『怖い絵展』が東京で開催 名画に秘められた「恐怖」のドラマを知っている?

絵画に秘められた「恐怖」を読み解く――『怖い絵展』が開催

『怖い絵展』が明日10月7日から東京・上野の森美術館で開催される。

ドイツ文学者・中野京子による書籍『怖い絵』の刊行10周年を記念する同展。書籍『怖い絵』は「恐怖」をキーワードに据え、絵画の時代背景や隠されたドラマを読み解く美術書としてベストセラーを記録し、シリーズ化された。展覧会では、書籍シリーズで紹介された作品をはじめ、新たに選ばれた作品など約80点をテーマごとに展示している。

一般公開に先駆けて本日10月6日に内覧会が開催。展覧会を監修した中野京子と、展覧会ナビゲーターおよび音声ガイドを担当した吉田羊も参加した。

『怖い絵展』会場風景。キャプションには「恐怖」を読み解くヒントが。
『怖い絵展』会場風景。キャプションには「恐怖」を読み解くヒントが。

斬首刑に臨む16歳の王女『レディ・ジェーン・グレイの処刑』

『怖い絵展』の一番の目玉としてフィーチャーされているのが、イギリス・ロンドンのナショナルギャラリーから貸し出された、ポール・ドラローシュの油彩画『レディ・ジェーン・グレイの処刑』だ。

16世紀にわずか9日間で王座を追われたイングランド最初の女王ジェーン・グレイの処刑シーンをモチーフにした同作。目隠しをされた16歳のジェーンの横には背中を見せて泣く侍女と失神しかけている侍女が描かれ、中央にはジェーンが首を差し出す台、床には血を吸うための藁が敷かれている。

ポール・ドラローシュ『レディ・ジェーン・グレイの処刑』
ポール・ドラローシュ『レディ・ジェーン・グレイの処刑』

監修者の中野が「この絵が来ないなら展覧会はやらない」とまで話したというこの作品。絵画の横に添えられた「どうして。」というキャプションも、残酷な運命に翻弄されたジェーンの悲劇を引き立てる。内覧会に登壇した中野は同作の額装への思い入れも語り、「額も絵の一部なので楽しんでいただけたら」と話した。

夢に出てくる怪物や悪魔、異界の「恐怖」

このように、作品の背景を知るとその「恐怖」がよりリアルに迫ってくる作品が会場には並んでおり、絵の「怖さ」を読み解くヒントと共に鑑賞できる。

展示構成は「神話と聖書」「悪魔、地獄、怪物」「異界と幻視」「現実」「崇高の風景」「歴史」の6章立て。第1章「神話と聖書」では、部下を美貌で惑わせ、魔酒でブタに変えた魔女キルケーと、その背後の鏡に映るオデュッセウスを描いた『オデュッセウスに杯を差し出すキルケー』や、美声で船乗りを混乱させて船を沈めたという海の魔女セイレーンを描いた『オデュッセウスとセイレーン』など、超越的な力に翻弄される人間の悲喜劇を表現した作品群が展示されている。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス『オデュッセウスに杯を差し出すキルケー』
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス『オデュッセウスに杯を差し出すキルケー』

第2章「悪魔、地獄、怪物」、第3章「異界と幻視」では悪魔や地獄、怪物を主題にした作品や、異界の表現を紹介。夢の中でレイプをする男の怪物インクブスを描いた『夢魔』、オーブリー・ビアズリーによる『サロメ』の挿絵など、不気味であると同時に美しく幻想的な作品群が空間を彩る。

ヘンリー・フューズリ『夢魔』
ヘンリー・フューズリ『夢魔』

右がオーブリー・ビアズリーによる『サロメ』の挿絵
右がオーブリー・ビアズリーによる『サロメ』の挿絵

生命を絶たれようとしている女性、猟奇殺人鬼の寝室

第4章「現実」では死の場面を中心に、現実の「闇」に焦点をあてた作品群を紹介。「セザンヌの闇」というキャプションと共に展示されたポール・セザンヌの『殺人』は、よく知られたセザンヌの作品のイメージとは異なり、まずこの作品の描き手がセザンヌであることに驚かされる。地面に倒れた女性に、彼女を取り押さえる男性とナイフを振り上げるもう1人の男性――まさにいま命を断とうとしている人間の姿が切り取られている。

『切り裂きジャックの寝室』は、5人の娼婦を惨殺した連続猟奇殺人鬼「切り裂きジャック」にのめり込み、事件にインスパイアされた作品をいくつも残したウォルター・リチャード・シッカートによるもの。描かれているのはシッカートが、ジャックが住んでいたとの噂を聞いて借りた一室だという。

ウォルター・リチャード・シッカート『切り裂きジャックの寝室』
ウォルター・リチャード・シッカート『切り裂きジャックの寝室』

第4章「現実」展示風景
第4章「現実」展示風景

吉田羊「舞台版があれば侍女を演じたい」、監修者の中野京子は吉田の音声ガイドを絶賛

第5章「崇高の風景」、第6章「歴史」では、風景画の背景にある恐怖の感情や、歴史を彩る悲劇のエピソードなどを取り上げる。コブラに自身を噛ませて自殺したというエジプト女王の美しい死にざまを描いた『クレオパトラの死』や、先の『レディ・ジェーン・グレイの処刑』も第6章で紹介される。

ゲルマン・フォン・ボーン『クレオパトラの死』展示風景
ゲルマン・フォン・ボーン『クレオパトラの死』展示風景

第6章「歴史」展示風景
第6章「歴史」展示風景

『レディ・ジェーン・グレイの処刑』の前に登場した吉田羊は、作品を見ながら「絵の大きさ、力に圧倒された。非現実的にも見えるが、細部を見ると斬首のために取り外されたアクセサリーがあったり、本当にあったことなんだなとより怖さが伝わってくる」とコメント。また「この作品が題材の舞台があったら私はぜひ侍女の役がやりたい。そういう女優としての想像力も掻き立てられる」と作品を評した。

『レディ・ジェーン・グレイの処刑』の前で話す吉田羊と中野京子
『レディ・ジェーン・グレイの処刑』の前で話す吉田羊と中野京子

「恐怖」をテーマにした理由を問われた中野京子は「恐怖は動物のDNAに組み込まれている。恐怖のバリエーションの多さ、誰でも知っている感情を描いた作品を集めたら面白いかなと思った」とコメント。

また恐怖を掻き立てる、として話題を呼んでいる吉田の音声ガイドを「素晴らしい」「特に『サロメ』の部分は鳥肌もの」と絶賛。音声ガイドで中野の書き下ろした原稿を朗読している吉田は「原稿そのものの魅力」と謙遜しつつも、「『サロメ』の部分でセリフや詩を読む部分では少し情感たっぷりに読ませていただきました」と明かした。

『怖い絵展』は上野の森美術館で明日10月7日から12月17日まで開催。東京会場に先駆けて、9月まで兵庫・兵庫県立美術館でも行なわれていた。

イベント情報
『怖い絵展』

2017年10月7日(土)~12月17日(日)
会場:東京都 上野の森美術館
時間:10:00~17:00(入場は閉場の30分前まで)
料金:一般1,600円 大学・高校生1,200円 中学・小学生600円 ※小学生未満無料



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