも、僕たちの音楽が間違わずに届いてほしかった。(KENTA)

―音楽的なバリエーションに富んでいる一方、より深く自身の内面や人生を綴った歌も増えていて。いろんな意味でWANIMAの奥にあるものがドバッと出た作品だと感じたんですが、ご自身では、どういう作品になったと思われていますか。

KENTA(Vo,Ba):WANIMAはこんなこともできるんや!! と驚いてもらえる曲もありますし、これまでのタイアップ曲や、テレビで演奏していた曲とは違う一面も魅せられた作品やと思います。ただ、自分たちの中では、今までにもあったけど出せていなかったWANIMAを自然に出せた感覚もあって。それが自然とバリエーションに繋がりました。

―今まで出せていなかった自分たちの曲、つまりお茶の間で流れている曲たちとは違う表情・質感の楽曲も多く出したかったということだと思うんですけど。それはどうしてなんですか。

KENTA:今回は早くから世に出ている曲も多かったので、ライブを通して「もっとこんな曲があったらよかね!!」っていう曲を自由に創れたと思います。これまでも情景やイメージが浮かばないとメロディや歌詞には辿り着けなかったんですけど、それがより具体的というか、「どんな人にも聴いてもらえるような作品がよかね」っていう気持ちで創りました。

WANIMA(わにま)
左から:FUJI(Dr,Cho)、KENTA(Vo,Ba)、KO-SHIN(Gt,Cho)
熊本県出身の3ピースロックバンド。2010年結成。2014年10月、PIZZA OF DEATH RECORDSから『Can Not Behaved!!』でデビュー。2017年5月よりunBORDEとタッグを組み、2018年1月にリリースした『Everybody!!』は35万枚を超えるセールスを記録。同作のツアーファイナルでは、メットライフドーム2daysで7万人を動員した。2019年3月6日に4thシングル『Good Job!!』をリリース、さらに7月17日には5thシングル『Summer Trap!!』を発表し、10月23日には2ndアルバム『COMINATCHA!!』をリリース。本作はオリコン週間チャートで2作連続1位を獲得。

―これまでも「どんな人も聴ける作品を創れた」と言っていただくことはありましたけど、それと今回はどう違うんだと思います?

KO-SHIN(Gt,Cho):いろんなタイプの曲があるっていうところです。だからこそ、どんな人にも響くんじゃないかなって。そうやって人を選ばないところが「これぞWANIMA」っていうポイントになってると思うし、僕らは音楽的な知識があまりないので、込み上げてくるものを曲にするしかなくて……でも、大事な気持ちの部分は変わらない中で、成長を見せたいという意識が曲に表れてます。

―その成長というのは、リズムも多彩だったり、アグレッシブさもありつつ、どれだけ歌を丁寧に聴いてもらえるかを考えたアレンジも多くなったりっていう部分ですか。“宝物”や“りんどう”、“BOUNCE”をはじめとして、ストリングスも鍵盤も入ってより一層彩が豊かになってるわけですけど。

FUJI(Dr,Cho):そうですね。作品ごとにWANIMAは新しいチャレンジをしてきましたし、3人の音の中で自然に創ってきた曲たちではあるんですけど、「このタイミングでみんなに聴いてもらいたかね!!」っていうタイプの楽曲も入れてみたり。ストリングスや鍵盤も、自分たちの自己満足っていうことじゃなく、そうしたほうが多くの人にメッセージが届きやすいって思ったから、曲に対して自然な形で生まれてきたものだと思ってて。

―メッセージの部分が届きやすい方法として、楽曲のアレンジを広げていったと。逆に言うと、自分たちのメッセージがどういうふうに届いてほしいと思ったんですか。

KENTA:聴く人がいる場所――ライブをイメージして創った曲もあれば、その手前で、夏のカラッとした日が浮かんだり、みんなで歌を大きな声で歌っているところを想像したり、僕の中の情景がメロディになっていくのは変わりません。もちろん単純に音楽を楽しんでほしい曲は言葉遊びから音が出てきたりもするし、曲ごとに違うと言えば違います。

―たとえば“夏のどこかへ”で言えば<この歌は君がこんな僕にくれた>というラインが少年期の自分たちと戯れているMVと同時に歌われていたり、“GONG”にも、まるで自分たちの人生そのものを吐露するかのような言葉があったりする。こうして自分の人生や、これまでも歌の種になってきたであろう少年期の痛みや悲しみなどから歌が生まれてきた道のりがあって今作に至ったのは、自分たちの歌をどういうふうに届けたいと思ったからなんですか。

KENTA:自分たちにも少年期があって、その歌と、聴く人の少年期が結びついてほしいと想いました。何より、今の時代を生きる人達に僕たちの想いが間違わずに届いてほしいと思ったんです。だからこそ今年はサブスク(ストリーミングサービス)で全曲解禁したところもあって。そうすることで、子供も大人も、生活に合わせた聴き方でWANIMAの曲に向き合ってもらえたらいいなって。どんな聴き方でも、僕たちの音楽が間違わず、濁らずに届いてほしかったんです。

KO-SHIN:WANIMAはこうして人に歌に届けていきますって改めて言うような曲ですよね、“GONG”って。

―まさに。“GONG”の<生まれてきたこと 恨んでいた時も / あったけれど>という言葉は、今まで以上にヘヴィで切実なものだったと思うんですね。こういう歌が出てきたのも、今おっしゃったことの表れなんですか。

KENTA:……僕は今まで、自分のバックグラウンドや過去をあまり表に出してこなかった。僕の人生がどうとか関係なく、音楽そのものとして聴いてほしかったので。でも、自分自身が歌と向き合ったりツアーを回ったりする中で、今すごく苦しんでる子や、表面は笑顔でも普段は心で泣いてる子がたくさんいると感じました。だからこそ、「真剣に歌いたい曲」――自分のど真ん中を歌うことで、ど真ん中に響いてほしいと思ったんです。

KENTA

お客さんのことをこんなに考えているのはWANIMAくらいなんじゃないかと思う。(FUJI)

―それは、小さい頃から拭えないKENTA少年の痛みを自分自身で救いたいっていう気持ちでもあるんですか。

KENTA:……今のWANIMAを客観的に見てみて、「小さい頃、近所にWANIMAみたいなヤツらがおったらよかったな」って思うこともあったんです。田舎の何もないところで育ったし、何もないなら全部自分たちで創るしかなかったので。だから今言われたように、僕自身がずっと、WANIMAの歌に救われたり突き動かされたりしてるんです。

だからこそ今苦しくてどうしようもない子たちがいるとしたら、その横に長くいられる存在になりたいと思ったし、煙たがられたり暑苦しがられたり、「ただ元気な歌を歌っている」みたいなイメージで捉えられたりすることに対して「そうじゃないのに」って言いたかったところはあって。その中で、今までのイメージにない曲も創ろうとしたところはあったかもしれないです。でも、アンチや雑音にかまっているより目の前にいるお客さんを大事にしたいのは変わらなくて。

―幼い頃の自分を救うヒーローとしてWANIMAとWANIMAの歌があるし、だからこそ今の子供たちに何ができるかに向き合って、自分の少年期や天草の情景も歌の中にさらに色濃く出てきた。その上で今までにない楽曲や彩りを増やすことで、より間口を広げようとしたと。

KENTA:歌うたびにあの頃の自分を思い出したり、あの頃に過ごした天草の景色が浮かんだりするのは今も変わらない。そうやって自分の中の景色に向き合った歌をみんなで何度も歌うことで、乗り越えていける気がするんです。何も忘れてないっていうことは、きっとあの頃の自分に向かって歌ってるんやろうし、一つひとつを歌にして乗り越えた時に、自分のページが1枚ずつめくれていく気がしていて。

音楽の聴かれ方が、なんとなく軽くなってないか? みたいな気持ちはあったんですよ。その中で、ロックバンドの役割を考えることもあった。(KENTA)

―なるほど。『Everybody!!』のツアーを終えてからのこの1年、特に『Good Job!!』以降は特に音楽的なストレートさとか、人生としての原点回帰がテーマになっていると感じてたんです。それこそ天草でライブを行ったことも、ご自身が歌の原風景に還っていくことの表れだったんじゃないかと思って。

今年7月6日に行われた天草での野外公演より

KENTA:そうですね。外の声や雑音にどうこう思ってる時間があるなら、とにかく自分自身が強くならないといけないと思いました。それが“GONG”の<強くなって 守りたい仲間がいるから>っていう歌になったんです。その<仲間>には今まで応援してきてくれた人たちみんなが入ってますけど、WANIMAがもう3人だけのものじゃなくなったっていう自覚もあるし、背中を押してもらってるのは僕らなんです。

だからこそ、自分自身の抱えてきたものをもっと純粋な形で出してもいいんじゃないかなって思えたところはあります。そういう決意と覚悟がありました。

FUJI:そうですね。それを自覚してるからこそ、お客さんのことをこんなに考えてるのはWANIMAくらいなんじゃないかって思います。

KENTA:それこそストリーミングサービスを解禁したこともひとつの決意でしたけど……時代の流れの中で若干の違和感を感じることもあって。音楽の聴かれ方が、なんとなく軽くなってないか? みたいな気持ちは正直ありました。その中で、ロックバンドとしての役割を考えることもあったし。

SpotifyでWANIMA『COMINATCHA!!』を聴く(Apple Musicはこちら

―ロックバンドの役割とはどういうものだと思ったんですか。

KENTA:その時に信じた音や言葉と向き合って、理屈とかやなく内側から出てきたものをシンプルに音に込めること。くだらん言い訳をしない。他人や世の中のせいにしない。それが自分の思うロックバンドやと思いましたね。それに、聴いてる人に対しても自分たちにとっても、最後のアルバムになるかもしれないって考えたらどんどん覚悟は強くなっていくと思うし、時代の流れや音楽の聴き方の変化の中で、なおさら誰に対しても届く音楽を創りたいと思いました。

―すごく単純な言い方をすると、今回は“JOY”や“BROTHER”のように速いメロディックパンクよりも、スケールの大きなリズムで歌を伸びやかに聴かせる曲が多い印象なんですね。なおかつ、“シャララ”のように子供でも歌えるような歌もある。そうすることで自分たちのメロディがより一層人を選ばないものになるんじゃないかとか、そういう意図もあったんですか。

KENTA:1曲目の“JOY”は2ビートで速い曲ですけど……きっと、みんなが思ってる今までのイメージを覆したいところはありました。で、そういう意外性を持ってる曲がいいものになったなって思っているので……まあ、「速い曲が少なくなりましたね」って言われて、背中に入ってる「PUNK ROCK」っていうタトゥー消そうかと思いましたけど。

―ちょっと待って、パンクじゃないなんて言ってないです(笑)。むしろ「自分自身が強く生きるために人と寄り添っていきたい」っていう精神性や裸のメッセージをちゃんと伝えるために音楽の彩りを増しましたよねっていう話。

KENTA:ああ、そういうことか。

FUJI:そんなタトゥーも入っとらんしね。

―(笑)。“宝物”、“Baby Sniper”、そして“りんどう”がこれまでのWANIMAにないリズム、彩りを持っていて、それがKENTAくんのメロディをさらにでっかくしていて。その中でも“BOUNCE”が素晴らしいと思いました。これまでも“SLOW”のようにリラクシングなレゲエナンバーはありましたし、この“BOUNCE”もゆったりとしたリズムが軸になってるんですけど。ただ、<今夜そのまま 消えてゆくのに / 必要な大事なものまで奪わないでくれないか>という切実さもここには滲んでくる。

KENTA:それこそ“BOUNCE”は、一度立ち止まってひと呼吸置くようにして書いた曲。だからこそ、この歌ができた時に僕自身も「次に進める」って思いました。僕の曲ではありますけど、すごく励まされるところがあって。脇腹のところに“BOUNCE”ってタトゥーが入ってるくらい。

FUJI:それも入っとらんよね。

FUJI

30年生きてきても埋まらない部分がある。ひとりじゃできないことをやりたいっていうのと、ひとりになりたくないっていう想いが歌になってきた気もして。(KENTA)

―タトゥーの話は置いておきますが(笑)。一度立ち止まるとおっしゃったように、原点に立ち返るような道のりも含めて、WANIMAとはどういうバンドなのかを改めて捉えたいっていう気持ちもあったんですか。

KENTA:ずっとがむしゃらにやってきましたけど、WANIMAはもっとやれるよなって改めて確認する意味でWANIMAを捉え直すことはあったし、だからこそ、それを覆すようなこともしたかったですね。

―がむしゃらにやるだけじゃない、より音楽的にも拡張したところを丁寧に見せていきたかったというか。

KENTA:そうやと思います。単純に、「男やったら自分に負けたくなかよな!!」みたいな気持ちもありました。もっとやれるだろ? って思ってますし。……一度立ち止まってWANIMAを振り返った時に、まだまだ満たされてない、まだまだ歌えることがある、と思えたのは大きかったですね。

―<守り抜く><あの日を超えるまで>っていうように、KENTAくんが歌い続ける理由もストレートな言葉になってきたと感じるんですね。つまり規模や認知度、仲間の多さを超えたところに、ご自身を歌わせる何か――あの日の何かを払拭したいという願いが出てきているように思ったんです。歌いたいことを改めて捉え直した今、どういう気持ちがありますか。

KENTA:……僕には、30年生きてきても埋まらない部分がある。きっと、ひとりじゃできないことをやりたいっていうのと、ひとりになりたくないっていう想いが歌になってきた気もしていて。だから、今ひとりで苦しんでる子たちを見ると熱くなってしまうし、「間に合ううちに届けたい」って思いますし、だからこそこれまで「曲だけで届いてほしい」と思っていた奥の部分――自分の人生も歌にしようと思ったんだと思います。

―ひとりになりたくないと思うのは、なぜなんですか。

KENTA:ひとりっ子でもないし、姉もいるんですけど……家庭環境が複雑過ぎて、僕は孤独がめちゃくちゃ辛いって知ってるんです。生きていて気づいてもらえないのは本当に苦しいと実感してきたし、やから、ひとりで苦しんでる人に敏感やと思うんです。本当に苦しい人は苦しいってことすら言えないのも知ってる。ひとりになりたくない、ひとりにさせたくないのは、それが理由な気がします。

特に僕たちのライブって、それこそ小さい子もすごく多いじゃないですか。子供たちがこれだけライブに来るロックバンドって、そんなにいないと思うんです。「僕たちが歳をとるところを見てこの子たちは成長するんや」って思いますし。そうやって次の世代に何かを伝えて一緒に成長していくのがロックバンドの役割なんじゃないかなってことも思いました。この子たちと一緒に大人になっていけるのかなって思うと責任感が増すし、それもあって、自分が子供だった頃のことも真っ直ぐに歌おうと思いました。まあ、その子供たちが大人になった時に久しぶりにWANIMAのホームページを覗いたら「ドラムのFUJIくん死んだんや……」みたいなことになるんかなあ、とかも考えましたし。

FUJI:えっ……!!!!

―こんなに健康そうでツヤツヤなFUJIくんを前にしてすごいこと言いますね。

KENTA:一時期、FUJIくん太りすぎて歩く悪玉菌みたいにいわれとったもんな。

KO-SHIN:(笑顔で頷く)

KO-SHIN

―……だそうです。

FUJI:ここにいる誰よりも長生きしてやろうと思います。

―(笑)。話を戻すと、だからこそWANIMAは“ともに”と歌うわけですよね。

KENTA:そうです。子供たちにも、大人にも、「ひとりやけど、ひとりじゃない」って思ってもらうために自分たちの歌があるっていうか……還ってこられる、戻ってこられる場所がWANIMAやったらいいなって思うんです。一歩でも踏み外したら終わってしまいそうな子たちだっておるから、踏みとどまれる理由がWANIMAやったらいいなって……このアルバムは、そういう想いでできたと思います。

―だからか、曲の展開やメロディもキメ細やかに創り上げられていてサウンドが幅広い中でも、よりシンプルに自分を曝け出すっていう部分で一本筋の通った作品になってると思ったんです。

KENTA:「次があるからこれくらいでいいや」っていう程度じゃ届かない気がした。本当に細かいところまで、これが最後でもいいと思えるまでやらないとダメやって思ったんです。今回もまだまだできたし、反省もあります。

―以前から、死ぬまでのカウントダウンをしがちだっていう話とか、死ぬまで何曲創れるかをよく考えるっていう話もしてくれてますけど。そう考える部分は強くなっていくんですか。

KENTA:そこは増していきますね。ひとりになりたくないし、人との別れも増えてきて。だからやれるうちにやらんとって考えちゃうんです。たとえばシマウマって、歳をとればとるほど気性が荒くなっていくらしいんですよ。「ウマ」ってつくのに人に懐いた例がないらしくて。WANIMAはシマウマに似てるなって思いました。

人って、群れるほど自分は強いと勘違いしたり、驕りとかが出たりする。だけど、孤独ながらにひとつのことに立ち向かう姿が強さだと思うんです。(KO-SHIN)

―シマウマみたいに、歳をとればとるほど鋭く蒼くなっていくと。

FUJI:シマウマの話掘るんですね。

―え。掘りますよ。

KENTA:(笑)。人にもよく言われるんですよ、「ペースがすごいね」「曲創りすぎじゃない?」って。でも、むしろ僕らからすると「曲を届けないで、どこでお客さんと会話したらいいんやろう」って思っちゃうんです。SNSで「何食べた」とか、写真を載せて「どこに行った」とか、それはお客さんとの本当の会話じゃないけん。

―そうですね。

FUJI:聴いてくれる人のことを想っていないと、KENTAも自分自身のことをそのまま出すような曲を創らないと思うんです。だからこそ周りも協力してくれるし、自分もKO-SHINくんも、それが間違わずに届けばいいなって思いますし。

KENTA:たとえば僕らを初めて見て「ただ笑顔で元気な3人か」「暑苦しいから無理」と思う人がいたとしても、曲の角度を少し変えてみれば、きっと長い付き合いになっていけるんじゃないかと思ったんです。だって、お互い生活は違えど、それぞれの戦場でともに戦っているのは一緒なんやから。

そういう気持ちが今回の曲には入ってるし、一方では、今も僕は絶対に「大丈夫」とか「頑張れ」とは歌わないんです。そこは変わらなくて。大丈夫やないからライブに来てるんやと思うし、俺らも、大丈夫やったら3人で力を合わせてない。

―“りんどう”でも<弱いままで強くなれ>と歌われていますよね。この言葉はここまで語ってくれたこと、もっと言えばWANIMAが歌ってきたことの真ん中だと思いました。『Everybody!!』ツアーのアリーナ編からすでに披露されていた曲ですが、ストリングスが加わったことによってシンプルながらも非常にスケールの大きい曲になっていて。改めて自分たちではどういう曲が創れたと思われてます?

KENTA:“りんどう”は僕らの故郷・熊本の県花。群れて咲かない花で、花言葉も「悲しんでいるあなたを愛す」です。<弱いままで強くなれ>っていう言葉も、「変わって強くなろう」って思ってほしくないと思ったからやったんです。これまでたくさんの人に出逢ってきて、それぞれが苦しいことを抱えていて……だけど強くなるんじゃなくて、そのままの自分で強くなってほしい。今のまま、自分のままで強く生きていく覚悟を持ってほしい。

―WANIMAの思う強さって、どういうものなんですか。

KENTA:自分に負けないことです。腐らないこと、飾らないこと。全部含めて、自分に負けないで自分のままで生きていくことが強さやと改めて思っています。……KO-SHIN、話聞いとったか?

KO-SHIN:……いや、聞いとらん。聞いとらんけど、人って群れれば自分は強いって勘違いしちゃったり、驕りとかが出てきちゃったりすることが多いと思うんです。だけど本当の強さってそうじゃなくて、孤独ながらにひとつのことに立ち向かう姿のことだと思ってるんです。そうした時に、“りんどう”が群れずに強く咲く姿は、WANIMAが「こういう存在になりたい」と思うところと重なったんです。それを改めて確認するタイミングだったと思いますね。今回、自分でも「根から出た曲たちが多いアルバムだな」って感じられるのは、この曲に繋がってるからこそだと思います。

―“JOY”にも<綺麗なまま生きれないから>という言葉がありますけど、自分の中の痛みも全部持っていくことが強く立って生きていくということだと。

KENTA:うん……そうですね。聴いた人が、とにかくしんどい時に「自分は汚れたのかな」「自分は弱いのかな」って思うことがあったとしても、綺麗じゃなくてよかやんって僕は思うんです。音で守ってやりたいです。

僕自身、昔を思い出せば一瞬であの頃に戻れるし、いいことも悪いことも絶望もフラッシュバックするんですけど。でもそれと同時に、大人になるのも悪くないなって思えるとこもあるんですよね。WANIMAを走らせ続けることで出逢えるものがあるから。どんなに弱くても、自分は綺麗じゃないと思っても、そのままの自分に向き合って生きていくことが大事やって改めて思うんです。生きることを諦めたくないんです。

SpotifyでWANIMA“JOY”を聴く(Apple Musicはこちら

―そうして自分のページをめくっていって、自分が自分の歌によって救われていった先には何があるんですか。

KENTA:そしたらもう、めくったページを破って更新していくだけ。そこに人との出逢いや見たことない景色があると信じています。ライブしたり音楽をしたりする中で、照らしてるって言うより、僕らが人に照らされてるんです。上に昇り続けることもそうですけど、続けていくために振り返ることも大事だなって最近は思うんです。だから、自分の中を覗かないと新しいところには向かえなかったですね。これまで生きてきたことが今の自分を創ってる……そこに大事なものがあると思うんです。

―この作品を創った今、あの頃の自分は、今のWANIMAを見て「すごいね」って言うと思いますか?

KENTA:そうですね……きっと、「まだまだやな」って言う気がします(笑)。まだまだできるやろって。だから、これからもやっていけると思います。

リリース情報
WANIMA
『COMINATCHA!!』初回限定版(CD+DVD+フォトブック)

2019年10月23日(水)発売
価格:4,400円(税込)
WPZL-31671/2

1. JOY
2. 夏のどこかへ
3. Like a Fire
4. BOUNCE
5. GONG
6. 宝物
7. シャララ
8. BROTHER
9. Drive
10. Baby Sniper
11. 渚の泡沫
12. ここに
13. りんどう
14. アゲイン
15. GET DOWN

DVD収録内容:
『1 CHANCE DISC』
「Good Job!! Release Party」の面影@県立幕張海浜公園S2O JAPAN特設会場

1. オドルヨル
2. ANSWER
3. リベンジ
4. エル
5. ともに
6. 花火

イベント情報
『COMINATCHA!! TOUR 2019-2020』

ライブハウス&ホール編

2019年11月5日(火)
会場:東京都 新木場STUDIO COAST

2019年11月18日(月)
会場:秋田県 秋田市文化会館

2019年11月19日(火)
会場:岩手県 岩手県民会館 大ホール

2019年11月21日(木)
会場:山形県 酒田市民会館 希望ホール

2019年12月5日(木)
会場:熊本県 熊本城ホール

2019年12月6日(金)
会場:熊本県 熊本城ホール

アリーナ編

2020年1月29日(水)
会場:神奈川県 横浜アリーナ

2020年1月30日(木)
会場:神奈川県 横浜アリーナ

2020年2月4日(火)
会場:大阪府 大阪城ホール

2020年2月5日(水)
会場:大阪府 大阪城ホール

2020年2月8日(土)
会場:福岡県 マリンメッセ福岡

2020年2月9日(日)
会場:福岡県 マリンメッセ福岡

2020年2月22日(土)
会場:新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター

2020年2月23日(日・祝)
会場:新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター

2020年2月29日(土)
会場:福井県 サンドーム福井

2020年3月1日(日)
会場:福井県 サンドーム福井

2020年3月7日(土)
会場:愛媛県 愛媛県武道館

2020年3月8日(日)
会場:愛媛県 愛媛県武道館

2020年3月14日(土)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

2020年3月15日(日)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

2020年3月28日(土)
会場:宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ

2020年3月29日(日)
会場:宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ

2020年4月2日(木)
会場:静岡県 エコパアリーナ

2020年4月3日(金)
会場:静岡県 エコパアリーナ

2020年4月11日(土)
会場:広島県 広島グリーンアリーナ

2020年4月12日(日)
会場:広島県 広島グリーンアリーナ

2020年4月24日(金)
会場:北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ

2020年4月25日(土)
会場:北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ

2020年4月29日(水・祝)
会場:愛知県 ポートメッセなごや

2020年4月30日(木)
会場:愛知県 ポートメッセなごや

プロフィール
WANIMA
WANIMA (わにま)

FUJI(Dr,Cho)、KENTA(Vo,Ba)、KO-SHIN(Gt,Cho)からなる熊本県出身の3ピースロックバンド。2010年結成。2014年10月、PIZZA OF DEATH RECORDSから『Can Not Behaved!!』でデビュー。2017年5月よりunBORDEとタッグを組み、2018年1月にリリースした『Everybody!!』は35万枚を超えるセールスを記録。同作のツアーファイナルでは、メットライフドーム2daysで7万人を動員した。2019年3月6日に4thシングル『Good Job!!』をリリース、さらに7月17日には5thシングル『Summer Trap!!』を発表し、10月23日には2ndアルバム『COMINATCHA!!』をリリース。本作はオリコン週間チャートで2作連続1位を獲得。



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