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スプツニ子!や水江未来らが挑戦 驚きのアイデアを実現した5作品

スプツニ子!や水江未来らが挑戦 驚きのアイデアを実現した5作品

島貫泰介
2014/03/24

毎年、六本木の国立新美術館を主会場に開催される『文化庁メディア芸術祭受賞作品展』。先端技術を用いたメディアアートや、SNSを活用したインタラクティブ広告、マンガ、アニメーションなど、最先端の表現を実際に体験・鑑賞することができる同展には、家族連れやカップルなど大勢の観客が集まり、毎回盛況を博している。

しかし一方で、同展で展示されるメディア芸術を手掛けるクリエイターたちが、普段どのようなテーマや問題意識を持って創作に取り組んでいるのかというのは、各分野の専門家や熱心なファンではない限り、一般の観客にはなかなか見えてこないところだ。

そうした『メディア芸術祭』に出展されるような作品の裏側を知ることができたのが、『メディア芸術クリエイター育成支援事業』の報告会として実施された成果プレゼンテーションである。先日の『第17回文化庁メディア芸術祭』開催中には、通算3度目となる『クリエイター支援事業』の成果プレゼンテーションが行われた。多くの観客が見守るなか、5組のクリエイターと、4名のアドバイザーが出席して行われたその模様を本記事ではレポートする。将来の活躍が期待されるクリエイターの最新プロジェクトを通じて、これからのアートやクリエイティビティの行き先を知ることができるかもしれない。

男子の夢とこだわりをメディア芸術で実現した作家の新作は、リズミカルに踊る正六面体『BOX-RUN』

『文化庁メディア芸術祭』入選経験のある若手クリエイターの創作活動をサポートする目的で始まったこのプロジェクトでは、応募された多数のプランから数組を選出し、制作のバックアップを行っている。1組の若手クリエイターに対し、国内外で活躍する1~2名のベテランクリエイターがアドバイザーとなり、話し合いを重ねながら、中長期的に作品を形作っていくプロセスは、ベテランから若手へと技術や思想を伝達していく現代の師弟制度とも言えるだろう。

5組のクリエイターのなかで、最初に登壇したのは、夢に溢れたデジタルガジェットを作る勝本雄一朗(アドバイザーは、ゲームクリエイターの岩谷徹と、マンガ家のタナカカツキ)。『第10回文化庁メディア芸術祭』エンターテインメント部門奨励賞を受賞した勝本の『雨刀』は、男子だったら誰もが懐かしく感じる「なりきり遊び」をテーマにしている。

勝本雄一朗『雨刀』
勝本雄一朗『雨刀』

動きを感知して音を発する特製のデバイスを、どこにでもあるビニール傘に装着。そして傘を思いっきり振る! すると、まるで時代劇のような「ズバッ!」「シャキーン!」という効果音が周囲に響く。小学生の頃、雨上がりの通学路で友だちと遊んだチャンバラごっこを音響面で強化し、大真面目にバージョンアップさせたのが『雨刀』である。かつて『受賞作品展』で同作が展示された際には、いい歳をした大人たちが真剣な顔で傘を構え、見栄をきり、殺陣に興じるナイスすぎる風景を何度も見ることができた。勝本は、子どものような発想を、先端技術の力を借りて現実にするクリエイターなのである。

そんな彼が今回の支援事業に提案したのが新作『BOX RUN』だ。もとは『踊る箱(仮)』というタイトルだった同作は、サイコロを彷彿とさせる正六面体を、自由自在に動かすことを目的としている(佐藤雅彦が原案をつとめた大ヒットテレビゲーム『I.Q』を想像するといいかもしれない)。

勝本雄一朗『BOX RUN』
勝本雄一朗『BOX RUN』

勝本:円や丸は自然に転がる構造です。ですが重力に抗うような、ヘンな動きをするもの作りたいと思いました。そこで立方体を回転させてみることを考えたわけです。

開発スタート当初、違和感のない立方体の回転の実現が課題になったという。同時期にマサチューセッツ工科大学(MIT)などでも、同様の研究が進んでいたそうだが、フライホイール(回転によって移動する力を得る技術)を用いたそれらは「ドスンっ!」と重さを感じるような動きにはほど遠いものだった。

そこで勝本は、作品内部に駆動するハンマーを備える方式(2013年にイスラエルのアーティストが発表)を採用し、独自の改良を施した。最新モデルでは、素早くリズミカルな動きを実現し、さらに対物センサーを使うことで、複数の立方体がまさに「踊る」ような挙動を実現している。さらなるバージョンアップを目指して、本作は改良中である。

勝本雄一朗のプレゼンテーション
勝本雄一朗のプレゼンテーション

閉塞感に満ちた時代で生きることを肯定し、生の喜びを再発見する短編アニメーション『大丈夫だよ』

次に登場した鈴木沙織は幻想的なコマ撮りアニメーションを手がけるクリエイターで、『感傷の沈殿』は『第16回文化庁メディア芸術祭』アニメーション部門審査委員会推薦作品に選ばれた(アドバイザーは、アニメーションディレクターの伊藤有壱と、岩谷徹)。

鈴木沙織『感傷の沈殿』
鈴木沙織『感傷の沈殿』

今回のプレゼンテーションでは鈴木にとって3本目となる短編アニメーション『大丈夫だよ』の進捗状況が報告された。登場するパペットや、作中で重要な役割を果たす波や草原の舞台美術(複数枚並べたガラスによって、奥行き感のある世界を作っている)の制作はほぼ終了し、これからいよいよ本格的な撮影がスタートするという。

これまで個人ベースで制作に力を注いできた鈴木だが、今回初めてスタッフと協働するグループワークに挑んだ。アートアニメーションというと、インディビジュアルなビジョンを実現するために1人きりでの作業になりがちなものだ。それゆえに製作期間の長期化や資金調達の困難さ、世界観のある種の狭さが課題となる。今回、多くのスタッフと関わることで、鈴木は自分の制作における新たな視座を獲得したという。

鈴木沙織『大丈夫だよ』
鈴木沙織『大丈夫だよ』

特にアドバイザーである伊藤有壱から紹介された音響ディレクター(『ベルリン国際映画祭』短編部門銀熊賞を受賞した和田淳『グレートラビット』に参加している人物)へのヒアリングは、プロフェッショナルの仕事を知るうえで、とても有意義な経験だったそうだ。音によって空間を構築していく映像制作のノウハウは、本作にもフィードバックされるだろう。

鈴木:消費される作品でなく、こちらから鑑賞者に迫っていく作品にするためには、自分のなかにもともとある問題意識を核にするべきだという意識で作っています。同時に、観た人が楽しく思えるようなイメージにすることも大事にしました。

『大丈夫だよ』のテーマは、閉塞感に満ちた時代で生きることを肯定し、生の喜びを再発見することだ。今年の4月に撮影を終え、その後、編集作業へと進むという。

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