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意外と身近にある みんなのメディア芸術 Vol.4『魔法少女まどか☆マギカ』新房昭之(監督)×宇野常寛(批評家)対談

意外と身近にある みんなのメディア芸術 Vol.4『魔法少女まどか☆マギカ』新房昭之(監督)×宇野常寛(批評家)対談

阿部美香
撮影:小林宏彰

先日、受賞作品が発表された『第15回文化庁メディア芸術祭』。毎回、斬新な作品が受賞を果たすアニメーション部門で、今年はアニメ業界のみならず幅広い層にアピールし、カルチャーシーンに衝撃的なムーブメントを起こした『魔法少女まどか☆マギカ』が大賞を獲得した。本作は、平凡な中学生である鹿目まどかが「魔女の結界」に迷い込み、さまざまな運命を背負った「魔法少女」たちや、可愛らしい動物の姿で「僕と契約して、魔法少女になってほしい」と告げる謎の生命体・キュゥべえらと出会い、さまざまな葛藤をしつつも奇跡を実現する物語だ。全12話のストーリーは毎話、息もつかせぬ意外性あふれる展開で、アニメーション作品としての意欲的な表現、高い批評性を評価されての大賞受賞となった。そして今回、監督である新房昭之氏と、批評誌『PLANETS』編集長で『魔法少女まどか☆マギカ』に造詣の深い宇野常寛氏との対談が実現。両氏の対話を通じて浮かび上がった、アニメ業界を超えて広く波及した『魔法少女まどか☆マギカ』という作品の深い魅力とはなんだったのか? 今後のアニメーション表現について考えるうえでも必読の対談をお送りする。

いまのアニメ界で、最もユニークなことができるのは深夜枠(宇野)

―まずは新房監督、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞受賞、おめでとうございます。受賞のご感想をいただけますか?

新房:ありがたいことですね。とはいえ、結局はスタッフが一丸となって作ったものですから、僕の名前ではありますが、身内の誰かが賞を貰ったような気がしています。これが漫画家さんや作家さんだったら個人の受賞という気持ちになれるのでしょうが、テレビアニメーション制作って1人では何もできないですから。

―『魔法少女まどか☆マギカ』は、本放送だけでなくパッケージの売り上げもこれまでの記録を塗り替えるような快挙を成し遂げました。受賞されるのも当然かと思われましたが。

新房:いえ、どの賞も意識することはないんです。ただ、評価していただけるのはとても嬉しい。それがすなわち、スタッフに対する高い評価にもなるので、ありがたいですね。

宇野:僕は今回『魔法少女まどか☆マギカ』が受賞したことは、文化庁メディア芸術祭にとっても画期的なことだと思うんです。これまでのアニメーション部門は、個人制作のアート風の作品であったり、ファミリー向けの健全な大作が選ばれることが多かった。市場とは異なるロジックで優れた作品を抽出する役目を背負っていたことは間違いない反面、少し詳しい人なら受賞する作品が想像できてしまうようになっていた。そこで今回、深夜アニメの、それもオリジナル作品が受賞したことの意味は大きいと思うんです。本作は、先ほど新房監督がおっしゃったように、キャラクター原案を漫画家の蒼樹うめさん、シリーズ構成と脚本をゲームシナリオ出身の虚淵玄さんが担当されるなど、各界の才能が結集して生まれた作品です。つまり、アニメに限らず現代のオタク系カルチャーの才能がジャンルを超えて結集して生まれた作品が受賞したわけです。この豊饒な空間を公の賞が認めたことの意味はとても大きい。

宇野常寛
宇野常寛

新房:確かに、深夜アニメは作家1人ではなく、みんなで作る作品が多いです。その代表的な存在として『魔法少女まどか☆マギカ』を捉えていただけるのは嬉しいことですね。

―今回の贈賞理由には、原作なしのオリジナル作品であることへの高い評価がありますね。

新房:それについても意識はしていませんでした。オリジナルと原作物で力の入れ具合が違うということは全くないですから。どちらも一生懸命作っていますし。

宇野:深夜アニメは一般的に、極度にマニアックな視聴者層を対象に制作されていると言われます。そのことで、内容も偏りがちだ、と。しかし逆にこの『魔法少女まどか☆マギカ』のようなユニークなオリジナル企画が成立するとしたら、それは深夜アニメしかないようにも思えるんです。

新房:自由だと言っても、根底には「売れるものを作ろう」という想いはありますから、「売れるものを自由に作る」といった感覚がありますね。ただ『魔法少女まどか☆マギカ』に関していえば、アニプレックスのプロデューサーである岩上敦宏さんが揃えたメインスタッフの座組が出発点になっているので、その点ちょっと特殊な成り立ちになっています。

『魔法少女まどか☆マギカ』鹿目まどか ©Magica Quartet / Aniplex・Madoka Partners・MBS
『魔法少女まどか☆マギカ』鹿目まどか
©Magica Quartet / Aniplex・Madoka Partners・MBS

宇野:今の日本では純文学やアートのほうが、その在り方が何パターンかに固定化されてしまっていて、商業主義的なフィールドのほうに異質なもの、多様なものがあふれているようにも思えます。まさに『魔法少女まどか☆マギカ』は、商業主義からこそ生まれた、多様さの象徴だと思います。

新房:そうかも知れないですね。でも作品を作っている時は、話題になってホッとしていたというのが正直な感想で(苦笑)。オリジナルで魔法少女ものをやるということも、これまで組んでいなかったスタッフを揃えることで話題性を作ることができたのも、岩上プロデューサーの仕掛けですよ。それに尽きますね。現場では、チームとしていかにコミュニケーションを取っていくかに注力していましたから、他のことにはあまり目が向いてませんでしたね。

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イベント情報

『第15回文化庁メディア芸術祭』受賞作品展

2012年2月22日(水)〜3月4日(日)※2月28日(火)休館
会場:東京都 国立新美術館

プロフィール

新房昭之

アニメーション監督、演出家。近年ではアニメ制作会社のシャフトを拠点とし、1クールで監督作品が2本放送されることがあるなど多作で知られる。代表作に『化物語』『さよなら絶望先生』『ひだまりスケッチ』『荒川アンダー・ザ・ブリッジ』など。

宇野常寛

1978年生まれ。批評家。企画ユニット「第二次惑星開発委員会」主宰。批評誌『PLANETS』編集長。著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)、『批評のジェノサイズ』(共著・サイゾー)など。2011年7月、3年ぶりとなる単著『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)を刊行した。

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