安斉かれんというアーティスト。『M』で注目された21歳の真の顔

avexからデビューし、ドラマ『M 愛すべき人がいて』でアユ役を演じた、安斉かれん。まだまだ世間は彼女のことを誤解しているのかもしれない。

安斉かれんを「90年代リバイバル」として売り出し、avexが過去に仕掛けたようなギャルのアイコンとして一定の認知を得たことが、上手くいってる側面もあるだろう。このインタビューで本人も認めているように、一概に否定はできない。でも、安斉かれんは安斉かれんだ。

デビュー時の楽曲には「90年代リバイバル」というキャッチコピーがついていたが、実は彼女のルーツに1990年代J-POPや往年のavexサウンドだけがあるわけでもない。ドラマ『M 愛すべき人がいて』を終えて、9月16日に6th シングル『GAL-TRAP』をリリースした安斉かれんは、ようやく自身のオリジナリティを存分に表現することができている。

彼女の魅力は、世界中のティーンたちが愛している同時代のヒップホップや、グローバルチャートで上位に入っている多種多様なポップソングを吸収し、2020年の日本を生きる21歳としての精神性を等身大で表現しているところだろう。ミュージシャンとしてだけでなく女優・タレントとしての仕事も楽しみながら、特別有名になりたいという欲望はそれほどなく、とにかく音楽を作ることが大好きな生粋のクリエイター気質の人物であることも、このインタビューから知ってもらうことができると思う。

幼い頃からエレクトーンを学び、中学のときは吹奏楽部でクラシックにのめり込み、15歳で歌と作詞を始めて、高校1年生の頃からavexアカデミーへ通っていた安斉かれん。小学4年生のときから金髪にしてカラコンを着けている彼女の素の姿を覗き込むべく、インタビューを行った。

「昔からなんでもすぐに飽きちゃうんです。だけど音楽だけはずーっとやってる。それしかないんです、続いてることが」

安斉かれん(あんざい かれん)
1990年代の音楽業界を描き、Twitter世界トレンドTop3入りした話題のドラマ『M 愛すべき人がいて』にW主演として大抜擢。実は、彼女は世界的にも大きな潮流を生みつつあるリバイバルサウンドをいち早く取り入れ、J-POPのニュージェネレーションを謳う歌手。5thシングル“僕らは強くなれる。”は音楽関連ランキングにチャートインし、自身もGoogleトレンド急上昇ワードで1位を獲得。ファッションアイコンとして、コスメティックブランドの「M·A·C」の店頭ビジュアルの連続採用やティーン支持を受ける広告イメージキャラクターを飾るなど、そのルックスにも注目が集まっている。

―「安斉かれん」という名前が世間に広まったことで、音楽作りに対するモチベーションや責任感が15歳の頃とは変わりました?

安斉:いえ、もともと「有名になりたい」みたいな気持ちはないので。音楽が好きで、好きなことをやってるだけですね。ファンの方が増えて、自分の好きなものを共有できる方が増えたのはすごく嬉しいです。それはもう超ハッピー(笑)。好きなことをやって、それを好きって言ってくれる方がいて、超嬉しい(笑)。

―有名になりたいわけではない、という気持ちは、ドラマ『M 愛すべき人がいて』(以下、『M』)に出演されて注目を浴びた今も変化ないですか?

安斉:特に……かもです。自分の曲を聴いてくれる人が増えるのはすごく嬉しいんですけど、有名になることに対してのハングリー精神はないです。好きなことをやっていたい。昔からなんでも結構すぐに飽きちゃうんです。だけど音楽だけはずーっとやってる。それしかないんです、続いてることが。だから、それをお仕事にさせていただいているということがもう、嬉しいです。

―それだけ音楽が好きな安斉さんにとって、『M』で演じる仕事をするというのは、どういう気持ちだったんですか?

安斉:アーティストはいかに自分を表現するかなんですけど、お芝居は自分以外の誰かのキャラクターになりきらないといけないので、表現方法がまったく真逆で、それはすごく難しかったです。でも、スタッフさんや共演者の方々が本当にみんないい方々だったので、毎日超楽しかった。最初は不安のほうがめちゃめちゃ大きかったですけど、最後もう楽しいでしかなかったですね。

―浜崎あゆみさんの言葉や想いを演じることで、それを自分の活動と照らし合わせて、なにか学んだり考えさせられたりすることもありました?

安斉:事務所の大先輩ですし、もちろんご本人のミュージックビデオとかも見させていただいたりしたんですけど、まずリアルと原作(小松成美著『M 愛すべき人がいて』)も違いますし、原作とドラマもまったく違っているので、ドラマではドラマの「アユ」を監督さんたちと話し合いながら作ろうと思ってました。カタカナの「アユ」をね、演じようって。

安斉が出演した『M』最終回先行映像

『M』のような厳しく激しい世界とはちがう、実際の安斉をとりまくのは「平和」な世界

―なるほど。でも、アユという役を演じることで、「安斉かれん=アユ」みたいなイメージが強まってしまう側面もあったと思うんです。

安斉:そうですね。

―そこから窮屈さや歯痒さを抱えることもありました?

安斉:それはなかったです。それで私のことを知ってくれてフォローしてくれたら、これから私が好きな曲を出していったときに、ちょっとでも興味を持ってくれる人の幅が広がるじゃないですか? 全部プラスにしようと思ってます。

―かっこいいですね。

安斉:全然!(笑) だって、当たり前だもん、役をやったらそういうイメージになっちゃうの。私だってなるもん。映画を見てて「あ、これ、あの映画のあの人じゃん!」ってなっちゃうし。それはもう当たり前だと思うから。

―ドラマの中でアユは、田中みな実さん演じる姫野礼香やいろんな人たちに追い込まれながらも負けん気を保っていましたが、安斉さんもそういう気持ちは秘めてるタイプだと思いますか?

安斉:ええ……ない!(笑) 世界と戦いたくない!(笑)

―安斉さんが実際に今いる世界は、あれほど厳しくて激しいものではない?(笑)

安斉:じゃないですよ、めっちゃ平和ですもん。平和に生きていたいです、平和が一番(笑)。

洋楽のR&Bやヒップホップを聴いてきた安斉にとって、J-POPは「新しい」と感じられた

―これまでリリースされてきた楽曲は1990年代J-POP・avexサウンドを意識して作られたものでしたが、そもそもそういった音楽を安斉さんはどういうふうに聴かれてました?

安斉:音楽をやり始めた高校1年生のときからJ-POPを聴き始めたので、逆に新しいと思っちゃいました。新しいから、楽しかったです。

―そもそも、ヒップホップやR&Bが特にお好きなんですよね? Spotifyに上がってるプレイリストやお気に入り曲のリストを拝見してもグローバルなヒップホップアーティストが並んでいて、欧米だけでなくロシアのラッパーもいたり、日本人ではAwich、KOHHからBLOOM VASEまでが入ってたりと、今のヒップホップのあらゆる側面を象徴する名前が並んでいるなと。

安斉かれんがまとめたプレイリスト『MUSICK -my favor vol.1-』を聴く(Spotifyを開く

安斉:そうですね。今は自分でもJ-POPをやらせていただいてるのでめっちゃ聴くんですけど、もともとは洋楽のR&Bとかヒップホップばっかり聴いていたんです。

―ヒップホップはどういうところがかっこいいなって思いますか?

安斉:J-POPは歌詞が耳に入ってくると思うんですけど、ヒップホップって、もちろん歌詞ありきでも、私はメロディーで好きになることが多いんです。ノレる。どんなシーンでも流しておけるのがすごくいいなって思います。

―安斉さんくらいの世代の人たちって、ヒップホップをヒップホップというジャンルで認識して聴いているというより、ポップスとして聴いてる感覚ですよね。

安斉:たしかに、そうですね。

―特にかっこいいなと思うのは?

安斉:昔からかっこいいなって思うのはマシン・ガン・ケリー。めっちゃ好きです。顔と声がかっこいい。身長も高いし。あと、自分のやりたいことをやってるなって感じがする。超タトゥーバチバチなのに、娘のことを超可愛がるのとか、かっこいいなって。

―エミネムとかに喧嘩売ったりもするし(笑)。

安斉:そうそう、マジにやってる! って感じ(笑)。

―新しい音楽とはどうやって出会うことが多いですか?

安斉:Apple MusicとかSpotifyでランキングを見たり、曲を聴いてると「関連」みたいなのが出てくるじゃないですか? そこから知らないアーティストのページへ飛んで、飛んで、飛んで、って感じです。それでずっと流しといて、直感でパッと「これいい!」って思った曲を入れる。だからジャンルはバラバラだし、すごく変わった曲とかも聴いてる。

1人の夜にやってくる「名前のない感情」。歌詞にすることができないからトラックにした

―新曲“GAL-TRAP”は安斉さんが作詞作曲とサウンドプロデュースに入られていて、これまで発表してきた1990年代リバイバルサウンドとは打って変わって、ご自身の好きなものを昇華して作った1曲であると感じます。これまでの音楽制作とはまた違った楽しさがあったんじゃないですか?

安斉:そうですね。今までも作詞はさせていただいてたんですけど、今回は作曲もさせていただいて。もともとピアノを弾きながらぽろぽろメロディーを作ったりはしてたんですが、なかなか形にできなかったんです。今回は、プロデューサーさんたちと一緒にスタジオに入らせていただいて、「楽しくワイワイ音楽作りたいね」みたいなノリから始まって、本当に自由に作らせていただきました。

―トラックには溜息、笑い声、口笛、あとネイルとネイルをぶつける音などがサンプリングして使われていて。曲名が“GAL-TRAP”で、資料には「ギャルが仕掛ける罠 HIP-HOPのジャンル」と書かれていますが、日本人でギャルである安斉さんが、新たなヒップホップをどう生み出すかということには意識的でした?

安斉:いえ、わりと「できあがったらこうなった」って感じです。全体的に曖昧な曲なんですよ。歌詞もそうですし、メロディーもそう。私もレコーディングブースに入って、フワフワしながら「次、爪の音やる~」とか言ってやってました。

この曲を作ったときが、悲しくもないし、別に落ち込んでもないんですけど……なんか、わかります? たとえば、お昼に仕事したりお友達と遊んだりするじゃないですか。それと、夜に一人になったときの自分って、まったく違うじゃないですか。そういう、悩んでるわけでもないけどフワフワしてる夜の時間の曲なんです。そういう感情って、本当に名前がないなって思ってて。だから歌詞にもできない。だったらトラックにしちゃおうって。間が怖いから爪鳴らしたり口笛吹いたりして沈黙にならないようにごまかすのも、全部、言葉にはできないからその想いをトラックにしちゃった感じです。

―なにかリファレンスにした楽曲とかはあります?

安斉:いえ、ないです。もう本当にゼロから、いいなと思ったものをみなさんと作らせていただいただけなので、参考とかはなにもなくて。そのときにそこでいいなと思ったメロディーを作っていった感じですね。

―リリックの書き方に関しては、いかがでしょう?

安斉:私、歌詞って日記みたいに毎日書いていて。等身大の歌詞が書ければなって思ってるんです。その時々の音楽ができればいいと思ってるので、これが「今」って感じ(笑)。

―歌詞には<意外と言えん「ぴえん。」>というラインがありますが、安斉さんも意外と自分の心情は人に言えないですか?

安斉:言えないっていうか、夜のちっぽけな悩みは「私がこうやって考えてたって、世界は普通に回ってるし」って思うと、人に相談するまでもない悩みだなって思っちゃう。こういう時間に思うちょっとした悩みっていうのは、超落ちたりしてるわけでもないし、別に解決するものでもなくて。また朝になったらいつも通りにならないといけないし、なれるんですよ。もうしょうがない、生きないといけないから。別に超元気になろうとかも思わないし。

「ギャルって、モチベを上げるために自分を好きなもので固めてる人のことなんじゃないかな」

―「ギャル」という見た目だけで判断されて、勘違いされてるなと思うときもあります?

安斉:「チャラチャラしてそうだね」とか、そういうのは思われがちじゃないですか。でもギャルって、自分のモチベを上げるために自分を好きなもので固めてる人のことを言うんじゃないのかなと思ってて。自分の機嫌を取るために、金髪にしたり好きなものを身につけたりしてるから。

―至言ですね。ギャルって、自分のコンプレックスとか弱みを隠すために着飾ってるという人もいますよね。

安斉:そうなんです、もう武装ですね。

―だからこそ他人の弱さを理解できる人もたくさんいるし。

安斉:たしかにね、多いですよね。だから一概に「これだからギャル」みたいなのは今はないんじゃないかなと思います。

―安斉さんがこういったファッションをするようになったきっかけは?

安斉:小学生のときに、ゴリゴリ金髪ギャルみたいなのが流行ってたし、『Popteen』をずっと読んでたんです。それで可愛いなって思ったものを真似してたら、ギャルって呼ばれるようになっちゃった。ただ単に好きなものを身に着けていたかったというだけで。

―ご家族はそういう安斉さんをどう受け止められてました?

安斉:おばあちゃんには「小学生がそんな!」とかってよく言われてましたけど(笑)、でも最終的には全然大丈夫でした。父は超寛容だし。「かれんが好きなものはいいんじゃない」って言うタイプの親だったので、習い事もなんでも好きなことをやらせてくれました。音楽・芸能活動も全部応援してくれてます。

「本当に強い人って、全部を喜べる人なんじゃないかなって思います」

―“GAL-TRAP”のミュージックビデオに出てくる大きいテディベアは、さきほどの話にもあった「昼と夜の自分」と、あと「大人と子供」を表しているそうですね。

安斉:そう、大人と子供の中間。あとベアちゃんは自分の分身でもあって、一人でいるときの飾ってない甘えたモードと、お昼の戦闘モードを、区別して表しています。

最後のほうにはショッキングなシーンが出てくるんです。引き戻そうとするシーンなんですけど、それは「大人になろうとするんだけど、いやならなくていいよって戻される」みたいな感じで。人生って、それの繰り返しだなと思ってて。表に出ていこうとしたら戻されて、って感じ。

―安斉さんにとって、大人と子供の違いってなんですか?

安斉:むずかしい!(笑)……それって、年齢の数ではないじゃないですか。私が10歳のときは20歳なんてめっちゃ大人だと思ってたけど、20歳になってみると全然子供だなって思うし。そういう感じで一生終わっていくんじゃないかなと思っちゃう。大人と子供のあいだっていうのは、一生あると思います。……わかんない、大人ってなに?(笑)

―私もいまだにわからないし、おっしゃる通り、一生成熟しないんじゃないかと思っちゃいます。

安斉:本当にわかんない。でもずっとわかんないままでいいんだと思います。

―では、安斉さんにとって「強い人」ってどんな人だと思いますか?

安斉:それもむずかしい!……なんでしょうね。本当に強い人って、全部を喜べる人なんじゃないかなって思います。たとえば、友達と好きな人がかぶって、友達に好きな人を取られたとしても、「それでも友達だから応援してあげよう」ってことができる人。僻まない人ですね。自分に余裕があるからこそ僻まないじゃないですか。悪口も言わないし。

あと、自分に自信があるというか、自分の弱さを受け入れられる人ですかね。たとえば悪口言われてキレるのって、それが図星だからじゃないですか。それも受け入れられる人は強いなって思います。

「夢とか目標は、ちょっと苦手。いい意味で時代に流されまくりたいなって思ってるので」

―少し大きい質問を投げてしまいますが、21歳の安斉さんは今の時代をどういうふうに捉えてますか?

安斉:なんだろな……どう捉えてるだろ……捉えるかなあ? 逆に。「なんとかの時代は」って言うのって、時代に乗れてないから言っちゃうんだと思うんですよね。感じてないってことは、どうにか時代に乗れてるのかもしれない!(笑)

―それは的確かもしれないです。マーケティングの記事とかで「ポストミレニアル世代は~」とか言ってる人は、実はなにも実態を見れてないのかもしれない。

安斉:そうかもしれないですね……わかんないけど。全然悪口じゃないですよ!

―生きやすいか、生きづらいかでいうと、どちらを感じますか?

安斉:どっちもなんですよね。SNSだって、ないときはないでよかったのかもしれないし。今SNSがあるから窮屈なこともあれば、でも情報を得られたりとかいいこともあるし。本当にどっちもどっち。

―この先は、どういう未来を作っていきたいと思っていますか?

安斉:夢とか目標は、ちょっと苦手なんです。いい意味で時代に流されまくりたいなって思ってるので。

もちろん音楽はやっていきたいし、今回ちょっとまた違う感じで出させてもらえたみたいに、これからもいろんなジャンルへ広げていきたいなとは思います。音楽って正解がないから、いろいろと探っていきたいし、「安斉かれんと言ったらこれ」みたいなものを作らないようにしていきたいです。

だって音楽って、流行ってるものももちろんあるけど、流行りじゃないものがバンってきたりもするじゃないですか。だから本当にわかんないんです。正解がないからおもしろいなと思います。あんまりプランを考えずに、いいなと思ったことをやっていきたいですね。

リリース情報
安斉かれん
『GAL-TRAP』

2020年9月16日(水)配信

プロフィール
安斉かれん (あんざい かれん)

90年代の音楽業界を描き、Twitter世界トレンドTop3入りした話題のドラマ「M愛すべき人がいて」にW主演として大抜擢。実は、彼女は世界的にも大きな潮流を生みつつあるリバイバルサウンドをいち早く取り入れ、J-POPのニュージェネレーションを謳う歌手。元々、「POSGAL(ポスギャル)」と呼ばれる次世代の一人で90年代を意識した8cmSGで作品をリリースしている。「TRKKIE TRAX」や「Maltine Recoreds」などの気鋭のトラックメーカーによるReproduceという新たな手法でも再発表され、世界中のニュージェネJ-popファンや超大物の海外DJからも大きな反響を得ている。5th「僕らは強くなれる。」は音楽関連ランキングにチャートインしGoogleトレンド急上昇ワードで1位を獲得。ファッション・アイコンとして、コスメティックブランドの「M•A•C」の店頭ビジュアルの連続採用やティーン支持を受ける広告イメージキャラクターを飾るなど、そのルックスにも注目が集まっている。

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