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バンガラ・ダンス・シアターが見せる、アボリジナルの現在進行形

バンガラ・ダンス・シアターが見せる、アボリジナルの現在進行形

『Spirit 2018』『I.B.I.S』
テキスト
島貫泰介
編集:川浦慧

(メイン画像:© Edward Mulvihill)

アボリジナルは、異文化や文明をも取り入れて変化し続ける民族

以前、とあるアボリジナル関連の展覧会を取材して、とても驚いたことがある。

アボリジナルとは、オーストラリア大陸に居住していた先住民と、その子孫を指す名称だ(以前はアボリジニという名称が一般的だったが、現在はアボリジナルやオーストラリア先住民と呼ばれている)。数万年前にまで遡る古い歴史や、独特の自然観や神話大系に寄り添って暮らす生活習慣は、誤解を恐れずに言えば、私たちがつい想像してしまう「原住民」や「先住民」の素朴でエキゾチックなイメージと、安易に結びついてしまうところがある。

しかしである。その展覧会で紹介されていたヘリコプター・チューングライというアボリジナルアーティストの来歴を聞いて、筆者のなかにある先入観は大きく揺らいだ。「ヘリコプター」とは、まさにあの空を飛ぶヘリのこと。病気にかかってしまった10歳のチューングライを救うため、白人たちがヘリで都市部の病院へ搬送した……というエピソードにちなんで、周囲の人々は彼を「ヘリコプター」の愛称で呼ぶようになったのだという。

あまりに唐突な自然と機械の融合は、先住民=搾取される側、文明=搾取する側という、筆者の凡庸な先入観をぐにゃりとねじ曲げた。「ドリーミング」と呼ばれる、アボリジナル固有の時間や空間の把握においては、古代も現代もすべてが地続きの巨大な神話の一部になるという。異文化による侵略や文化的介入はもちろんさまざまな弊害を生むが、それすらも包含して変化し続けるのが、アボリジナルが把握する世界像の一端なのだ。

アボリジナルが、スーパーマーケットで缶詰や買い物かごを楽器がわりに演奏し、歌い踊る

11月9日、10日に彩の国さいたま芸術劇場に登場するバンガラ・ダンス・シアターの『Spirit 2018』『I.B.I.S』にも同様の感覚が共有されている。自身も先住民のルーツを持つスティーヴン・ペイジが芸術監督を務める同カンパニーは、オーストラリア先住民にダンスや音楽を教える教育機関NAISDAを母体とし、世界各地で上演を重ねている。その作品は、アボリジナルやトレス海峡諸島民に伝わる神話や儀礼のリサーチに基づくもので、オーストラリア先住民のアイデンティティーや芸術を伝えることをテーマとしている。

そんな風に説明を受けると、先にも述べたような安直な「先住民による伝統舞踊」を思い浮かべてしまいがちだが、バンガラのそれはひと味違う。

今回上演される『I.B.I.S』は、食料品や日用品が並ぶ商品棚が暗闇に浮かぶシーンから始まる。「I.B.I.S」とは、作品が題材としている島に点在する「諸島産業サービス委員会」という名のスーパーマーケットの略称で、ここに集う人々が缶詰や買い物かごを楽器がわりに演奏し、歌い踊るプロセスが描かれている。

©️ GREG BARRETT
©️ GREG BARRETT

躍動的なパフォーマンスに加えて目を引くのは、パフォーマーたちの外見の多様さである。南方系に見える男性たちもいれば、西洋系に見える女性たちもいる。なかには複数のルーツを持つであろう人もいて、テレビ番組やドキュメンタリー映画で知るオーストラリア先住民とは、だいぶかけ離れた印象を持つことだろう。演出や音楽も現代的で、伝統と今が奇妙にミックスしている。

 
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イベント情報

バンガラ・ダンス・シアター
『Spirit 2018』『I.B.I.S』

『Spirit 2018』
演出・振付:スティーヴン・ペイジ
『I.B.I.S』
演出・振付:デボラ・ブラウン、ワアンゲンガ・ブランコ
会場:埼玉県 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
料金:一般S席 6,000円 A席4,000円
U-25 S席:3,500円 A席 2,000円
※当日券は各席種ともに+500円

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