吉岡徳仁がオリンピック聖火リレーのトーチをデザイン。仮設住宅の廃材利用

桜紋をモチーフにした「桜ゴールド」色のトーチ。仮設住宅の建築廃材を再利用

東京2020オリンピック聖火リレートーチのデザインを吉岡徳仁が手掛けたことが発表され、都内で行なわれた記者会見で実物がお披露目された。

記者会見はギリシャ・アテネから宮城の航空自衛隊基地に聖火が到着する1年前を記念して行なわれた。聖火リレートーチはデザインから製造まで共同企業体を形成する仕組みで公募が実施され、2回の審査会を経て吉岡のデザインによるトーチに決定された。

会見でお披露目されたトーチは、桜紋をイメージしてデザインされ、真上から見ると桜の花のような形状になっている。新幹線の製造にも使われている「アルミ押出成形」という技術を用いて作られた、継ぎ目のないデザインだ。

吉岡徳仁がデザインした東京2020オリンピック聖火リレートーチ ©Tokyo 2020

色はピンクがかった金色の「桜ゴールド」。全長710mm、重さは1.2kg。主な素材はアルミニウムとなっている。重さや握りの形状にも配慮し、年齢や性別を問わず誰でも扱いやすいデザインだという。桜紋という日本の伝統的な文様と現代の高い技術の融合によって生まれた。

また「復興五輪」と位置付けられる本大会だが、トーチの素材の一部には東日本大震災の復興仮設住宅のアルミ建築廃材を再利用した。被災地への想いが込められている。

桜の5つの花びらは五輪をイメージ。5つの炎が中央でひとつになり、より大きな輝きを作り出す。

吉岡徳仁が語る復興への想いと技術のこだわり。被災地の子供たちとの交流がデザインのヒントに

吉岡徳仁は聖火リレー公式アンバサダーの1人に選出された元柔道オリンピック金メダリストの野村忠宏と共にトーチの除幕を行なった。

吉岡徳仁と野村忠宏がトーチの除幕を行なった

2015年に福島・南相馬を訪れ、被災地の小学生と共に桜のエンブレムを描いたという吉岡。その経験がトーチのデザインのきっかけになっているという。

「トーチのデザインにあたって考えたのは、被災地への方々への想い、心の復興と平和への願い」「子供たちの描いた桜の力強い表現がこのトーチのヒントになっている。被災地の方々が苦難を乗り越えて立ち上がる姿を世界の方にご覧いただきたいという思いでこのデザインを描いた」

またトーチだけでなく、聖火の炎そのものをデザインすることを意識したという。「アルミ押出成形」を用いた背景について「技術でも世界初の新しい挑戦をしたいと思っていた」と語り、「軽量でありながらとても強い構造になっています」と力を込めた。

風雨でも燃え続ける炎。太陽光を受けてランナーの持つトーチが輝く

聖火リレーは121日間という長期間にわたって行なわれる。燃焼機構にも新しい技術を用いて超コンパクトな形状を実現させ、細いシリンダーの中に燃焼機構をいれて花びらの部分から炎が出るようデザインされた。耐風試験や耐雨試験も行ない、台風や大雨でも火が消えることはないという。

またトーチを持ってランナーが走ることで、表面に太陽光が反射し、きらきらと輝くこともイメージされている。吉岡は東京2020オリンピック聖火リレーのコンセプト「Hope Lights Our Way / 希望の道をつなごう。」を踏まえて、「このトーチは太陽の光によって輝くようにデザインされている。聖火ランナーのみなさまがそれぞれの輝きを持って『希望の道』を繋ぐことができたら良いんじゃないかなと思いました」と話した。

会見で初めてトーチを手にした野村忠宏は「本当に体が震えています。感動しています。この美しいトーチにオリンピックのシンボルである聖火が灯されて、日本中で聖火リレーが行なわれる――その姿を考えただけでワクワクします」と興奮気味に話した。

トーチを手にする野村忠宏。トーチの断面が桜の紋様になっている

デザイナー吉岡徳仁とは? 2016年には新国立競技場のデザイン案を公開

吉岡徳仁は1967年生まれ。デザイン、建築、現代美術の領域で活動し、光などの非物質的な要素を形象化した作品を発表している。作品はニューヨーク近代美術館、ポンピドゥーセンター、ヴィクトリア&アルバート博物館といった世界の美術館に所蔵されている。

2016年には実現に至らなかった自身の新国立競技場のデザイン案を公開していた(参考:吉岡徳仁による新国立競技場デザイン案が公開、「泉」が巨大な聖火台に)。また4月16日から東京・六本木の国立新美術館 正面入口前では吉岡が手掛けた『ガラスの茶室 - 光庵』の特別公開を控える。『ガラスの茶室 - 光庵』は2011年の『第54回ヴェネチア・ビエンナーレ』で発表され、2015年には京都・将軍塚青龍殿の大舞台で披露されて話題を呼んだ。

なお、1964年の東京オリンピック、1972年の札幌冬季オリンピックのトーチのデザインは柳宗理が手掛けた。

石原さとみやサンドウィッチマンが聖火リレーを盛り上げる

本日3月20日に行なわれた記者発表会ではトーチとあわせて、東京2020オリンピック聖火リレーのエンブレムと、聖火リレー公式アンバサダーが発表。

聖火リレーのエンブレムは、3つの四角形を聖火の炎に見立て、日本らしさを表現するデザインモチーフとして「拭きぼかし」という浮世絵の技法を用いた。

東京2020オリンピック聖火リレーエンブレム

聖火リレー公式アンバサダーに選出されたのは、会見に登壇した野村忠宏に加え、射撃選手として3大会連続でパラリンピックに出場した田口亜希、女優の石原さとみ、お笑い芸人のサンドウィッチマン。会見では各アンバサダーからのビデオコメントも紹介された。アンバサダーは今後も随時発表されるという。

野村忠宏のコメント

東京2020聖火リレー公式アンバサダーに就任しました野村忠宏です。就任のお話を聞いた時は本当に驚きましたが、すごく嬉しい気持ちでいっぱいです。私は選手として三度のオリンピックに出場したのですが、聖火は私にとってはもちろん、オリンピックを愛する、スポーツを愛する皆さんにとっても本当に特別なものだと思います。東京2020大会の聖火リレーをみんなで盛り上げて、オリンピック・パラリンピックを東京でやって良かったという皆さんの笑顔で溢れることを願います。そして、この東京2020大会で得たものがレガシーとして後世にまで残り、語り継がれる素晴らしい大会になっていけたらすごく嬉しく思います。一緒に盛り上げていきましょう。

田口亜希のコメント

東京2020聖火リレー公式アンバサダーに就任しました田口亜希です。このお話をいただいた時は正直本当にビックリしました。私でそのような大役が務まるのかなという不安と、一方でやってみたいという気持ちもありましたのでお引き受けしました。オリンピック・パラリンピックは選手が出場する大会です。一方、オリンピック・パラリンピックの聖火リレーはどなたでも参加できます。性別、そして障がい等の有無にかかわらず、聖火リレーに参加いただけますし、沿道からの応援もしていただけます。そして、テレビで観て聖火リレーを応援いただくこともできます。参加いただいた皆さまの思い出に残るような、そんな聖火リレーにしていきたいと思います。私たちアンバサダーも頑張りたいと思います。みんなで一緒に参加しましょう!

石原さとみのコメント

このたび、東京2020聖火リレー公式アンバサダーに就任しました石原さとみです。お話をいただいたときは本当に驚きましたが、それ以上の喜びと感謝とともに、いま責任感に身の引き締まる思いです。聖火ランナー一人一人の想いをのせて聖火が繋がれていきますが、私は実際に聖火ランナーの皆さん、サポーターの皆さん、沿道の皆さん、聖火リレーに関わる全国の皆さんに一人でも多くお会いし、お話を伺い、そこで得たドラマやストーリーを誠実にお伝えできるような活動をしていきたいと思います。皆さんと一緒に楽しみながら盛り上げていけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

サンドウィッチマンのコメント

東京2020聖火リレー公式アンバサダーに就任しました、サンドウィッチマンでございます。もう驚きです。とにかく、我々で本当に良いのでしょうか?というところでございます。まだ本当に信じられない状況です。東京2020聖火リレーの公式アンバサダーとして一生懸命頑張らせていただきます。我々の地元である宮城県と、福島県、岩手県の3県では復興の火として展示をしてくださるということで、すごく嬉しいです。多くの皆さんが観に来られると思いますし、復興の活力になると思います。 そして、聖火ランナーとして走ることができるチャンスは一生に一度あるかないかです。皆さんも是非参加していただき、思い出に残るオリンピック・パラリンピックにしていただきたいです。本当にこの大事な役割を我々サンドウィッチマンで良いのでしょうか?皆さんが驚いていると思いますが、その50倍僕らが驚いています。とにかく、どうにかしてしっかり盛り上げたいと思っておりますので、ご声援よろしくお願いします。頑張るぞ。皆さんも一緒に盛り上げてください。

本日3月20日から22日まで、東京スカイツリーではトーチのデザイン発表にちなんで、特別ライティングとレーザーマッピングを実施する。トーチのカラーで光が点灯する。

聖火リレー記者発表会には東京2020組織委員会から会長の森喜朗、会長代行の遠藤利明、聖火リレー検討委員会委員の武田美保も登壇した


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