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康本雅子と行く『没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術』

康本雅子と行く『没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術』

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文:橋本倫史 撮影:西田香織

5. 「認められたい!」という欲求

『わだつみのいろこの宮』が三等末席という不本意な結果に終わった青木繁は、1907年、故郷である九州へ放浪の旅に出ます。青木は友人にあてた手紙のなかで、「非常にうまい画が拵えてみたい」と述べる一方で、「又同時に平淡な適当な、誰にも分るうまくない絵が作ってみたい」とも述べていました。

康本雅子と行く『没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術』

康本さんもアーティストとして、青木繁に共感する部分はあるのでしょうか?「うーん、私は『技術的なところで勝負してもダメだな』っていうところからスタートしているので、技術的な面での理想は持っていないんですけど、『いかに説得力を持たせるか』については考えますね。説得力って、もともとあるものじゃないですから。やっぱり青木繁は、『認められたい!』って欲がすごくあったんでしょう。奥さんがいて、子どもがいる――そういう普通の生活では満たされないから、放浪の旅に出ちゃうわけですね」

第4章「九州放浪、そして死」には、放浪先で残した作品が展示されています。なかには、長く滞在させてもらったお寺の壁に焼け釘で描いてしまった作品も…。

《海景(円光寺板戸)》1905年《海景(円光寺板戸)》1905年

「えっ、勝手に描いちゃったんですか?! お寺の壁に描くって、相当大胆ですね。しかも隅っこにちょっと付け加えるとかじゃなくて、四枚にわたって描いてる…。泊めてもらったお礼のつもりだったのかな?」

晩年に限らず、青木の人生にはお金の問題は最後まで付いてまわります。お金を融通してくれた友人へのお礼として、絵を描いた羽子板を贈ったこともあるようです。

《女星》1906年、宗教法人パーフェクトリバティー教団《女星》1906年、宗教法人パーフェクトリバティー教団

羽子板を振るポーズを取ってくださる康本さんですが、「こんな大きい羽子板、どうやって作ったんだろう? 大き過ぎて、羽子板としては使えないですよね(笑)」と苦笑します。

6. 青木繁のかわいらしさ

放浪の旅のなかで、青木はお金を稼ぐために肖像画を多く描いています。康本さんが気になったのは、肖像画と一緒に展示されている大きな木箱。

康本雅子と行く『没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術』

「これ、『AWOKI'S ART STUDIO TOKYO』って書いてありますよ。やっぱり『TOKYO』ってつけたほうがハイカラだと思っちゃったんだろうけど、これは完全にジョークですよね?…あ、真剣に書いてるんだ。じゃあアレか、マジメすぎて茶々入れられないタイプの人だ(笑)。そう考えると、結構かわいらしい人でもあるんですよね」

《朝日(絶筆)》1910年、佐賀県立小城高校同窓会黄城会《朝日(絶筆)》1910年、佐賀県立小城高校同窓会黄城会

青木繁は放浪先で肺結核にかかり、28歳の若さでこの世を去ります。死が目と鼻の先まで迫ったなかで描き上げた遺作が、この『朝日』でした。「さっき見た海の絵は荒々しかったけど、この海は柔らかい雰囲気がある。色もパステル調で、しょっぱくない感じです。死を前にして、もしかしたら欲も薄れ、達観したのかもしれないですね」

展覧会を見終え、青木繁の作品をたっぷりと満喫した康本さん。「絵そのものも面白いですけど、やっぱり青木さん自身のことが気になっちゃいますね。この写真の青木さんは、すごく端正。でもやっぱり、自画像とはちょっと似てないかも(笑)」

康本雅子と行く『没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術』

青木繁に興味がわいたのは、「芸術家としてすごく悩んでいた感じが見える」から。康本さんも作品をつくるなかで、日常生活と創作活動とのギャップに直面させられることもしばしばあるようです。

康本雅子と行く『没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術』

「日常生活と、何かを作ったりすることって、別の感覚じゃないですか。『もっと時間があれば集中できるのに』と思っても、ある時間になったらぷつっと日常に引き戻される。もちろん、みんなその二つの時間を行き来して作品をつくっているんですけど、青木さんは日常を捨てて旅に出てしまいますよね。女の人は、どうしても地に足がついてしまうところがあります。だから、そんな青木繁の生き方っていうのは、私にはちょっと羨ましいですね」。

巨大な才能を持ち、幾多の名作を残し若くして世を去った明治の天才、青木繁。その喜びと苦悩の日々を、9月4日まで行われている展示会場に足を運んで、ぜひ実感してみてください。

特別展『没後100年 青木繁展―よみがえる神話と芸術』

2011年7月17日(日)〜9月4日(日)
会場:東京都 八重洲 ブリヂストン美術館
時間:10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:会期中無休
料金:一般1,000円 シニア(65歳以上)800円 大学・高校生700円 中学生以下無料
団体(15名以上)一般800円 シニア(65歳以上)600円 大学・高校生500円 中学生以下無料
※障害者手帳を所持の人と同伴者2名まで半額

ブリヂストン美術館
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/

橋本倫史

1982年東広島市生まれ。ライター。07年、リトルマガジン『HB』創刊、編集発行人を務める。『en-taxi』(扶桑社)、『マンスリーよしもとPLUS』(ヨシモトブックス)等に寄稿。向井秀徳初の著書『厚岸のおかず』(イースト・プレス)制作にも携わる。

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