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New Orderの復活作に見る80年代レイヴカルチャーとEDMの関係

New Orderの復活作に見る80年代レイヴカルチャーとEDMの関係

金子厚武
2015/09/24

ロックとダンスミュージックを融合させた先駆者として、未だ数多くのフォロワーを生み出し続けているNew Orderが、実に10年半ぶりとなる復活作『Music Complete』を発表する。「ダンスレコードを作ろう!」を合言葉に制作されたという本作には、イギー・ポップ、THE CHEMICAL BROTHERSのトム・ローランズ、THE KILLERSのブランドン・フラワーズといった豪華なゲスト陣が参加し、1980年代を今にアップデートしたようなアッパーなダンストラックが数多く収録された、手応え十分の仕上がりとなっている。では、なぜNew Orderは今再びダンスレコードへと向かったのか。現代のEDMカルチャーとの接点から、その理由を紐解いてみた。

世界中のダンスアクトに影響を与え続けている、1980年代レイヴカルチャーの申し子

僕らはなぜいつの時代も「ダンス」に捉われ続けるのだろうか? バンドシーンを覗いてみれば、フェスで盛り上がるシンプルな4つ打ちに対して侃々諤々の議論が交わされ、一方クラブシーンに目を移せば、こちらもEDMの世界的な盛り上がりに対して、肯定派と否定派が真っ二つに分かれて意見をぶつけ合っている。いずれにしろ、僕らはいつまで経っても「ダンス」に恋い焦がれているに違いない。

New Order が実に10年半ぶりとなるオリジナルアルバム『Music Complete』を完成させた。今から35年前、前身バンドであるJoy Divisionのカリスマチックなフロントマン、イアン・カーティスの自殺によって、残されたメンバーが始めたこのバンドは、1982年に後のセカンド・サマー・オブ・ラブの拠点となる地元マンチェスターのクラブ「ハシエンダ」のオープンに資金援助をすると、ロックとダンスを見事に融合させたセカンドアルバム『POWER, CORRUPTION & LIES / 権力の美学』を83年に発表し、その後マンチェスターの顔役として君臨することになる。代表曲“Blue Monday”で味わうことのできる高揚感とメランコリーの同居は、その後も世界中のダンスアクトに影響を与え続けている。


90年代には中心人物のバーニーことバーナード・サムナーが元THE SMITHSのジョニー・マーと共にELECTRONICを結成するなど、メンバーそれぞれがソロを中心に活動するも、2001年に復活作『Get Ready』を発表し、2005年の『Waiting For The Soren's Call』と合わせ、よりバンドサウンド的な作風を展開。その後は事実上の解散状態に突入し、バーニーは2007年にNew Orderのメンバーでもあるフィル・カニンガムらと共にBAD LIEUTENANTを結成するなどしたものの、2011年に中心人物の一人であったピーター・フック抜きでの活動再開を発表。バーニーとフィル、初期からのメンバーであるスティーヴン・モリスに加え、活動を休んでいたジリアン・ギルバートが復帰し、さらにはBAD LIEUTENANTのレコーディングに参加していたトム・チャップマンを迎え、5人編成で待望の新作を発表することとなった。

New Order 撮影:Nick Wilson
New Order 撮影:Nick Wilson

「こんなNew Orderが聴きたかった!」と誰もが快哉を叫ぶであろう、大充実の復活作

『Music Complete』の最大の特徴は、80年代のバンド最盛期に回帰したような、ダンスレコードだということ。フィルが「その場を取り巻く雰囲気は『ダンスレコードを作ろう!』ということだった。その場で語られたのは本当にそれだけだったんだ」と語っているように、彼らは再び「ダンス」と真正面から向き合い、見事にそれを2010年代仕様にアップデートして見せたのだ。

実際にアルバムを聴いてみると、オープニングの“Restless”こそ、ややメランコリックなバンド路線で、こちらの期待に肩透かしを食らわせるものの、THE CHEMICAL BROTHERSのトム・ローランズがプロデュースした2曲目の“Singularity”は、アッパーなダンスビートが高揚感を誘う一曲で、いかにもNew Orderらしいシーケンスも印象的。前半はそのままダンサブルな曲が続くが、中盤の“Stray Dog”にはイギー・ポップがリーディングで参加し、深みのある声を披露しているのも聴きどころ。ちなみに、バーニーがイアン・カーティスと初めて会った日に一緒に聴いたレコードが、イギー・ポップの『Idiot』だったというエピソードは、イギーがNew Orderにとっていかに重要な人物であるかを表すのに十分であろう。


中盤では00年代に培ったバンドサウンドを聴かせ、懐の広さを示すと、こちらもトムが参加した“Unlearn This Hatred”から再びアッパーなダンストラックが続き、ラストはTHE KILLERSのブランドン・ブラワーズを迎えた強烈にキャッチーな“Superheated”でアルバムは華々しく幕を閉じる。「こんなNew Orderが聴きたかった!」と誰もが快哉を叫ぶであろう、大充実の復活作だと言っていいのではないだろうか。

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リリース情報

New Order<br>
『Music Complete』日本盤(CD)

2015年9月23日(水)発売
価格:2,484円(税込)
TRCP-200

1. Restless
2. Singularity
3. Plastic
4. Tutti Frutti
5. People On The High Line
6. Stray Dog
7. Academic
8. Nothing But A Fool
9. Unlearn This Hatred
10. The Game
11. Superheated
12. Restless – Extended Bonus Mix(ボーナストラック)

プロフィール

New Order(にゅーおーだー)

マンチェスター出身。前身のバンドは、ジョイ・ディヴィジョン。’80年、イアン・カーティスの自殺によりジョイ・ディヴィジョンは活動停止を余儀なくされ、バーナード・サムナー、ピーター・フック、スティーヴン・モリスの残された3人のメンバーでNew Orderとして活動を開始。デビュー・アルバム『ムーヴメント』(‘81年)をリリース。’85年にリリースされたシングル「ブルー・マンデー」は大ヒットを記録、12”シングルとして世界で最も売れた作品となった。所属レーベルのファクトリー・レコードが地元マンチェスターに設立したクラブ、ハシエンダ発のダンス・カルチャーは、マッド・チェスター、セカンド・サマー・オブ・ラヴといった世界を牽引した音楽シーンを生み出した。2007年、オリジナル・メンバーのピーター・フック(b)がバンドを脱退。2014年、MUTE移籍が発表され、2015年9月23日『ミュージック・コンプリート』をリリース。

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