jizue CROSSING project

ADAM at、jizue、シュローダーが共演『ビクタージャズ祭り』レポ

「ピアノジャズインスト」を代表する3組の共演

4月11日に、ビクター所属の3バンド、jizue、Schroeder-Headz、ADAM atによるスプリットアルバム『COLOURS』がタワーレコードおよび配信限定で発売。これを記念した『ビクタージャズ祭り「COLOURS」RELEASE LIVE』が4会場で行われ、東京は5月7日に代官山UNITで開催された。「ジャズ」と「インスト」を共通点としながらも、三者三様のカラフルなステージは、ジャズが現代におけるクロスオーバーを体現していることを改めて証明するかのようだった。

ADAM at × jizue × Schroeder-Headz『COLOURS』ジャケット
ADAM at × jizue × Schroeder-Headz『COLOURS』ジャケット(TOWER RECORDS ONLINEで見る

ADAM at × jizue × Schroeder-Headz“COLOURS”(Spotifyを開く

「人の数だけジャズがある」を体現するADAM at

トップバッターのADAM atは軽妙なMCを挟みつつ、最初からガンガンにフロアを盛り上げる。踊りやすさを重視した4つ打ち基調の楽曲に乗せ、「踊れ―!」と声を張り上げると、右手を振り上げたオーディエンスがピョンピョンと飛び跳ねる様子は、ロックフェスそのもの。ピアノを軸としながらも、JABBERLOOPやPOLYPLUSで活動する永田雄樹(Ba)と、TRI4THの伊藤隆郎(Dr)という、クラブとライブハウスを横断する手練れのリズム隊を迎え、ササキヒロシと橋本孝太のツインギター擁する編成自体もロックバンド的である。

ADAM at

ADAM at
ADAM at

「ジャズらしい曲を」という丁寧な前振りから披露された新作『サイコブレイク』のタイトルトラックは、ヘドバン推奨のラウドナンバーであり、親の影響でジャズを始めるも、途中でメタルにハマり、SOIL&“PIMP”SESSIONSでジャズに戻ってきたというADAM atにとっては真骨頂のような1曲。「人の数だけジャズがある」というADAM atの台詞にも、説得力がある。ラストは「うちとれ!」の掛け声も楽しい人気曲“六三四”から“ToT”でエンディングを迎え、フロアは笑顔で包まれていた。

「うちとれ!」左から:橋本孝太(Gt)、永田雄樹(Ba)、伊藤隆郎(Dr)、ADAM at、ササキヒロシ(Gt)
「うちとれ!」左から:橋本孝太(Gt)、永田雄樹(Ba)、伊藤隆郎(Dr)、ADAM at、ササキヒロシ(Gt)

Schroeder-Headzは、ピアノの生音とデジタル音などの美しき融合で魅了

渡辺シュンスケのソロプロジェクトであるSchroeder-Headzは、トリオ編成にこだわりつつも、同期を用いてエレクトロニックな質感の楽曲をプレイしていく。渡辺は華麗にピアノを演奏しつつ、リアルタイムでエフェクトをかけ、ベースの玉木正太郎は曲ごとにエレキベース、ウッドベース、シンセベースを巧みに使い分けて、ドラムの鈴木浩之は打ち込みのリズムと生のビートを混ぜ合わせる。確かなプレイヤビリティーの上で、生演奏と様々なサウンドが交錯していく展開は非常にスリリングだ。

Schroeder-Headz

Schroeder-Headz
Schroeder-Headz

jizueの粉川心(Dr)も参加している最新アルバム『HALSHURA』からは、高速のブレイクビーツが特徴の“n°33”や、渡辺の弾く流麗なメロディーラインが美しいタイトルトラックが披露され、ラストはエレベとシンベを使い分けるダンストラック“Surface”。アウトロで徐々にテンポが加速していき、エネルギッシュに演奏を終えると、フロアは大きな拍手に包まれた。

Schroeder-Headz

「トランス」に近い感覚を与えるライブパフォーマンスを極めたjizue

トリを務めたのは京都発のjizue。この日唯一の固定メンバーによる「バンド」であり、常々「この4人で音楽をやることに意味がある」と語ってきた十年選手だけあって、グルーヴの仕上がり具合は断トツだ。もともと「ジャムバンド」や「ポストロック」という括りで語られることが多く、「ジャズ」はあくまで一要素だったわけだが、巧みにソロを回しつつ、1曲の中でジワジワと高まっていく演奏は、ほぼトランスに近い感覚を覚えるものであった。

jizue

jizue
jizue

昨年発表のメジャーデビュー作『grassroots』収録の“grass”に始まり、ラテンジャズな“rosso”などを挟みつつ、中盤ではちょうどこの日ミックスが終わったという新作『ROOM』から、「今までで一番音数が少なく、静かで優しい」という新曲“green lake”を披露。『grassroots』リリース時のインタビュー(jizue、結成11年目にしてメジャーデビュー。その理由と理想を訊く)では、ティグラン・ハマシアンなどを聴き、新しい要素を取り込みつつあると語っていただけに、今後の展開が非常に楽しみだ。

ラストは演奏が始まると同時に自然と手拍子が起こった人気曲“dance”で、この曲はもともと風営法のダンス規制に対する抗議の意思を示した曲。それゆえ、jizueの楽曲の中でも特にダンサブルで、各メンバーのソロがたっぷりと配置され、中でも粉川のドラムソロに対して一際大きな歓声が贈られたところで、堂々のステージは締め括られた。

井上典政(Gt)、山田剛(Ba)
井上典政(Gt)、山田剛(Ba)

粉川心(Dr)
粉川心(Dr)

最後はピアノ3台を三角形に配置し“COLOURS”を披露

アンコールではjizueの4人にADAM atと渡辺シュンスケが加わり、6人編成でコラボ曲“COLOURS”を披露。トリプルギターのインストバンドはたまに見かけるものの、トリプルピアノというのは珍しく、3人のピアニストが三角形を描くように向き合った見た目の面白さも含めて、非常に特別感のある演奏だった。

左から:片木希依(jizue)、ADAM at、渡辺シュンスケ
左から:片木希依(jizue)、ADAM at、渡辺シュンスケ

さらには、ADAM atの「踊って始まって、踊って終わりたい」という希望から、もう1曲なにかカバーをしようという話になったものの、それぞれのルーツが違い過ぎてなかなか曲が決まらなかったというエピソードが語られる。3人が口々に「ジャズはわからない」と笑い、ADAM atの「ジャズは春菊。好きな人は好き、わからない人はわからない、でも大人になればわかる」という名言 / 迷言も生まれ、最終的にはADAM atの選曲でケルティックパンクの雄であるThe Poguesの“Fiesta”が演奏された。この場面も、現代における「ジャズ」の立ち位置をよく示すようなやり取りだったように思う。

踊る渡辺シュンスケ

踊る渡辺シュンスケ
踊る渡辺シュンスケ

ジャズから広がる「クロスオーバー」は、さらに盛んになるだろう

ビクターといえば『ビクターロック祭り』が有名で、今年も3月に幕張メッセで大々的に開催されていたが、そこに出演していたSOIL&“PIMP”SESSIONSはもちろん、同じく今年『ビクターロック祭り』に出演し、新作『Fruits Decaying』(2017年11月発売)にはSOIL&“PIMP”SESSIONSのメンバーが参加しているぼくのりりっくのぼうよみ(“罠 featuring SOIL&"PIMP"SESSIONS”)も、『ビクタージャズ祭り』に参加しても決しておかしくはない。逆もしかりで、この日の3バンドが『ビクターロック祭り』に出演するのも全然アリだろう。こうしたクロスオーバーが、さらなる音楽シーン全体の盛り上がりにつながるのではないかと思う。

イベント情報
『ビクタージャズ祭り「COLOURS」RELEASE LIVE』

2018年5月7日(月)
会場:東京都 代官山UNIT
出演:
ADAM at
jizue
Schroeder-Headz

リリース情報
ADAM at × jizue × Schroeder-Headz
『COLOURS』(CD)

2018年4月11日(水)発売
価格:1,620円(税込)
NCS-10177

1. COLOURS(ADAM at × jizue × Schroeder-Headz)
2. 五右衛門新ヴァージョン(ADAM at)
3. A Cat and Vagabond(Schroeder-Headz)
4. atom(jizue)
5. Hang New's High(ADAM at)
6. Tokyo Tribal Sacrifice(Schroeder-Headz)
7. elephant in the room(jizue)
8. Re:Ppin(ADAM at)
9. HALSHURA(neon_splash_edit)(Schroeder-Headz)
10. grass(jizue)

リリース情報
jizue
『ROOM』初回盤(CD+DVD)

2018年7月25日(水)発売
価格:3,024円(税込)
VIZJ-22

[CD]
1. to enter
2. elephant in the room
3. grass(album version)
4. trip
5. Sing-la(森羅)feat.元ちとせ
6. Englishman in New York
7. Detour
8. swallow
9. green lake
10. birth
11. I Miss You(EM remix)
[DVD]
chaser(Live at Shibuya WWW,Tokyo)
tower(Live at Hidden Agenda,Hong Kong)
trip(Live at THE WALL,Taipei)
sakura(Live at Shibuya WWW,Tokyo)
and more

jizue 『ROOM』通常盤(CD)

2018年7月25日(水)発売
価格:2,592円(税込)
VICJ-61774

1. to enter
2. elephant in the room
3. grass(album version)
4. trip
5. Sing-la(森羅)feat.元ちとせ
6. Englishman in New York
7. Detour
8. swallow
9. green lake
10. birth
11. I Miss You(EM remix)

ADAM at
『サイコブレイク』(CD)

2018年5月9日(水)発売
価格:2,592円(税込)
VICL-64995

1. 寂寞コンストラクション
2. Dining of D
3. サイコブレイク
4. Hang New's High
5. Rodrigo de Izu
6. エウロパ
7. 共鳴ディストラクション
8. シエノとレイン20形
9. 山猫様のヒヒ退治
10. Port Ellen

Schroeder-Headz
『HALSHURA』(CD)

2018年1月24日(水)発売
価格:2,592円(税込)
VICL-64914

1. 北極星
2. n°33
3. ハルシュラ
4. Seeds
5. 手紙が届けてくれたもの feat. 坂本美雨
6. Nocturne
7. Northern Lights
8. A Day of Snow
9. All About Extra (オマケの人生)
10. Horizon
11. 手紙が届けてくれたもの

プロフィール
ADAM at
ADAM at (あだむ あっと)

キーボーディスト、ADAM atを中心に2011年浜松のライブハウスでセッション・バンドとして活動を開始する。ボサノヴァ、ジャズ、テクノ、スカなどの要素を取り込み、ひたすら踊れるバンドとして話題となり、全国のライブハウスからのオファーが殺到。会場限定で販売した3曲入りシングルは瞬く間に完売。2014年1月に発売した1stミニアルバム『Silent Hill』をインディーズで発売しロングセラーとなる。2015年1月、ビクターエンタテインメントより、1stフルアルバム『CLOCK TOWER』を発売。2015年5月よりNHKプロ野球放送(総合テレビ・BS1ラジオ第1)のテーマ曲を担当。9月には東京JAZZフェスティバル2015に出演し、フリーライブ会場での即売CDは売り切れとなる。また、MINAMI WHEEL 2015他、数々のサーキットイベントで入場者多数のために入場制限がかかるほどの話題となる。2018年5月9日、4thフルアルバム『サイコブレイク』をリリース。

jizue (じずー)

2006年、井上典政(Gt)、山田剛(Ba)、粉川心(Dr)を中心に結成、翌年より片木希依(Pf)が加入。これまでに『Bookshelf』『novel』『journal』『shiori』『story』の5枚のフルアルバムを発表し、そのどれもがロングセラーを記録。ロックや、ハードコアに影響を受けた魂を揺さぶるような力強さ、ジャズの持つスウィング感、叙情的な旋律が絶妙なバランスで混ざり合ったサウンドで、地元京都を中心に人気を高め、『FUJI ROCKFESTIVAL』、『GREENROOM FESTIVAL』、『朝霧JAM』といった大型フェスにも出演。国内に留まらず、カナダ、インドネシア、中国、台湾など、海外にも進出し、その圧倒的な演奏力で高い評価を得ている。2017年10月25日、ビクターよりメジャーデビュー作『grassroots』を発表。

Schroeder-Headz (しゅろーだーへっず)

数多くの著名ミュージシャンのサポートキーボーディストとして活躍する、渡辺シュンスケによるポストジャズプロジェクト。ピアノ、ベース、ドラムスによるアコースティックトリオサウンドとプログラミングを融合させ、美しいメロディーと有機的なグルーヴが印象的なピアノトリオの未来形とも言えるサウンドを紡ぎ出す。その名前の由来はアメリカのアニメ『PEANUTS(日本名:スヌーピ)』に登場するトイピアノを弾くシュローダー君に依り、クラシック、ジャズ、ダンスミュージック、エレクトロなどに影響を受けたリリカルな男子の脳内イメージを表現している。また、同アニメの音楽を担当したVince Guaraldi Trioへのリスペクトの意味も込められている。2018年1月24日、アルバム『HALSHURA(ハルシュラ)』をリリース。



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