コラム

中国版プデュ『青春有你2』が問う、「ガールズグループ」の枠組み

中国版プデュ『青春有你2』が問う、「ガールズグループ」の枠組み

テキスト
松本友也
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

飛び交う「加油」と、競争意識よりも連帯感を共有していく訓練生たち

訓練生たちの共有するそんな思いは、「K-POP」という確立されたシステムのなかでしのぎを削る本国版『プデュ』の競争意識とはまた違った、連帯感を伴う闘争心につながっているように思える。

それを象徴するのが、ステージから客席へ、あるいは客席からステージへと飛び交う「加油(ジャーヨウ)!」の掛け声だ。他の訓練生がステージに臨むとき、仲間のランクが落ちたとき、誰かが難しい課題に挑戦し試行錯誤しているとき、訓練生たちはとにかく「加油!」と大声で叫ぶ。

「加油」には、日本語の「頑張れ」や韓国語の「ファイティン」と比べると、どこか野次のような、あるいはコール&レスポンスのような双方向的な趣がある。相手を激励すると同時に、自分も含めた「私たち」全体を鼓舞し勇気づけるような、あるいは文字通り、場の熱気に油を注ぐような、そんなバイブスが感じられる。

過去の経歴から、インターネットでバッシングを受けていた蔡卓宜(チュア・ジョウイ)を励ます「加油」の声

ミッションが進むたびに、109人の訓練生は9人のデビューメンバーという少ないパイを奪い合う競争相手であるという以上に、渇望してきたチャンスをともに掴んだ、ひとつのチームになっていく。訓練生のひとり、谢可寅(シェイ・クーイン)が順位発表のスピーチで発した言葉──「私たちはみんな、暗闇から這い出てきた光の使者だ」──は、そんな彼女たちの境遇と連帯感を端的に言い表していた。

『プデュ』におけるバトルの位置付けをも揺るがす、勝ち負けにこだわらない姿勢

その連帯感は、『プデュ』というシステムにおける、バトルの位置付けさえも揺さぶる。たとえば視聴者投票でデビューメンバーが決まる『プデュ』シリーズでは、ミッションの課題曲で良いポジションやパートをとれるかどうか、チームとしても個人としても良い成績を修め、ベネフィットの票数を得られるかどうかが、勝ち残るためには重要なポイントになる。

しかし『青春有你2』の訓練生たちはとにかく仲間に教えることに時間を割く。ポジション決めやセンターなどの争奪戦はありつつも、基本的には全員が目立てるように見せ場を分け合う。それどころか、同じ課題曲で2チームに分かれて戦うミッションでは、相手チームの練習がうまくいっていないと見るや、「私たちは同じ曲をやるんだからひとつのファミリーだ」と、勝ち負け度外視で一緒に練習し始めてしまう。

練習スタジオでのパフォーマンス

それはあたかも、『プデュ』という「用意された」サバイバルに対して、全員で抗ってみせるかのようだ。「多くの人に見られたい」という訓練生たちの口癖は、後半では「みんなが見てもらえるように」に変わっている。個人の勝利よりも全体の勝利を志向するような彼女たちの姿勢を見て、『プデュ』にそんな戦い方があったのかと、蒙を啓かれるような気持ちになった。

「教える / 教わる」関係から、循環するメンターシップへ。BLACKPINKのLISAも指導

興味深いのは、その教え合いが、必ずしも実力のある者からない者への指導とは限らないことだ。実力的に劣る訓練生が、スキルも経験もある訓練生にアドバイスするような場面もよく見られる。

実力の有無に関わらず、教えられることがあれば教える。教わる側も、そのことに負い目を感じない。Fランクの評価を受けた訓練生がメンターに対して「自分はこれから努力してうまくなるから大丈夫」と堂々と言い放つ場面も印象的だったが、そもそも実力がないことを良い意味で恥じていないように見える。それに対してメンターが「あなたのその勇気から、私たちも学ばなければいけないよね」と答えるところでは、ストイックなK-POPの師弟関係と異なる、教える者と教わる者の上下関係を自明視しないフラットさが強く印象に残った。

キャリアの長い訓練生でも他のメンバーからのアドバイスに耳を傾ける

番組側は、こうした上下関係の相対化をおそらくかなり意図的に行っている。それが最も象徴的に表れているのが、番組の司会進行と訓練生のメンターを兼任する「制作人」のポジションに、弱冠21歳の蔡徐坤(ツァイ・シュークン)を起用していることである。年齢だけで言えば、彼はなんと最終的なデビューメンバーの誰よりも若い。

蔡徐坤は『青春有你2』の前身番組である『偶像練習生』を1位で勝ち抜き、ボーイズグループ・NINE PERCENTとしてデビューした現役のアイドル。いわば訓練生たちの「先輩」として、訓練生の置かれている立場や心境を理解し、彼女たちに寄り添いながら導いていく。彼が訓練生を慮って自分の経験を語ったり、あるいは番組のディレクターや他のメンターに意見したりする場面は何度も見られた。

現役アイドルであるBLACKPINKのLISAの起用も同様だ。LISAに憧れる訓練生の思いに触れ、「自分も誰かにとっての憧れのアイドルになることができた」と彼女が涙を流す場面は印象的だった。かつて訓練生だった者が教える側に回り、「メンター」を経験することで成長する。『青春有你2』の提示する「サバイバル」像は、大人である制作陣が子供である訓練生を一方的に教え導くのではなく、誰もがお互いを教え合うような循環的なメンターシップによって成り立つものなのである。

BLACKPINKのLISAが訓練生のメンターとして参加。熱い指導を行う

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