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YUKI、ソロ17年目にして「2回目のデビュー」を掲げた理由を解く

YUKI、ソロ17年目にして「2回目のデビュー」を掲げた理由を解く

YUKI『forme』
テキスト
天野史彬
編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
2019/02/06

「2回目のソロデビュー」に込められた意味

この記事を書いている時点で、本作に関する本人のインタビュー記事などはまだ世に出ていないのだが、オフィシャルサイトには、以下のコメントが掲げられている。

『forme』は自分のための2回目のソロデビューのような、フレッシュなアルバムになりました。(YUKI)

「自分のための」「2回目のソロデビュー」――こうした言葉の奥に、YUKIが本作でこのようなチャレンジングな作品作りに挑んだ理由があるのだろう。

『forme』というアルバムタイトルは、恐らく「フォルム=形式=身体」と「for me(自分のため)」のダブルミーニングになっている。YUKIほどの巨大なポップスターが、その表現が誰のためでもない「自分のため」のものであることを、世間に向けて高らかに宣言する。そこにどれほどの覚悟が必要なのかは計り知れないが、「1回目」のソロデビューから17年の月日が流れた今、彼女が再び向き合ったのは、「自分のための表現」であった。欲望の赴くままに、エゴイスティックに、本作でYUKIは、彼女の好奇心をそそったであろう様々な音楽家たちにその身を託すことで、自分自身の表現者としての「フォルム」を吟味し、謳歌している。

しかし、他者に自分の身を託すということは、同時に、その他者からの欲望を一身に引き受けることでもある。本作でYUKIに楽曲提供した作曲家陣にも、もちろん「自分にとってYUKIとはこういう存在である」「YUKIにはこんな曲で歌ってほしい」――そんな欲望があるだろう。

例えば、津野米咲作曲による“風来坊”。この曲はとてもクラシカルなYUKIの楽曲のようにも聴こえてきて、そこに津野のYUKIに対する憧れやロマン、愛情を感じる。そういう意味で、恐らく本作のレコーディングはYUKIにとって、各作家が自身に抱くイメージを引き受ける作業、という側面もあったはず。しかし、それもまたYUKIにとっては、とてもエゴイスティックな「自分のため」の工程だったのかもしれない。名だたるデザイナーたちに「ねえ、私の身体に似合うドレスを作って」と言って回るような、わがままなお姫様のようなYUKIの姿も、本作からは見えてくる。結果として、本作は曲ごとにカラーはバラバラながら、そのすべてが「YUKIっぽい」と形容できるような感触を持っている。

冒頭3曲は、テレビ・映画・ドラマのタイアップソング

また、もちろん、本作は10代や20代の若いミュージシャンが作ったアルバムではなく、25年以上のキャリアを持ち、年齢としても40代後半を迎えた、成熟したひとりの女性ミュージシャンが作り上げた作品である。そこには、衝動やエゴだけでは片づけることのできない、確かな「社会性」も刻まれている。

特に、冒頭3曲。1曲目“チャイム”は『あさイチ』(NHK)のテーマソング、2曲目“トロイメライ”は映画『コーヒーが冷めないうちに』(監督は塚原あゆ子)の主題歌、そして3曲目“やたらとシンクロニシティ”はドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(フジテレビ)主題歌……と、冒頭はタイアップソングが並んでいる。特にHALIFANIE(“チャイム”)や小形誠(“やたらとシンクロニシティ”)は、2010年代以降のYUKI楽曲を多く共に曲を作り上げてきたパートナーだ。彼らとの楽曲をアルバム序盤に並べることで、本作は、そのはじまりに「みんなのためのYUKI」をしたたかに配置していると言っていい。

きっと「みんなのためのYUKI」が存在することもまた、「YUKIのために」必要なことだったのだろう。総じて本作は、とてもエゴイスティックな方法論で作られたうえで、「世界とYUKI」の関係性を改めて浮き彫りにするような作品である。

アルバム最後は、作詞作曲編曲YUKI自身による楽曲

様々な作家たちが仕立てたドレスを着飾った後に、本作の最後を締めくくるのは、YUKI自身の作曲による“美しいわ”。アルバム1枚を通して様々なドレスを着飾った最後に現れるのは、シンプルなギターの弾き語りと口笛と共に綴られる、まるで裸の身体をベッドに横たえるような、YUKIの歌だ。

<お疲れ様 私 今日も一日中 よくまあ働いたよね
ありがとう 私の身体 いつも本当にどうもありがとう
わかってる
わかってるつもり
頑張りすぎて 大抵はいつも空回り
だけど
世話を焼きたい人が沢山いすぎるんだ
好きな人が沢山いる>
(“美しいわ”)

「世話焼き」という表現が、あまりにもYUKIにぴったりと合致したフレーズだと思った。何故、「自分のため」の作品を今、YUKIは求めたのか? その理由は本人以外知る由もないが、「この表現は自分のためのものである」と、この時代に威風堂々と宣言して見せるYUKIの姿には清々しさを感じさせられる。音楽は誰かのために鳴らされる必要はない。音楽は誰かを救う必要はない。誰が何を投影しようが、YUKIはひとりの人間でしかない。

『forme』で歌われる言葉には、どこか、その年輪に裏づけされた疲労や痛みが漂っている。そのうえで、細やかな祈りや、未来への意志、生きることへの喜び、無邪気な夢想が立ちあがってくる。それこそが、YUKIが、歌を紡ぎ続けることで得た実感なのだろう。

しかしながら、YUKIの類まれなる「優しさ」は、あなたを少しばかり笑顔にするかもしれない。YUKIは世話焼きな表現者だ。もし目の前に今にも泣き出しそうな顔をした人がいたら、彼女は率先して、その人を笑わせようとするだろう。数多の悲しみを知りながら、「世界は美しいよ」と、大らかな強さで言ってのけるだろう。それがYUKIという表現者の「フォルム」である。そんな事実を、たったひとりの場所で、自分自身に改めて突きつけるような形で、このアルバムは終わっていく。“美しいわ”を生み出したとき、YUKIは一体、何を思ったのだろうか。こんなにも「続き」が気になるアルバムは、そうあるものではない。

YUKI『forme』初回盤ジャケット
YUKI『forme』初回盤ジャケット(Amazonで見る
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リリース情報

YUKI
『forme』初回生産限定盤
YUKI
『forme』初回生産限定盤(CD+DVD)

2019年2月6日(水)発売
価格:4,104円(税込)
ESCL-5180/1

[CD]
1. チャイム
2. トロイメライ
3. やたらとシンクロニシティ
4. 魔法はまだ
5. しのびこみたい
6. ただいま
7. 口実にして
8. 風来坊
9. 転校生になれたら
10. Sunday Girl
11. 百日紅
12. 24hours
13. 美しいわ
[DVD]
1. チャイム(Lyric Video)
2. トロイメライ(Music Video)
※DVDは初回生産限定盤のみ付属

YUKI
『forme』通常盤
YUKI
『forme』通常盤(CD)

2019年2月6日(水)発売
価格:3,240円(税込)
ESCL-5182

1. チャイム
2. トロイメライ
3. やたらとシンクロニシティ
4. 魔法はまだ
5. しのびこみたい
6. ただいま
7. 口実にして
8. 風来坊
9. 転校生になれたら
10. Sunday Girl
11. 百日紅
12. 24hours
13. 美しいわ

YUKI
『forme』完全生産限定盤
YUKI
『forme』完全生産限定盤(アナログ盤)

2019年3月13日(水)発売
価格:3,780円(税込)
ESJL-3115/6

イベント情報

『YUKI concert tour “trance/forme” 2019』

2019年3月9日(土)
会場:神奈川県 厚木市文化会館 大ホール

2019年3月10日(日)
会場:神奈川県 厚木市文化会館 大ホール

2019年3月19日(火)
会場:埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール

2019年3月20日(水)
会場:埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール

2019年3月28日(木)
会場:大阪府 フェスティバルホール

2019年3月29日(金)
会場:大阪府 フェスティバルホール

2019年4月 6日(土)
会場:福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール

2019年4月 7日(日)
会場:福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール

2019年4月20日(土)
会場:石川県 本多の森ホール

2019年4月21日(日)
会場:石川県 本多の森ホール

2019年4月28日(日)
会場:神奈川県 神奈川県民ホール

2019年4月29日(月・祝)
会場:神奈川県 神奈川県民ホール

2019年5月11日(土)
会場:宮城県 仙台サンプラザホール

2019年5月12日(日)
会場:宮城県 仙台サンプラザホール

2019年5月18日(土)
会場:広島県 広島文化学園HBGホール

2019年5月19日(日)
会場:広島県 広島文化学園HBGホール

2019年5月31日(金)
会場:兵庫県 神戸国際会館こくさいホール

2019年6月1日(土)
会場:兵庫県 神戸国際会館こくさいホール

2019年6月8日(土)
会場:北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru

2019年6月9日(日)
会場:北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru

2019年6月15日(土)
会場:東京都 東京国際フォーラム ホールA

2019年6月16日(日)
会場:東京都 東京国際フォーラム ホールA

2019年7月6日(土)
会場:愛知県 名古屋国際会議場 センチュリーホール

2019年7月7日(日)
会場:愛知県 名古屋国際会議場 センチュリーホール

プロフィール

Awesome City Club
YUKI(ゆき)

1993年、JUDY AND MARYのボーカリストとしてデビュー。2001 年、JUDY AND MARYを解散後、2002年2月にシングル『the end of shite』でソロ活動を開始。先鋭的なサウンドや前衛的なビジュアルで独自の世界観を確立。2012年5月、ソロ活動10周年を記念して開催した東京ドーム公演では、バンドとソロの両方で東京ドーム公演を行った女性ボーカリストとして“史上初”という記録を作り、約5万人を動員。2017 年までに、音楽チャートで1位を獲得したアルバム5枚を含む、8枚のオリジナルアルバムをリリース。独特の歌声、表現、存在感は、あらゆる方面から多くの注目を集め、今後も音楽活動とそれに伴うライブ、アートワークの全てから目が離せない。

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