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ゲイ映画が世界を変える? 映画『ミルク』レビュー

ゲイ映画が世界を変える? 映画『ミルク』レビュー

早川すみれ

ユーモアも感動もある本作の余韻にひたりながら、エンドロールが流れる中で「自分らしさ」とは何なのだろうかと考えていた。そんなことを考えながら街に出て、東京の雑踏を前に思った。この中に、もっと自分らしく生きたいと願う人がどれだけいるのだろうかと。

映画『ミルク』は、1970年代のアメリカで同性愛者として初めて公職に就いた、ハーヴィー・ミルクの最後の8年間を描いた実話である。彼は、自らがゲイであることを公表し、ゲイである仲間たちが差別を受けることなく自分らしく生きていける社会を目指して戦い続けた。それは、決して簡単なことではなく、あらゆる権力との命をかけた戦いであったことを映画は物語っている。

映画『ミルク』レビュー

社会の常識や権力に屈することなく、自由と権利を獲得するために戦い、鼓舞するその姿は観ていて気持ちがいい。何といっても、主演のショーン・ペンの演技は素晴らしく、「ショーン・ペンってゲイだっけ?」と思うほど恋人役の男性俳優とのラブシーンや、恋人同士の日常の風景を見事に演じている。また、その演技からはユーモアと優しさを備えたミルクの人柄が感じ取れて、きっと、たくさんの人に愛される人物だったのだろう想像がつく。事実、ミルクは人々に勇気と希望を与えた英雄であり、彼の活動は、同性愛者だけでなく高齢者や障害者、低賃金労働者といった社会的弱者の立場にある人々の心を結んで、大きなムーブメントとしてアメリカ社会を変えることになる。

この映画で、みんなが手をつなぎ始めたら・・・

映画を観て、まだ学生だった頃、男友達に同性愛者であることをカムアウトされたことを思い出した。その事実にも驚いたけれど、家族にも友人にも言えず自分を押し殺しながら生活をすることの苦労や、日本では性的マイノリティに対する理解が少ないこと、そのために社会的に不利な立場に追い込まれてしまう状況があることに驚いたのを覚えている。性的マイノリティだからといって、わざわざカムアウトしなければならない必要性は全くないのだが、本人が本当は言いたいけれど何かに恐れて隠すしかない状況なのだとしたら、それは考えものである。

映画『ミルク』レビュー

近年、日本においても政治活動家として性的マイノリティの方が活躍している。また、今年の1月にアメリカ初の黒人大統領が誕生するなど、これまでマイノリティゆえに社会的弱者の立場だった人々が立ち上がり、実際に世界を変える動きになりつつある。この映画の中でも出てくるが、差別を恐れてカムアウトできない性的マイノリティの人たちや、社会的弱者とされる高齢者や子ども、障害者や低賃金労働者が世界中にたくさん存在する。

もしかすると、大きな悩みもなく、好き勝手な毎日を送っている自分の「あたりまえ」の認識こそが、誰かを傷つけている原因なのかもしれない。今、「自分らしく」生きているこの世界は、誰にとっての「あたりまえ」の世界なのか。今一度、周りを見つめ直してみたい。そんなきっかけをこの作品は与えてくれる。

映画『ミルク』レビュー

この映画がきっかけとなり、もっと素敵な毎日を目指して皆が手を繋ぎ始めたら、それは世界を変える大きな動きになるかもしれない。脚本、監督、俳優、そして撮影の舞台となったサンフランシスコ。映画を作る要素すべてが最高の状態で一つになった『ミルク』。これから世界中のスクリーンで上映され、その度にハーヴィー・ミルクの遺した「希望」の種を蒔き続けていくのだろう。その花が咲くことを考えると、ドキドキする。人々に勇気と希望、そして将来の期待まで抱かせる、そんな本作に「出会えてよかった」と思う人が世界中に現れるだろう。

『ミルク』

映画『ミルク』オフィシャルサイト

2009年GW、シネマライズ、シネカノン有楽町2丁目、新宿バルト9他にて全国ロードショー

監督:ガス・ヴァン・サント
脚本・製作総指揮:ダスティン・ランス・ブラック
音楽:ダニー・エルフマン

キャスト:
ショーン・ペン
エミール・ハーシュ
ジョシュ・ブローリン
ディエゴ・ルナ
アリソン・ピル
ヴィクター・ガーバー
デニス・オヘア
ジョセフ・クロス
スティーヴン・スピネラ
ルーカス・グラビール
ブランドン・ボイス
ハワード・ローゼンマン
ケルヴィン・ユー
ジェイムズ・フランコ

配給:ピックス

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