表層的なのは嫌。市川渚が重んじる本質と、こだわり抜かれた生活

「テクノロジー」という言葉を聞くと、「AI」や「バーチャルリアリティ」などのような、最先端のデジタルテクノロジーを想起してしまうことが多いのではないだろうか。しかし、「テクノロジー」とは本来、「知識の実用化」全般を指すのだそう。時代とともに進歩しているのは、先端技術だけとは限らない。

「テクノロジー」を自身の生活に取り入れるとき、あなたなら何を基準に選ぶだろう? 今回インタビューした市川渚は、美しさと機能性が共存する「機能美」について、特にこだわりを持つのだという。

空間を豊かにする壁材商品、エコカラットのプロジェクトLIXIL「PEOPLE & WALLS MAGAZINE」とCINRA.NETのコラボレーションにより、空間と人との関係について話を聞いていく本連載企画、第四弾。ファッション、そしてテクノロジーに精通する彼女が選んだ、心やすらぐ空間を形づくるものたちを紹介してもらった。

自分の世界を広げてくれた存在として、テクノロジーを絶対的に信頼しているんです。

市川渚(いちかわ なぎさ)
ファッションデザインを学んだ後、海外ラグジュアリーブランドのPRなどを経て、2013年に独立。フリーランスのクリエイティブ・コンサルタントとして、ファッション、ラグジュアリー関連の企業やプロジェクトのコンサルティング、デジタルコンテンツのクリエイティブ・ディレクション、プロデュース、制作などを手がける。ガジェットとデジタルプロダクト好きが高じメディアでのコラム執筆やフォトグラファー、モデルとしての一面も。ファッションとテクノロジーがクロスする領域で幅広く活躍中。

―市川さんがテクノロジーの分野に関心を持つようになったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

市川:両親ともに新しいものに貪欲な人たちだったし、親戚にもパソコン好きのおじさんがいて、育った環境に機械好きな人が多かったんです。だから自然と興味を持って、小学生の頃はワープロで遊んでいたし、中学時代はインターネットにすごくはまって、自分のサイトを作っては、夜な夜なパソコンで遊ぶ生活を送っていて。インターネットで「こんな音楽があるのか!」と知って、タワーレコードに行ってみたり、学校では知り得ない知識をどんどん得られる場所でした。学校以外の世界があることを知ることができたのは、14歳くらいの私にとってはすごく救いで。だから、自分の世界を広げてくれた存在として、テクノロジーを絶対的に信頼しているんです。

―身近なものでありつつ、世界を広げてくれる存在だったんですね。

市川:そこから、パソコンやそれに付随する周辺機器にも自然と興味を持つようになりました。それと同時に着飾ることが大好きで、自分で服を作ったりもしていて。その両方をずっと並行して突き詰め続けている感じです。

―市川さんはもの選びや、暮らしを快適に保つことにおいても徹底的に突き詰めていらっしゃるように思います。

市川:私、突き詰めがちなんです(笑)。もともと、すごくストレスを感じやすいからなんだと思います。納得のいかないものが身の回りにあることも、私にとっては小さなストレスになっていると気づいて。もちろん周りの人にそれを強要したりはしないですけど、せめて毎日過ごす自宅の空間に関しては、自分が本当に納得できるものだけで固めたいと思うんです。

―ストレスの要因って、自分ではどうしようもないこともありますけど、身の回りに置くものは変えることができますしね。

市川:社会の状況や、ちょっと苦手な人がいたりするような職場など、外的要因って耐えなきゃいけないこともありますよね。だから自分の好きにできる部分はとことん好きにしたい。それがちょっとエクストリームになっているような感じです(笑)。

「おしゃれな感じの人でしょ?」みたいな評価を受けることが苦手だという思いはすごくあります。

―今日はそんな市川さんがいま使っている、暮らしを心地よくするためのものをいくつかお持ちいただきました。まずはNature Remoから、ご紹介いただけますか?

市川:我が家は俗に言うスマートホーム化をかなり進めているのですが、それに欠かせない存在ですね。Nature Remoは赤外線リモコンで、スマホや、Googleアシスタント、AmazonのAlexaと連携すれば、そこからエアコンやテレビなどが操作できるようになるというものです。うちで使っているのは今年の8月に出たばかりのタイプなんですけど、温度センサーや照度センサー、人感センサーが仕込まれていて、例えば「室温が何度になったら、エアコンの設定温度を何度にする」とか、センサーをトリガーにして自動化することもできるんです。私が特に便利だと思っているのが、照度センサーを使ったライトの自動化。家で仕事をしているときに、集中していると部屋が暗くなっていても気づかないことがあるんですが、そんなときに外部サービスである「IFTTT(イフト)」を経由してスマートライトのPhilips Hueと連携させておくと、ある程度の暗さになったら自動で電気をつけてくれます。セットアップも簡単で、部屋に置いていて違和感のないデザインもいいですね。

Nature Remo(市川さん私物) 写真:Nagisa Ichikawa

―自分でこまめにそのときの最適な温度や明るさを設定していくことって、地味に手間がかかることですよね。

市川:そういうことを考えずにいられる状態にしておくことも、ストレスの原因を減らすことにつながると思います。

―そして今回はデジタルガジェットだけでなく、アナログな技術が活きたものも持ってきていただいていますね。「金継ぎコフレ」はどのようなきっかけで手に入れられたものなのでしょうか。

市川:少し前に母親の形見の急須を割ってしまって、あまりにもショックで。いつか教室に通って金継ぎしたいと思っていたんですけど、コロナの影響でいつ通えるのかわからなかったので、自分でできないか調べるうちに、これを作っている京都の漆屋さんにたどりつきました。漆は伝統工芸として、存続が危ぶまれているそうなんです。こうして若い人たちが興味を持てるパッケージにすることで、本当の金継ぎを通して漆という存在に触れ、意識をするきっかけになってほしいという志があるみたいで、そういうところにも好感を覚えています。

写真:Nagisa Ichikawa
「金継ぎコフレ」を使用して、割れた食器を修復している様子が、市川さんのYouTubeチャンネルにアップされている 写真:Nagisa Ichikawa

―古くからの技術を残していくためにも、そうしたアップデートは大切ですね。

市川:割れてしまったものに金継ぎすることで、新たな価値が生まれるというのは、いまの時代にも合っていますよね。それに、私はやっぱり手を動かすことが好きなんです。技術がいることをプロにお任せするのも一つの手だと思いますけど、まずは自分でやってみたかった。やってみることで、自分にできることの限界もわかるので、プロの人たちのすごさをさらに実感できるのもいいなと思います。

市川渚YouTubeチャンネルより

―もう一つお持ちいただいたのがOBJTのお香スタンドですね。

市川:この夏、蚊取り線香を使い始めたんですが、煙がゆらゆら揺れる感じがすごくいいなと思って、お香を買うようになったんです。このスタンドは最近発見して、気に入って使っています。お香を逆さに吊るして使うんですよ。

―お香スタンドって、火のついた方を上に向けて立てるものが多いですけど、灰が下に落ちることを考えたらすごく合理的な形状ですよね。

OBJTのお香スタンド(市川さん私物) 写真:Nagisa Ichikawa

市川:理に適っているなと思います。

―このお香スタンドに限らず、今日持ってきていただいたのは、どれも機能と美しさが両立したものばかりですね。

市川:おしゃれなだけで使いづらいものには、興味を持てなくて。「デザイン」というとビジュアルの話に限定されてしまうことも多いですが、本来、使い勝手や設計のことでもあるので、突き詰めてデザインしていくと、見た目の美しさと、機能の双方が満たされるものができると思うんです。それくらい突き詰めて作られたものに心を打たれますし、見た目だけがよくて使い勝手の悪いものを見ると、「かわいいだけでいいでしょ?」と言われている気もしてしまって。かわいいだけのものに、必ずしも意味がないとは思わないんですけど。

―それは、もしかしたら市川さんご自身の経験においてにも、そうした思いがあるのでしょうか。

市川:自分がどう見えているかはわからないですが、「おしゃれな感じの人でしょ?」みたいな評価を受けることが苦手だという思いはすごくあります。10代の頃、原宿系の雑誌で読者モデルをやってからファッションの学校に行ったので、「ああ、規定コースね」と思われることが絶対に嫌で、死ぬほど真面目に勉強しました。本当にそうなれているかはわからないですけど、表層的じゃない人間でいたいということは、願望として持っていますね。それはものを選ぶ感覚と似ていて、ビジュアルも機能も考え抜かれたものを作っているデザイナーに対しては、すごく尊敬の念を抱いていますし、そういうプロフェッショナルな存在が私は好きですね。

LIXIL「PEOPLE & WALLS MAGAZINE」では、市川渚さんのインタビュー後半を掲載。自身の「機能美」へのこだわりを基準にしながら、これからのテクノロジーをどう取り入れることが大切なのかを語ります。さらに、エコカラットの機能美を体験した上で、「生き物みたい」という感想が飛び出しました。

>インタビュー記事を読む

プロジェクト情報
LIXIL「PEOPLE & WALLS MAGAZINE」

壁は間取りを作るためのものだけではなく、空間を作り、空気感を彩る大切な存在。その中でインテリアや照明が溶け込み、人へのインスピレーションを与えてくれる。
LIXIL「PEOPLE & WALLS」は、LIXILとCINRA.NETがコラボし、7名のアーティストにインタビューを行う連載企画。その人の価値観を反映する空間とクリエイティビティについてお話を伺います。

プロフィール
市川渚 (いちかわ なぎさ)

ファッションデザインを学んだ後、海外ラグジュアリーブランドのPRなどを経て、2013年に独立。フリーランスのクリエイティブ・コンサルタントとして、ファッション、ラグジュアリー関連の企業やプロジェクトのコンサルティング、デジタルコンテンツのクリエイティブ・ディレクション、プロデュース、制作などを手がける。ガジェットとデジタルプロダクト好きが高じメディアでのコラム執筆やフォトグラファー、モデルとしての一面も。ファッションとテクノロジーがクロスする領域で幅広く活躍中。

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