コラム

(メイン画像:左上から時計回りに、Netflixオリジナル映画『ROMA / ローマ』、『グリーンブック』 ©2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.、『女王陛下のお気に入り』 ©2018 Twentieth Century Fox、『ボヘミアン・ラプソディ』©2018 Twentieth Century Fox)

『第91回アカデミー賞』の授賞式が、現地時間の2月24日にアメリカ・カリフォルニアのドルビーシアターで開催される。

1929年からアメリカの映画芸術科学アカデミーによって実施されている『アカデミー賞』。1932年開始の『ヴェネチア国際映画祭』、1946年から始まった『カンヌ国際映画祭』、1951年開始の『ベルリン国際映画祭』といった「世界三大映画祭」よりも長い歴史を持つ。

今回は、数ある部門の中でもっとも重要な部門である「作品賞」にスポットを当て、ノミネート作品を確認していきたい。

今年は8作品がノミネート

作品賞のノミネート作品は、『ブラックパンサー』『ブラック・クランズマン』『ボヘミアン・ラプソディ』『女王陛下のお気に入り』『グリーンブック』『ROMA / ローマ』『アリー/ スター誕生』『バイス』の8作品。

最多ノミネートはアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA / ローマ』とヨルゴス・ランティモス監督の『女王陛下のお気に入り』。共に10ノミネートを果たしている。

Netflixオリジナル、非英語作品……キュアロン監督による常識破りのオスカー作品賞候補『ROMA / ローマ』

作品賞の本命と見られているのが、『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロンによる新作『ROMA / ローマ』。Netflixオリジナル作品である同作は、1970年代のメキシコを舞台に、ある家政婦と雇い主一家の関係を描いたキュアロンの半自伝的作品だ。

同作は作品賞に加えて、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、外国語映画賞など最多10部門にノミネート。『第75回ヴェネチア国際映画祭』で金獅子賞、『第76回ゴールデングローブ賞』でキュアロンが監督賞に輝いた。『第72回英国アカデミー賞』では作品賞、監督賞などを獲得。

もし同作が受賞するとNetflixオリジナル作品としては初、非英語作品としても初の快挙。のちの映画史でも参照される、歴史的な転換点となる可能性がある。キュアロン監督は『ゼロ・グラビティ』で『第86回アカデミー賞』監督賞を受賞。同じメキシコ出身で、盟友であるアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』、ギレルモ・デル・トロは『シェイプ・オブ・ウォーター』でそれぞれ作品賞を受賞している。

『GG賞』最多受賞の『グリーンブック』も注目。黒人&白人の友情物語

もう1作の本命と言われているのがピーター・ファレリー監督の『グリーンブック』。3月1日から日本公開される同作は、1962年のアメリカを舞台に、人種差別が根強く残る南部でのコンサートツアーを計画する黒人の天才ジャズピアニストのシャーリーと、その用心棒兼運転手として雇われたイタリア系・トニーの友情を描いた作品だ。キャストはヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリら。原題は『Green Book』。

『ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞』で作品賞を受賞したほか、先日発表された『第76回ゴールデン・グローブ賞』ではコメディ・ミュージカル部門で最優秀作品賞を受賞するなど最多3部門を制した。

『アカデミー賞』では作品賞に加えて、ヴィゴ・モーテンセンが主演男優賞、マハーシャラ・アリが助演男優賞にノミネートされているが、監督のピーター・ファレリーはノミネートから漏れた。

ギリシャの鬼才監督による異色の王宮愛憎劇。女優3人の「女優賞バトル」も?

上記2作品に割って入りそうなのが、『ロブスター』『聖なる鹿殺し』などで知られるギリシャのヨルゴス・ランティモス監督の新作『女王陛下のお気に入り』。18世紀初頭のイングランドを舞台に、病弱な女王アン、女王を動かす幼なじみレディ・サラ、再び貴族の地位に返り咲く機会を窺う召使いアビゲイルの人間模様を描いた作品だ。すでに日本でも公開されており、オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズの鬼気迫る競演も話題だ。原題は『The Favourite』。

『第91回アカデミー賞』では作品賞のほか、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、衣装デザイン賞など9部門10ノミネート。オリヴィア・コールマンは主演女優賞、エマ・ストーンとレイチェル・ワイズが共に助演女優賞候補となっている。ギリシャ人による監督作品が作品賞を受賞すると初。強烈な作家性を持つギリシャの鬼才が、一躍表舞台で注目を浴びるかもしれない。

マーベル・スタジオの悲願達成目指す『ブラックパンサー』と、黒人初の監督賞受賞も狙うスパイク・リー作品。白人偏重にも一石を投じる?

マーベル・スタジオ初の黒人ヒーローを主人公に据えた『ブラックパンサー』。監督はライアン・クーグラー。キャストの大部分と監督が黒人という布陣は、アカデミー会員を白人が多くの割合を占め、白人偏重と言われる『アカデミー賞』において異例とも言える。マーベル作品としても作品賞ノミネートは初。

主題歌賞にノミネートされたケンドリック・ラマーとSZAのコラボ曲“All The Stars”や、衣装デザイン賞、美術賞などでも候補に挙げられている。

作品賞や監督賞にノミネートした『ブラック・クランズマン』はスパイク・リー監督の新作。白人至上主義団体「KKK」ことクー・クラックス・クランに潜入捜査した黒人刑事の事件を綴るノンフィクション小説を映画化したもの。「黒人と白人が力を合わせる話」という点では『グリーンブック』と通じる点もある。

同作は『第71回カンヌ国際映画祭』コンペティション部門で『万引き家族』などとパルムドールを争い、グランプリを獲得。黒人監督による『アカデミー賞』作品賞受賞作としては、これまでにスティーヴ・マックィーン監督の『それでも夜は明ける』があるが、監督賞受賞者はいまだにいない。黒人として初の監督賞に輝くか、こちらも注目だ。スパイク・リー個人としては、2015年に『アカデミー賞』名誉賞を受賞したが、『アカデミー賞』の白人偏重傾向に異を唱えて授賞式を欠席した。

人気の音楽映画たち。大穴『ボヘミアン・ラプソディ』と、主題歌賞候補『アリー/ スター誕生』

ロックバンド・QUEENを描いた伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』も候補作。日本では社会現象化し、現在もヒット記録を更新中の人気作品だ。フレディ・マーキュリー役を演じたラミ・マレックは主演男優賞では本命視されている。『第76回ゴールデングローブ賞』では見事にドラマ部門の作品賞、主演男優賞に輝いた。

『アリー/ スター誕生』は8部門にノミネート。歌手を目指すアリーが、国民的ミュージシャンのジャクソンとの出会いをきっかけに挫折しながらスターへの階段を駆け上がっていく姿を描いた作品だ。レディー・ガガが主演女優賞の候補に選出されているほか、主題歌“Shallow”は主題歌賞でも注目されている。原題は『A Star Is Born』。

「最凶の副大統領」描く『バイス』。クリスチャン・ベールやエイミー・アダムスの個人部門にも注目

ジョージ・W・ブッシュ政権下で副大統領を務めたディック・チェイニーを描いた『バイス』は、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞など8部門にノミネート。主演男優賞候補のクリスチャン・ベール、助演女優賞候補のエイミー・アダムスらにも注目だ。ベールは『第76回ゴールデングローブ賞』でも主演男優賞に輝いている。『アカデミー賞』でも有力候補になりそうだ。日本公開は4月5日から。

作品賞以外には、日本から『万引き家族』『未来のミライ』もノミネート。さらなる栄誉を掴むか

作品賞以外に目を向けると、日本からは外国語映画賞に是枝裕和監督作『万引き家族』、長編アニメーション賞に細田守監督『未来のミライ』がノミネート。『万引き家族』は『カンヌ国際映画祭』パルムドール、『未来のミライ』は『アニー賞』インディペンデント作品賞と、どちらもすでに海外の映画賞で高い評価を得ている作品。受賞すれば日本で大きな話題となりそうだ。

『第91回アカデミー賞』の授賞式は現地時間の2月24日、日本時間の2月25日朝から行なわれる。

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ノミネート情報

『第91回アカデミー賞』主要部門ノミネート結果

作品賞
『ブラックパンサー』
『ブラック・クランズマン』
『ボヘミアン・ラプソディ』
『女王陛下のお気に入り』
『グリーンブック』
『ROMA / ローマ』
『アリー/ スター誕生』
『バイス』

監督賞
スパイク・リー(『ブラック・クランズマン』)
パヴェウ・パヴリコフスキ(『COLD WAR あの歌、2つの心』)
ヨルゴス・ランティモス(『女王陛下のお気に入り』)
アルフォンソ・キュアロン(『ROMA / ローマ』)
アダム・マッケイ(『バイス』)

主演男優賞
クリスチャン・ベイル(『バイス』)
ブラッドリー・クーパー(『アリー/ スター誕生』)
ウィレム・デフォー(『永遠の門 ゴッホの見た未来』)
ヴィゴ・モーテンセン(『グリーンブック』)
ラミ・マレック(『ボヘミアン・ラプソディ』 )

主演女優賞
ヤリッツァ・アパリシオ(『ROMA / ローマ』)
グレン・クローズ(『天才作家の妻 -40年目の真実-』)
オリビア・コールマン(『女王陛下のお気に入り』)
レディー・ガガ(『アリー/ スター誕生』)
メリッサ・マッカーシー(『Can Your Ever Forgive Me?』)

助演男優賞
マハーシャラ・アリ(『グリーンブック』)
アダム・ドライバー(『ブラック・クランズマン』)
サム・エリオット(『アリー/ スター誕生』)
サム・ロックウェル(『バイス』)
リチャード・E・グラント(『Can Your Ever Forgive Me?』)

助演女優賞
エイミー・アダムス(『バイス』)
エマ・ストーン(『女王陛下のお気に入り』)
マリナ・デ・タヴィラ(『ROMA / ローマ』)
レイチェル・ワイズ(『女王陛下のお気に入り』)
レジーナ・キング(『ビール・ストリートの恋人たち』)

長編アニメーション映画賞
『インクレディブル・ファミリー』
『犬ヶ島』
『未来のミライ』
『シュガー・ラッシュ:オンライン』
『スパイダーマン:スパイダーバース』

外国語映画賞
『CAPHARNAÜM』
『COLD WAR あの歌、2つの心』
『Never Look Away』
『ROMA / ローマ』
『万引き家族』

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