子連れでも安心。都市型フェス『夏びらき』をレポ&インタビュー

東京、大阪、福岡の3都市で展開するフェス『夏びらき』

毎年初夏に開催される野外音楽フェスティバル『夏びらき MUSIC FESTIVAL』(以下、『夏びらき』)が、今年も開催され好評を博した。初めて『夏びらき』が、埼玉県・所沢航空記念公園で開催されたのは2007年。カフェやダイニングバー、ライブイベントスペースなど様々な業態の店舗・施設を展開する「株式会社エスエルディー」のメンバーたちの、「誰もが参加しやすい音楽フェスを作りたい」という極々シンプルな動機によりスタートした。

回を追うごとに改良を重ねたイベントは昨年10周年を迎え、3年目となる大阪・服部緑地野外音楽堂と、今年初の福岡県・博多埠頭緑地 サンセットパークを加えた3か所での開催となった。

所沢会場2日目、Creepy Nutsのステージの模様 / Photo by 北村勇祐
所沢会場2日目、Creepy Nutsのステージの模様 / Photo by 北村勇祐

東京、大阪の2都市で毎年開催される『SUMMER SONIC』を除くと、複数の都市でツアーのような形式のフェスを開催すること自体、他に例を見ない。このような形での開催に踏み切った理由とその裏にある想いについて、実行委員会にメールインタビューで話を訊いた。

夏びらき:ネット社会の今だからこそ、人と人とが直接触れ合う「きっかけ」や「リアルな場」を作る社会的意義が、とても大きくなっていると私たちは考えています。SNSで数百人とつながっていても、1年のうちで一体そのなかの何人と直接会い、時間を共にし、一緒に楽しめているでしょうか?

『夏びらき』は、もともとつながっている友人同士、恋人同士、家族同士が、同じ時間を共有し、一緒に楽しめる「きっかけ」「リアルな場」を作るべく、「誰もが気軽に参加しやすいフェス」を目指しています。そして、その私たちが理想とするフェスをあらゆる地域に、各地域のメンバーと共に展開していく。そういった動きを通じて、各地域の振興に貢献したいと考えているのです。

「誰もが気軽に参加しやすい」をどのように実現するのか?

『夏びらき』の特徴は、都心から1時間圏内に会場がある「都市近郊型の野外フェス」ということ。日帰りで楽しむことができるため、子どもを連れたファミリー層も気軽に参加することが可能だ。運営サイドも、たとえば12歳以下を入場無料にしたり、キッズ&ファミリーエリアや授乳&おむつ交換エリアを設置したりするなど、大人と子どもが一緒に楽しめるような工夫を随所に凝らしている。

キッズエリアの様子 / Photo by 北村勇祐
キッズエリアの様子 / Photo by 北村勇祐

Photo by 北村勇祐
Photo by 北村勇祐

さらに、アーティストも含めた全員で乾杯するコーナーなどもあり、参加者同士の交流が起こるようなきっかけ作りにも余念がない。

夏びらき:異なるライフスタイルやライフステージにいる様々な人々が直接触れ合う「きっかけ」となるためには、なるべくストレスなく、気軽に参加でき、一緒に楽しめる場を作るということが最も重要です。

『夏びらき』では、場所選び、空間設計、企画などすべてにおいて、ここをゴールとして、毎年試行錯誤、改善を繰り返しています。アクセスのよさ、開催時間の設定、居心地のよい会場、お子様連れの方への配慮など、すべてがそのために必要なことです。

Photo by 北村勇祐
Photo by 北村勇祐

七尾旅人から吉田山田まで。硬軟入り乱れたラインナップの狙いは?

「フェス入門」ということを裏テーマに置きながらも、ラインナップは硬軟入り乱れた、決して「優しい(易しい)」だけのものではない。その点も『夏びらき』ならではだ。FIRE BALLや韻シスト、SCOOBIE DOといったベテランはもとより、七尾旅人、ハンバート ハンバートなど脂の乗った中堅勢から、SANABAGUN.やiriといった次世代を担う新人まで、今年も豪華なラインナップとなった。こうしたブッキングにおいて、一番こだわっているのはどのようなことだろう。

夏びらき:様々な年代、キャリア、ジャンルのアーティストをブッキングすることにより、『夏びらき』という場が、普段は直接会ったり時間を共にしたりすることのない人たちが集まる「きっかけ」となることを目指しています。さらにその上で、来ていただいたお客様にとって、新たなアーティストや音楽との出会いにつながれば最高だと考えています。

所沢会場1日目、七尾旅人のステージの模様 / Photo by 北村勇祐
所沢会場1日目、七尾旅人のステージの模様 / Photo by 北村勇祐

なかでもRHYMESTERやSOIL&"PIMP"SESSIONS、TOSHI-LOW(BRAHMAN、OVER ACOUSTIC UNDERGROUND)など、お馴染みの顔ぶれが毎年登場するというのも、『夏びらき』の大きな特徴といえよう。アーティストとこのような近い距離で、イベントを開催できているというのは、運営サイドにとって大きな財産だ。

夏びらき:まだまだ歴史も浅く、行き届かない点も多いこのイベントの主旨に賛同し、毎回出演していただいているアーティストのみなさんには感謝しかありません。これから、『夏びらき』を各地域において根づかせていく活動のなかで、アーティストのみなさんにとっても、もっと意義や価値が生まれるフェスにしていきたいと考えています。

所沢会場の2日目に行ってみた。ピクニックのような心地よい雰囲気に驚く

ここで、フェス当日の様子についても記したい。筆者が行ったのは、所沢会場で開催された3日間のうちの2日目、7月16日である。西武新宿線の航空公園駅を降りると目の前に公園入口があり、舗装された道を5分ほど歩いたところに野外ステージはあった。会場はすり鉢状の形をしていて、どこからでもよく見える場所にステージがある。筆者が到着すると、トップバッターの吉田山田のライブがまさに始まろうとしていた。

吉田山田 / Photo by 北村勇祐
吉田山田 / Photo by 北村勇祐

会場を見渡し、まず驚いたのは子連れファミリーの多さである。開始早々からすでにほぼ満席状態で、フードブースで買ったご飯や飲み物などを食べながら子どもたちが吉田山田の演奏に体を揺らし、その楽しそうな姿も花を添え、会場はまるでピクニックのようだった。ファミリーが多いと聞いていたが、まさかここまで多いとは。それでも「窮屈」というわけではなく、心地よいスペースを保つこともできそうだ。

夏びらき:子どもを持ってから、「昔の音楽仲間たちと遊ぶ機会が減った」という話を周囲からよく聞いていました。だったら、子どもと一緒に行ける、楽しめるイベントを作れば喜んでもらえるのではないかと思い、『夏びらき』では、当初より「子連れでも楽しめる」「子どもと一緒に楽しめる」というテーマに力を入れて実施してきました。その結果、子連れのお客様は年々増加しており、昔の音楽仲間がそれぞれ家族を連れて参加してくれたりもしています。

Photo by 北村勇祐
Photo by 北村勇祐

所沢航空記念公園のキャパシティーは、2,000人強。たとえば10,000人規模で単日、もしくは5,000人規模で2日間にわたって開催としたほうが、ビジネス面から見ると効率がいいように思えるが、開催都市を増やしつつも『夏びらき』が所沢航空記念公園にこだわるのは、どんな理由からだろう。

夏びらき:『夏びらき』が生まれた土地である所沢市、そして航空記念公園に強い思い入れを持っているからです。これからも、都心から近く、それでいてほどよい解放感をもたらしてくれるこの素晴らしい環境を大切に、地域と共に末永く続くイベントを目指していきます。

ヒップホップやレゲエをカップル同士や親子連れで楽しむという、ちょっと異様な光景

吉田山田に続いて登場したのは、MCバトル日本一のラッパー「R-指定」と、トラックメイカーとして活躍する「DJ松永」による1MC1DJユニット、Creepy Nuts。子連れファミリーが大半のフロアにも関わらず、ギリギリの下ネタを投下するなどスリル満点のパフォーマンスに、お父さんお母さんたちが困惑しつつ楽しんでいる様子が微笑ましい。中盤では、客席からランダムに言葉を7~8個もらい、それを即興でつなぎ合わせながら、韻まで踏みつつ高速ラップを繰り出すという、圧倒的なスキルを見せつけ会場を沸かせた。

R-指定(Creepy Nuts) / Photo by 北村勇祐
R-指定(Creepy Nuts) / Photo by 北村勇祐

DJ松永(Creepy Nuts) / Photo by 北村勇祐
DJ松永(Creepy Nuts) / Photo by 北村勇祐

神奈川県・逗子在住の女性シンガーiriによる、ヒップホップをベースにしたクールなステージが終わると、Creepy Nutsに大きな影響を与えた3人組ヒップホップグループ、RHYMESTERの登場だ。地元のダンサーをフィーチャーした後、MCの宇多丸は、かつてRHYMESTERが1年の活動休止を経て復帰したとき、真っ先に出演オファーを持ちかけてきた『夏びらき』に対し、今も感謝の念を忘れていないことを述べる。「『夏びらき』は、俺たちのホームだ」と叫ぶと、会場からは大きな歓声が上がった。

iri / Photo by 北村勇祐
iri / Photo by 北村勇祐

RHYMESTER / Photo by 北村勇祐
RHYMESTER / Photo by 北村勇祐

韻シストが音頭を取る「みんなで乾杯」の後、登場したのはFIRE BALL。韓国、中国、アメリカそして日本と、多様なルーツを持った幼馴染み同士による息のあったMCと、グイグイと腰を揺らすレゲエビートが心地よく、真夏の炎天下にぴったり。思わず子どもたちもぴょんぴょんと跳ね回っている姿が印象に残った。

FIRE BALL / Photo by 北村勇祐
FIRE BALL / Photo by 北村勇祐

そして、この日のトリを飾ったのは韻シスト。ゲストに若き天才ギタリスト山岸竜之介を迎え、ジャズやファンク、ヒップホップなど、様々なスタイルを飲み込んだ鉄壁のアンサンブルを披露した。すべての演奏が終わったのは17時で、暗くならないうちに帰途へ着くことができるのも、子連れファミリーに優しい『夏びらき』ならではと言えるだろう。

韻シストと山岸竜之 / Photo by 北村勇祐
韻シストと山岸竜之 / Photo by 北村勇祐

なお、この日ステージの後ろでずっとライブペインティングを行なっていたのは、Kads MIIDA(カッズミイダ)。時間が経つにつれて少しずつ絵が完成されていくのを眺めているうち、この『夏びらき』という世界をここにいる全員で作り上げ、大人も子どもも一緒になって共有しているかのような、不思議な一体感を覚えた。

韻シストと山岸竜之 / Photo by 北村勇祐
Photo by 北村勇祐

「子どもと一緒に楽しめる」とはどういうことか? TOSHI-LOWのMCから考える

最後に、今年の『夏びらき』初日となる大阪会場と最終日の所沢会場3日日にOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDとして出演したTOSHI-LOWのMCを引用してこの原稿を締めくくりたい。

TOSHI-LOW:今の日本の若い子たちが「大人になりたくない」と思っている――というか大人を尊敬していないのは、「大人になると楽しそうじゃなくなる」からって理由らしくて。それはたぶん、大人が悪いんです。それは大人が、「大人になったら楽しい」っていうことを子どもに教えていないから。だから大人が自分で時間を作って、「大人ってこんなに楽しいんだよ」って姿を見せることが大事。

TOSHI-LOW。所沢会場の3日目のステージより / Photo by 北村勇祐
TOSHI-LOW。所沢会場の3日目のステージより / Photo by 北村勇祐

TOSHI-LOW:『夏びらき』は、大人が自分の好きな音楽を楽しめて、「大人ってこんなに楽しいんだよ」って子どもたちに見せつけられる数少ないフェス。なのでみなさん、「大人になったほうが楽しいんだぞ」っていうところを見せつける踊りを、「未来の大人たち」に見せつけてください。

「子連れでも楽しめる」「子どもと一緒に楽しめる」というコンセプトを成立させるためには、「子どもが楽しめること」と同じくらい、「親がいつものようにライブを楽しむことができる」ということが大事なのかもしれない。『夏びらき』の取材を通してそう感じた。

子どもの前では、常に立派な姿を見せなければいけない――そんな責任感にかられたり、大人が遊ぶ姿を子どもに見せることを、後ろめたく感じたりしている人は、ぜひ一度『夏びらき』に足を運んでみてほしい。ここには、大人も子どもも出演アーティストも、同じ表情になれる瞬間がたくさん詰まっているから。

イベント情報
『夏びらきMUSIC FESTIVAL'17』

2017年7月1日(土)
会場:大阪府 服部緑地野外音楽堂
出演:
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
Nulbarich
七尾旅人
吉田山田
Nabowa
BASI(韻シスト)&THE BASIC BAND
iri
SOIL&"PIMP"SESSIONS
DJ:
SOUL ONE(Majestic Two)
MASATOSHI NAKAGAWA(FM802)
MC:竹内琢也(FM802)
デコレーション:大島エレク総業
キッズエリアプロデュース:SMILEKIDS GROUP

2017年7月8日(土)、7月9日(日)
会場:福岡県 べイサイドプレイス博多サンセットパーク
7月8日出演:
PUSHIM×韻シスト
さかいゆう
SANABAGUN.
吉田山田
Nabowa
iri
Colteco
サイプレス上野とロベルト吉野
7月9日出演:
SOIL&"PIMP"SESSIONS
RHYMESTER
FIRE BALL
SCOOBIE DO
佐藤タイジ×堂珍嘉邦
Creepy Nuts
Colteco
BimBomBam楽団
ライブペイント:WKW KEN IKEDA
DJ:
KC(chomoranma)
AKI YAMAMOTO
hisatoo(trearia、D&Lux、RJFF Atmosphere)
MC:TOM G(LOVE FM)
デコレーション:大島エレク総業
キッズエリアプロデュース:SMILEKIDS GROUP

2017年7月15日(土)〜7月17日(月・祝)
会場:埼玉県 所沢航空記念公園 野外ステージ
7月15日出演:
PUSHIM×韻シスト
ハンバート ハンバート
Nulbarich
七尾旅人
さかいゆう
片平里菜
ライブペイント:Gravityfree
MC:KTa☆brasil
DJ:
君嶋麻里江
gommissey
7月16日出演:
韻シスト
FIRE BALL
Creepy Nuts
吉田山田
iri
RHYMESTER
山岸竜之介
ライブペイント:Kads MIIDA
MC:KTa☆brasil
DJ:
君嶋麻里江
gommissey
7月17日出演:
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
SCOOBIE DO
SANABAGUN.
佐藤タイジ×堂珍嘉邦
Nabowa
SOIL&"PIMP"SESSIONS
ライブペイント:BLACK BELT JONES DC
MC:KTa☆brasil
DJ:Namy
君嶋麻里江
gommissey
デコレーション:大島エレク総業、Tree Gladness & Co. KSK(ケースケ)
キッズエリアプロデュース:SMILEKIDS GROUP



フィードバック 0

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • 子連れでも安心。都市型フェス『夏びらき』をレポ&インタビュー

Special Feature

coe──未来世代のちいさな声から兆しをつくる

ダイバーシティーやインクルージョンという言葉が浸透し、SDGsなど社会課題の解決を目指す取り組みが進む。しかし、個人のちいさな声はどうしても取りこぼされてしまいがちだ。いまこの瞬間も、たくさんの子どもや若者たちが真剣な悩みやコンプレックス、生きづらさを抱えながら、毎日を生きている。

記事一覧へ

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて