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現代の詩人=秋田ひろむが率いるバンド「amazarashi」

現代の詩人=秋田ひろむが率いるバンド「amazarashi」

金子厚武
2011/03/09

初のドラマ主題歌としてオンエア中の表題曲を中心とした6曲入りの新作『アノミー』を発表するamazarashiをご存知だろうか? 昨年の春にメジャーデビューを果たすも、バンドの実態はいまだ不明。しかし、現代社会の真実を強烈な言葉で暴くその歌詞のインパクトと、文化庁メディア芸術祭のエンターテイメント部門で優秀賞を受賞したPVに代表されるコンセプチュアルかつハイクオリティなビジュアルがネットを中心に大きな話題を呼んでいる注目のバンドである。本稿ではこれまでの歩みを振り返ると共に、amazarashiというアーティストの持つ本質的な魅力に迫ってみた。

言葉と音とアニメーションで善悪の二元論に疑問を呈する

andropやさよならポニーテールなど、プロフィールを詳しく公表せず、匿名性を保ったまま活動するアーティストが近年増えてきている。「相対性理論以降」もしくは「GReeeeN以降」とでも言うべきこの傾向だが、アーティストによってその理由は様々で、純粋に音楽だけで評価してほしいというスタンスの表れでもあれば、当然プロモーション的な狙いがある場合もあるだろう。インターネットがプロモーションにおいて大きな役割を果たすようになった今、正体を隠すことによってネット上での議論を呼び、情報が拡散していくというわけだ。

そんな中でも、現在最も神秘的な存在であり、ネット上で話題を呼んでいるのがamazarashiだろう。現在公表されているプロフィールは「青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド」という情報のみで、顔写真はもちろん、彼が何歳で、バンドメンバーが何人いるのかもわからない。また、現在はライブ活動もしていないので、相対性理論やandropのようにライブに行けば存在が確認できるということもなく、バンドの実態は謎に包まれている。むつ市といえば恐山で有名な土地であり、そんなことも彼らの神秘性を強めていると言えよう。

現代の詩人=秋田ひろむが率いるバンド「amazarashi」
amazarashi『アノミー』イメージイラスト

さらに特徴的なのが、非常にコンセプチュアルなビジュアルで、ジャケットやPVは『AKIRA』や『風の谷のナウシカ』、『エヴァンゲリオン』、『20世紀少年』といった名作を連想させるSF/ファンタジー的な世界観のアニメーションで統一されている。メジャーデビュー作『爆弾の作り方』に収録されていた代表曲“夏を待っていました”のPVはフル3DCGで制作され、文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門で優秀賞、3DCG AWARDS 2010で最優秀賞を獲得するなど、そのクオリティは実に高い。これに関しても、おそらく設定やコンセプトがあるのだとは思うが、それに関しても説明は一切行われず、謎は深まるばかりだ。

そしてもうひとつ、amazarashiの個性を決定付けているのが、その鋭利にして鮮やかな「言葉」である。善と悪の二元論では語ることのできない現代の矛盾を暴き、生きること自体に罪の意識を感じながら、それでも生きていかなけれらばならないことを歌う秋田ひろむの歌詞は、強烈に胸に刺さる。神聖かまってちゃんや世界の終わりにも通じることだが、最近のバンドの歌詞には「死」という言葉や性に関する描写など、これまでは隠蔽されてきた描写が一気に噴出し、一般化していった。これは言うまでもなくインターネットの影響が大きく、匿名性を保って本心を開放できる場が与えられた結果、今まで反道徳的とされていたことは、実は誰もが考えている普通のことだったという事実を反映しているように思う。この春に坂本金八がついに定年退職するらしいが、「『死ぬ』なんて簡単に言うな!」というかつての名言も、今では「『死ぬなんて言うな』なんて簡単に言うな!」という道徳観へとすっかり移行したように感じられる。

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