BTS(防弾少年団)がK-POP初の全米1位。記録尽くしの歴史的快挙を紐解く

BTS(防弾少年団) 『2018 ビルボード・ミュージック・アワード』より ©BBMA2018 / dcp

BTS(防弾少年団)が歴史に名を残した。

5月18日にリリースされた彼らの最新アルバム最新アルバム『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』が、アメリカ「ビルボード200」チャートで初登場1位を獲得。これは韓国人アーティスト史上初の快挙だ。

「ビルボード200」はアメリカの週間アルバムチャートで、通常のアルバムセールスに加えて、ストリーミングと音楽配信のデータが換算される。BTSの初登場1位によって、それまで3週連続その座にいたPost Maloneのアルバム『Beerbongs & Bentleys』が2位に陥落した。

韓国の文在寅大統領も祝福したBTSのビルボード1位は、韓国人アーティストとして初めて全米1位に輝いただけでなく、様々な記録を打ち立てている。

韓国の文在寅大統領のツイート

アジア圏史上初の全米「ビルボード200」チャート1位

同チャートで1位を獲得するのは、韓国人アーティストだけでなくアジア圏全体でも史上初。ビルボードによれば、『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』は「ビルボード200」のトップ10にチャートインした史上2番目のK-POPアルバム。初めて同チャートのトップ10に入ったのは、BTSが昨年9月に発表した前作『LOVE YOURSELF 承 'Her'』であり、当時彼らは同チャート7位という韓国グループ史上最高記録を打ち立てていたが、その記録を自らの新作で破って見せた。

なおアジアのアーティストとしては1963年に坂本九の“スキヤキ”(“上を向いて歩こう”)がシングルチャートにあたる「Hot 100」で3週連続1位、2012年にPSYの“カンナム・スタイル”が2位にランクインしていた。

非英語圏の言語で作られたアルバムとしては12年ぶりのナンバーワン

欧米のマーケットに進出するにあたって、非英語圏のアーティストが現地のマーケットにあわせようと英語詞の楽曲を制作するのはよくあることだが、BTSはそれをしない。

主に英語以外の外国語で歌われた作品が1位になるのは、2006年2月に同チャートで1位を獲得したIl Divo以来初めてだという。Il Divoのアルバムはスペイン語、イタリア語、フランス語と一部英語が混ざった作品だった。

BTS『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』のリード曲“FAKE LOVE”ライブ映像

アメリカではK-POP作品史上最大の週間セールス

ビルボードによると、『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』はこれまでに全米で135000ユニットの週間売上数を記録。これは、BTSによる前作『LOVE YOURSELF 承 'Her'』での記録を超えて、K-POPアーティスト史上最大の週間売上数。さらに驚くべきことに、この売上数はMigosのアルバム『Culture II』(199,000ユニット)に次いで、2018年にグループのアーティストが発表したアルバム売上数で2位に位置する。

名実共に「世界のボーイバンド」へ。BTSの平坦ではないサクセスストーリー

K-POPのいちグループから名実共に「世界のボーイバンド」へと昇り詰めたBTS。彼らの決して平坦ではない歩みを振り返ると、その成功への鍵が見えてくるかもしれない。

2013年にシングル『2 COOL 4 SKOOL』でデビューした彼らは、ボーカル担当のジン、ジミン、V、ジョングク、ラッパーのSUGA、RM、J-HOPEからなる7人組。グループ名の「防弾少年団」には「10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬく」という意味が込められており、その名の通り、若者の苦悩や社会問題への意識が歌詞にも反映されている。

BTS(防弾少年団) 左から:J-HOPE、ジョングク、V、ジン、RM、SUGA、ジミン
BTS(防弾少年団) 左から:J-HOPE、ジョングク、V、ジン、RM、SUGA、ジミン

彼らはデビュー当時から現在のような大衆的な人気を獲得していたわけではなく、韓国の地上波音楽番組で初めて1位を獲得したのはデビュー3年目の2015年のことだ。その楽曲“I NEED U”を収録した『花様年華』シリーズは、「青春三部作」と呼ばれ、それまでの少年らしいやんちゃな印象から、青年へと変化していく若者の苦悩を内包したエモーショナルな作品群になっている。

BTS“I NEED U”PV

そして2016年のアルバム『WINGS』ではさらなる成功をおさめ、同年に初めて『Mnet Asian Music Awards』で大賞にあたる「今年のアーティスト賞」を受賞。2017年には『Billboard Music Awards 2017』トップ・ソーシャル・アーティスト部門を受賞するなど、世界へとその名を轟かす存在となった。

小さい事務所ながら収めた世界的成功

BTSの所属事務所Big Hit Entertainmentは、BIGBANGらを擁するYGエンターテインメント、2PMやTWICEが所属するJYPエンターテインメント、東方神起や少女時代らを生んだSMエンターテインメントという韓国3大事務所と比べても規模が小さい。大手事務所のアーティストとは対照的にテレビなどに出演する機会が多く得られないからこそインターネットに活路を見出し、YouTubeチャンネルやSNSでファンと親密かつ頻繁にコミュニケーションを重ねた結果、「ARMY」と呼ばれるBTSのファンベースは世界に拡大した。

 BTS(防弾少年団)は5月20日に『2018 ビルボード・ミュージック・アワード』に登場し、新曲を世界初披露した ©BBMA2018 / dcp
BTS(防弾少年団)は5月20日に『2018 ビルボード・ミュージック・アワード』に登場し、新曲を世界初披露した ©BBMA2018 / dcp

小さい事務所ながら努力を重ねて地道にファンを増やし、時間をかけて前人未到の快挙を打ち立てたというのが彼らのサクセスストーリーだ。BTSは2017年にその年の「最もツイートされたアーティスト」になった。他のK-POPアーティストのファンと同様に彼らのファンも献身的かつ熱狂的な支援活動で知られるが、BTSのこれまで道のりを共有しているからこそ、サポートにも熱が入るのかもしれない。

今月アメリカの人気番組『The Ellen Show』に出演し、アルバム収録曲をパフォーマンス

もちろん彼らの成功には、ヒップホップやEDM、R&B、ポップスなど、同時代のトレンドのサウンドを取り込んだ音楽性と、一糸乱れぬダンスパフォーマンスがあってこそ。楽曲制作にも関わるメンバーの、音楽とパフォーマンスへの情熱や努力がそのアウトプットを支えている。

彼らの所属事務所代表パン・シヒョクは、以前にアメリカのビルボードのインタビューで欧米のマーケットへの進出について問われ、これまでのK-POPアーティストがやってきたように英語の曲を発表するよりも、世界の人々が共感するような要素を加えながら、K-POPのアーティストとしてベストを尽くすことの重要性を説き、世界のファンと交流しながら、どんなバックグラウンドを持った人でもBTSの音楽とパフォーマンスを楽しむことができるよう調整し、改善している、と語っていた。

メンバーのレベルの高いパフォーマンスと、欧米のリスナーにアピールできる同時代性のあるサウンド、そして事務所の戦略やファンとの密なコミュニケーションの全てが合わさり、今回の歴史的な快挙に繋がったのだろう。BTSは夏以降アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランスなどを巡るワールドツアーを行なう。世界を熱狂させる彼らの快進撃は止まりそうにない。

BTSの最新曲“FAKE LOVE”PV


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