絶対忘れるな、さなりらが示す、個とチームそれぞれのプライド

のびやかな歌声のなかにシンガーとしてのプライドが垣間見えた、Kaco

1月31日、CINRAと音楽アプリ「Eggs」による無料音楽イベント『exPoP!!!!!』が、渋谷のライブハウスTSUTAYA O-nestにて開催された。

今回のトップバッターは1993年生まれ、愛媛出身のシンガーソングライター、Kaco。ドラムとベースのサポートを加えた3人編成で登場し、その豊かな歌声を響かせる。

Kaco(かこ)
1993年、愛媛県生まれ。NEWSへ“madoromi”、“リボン”の楽曲提供を行い、アニメ『魔法使いの嫁』第14話では挿入歌“Rose”を作詞、作曲、歌唱にて参加するなど、今、注目の新進気鋭のシンガーソングライター。2019年1月、3rdミニアルバム『たてがみ』をリリース。ワンマンツアーを経て、7月17日シングル『ミーナの水槽』をリリースする。その後、3月には東京と大阪にてワンマンツアーを実施。7月17日にはシングル『ミーナの水槽』のリリースも決定している。

まだ若いながらも様々な経験を積んできたKaco。その歌声は、繊細な柔らかさを持ちながらも、どんな外圧や摩擦によっても損なわれないような強さとおおらかさを纏っている。

自身の歌声に対するプライドや確信も感じさせる、その堂々とした佇まいは、高潔さすら感じさせるほどだ。この歌声がこの先、どんな場所へたどり着くのか、とても楽しみになるステージだった。

甘いマスクとスキルフルなラップで会場を魅了した、さなり

2番手に登場したのは、16歳のラッパー、さなり。フロア前方に集まった、彼と同世代と思しき女性たちから黄色い声援が飛ぶなかステージに登場した。

さなり
2002年11月16日生まれ。小学校低学年時にYouTubeに出会い、オリジナル動画の投稿を開始。一度聞いたら耳から離れず、リリックがストレートに入ってくる力強い独特の声が特徴的な16歳のラップアーティスト。

あまりの女性人気なので、どんなもんかと顔を見てみれば「こりゃあ、モテるわ」と納得の甘いマスク。しかし、いいのは顔だけではない。小学生の頃に動画投稿を始め、中学生の頃にはオリジナル楽曲の制作を始めたという、その早熟な才能は、ステージ上でも如何なく発揮される。

「さなり」としてライブをするのは人生で2回目だと本人がMCで語っていたが、緊張を微塵も感じさせないしなやかなパフォーマンス。華やかな存在感とは裏腹に、自身の内省を放出するような言葉の数々から、もっと深く、さなりという人間のことを知りたくなった。

ロイ-RöE-が打ち込みと弾き語りを行き来して示した、枠に捉われないスタイル

3番手に登場したのは、ロイ-RöE-。去年メジャーデビューを果たした彼女もまた、中学卒業後から独学で楽曲制作を始めたという、早熟な才能を発揮させてきたアーティストだ。

ロイ-RöE-(ろい)
頭から離れないメロディーと個性的な歌詞を紡ぎ出すシンガーソングライター。ワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル「unBORDE」所属。2019年5月22日、フジテレビ系ドラマ「ストロベリーナイト・サーガ」OPテーマ「VIOLATION*」を配信リリース。

ステージにはMPCとMacBook、そしてアコースティックギター。MCではあっけらかんとした口調でフロアに語りかけながらも、いざ歌い始めれば、その姿には威風堂々とした魅力がある。中盤にはMPCプレイを披露するという、既存の「女性シンガーソングライター」像や「歌姫」像とは異なる、特殊な存在感を放つ場面も。

曲に対する「註釈」という意味も込めて、すべての曲名に「*」をつけるというセンスや、記号的なステージネーム、独特なステージ衣装も含めて、独自の感性を持っていることは確か。その感性がこの先、さらに特別な形を持ちながら世に放たれていくことを考えると、非常に楽しみになる逸材だ。

Frascoがチームメンバーと共に見せつけた、「バンド」に捉われない集合体としての音楽

4番手に登場したのは、Frasco。メインとなるメンバーは2人なのだが、それ以外にVJや衣料部などを託された「チームメンバー」も複数人内包するという、かなり特殊なバンドだ。

Frasco(ふらすこ)
タカノシンヤ(曲・企画)と峰らる(歌・デザイン)を中心としたメタポッププロジェクト。バンドでありクリエイターチームという特殊な形態をとり、ナギー a.k.a kentaro nagata(エンジニア)、Naz Chris(キュレーター)、yorocine(映像)、Sota Suzuki(VJ)、大江よう(衣料部)をチームメンバーとして擁する。音楽のみならず映像やアパレル等多角的にクリエイティブを展開し、現実と非現実のミックスをコンセプトとして活動を行う。
タカノシンヤ(Frasco)
峰らる(Frasco) 

プロフィールに「バンドでありクリエイターチーム」と書いてあるのだが、まさに既存の「バンドらしさ」に捉われない集合体だ。メロウなトラックと、サウンドと同期しながらバックスクリーンのロゴが動いていくVJも相まって、空間全体を掌握するようなパフォーマンスを繰り広げていく。

Frasco“Tatemae”を聴く(Apple Musicはこちら

曲間のMCでは、まるで会社の会議でパワーポイントを使ってプレゼンをするように、VJとレーザーポインターを駆使して物販紹介をするというシュールな場面も。ソリッドな表現でありながら、「大人の悪ふざけ」という言葉がしっくりくるような、余裕とユーモアも感じさせるパフォーマンスで、なんとも不思議な空間を演出してみせた。

絶対忘れるなが、平日夜のライブハウスに作り出した祝祭的空間

この日のトリに登場したのは、高円寺、阿佐ヶ谷を拠点とする、5MCと1DJから成るラップグループ、絶対忘れるな。

絶対忘れるな(ぜったいわすれるな)
志賀ラミー、貫地谷翠れん、セルラ伊藤、アルバ伊藤、ピーチジョン万次郎、益若つばめの5MC1DJからなるラップグループ。都内を中心に活動中。
志賀ラミー(絶対忘れるな)
貫地谷翠れん(絶対忘れるな)

メンバー全員が会社員だという「ぜわす」(絶対忘れるなの通称)は、この日は6人のうち、2人が会社を中抜けして来ている(つまり、ライブが終われば会社に戻る)という。そんな想像するだけでも壮絶な状態で、彼らはステージに現れた。しかし、そんな「生活」と地続きの場所から生まれる音楽だからこそなのか、その「はみ出す」力はすごかった。

セルラ伊藤(絶対忘れるな)
アルバ伊藤(絶対忘れるな)

圧倒的な躍動感と多幸感に満ちたステージング。5人のMCがステージを縦横無尽に動き、それぞれがソロパートでキャラクターを発揮させながらも、全員で決めるときはビシッと決める。動きにおいてもラップにおいても、それぞれが明確にキャラ立ちしながら、5人が揃った瞬間に生まれる強烈な全能感は、まるで戦隊もののヒーローのよう。

ピーチジョン万次郎(絶対忘れるな)
益若つばめ(絶対忘れるな)

ステージからは、楽しさと、切なさと、ロマンチシズムが溢れんばかりに放出される。“まさか覚えててくれたなんて!”の<まさか覚えててくれたなんて! / 同じ楽しみを共有できるなんて!>というフレーズ、そして<今日が最後かもしれないって思いで>というリフレインが、この日、この夜の刹那に、この場所に集まったすべての人々を祝福しているようだった。

絶対忘れるな“まさか覚えててくれたなんて!”を聴く(Apple Musicはこちら

前半に登場した3人のソロアーティストは、それぞれが個々のプライドと美意識を刻み込むようなパフォーマンスを披露した。その一方で、Frascoと絶対忘れるなは、バンド兼クリエイターチームとラップグループという、様々な人が集まった集合体だからこそ生み出すことができる自由を体現していた。「個」の強さも「チーム」の喜びも感じることができた夜だった。

Kaco
さなり
ロイ-RöE-
Frasco
絶対忘れるな
イベント情報
『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume117』

2019年1月31日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest

出演:
Kaco
さなり
絶対忘れるな
Frasco
ロイ-RöE-
料金:無料(2ドリンク別)

『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume122』

2019年6月27日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest

出演:
新しい学校のリーダーズ
vividboooy
ほか
料金:無料(2ドリンク別)

プロフィール
Kaco (かこ)

1993年、愛媛県生まれ。NEWSへ「madoromi」、「リボン」の楽曲提供を行いアニメ『魔法使いの嫁』第14話では挿入歌「Rose」を作詞、作曲、歌唱にて参加するなど、今、注目の新進気鋭のシンガーソングライター。2016年にリリースした自主盤『影日和(かげびより)』では、Kan Sanoがピアニストとして参加。2017年10月には、全国流通盤としてリリースした『身じたく』において、松岡モトキ氏をサウンドプロデューサーとして迎え、ピアノ弾き語りはもとより、バンド編成を主体にした骨太の内容に仕上がる。2018年10月22日、自己紹介盤として、ワンコインCDをリリース。2019年1月、3rdミニアルバム『たてがみ』をリリース。ワンマンツアーを経て、7月17日シングル『ミーナの水槽』をリリースする。

さなり

2002年11月16日生まれ。小学校低学年時にYouTubeに出会い、オリジナル動画の投稿を開始。動画投稿の収入でパソコンを購入し、遊ぶように動画制作などを行っていた。同じ頃、ラップミュージックと出会い、中学校に入るとフリースタイルラップで友達と遊び始め、中学2年生の頃からオリジナル音源の制作をスタート、再度、動画投稿を始めるようになる。一度聞いたら耳から離れず、リリックがストレートに入ってくる力強い独特の声が特徴的な16歳のラップアーティスト。

ロイ-RöE- (ろい)

頭から離れないメロディーと個性的な歌詞を紡ぎ出すシンガーソングライター。中学卒業後から独学で作曲を開始。2017年夏に行われた、ワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル<unBORDE>が主催するライブイベント<unBORDE Summer Xmas Party 2017>において、レーベルへの所属を発表。2018年、<unBORDE LUCKY 7TH TOUR>に出演決定。2019年5月22日、フジテレビ系ドラマ「ストロベリーナイト・サーガ」OPテーマ「VIOLATION*」を配信リリース。

Frasco (ふらすこ)

タカノシンヤ(曲・企画)と峰らる(歌・デザイン)を中心とたメタポッププロジェクト。バンドでありクリエイターチームという特殊な形態をとり、ナギーa.k.a kentaro nagata(エンジニア)、Naz Chris(キュレーター)、yorocine(映像)、Sota Suzuki(VJ)、大江よう(衣料部)をチームメンバーとして擁する。音楽のみならず映像やアパレル等多角的にクリエイティブを展開し、現実と非現実のミックスをコンセプトとして活動を行う。2017年1月18日に配信限定で“Theatre"をリリース。同年EP2枚『Contact』『Viewtiful』をCDとして全国リリース。2018年2月~6月の4ヶ月間で、10曲連続配信シングル“シンバム”プロジェクトを敢行、Spotifyでは総再生数23万回以上という結果を得る。

絶対忘れるな (ぜったいわすれるな)

志賀ラミー、貫地谷翠れん、セルラ伊藤、アルバ伊藤、ピーチジョン万次郎、益若つばめの5MC1DJからなるラップグループ。都内を中心に活動中。



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