日本人の「エモーション」だって、世界を震わせられる。ONE OK ROCKとサム・スミスの共通項

圧倒的な歌声があれば、世界を穫れる

「やっぱり、世界を穫るのは『圧倒的な歌声』なんだ」。先日、サム・スミスの初めての来日ショーケース公演を幸運にも観ることができた。ほんの数曲の短いステージだったが、終わって痛感したのはそういうことだった。

デビュー作『In The Lonely Hour』が全世界で数百万枚のセールスを記録し、『グラミー賞』4冠。誰もが認める次世代のスターになったサム・スミスだが、その音楽のあり方はとても真っ直ぐだ。自分の思いや信じていることを、人生の中で生まれてしまった「心の空洞」を、メロディーに乗せて声に放つ。それが沢山の人たちの胸を震わす。

その帰り道、同行した人にこう訊かれた。「今の日本の音楽シーンに、こんな風に圧倒的な歌声で世界を穫れる人、いると思います?」

今の日本のポップカルチャーを、海外に視点を置いて見てみると、その最も特異なポイントはキャラクター性にある。よって、そこが世界進出の武器になる。きゃりーぱみゅぱみゅが喝采を浴びたのも、BABYMETALがメタルファンを魅了したのも、やはりキャラクターが音楽の魅力を伝える強力な媒介になったから。いわゆる「カワイイ」カルチャーだけでない。たとえばビジュアル系のバンドが海外でファンベースを築いている背景にも、同じ回路が働いているのはひとつの事実だ。

歌唱力を武器に、海外で着実に結果を出しつつある日本人ボーカリスト

ただ、キャラクターの回路に頼らず、圧倒的な歌唱力を武器に正攻法で海外に勝負をかけ、着実に結果を出しつつあるシンガーがいる。ONE OK ROCKのボーカリスト、Takaがその人だ。

ここ数年で、波紋のように、オセロの駒を1つずつひっくり返すように、バンドの支持は世界中で着実に広まっている。2013年に行われた彼らの海外ツアーを追ったドキュメンタリー映画『FOOL COOL ROCK! ONE OK ROCK DOCUMENTARY FILM』には、その様子が克明に刻み込まれている。


そして、今年2月23日にリリースされたアルバム『35xxxv』は決定打になるだろう。ロサンゼルスに制作の拠点を移し、プロデューサーに自らコンタクトをとり、レコーディングを行った1枚。ONE OK ROCKというバンドがこれまでに築いてきた基盤を全て手放し、ゼロから作り上げた1枚だ。

「ひょっとしたら動員も減るかもしれないし、売り上げも減るかもしれない」「こういうアルバムでまた1からONE OK ROCKのライヴでのノリ方を提示していけたらなと思ってるんです」(『MUSICA』2015年2月15日発売号より)と、Takaはインタビューで語っていた。バンドにとって挑戦的だったアルバムが、初週16.5万枚を売り上げ、バンド初のオリコンチャート1位を獲得した。つまり、スタジアムクラスのロックバンドとなった彼らが、今までのファンが離れるリスクを覚悟した上で新たな美学を打ち出した。その上で、大きな支持を集めたのが『35xxxv』というアルバムだ、と言うことができる。

歌の表現力から見る、Takaとサム・スミスの共通項

『35xxxv』のキーポイントとなっているのが、Takaの歌の表現力。“Heartache”という曲にそれが端的に表れている。


この曲が描いているのは、愛する人を失った大きな悲しみだ。ゆったりとしたアコースティックギターのストロークに導かれて、少しずつ情感があふれだすような歌が響く。メロディーはとてもシンプルである。サウンドや曲展開にギミックがあるわけでもない。しかし、その歌声に込められたエモーションが聴き手を震わせる。つまり、楽曲のコアな部分に「心の空洞」が込められているのだ。そういう意味でこの曲には、サム・スミスの歌のあり方と通じ合う部分がある。

「如何にしてヴォーカルを滑らかに、気持ちよく、優しく表現できるかっていうのは今まで以上に意識しましたね」と、やはり『MUSICA』2015年2月15日発売号のインタビューにてTakaは語っていた。メロディーがシンプルになったことによって、歌える空間が増えた。ボーカリストとしての表現力を伸ばすことができた。肩の力を抜いて歌うことができた、という。

『35xxxv』から予見する、さらなるバンドの世界的な可能性

アルバムに収録された“Good Goodbye”は、まさにその成果が表れたナンバーだ。カントリーミュージックに通じる、ゆったりとしたビートとおおらかな旋律を持った曲。伸びやかなで包容力ある歌声が響く。

そして、この曲の持つポテンシャルからは、さらに「その先」の可能性を予見することもできる。昨年にアメリカで『WARPED TOUR』(アメリカ最大級のロックとエクストリームスポーツの複合型フェス)に参加したように、ONE OK ROCKというバンドは、今は日本においても海外においてもパンクやエモの括りの中でイメージされているところがある。もちろん今バンドの勝負する場所はそこにあるだろう。

しかし、ひょっとしたら、『35xxxv』の先にはONE REPUBLICやCOLDPLAYなどのようなスタジアムクラスのロックバンドとして、さらにスケールの大きな表現を目指していく道が続いているのではないだろうか? 今のONE OK ROCKの持つポテンシャルを見ていると、そんな期待すら抱いてしまう。

リリース情報
ONE OK ROCK
『35xxxv』通常盤(CD)

2015年2月11日(水)発売
価格:2,916円(税込)
AZCS-1041

1. 3xxxv5
2. Take me to the top
3. Cry out
4. Suddenly
5. Mighty Long Fall
6. Heartache
7. Memories 8. Decision
9. Paper Planes(featuring Kellin from Sleeping with Sirens)
10. Good Goodbye
11. One by One
12. Stuck in the middle
13. Fight the night

ONE OK ROCK『ONE OK ROCK 2014“Mighty Long Fall at Yokohama Stadium”』(Blu-ray)

2015年4月29日(水)発売
価格:6,480円(税込)
AZXS-1011

1. アンサイズニア
2. Deeper Deeper
3. Nothing Helps
4. Let's take it someday
5. C.h.a.o.s.m.y.t.h.
6. Clock Strikes
7. 69
8. 未完成交響曲
9. Mighty Long Fall
10. Living Dolls
11. Be the light
12. A Thousand Miles(Vanessa Carlton)
13. 欲望に満ちた青年団
14. Heartache
15. Decision
16. Re:make
17. 恋ノアイボウ心ノクピド
18. NO SCARED
19. 完全感覚Dreamer
20. Wherever you are
21. キミシダイ列車
22. The Beginning

ONE OK ROCK
『ONE OK ROCK 2014“Mighty Long Fall at Yokohama Stadium”』(DVD)

2015年4月29日(水)発売
価格:5,400円(税込)
AZBS-1030

1. アンサイズニア
2. Deeper Deeper
3. Nothing Helps
4. Let's take it someday
5. C.h.a.o.s.m.y.t.h.
6. Clock Strikes
7. 69
8. 未完成交響曲
9. Mighty Long Fall
10. Living Dolls
11. Be the light
12. A Thousand Miles(Vanessa Carlton)
13. 欲望に満ちた青年団
14. Heartache
15. Decision
16. Re:make
17. 恋ノアイボウ心ノクピド
18. NO SCARED
19. 完全感覚Dreamer
20. Wherever you are
21. キミシダイ列車
22. The Beginning

プロフィール
ONE OK ROCK
ONE OK ROCK (わんおくろっく)

2005年に結成。エモ、ロックを軸にしたサウンドとアグレッシブなライブパフォーマンスが若い世代に支持されている。2007年にデビューして以来、全国ライブハウスツアーや各地夏フェスを中心に積極的にライブを行って来た。2010年に日本武道館、2012年に横浜アリーナ2デイズ開催するも即日ソールドアウト。2013年アルバム『人生×僕=』を発売、全国6カ所11公演10万人を超えるアリーナツアーを開催。2014年7月、シングル“Mighty Long Fall/Decision”をリリース、9月に横浜スタジアムでのライブを2日間成功させた。そして日本のみならずアジア、ヨーロッパでの海外ツアー、アメリカでのフェスや単独公演を成功させるなど世界基準のバンドとなってきている。



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