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第6回「タイプフェイスデザイナー」という職業
タイプフェイスデザインというビジネス

―タイプフェイスデザイナーとして生計を立てたいと思った場合、どのような道があるのでしょうか?

鈴木:いくつかの方法があると思います。一つは、メーカーに勤務すること。2つ目は、クライアントに最初から予算を全て出してもらって作るという方法。3つ目は、初期費用をもらって作り、その後は販売された何割かをロイヤリティとして頂くという形。
僕がAXISフォントでやったのは、3つ目に近い形式です。初期コストを自分で負担して製作し、完成後に売り上げからロイヤリティを頂くという形です。それを実現するには、ある程度経済的な体力が求められます。

竹下:最近だと、1文字幾らという形での「買い取り」も多くなっていると思います。その場合、そのフォントがいくら売れてもロイヤリティは入ってきません。

―そうしたお仕事を頂けるようになるまでには、やはり相当な実績を積む必要があるのでしょうか?

竹下竹下:実績は必要になると思いますね。ですから、モリサワの『タイプフェイスコンテスト』がその登竜門になっていたわけです。

鈴木:最近では、ネット上で自分が作った 書体を公開していたりもしますよね。

竹下:確かにネットで人に見せることはできるようになりましたね。門戸はすごく開けてきました。

鈴木:でも、それだけで仕事がくるわけではありませんから、自分でチャンスを見つけて掴んでいかないと難しいでしょうね。

―タイプフェイスデザイナーであると同時に、ビジネンマンである必要があるわけですね。「フリーデザイナー」と同じですもんね。

鈴木:そうですね。僕がアドビにいたときは、会議はすくないし、電話はないし、メールは書かない、サイトは見ない、朝から晩までずっとフォントを作っていました。なので、辞めたら分からないことだらけです。プレゼンってなに? って(笑)。AXISフォントの最初は新人の飛び込み営業みたいなものですよ。アートディレクターの宮崎さんと大田さんが気に入ってくださったから実現できましたけど。

竹下:企画したフォントが製品化されたというのは、鈴木さんの作ったものが時代にあっていたということですよね。今生きている人が作り出すものって、今必要とされているものだろうし、それを求めている人は必ずいると思うんです。その見極めが、タイプフェイスデザイナーにはとても重要な能力だと思います。

鈴木:そうですね。いま作り始めたとしても完成するのは3年後ですから(笑)。3年後に使われていることがイメージ出来ないものを、3年かけて作ることはできないですよね。想像力と意志の強さが問われる仕事でもあると思います。

―確かに、求めてくれる人がいないと時間がかかる仕事はできませんね。

竹下鈴木:これから手がけようと思っている書体が、近い将来に良いかたちで使われている場面を想像できるかどうかが、僕にとってはとても大事なことなんです。

―ビジネスだけじゃなくて、「やりがいがあるかどうか」ということですね。

鈴木:だって、AXISフォントを作るのに10年間、30代の全てをかけているんですから(笑)。僕が一生のうちに作れるフォントは、あと3つか4つくらいですよ。経済的に立ち行かなくなってしまっては後が続きませんが、新しい書体に着手するときに、ビジネス的な視点だけではしんどいですよね。

―おっしゃる通りです…。

鈴木:10年かけるのが良いとは思わないですし、もっとスピーディーに作れるようなツールやワークフローの開発というのも必要で、それもトライしている部分ではあるんですけどね。

竹下:そこは、我々フォントに携わる人間みんなにとって、大きな課題でもありますよね。

鈴木:そうですね。それによって、販売価格も変えていけるかもしれませんし。削っちゃいけない部分もありますが、削れる部分もあるはずです。

―今日はタイプフェイスデザイナーというお仕事の醍醐味を沢山教えて頂きありがとうございました。それでは最後に、今後の展望を教えてください。

竹下:新しい書体のアイデアがあるので、それを作ると思います。5年後というより、「今の時代」にニーズのある書体だと思っているので、本当はできるだけ早く出したくて焦っています(笑)。だからといってすぐに出来るわけでもないのですが。でも、絶対作ってるでしょうね。

鈴木:僕もいま2年がかりで新しい書体を作っていて、これをまずは完成させたいです。これは大きな書体ファミリーになりそうですね。その後は、一度文字を作らない環境に・・・

一同:ええーっ!?

鈴木:いやいや、何もインドの山奥に行こうなんて思ってるわけじゃありませんよ(笑)。タイプデザインという仕事を、客観的な立場から見てみたいと思っているんです。小塚さんから初めて名刺をいただいたとき「タイプデザイナー」ではなく、「タイプディレクター」と書いてあって、最初はまるで意味が分からなかったんです。でも、今はその意味と意義が分かりつつあります。新しい書体、必要な書体、魅力的な書体を提案したり判断したりする人間が足りないのではないかということです。タイプデザインを志す人たちにアドバイスを送ってあげる人も必要だと思いますし。今はディレクションとデザインを両輪でやっているんですけど、ディレクションに徹すると明確に決めないと、書体制作ばかりに傾いてしまいそうなので(笑)。

次回は?

これまでは和文フォントの世界を紹介してきた本連載。次回は、和文フォントを上回るフォント数がリリースされている欧文フォントの世界に迫ります。

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