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野宮真貴&湯山玲子と行く『ザ・ビューティフル』展

野宮真貴&湯山玲子と行く『ザ・ビューティフル』展

内田伸一
撮影:豊島望
2014/03/12
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「beautiful」とは、ふつう「美しき○○」と続く形容詞。しかしあえて「The Beautiful」とだけ綴るとき、そこにあるのは、しきたりや既成概念にとらわれることのない美、唯(ただ)、美しくあること——。

19世紀半ばのイギリスで興った芸術動向「唯美主義」は、古い慣習から解放された新たな美を切望する芸術家たちによって始まりました。やがてこの動きは、インテリアなど日常のデザインにまで広がります。その全体像を紹介する日本初の展覧会が『ザ・ビューティフル―英国の唯美主義 1860-1900』。一方、当時から約1世紀後の東京にて、やはり独自の美意識でカルチャーシーンを彩ってきたのが、PIZZICATO FIVEを経てソロで活躍中の野宮真貴さんと、著述家・ディレクターの湯山玲子さん。今回は盟友同士のお二人と同展を体験しながら、展覧会の魅力を探ります。

「なに? 野宮さんコレお買い上げ?(笑)」(湯山)

2月のある晴れた日(PIZZICATO FIVEの名曲を思わせる“It's a beautiful day”!)、野宮さんと湯山さんが『ザ・ビューティフル』展の会場である、東京・丸の内の三菱一号館美術館を訪れました。実は今回、同展関連のトーク&ライブでもご共演のお二人。過去にも野宮さんのリサイタル『Beautiful people』を湯山さんがプロデュースするなど、時代を超えて美についての新鮮な視点をくれそうなご両人です。

そして、さっそく展示会場へ。その序章は意外にも絵画ではなく、ハート模様の尾を見事に広げた孔雀が描かれた大皿(ウィリアム・ド・モーガン作)と、大きなひまわりをかたどった金属細工の柵の一部(トマス・ジェキル作)。唯美主義において、孔雀は「美に対する誇り」、ひまわりは「男性的な美」を示すアイコンだとか。ちなみに女性的な美のアイコンはユリで、この3要素はしばしば登場します。

野宮真貴
野宮真貴

湯山:今だと孔雀はクイア系(異性愛以外の性アイデンティティーを持つ人々)の象徴という印象もある。そんなことも思いながら、あらためて時代特有の美のとらえ方にふれるのは面白いね。

と、湯山さんが孔雀を見つめれば、野宮さんはひまわりを前に一言。

野宮:素敵ですね。実は今、家のリフォームを考えていて……。

湯山:なに? 野宮さんコレお買い上げ?(笑)

残念ながら、いずれも英国・ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の所蔵です! 本展は同館収蔵品を軸に、唯美主義の絵画、家具、工芸、宝飾品、写真など約140点を鑑賞できる貴重な機会となっています。

ウィリアム・ド・モーガン『大皿』
ウィリアム・ド・モーガン『大皿』

『ロンドン万博』で露呈した自国デザインの停滞に対し、美の改革・改善を志した人々

19世紀半ばのイギリスに唯美主義が登場した背景には、当時主流であった芸術やデザインに対する反発心や、産業製品の粗悪なデザインへの危機感があったようです。美術界にあふれ返る感傷的、逸話的なモチーフの表現。また1851年の『第一回ロンドン万博』で露呈した自国デザインの質の悪さに対し、改良の必要性を唱えた人々がいました。

たとえば、ギリシア神話に着想し、浅浮彫や金銀箔を施したエドワード・バーン=ジョーンズの作品『ヘスペリデスの園』。ウィリアム・モリスによる美しい花柄の壁紙『ひなぎく』。モリスは生活と芸術の一致を提唱した「アーツ・アンド・クラフツ運動」の祖として知られ、バーン=ジョーンズらを起用した美術職人集団「モリス・マーシャル・フォークナー商会」も設立します。そこで目指したのは、日常生活にも美を導入することでした。

エドワード・バーン=ジョーンズ『ヘスペリデスの園』
エドワード・バーン=ジョーンズ『ヘスペリデスの園』

また彼らの友人・師であり、「ラファエル前派」(同時代のイギリスで活動した美術家・批評家から成るグループ)から、唯美主義的な表現に進むダンテ・ゲイブリエル・ロセッティのような存在も。彼の描く赤毛の女性像『愛の杯』からは、可憐で殊勝な英国淑女の理想像とは一味違う趣きが感じられます。

野宮:他にもこのジョージ・フレデリック・ワッツの裸婦像『孔雀の羽を手にする習作』などは、リアルで艶かしいのが印象的ですね。上半身だけを切り取った構図も、当時の絵画としては少し独特な感じがします。

湯山:旧来の美の規範、美術史の流れや決まりごとにとらわれない新しい価値観で描いていたと思いますが、今の私たちから見ると、グラビアっぽい要素も感じられますよね。カッコよく、グッとくること第一主義というね。

『ザ・ビューティフル』展会場風景

彼らのあくなき美への探究心は、遠い異国文化にも敏感でした。19世紀後半は、日本開国に伴い貿易も盛んになる時期。唯美主義の芸術家たちも浮世絵や日本の家具・陶磁器に魅せられ、自らの発想の源としました。ロセッティは染付などに関心を寄せたとか。しかしそこは己の美意識を信奉する彼ら、一筋縄ではいきません。

湯山:むぅ……、この銀製ティーポット(クリストファー・ドレッサー作)はヤバいですね。『ニューヨーク東8番街の奇跡』のUFOかと思った(笑)。急須の面影はあるけどさ、ゆるキャラに通じるへんてこりん。

野宮:ポットの脚が、「見得」を切る歌舞伎役者にも見えるような……。

湯山:唯美主義のジャポニスム。彼らが魅了されたパーツがどういうところなのかがわかって面白いです。

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イベント情報

『ザ・ビューティフル―英国の唯美主義1860-1900』

2014年1月30日(木)~5月6日(火)
会場:東京都 丸の内 三菱一号館美術館
時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜日は20:00まで)
休館日:月曜(4月28日と5月5日は18:00まで開館)
料金:当日 大人1,600円 高校生・大学生1,000円 小中学生500円

プロフィール

野宮真貴(のみや まき)

1990年代PIZZICATO FIVEのボーカリストとして国内外で活躍。現在はソロシンガーとして、音楽、ファッション、エッセイなど幅広く活動。2012年デビュー30周年記念アルバム『30−Greatest Self Covers & More!!!−』をリリース。2013年11月には約1年ぶりとなるワンマンLIVE『野宮真貴渋谷系を歌う』を開催。2014年も積極的にLIVE活動を展開予定。公式ウェブサイトでは動画やブログもあり、新しい情報も随時更新している。

湯山玲子(ゆやま れいこ)

著述家。文化全般を独特の筆致で横断するテキストにファンが多い。20代のアネキャンから、ギンザ、50代のハーズまで、全世代の女性誌にコラムを連載、寄稿している。著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(ワニブックス)、『ビッチの触り方』(ワニブックス)、上野千鶴子との対談『快楽上等! 3.11以降を生きる』(幻冬舎)、『ベルばら手帖』(マガジンハウス)等。月1回のペースで、爆音でクラシックを聴く、『爆クラ』イベントを開催中。 (有)ホウ71取締役。日本大学藝術学部文藝学科非常勤講師。

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