康本雅子と行く『没後100年 青木繁展ーよみがえる神話と芸術』

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文:橋本倫史 撮影:西田香織

3. 時間とともに変化する芸術家のモード

青木繁には、画塾で知り合った福田たねという名の恋人がいました。

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《女の顔》1904年、個人蔵(大阪市立美術館寄託)《女の顔》1904年、個人蔵(大阪市立美術館寄託)

「このポーズ、首がつりそうになりますね。たねさん、ポージングをするの大変だったと思う。『まだ?』って言ってそうな表情ですもんね(笑)」

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完成された絵画だけでなく、スケッチもたくさん並ぶこの展示。康本さんが気になったのは、青木繁が手がけたカルタ。「カルタも描いてるんだ! カルタが好きで、自分のカルタを作りたくなっちゃったのかな。青木さん、字も上手いですよね。達筆すぎて私には読めないけど、形なんかがとても面白い」

中には「漫画風顔」と題された以下のような作品も。

《自画像》1904年《自画像》1904年

「力の抜けた感じで面白い! どう考えても、思いついたままに描いてるもんね。かと思えば、写実的なスケッチもある。画家の人って、そのときごとにモードが変わるんでしょうね。その日の気分によって『このタッチで描きたい』って思ったり」

そのあたりは、絵画とダンスでジャンルは違えど共感する部分があるそうです。「日によって変わるとまではいかないですが、一年経てば身体が変わっちゃいますよね。だから昔の作品で『いまは踊りたい気分じゃないなぁ』っていうことは結構ありますね」

絵画の色彩から、ダンス創作のインスピレーションを受けることもあるという康本さん。ブリヂストン美術館では、作品にあわせて壁の色が変化していきます。朱色の部屋から水色の部屋にダイブ!

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4. 描かれた神話の世界

青木繁は、『古事記』に登場する神話などをモチーフとした作品を多く描いています。『大穴牟知命』と題したこの作品も、『古事記』がモチーフとなっているそう。

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《大穴牟知命》1905年、石橋財団石橋美術館《大穴牟知命》1905年、石橋財団石橋美術館

思わず、倒れている男の人を助けようと、ポーズを取ってくれる康本さん。「これ、かなりのけぞってますね。悶えてる感じがすごく出てる。でも、そんな大変なときに、右の人はこっちを見てますよ(笑)。女の人って、どんなときでも見られていることを意識するんですよね。『救わなきゃ』と思ってるんだけど、『救う自分を美しく見られたい』と思っているんじゃないかな?」

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《わだつみのいろこの宮》1907年、石橋財団石橋美術館《わだつみのいろこの宮》1907年、石橋財団石橋美術館

今回展示された作品の中でもとびきり大作なのが、『わだつみのいろこの宮』です。『古事記』や『日本書紀』に登場する「海幸彦と山幸彦」のエピソードが元になったこの作品。井戸のほとりで山幸彦と豊玉毘売が出会い、二人は恋に落ちる――そんな甘酸っぱい場面です。「彼、ちょっと中性的な顔立ちをしてますね。あんまり俗っぽくないというか…。でも、日本の神話なのに、あんまり日本っぽくない感じもします」

青木は自信を持って、この作品を東京勧業博覧会に出展しました。しかし、結果は三等末席。憤慨した青木は、美術雑誌に抗議を書き連ねています。その原稿を見た康本さん、「よっぽど自信があったんですね。でなきゃこんなこと書けないでしょう」

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青木繁の作品には未完のものも多くありますが、『わだつみのいろこの宮』は完成度の高い作品でした。それも青木が自信を持った一つの理由だったのかもしれません。「完成させないっていうと、描いてる途中で飽きちゃうのかな? 絵は一度描いちゃったら取り返しがつかないし、いつまでも手を加えられるから、どこでやめるのかって難しいですよね。ダンスの振付なら、いくらでも修正がきくから、何十回も作り替えます。でも、そうすると考え過ぎちゃって、『やっぱり最初の振り付けがよかった』っていうことがよくありますね」

橋本倫史

1982年東広島市生まれ。ライター。07年、リトルマガジン『HB』創刊、編集発行人を務める。『en-taxi』(扶桑社)、『マンスリーよしもとPLUS』(ヨシモトブックス)等に寄稿。向井秀徳初の著書『厚岸のおかず』(イースト・プレス)制作にも携わる。



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